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  • 行者にんにく(アイヌネギ)の栽培方法|育て方・時期・レシピと見分け方

    行者にんにく(アイヌネギ)の栽培方法|育て方・時期・レシピと見分け方

    春を告げる山菜の中で、特に年々希少価値が高まっているのが「行者にんにく(通称:アイヌネギ)」です。

    名前の通り強いニンニク臭がする山菜で、北海道の高山や水源地に自生していることが多いのですが、生長が特に遅く、乱獲によって年々数が少なくなってきています。

    この記事では、行者にんにくの特徴と採取の際の注意点、また、我が家では畑で行者にんにくを育てているので、自家栽培の方法とおすすめの食べ方などについても詳しく解説してきます。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]確か先生は北海道出身でしたよね?やっぱりその辺に生えてるんですか?[/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]いやいや、とんでもない。最近ではめっきり数が減ってる上に、自生地は国立公園などの自然保護区なので簡単に取れる山菜じゃないんじゃよ。でも、栽培してる農家さんは結構知ってるぞい![/chat]

    行者にんにく(アイヌネギ)とはどんな山菜?

    行者ニンニク

    1. 和名:行者ニンニク 別名:アイヌネギ、エゾネギ、キトピロ
    2. 学名:Allium victorialis subsp. platyphyllum
    3. 階級:ヒガンバナ科(またはユリ科)ネギ属
    4. 分類:多年草
    5. 分布:北海道~近畿
    6. 形態:地下にラッキョウに似た鱗茎をもつ
    7. 特徴①:強いニンニク臭がする、根に近い部分に赤紫色の繊維がある
    8. 特徴②:生長がとにかく遅い

    行者にんにくの特徴は、何と言っても「生長が遅く、繁殖力が弱い」という点です。

    上の写真は我が家の畑で栽培している行者にんにくですが、2~3年物の苗を植えて6年目なので、通算8年経ってようやくこのサイズと葉の枚数になります。

    種から育てると5年は葉が1枚しか生えず、6~7年目になってようやく2枚葉になるほど成長が遅いため、栽培するにも最も根気がいる作物のひとつです。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]うへぇ~、あの畑の行者にんにくは8年も経ってたんだ!なんかもったいなくて収穫できないね![/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]生長が遅いのであまり流通していないうえに、あったとしても3束ほどで600~700円することもザラなので、自分で栽培するか自生地に採りにでも行かない限り食べることもないかもしれんのう[/chat]

    行者にんにく(アイヌネギ)の名前の由来

    アイヌ

    行者にんにくは、その名の通り行者(修行者)が荒行に耐えるために滋養効果の高い行者にんにくを食べていたから付いたという説があります。その滋養効果の高さから行者は食べるのを禁じられていたとか。

    また、行者にんにくが多く自生する北海道でアイヌの人々が行者にんにくを多く利用していたことから「アイヌネギ」の名前でも呼ばれています。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]「アイヌ」って言葉自体が差別用語って聞いたことあるけどどうなんだろう?[/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]アイヌネギを蔑称とするという考え方もあるんじゃが、一時期「ウタリ」と呼び方を変えようとする運動もあったのじゃが、アイヌの方々自身が蔑称であった「アイヌ」と呼ばれることを選んだこともあり、近年では普通に「アイヌ」と呼ぶことも増え、蔑称ではないとする考えもあるんじゃ。[/chat]

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]デリケートな問題だけど、言葉狩りだけして差別がなくなるわけじゃないよね。[/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]うむ。アイヌネギはそういう呼び方もあるという事で覚えておいて、基本的には「行者にんにく」か「キトピロ」と呼ぶと良いじゃろう[/chat]

    行者にんにくの旬の時期はいつ?

    行者にんにくの旬は、4月下旬~5月上旬と言われています。

    雪解けの遅い北海道の高地などに自生するものは5月中旬になってようやく旬を迎える場合もありますが、宮城県北部の我が家で栽培している行者にんにくは3月下旬にはもう収穫適期になるため、場所によって旬の時期は大きく変わると言えるでしょう。

    行者にんにくが採れる場所は?

    自生地は北海道から関西・近畿地方辺りまでと言われており、山の奥深くよりも雑木林や風通しの良い海岸線などに生えていることが多い山菜です。

    比較的平地でも見かけますが東北以南では高山で見られることが多く、本州の高山では採取が禁止されていることも多いので注意しましょう。

    北海道でも国立公園などの自然保護区に群生していることが多いので、自生している行者にんにくを採取するのは極めて難しくなってきていると言えるでしょう。

    行者にんにくを採取する時の注意点は?

    アイヌネギ

    採取時の注意点は「毒草との取違い」「若い株を残す」という2点です。

    見た目がシンプルな行者にんにくには、よく似た毒草がいくつかあり誤食による中毒の報告例が少なくありません。

    特に「コバイケイソウ」「イヌサフラン」「スズラン」などが取違の起きやすい毒草として知られているので、注意が必要です。

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]毒草との見極め方は後述するぞい![/chat]

    また、前述の通り生長が極めて遅い山菜なので、5年目未満の1つ葉の若い株は採らずに残すなどのマナーを守ることが大切です。

    群生地を見つけたとしても採りすぎず、他の人へおすそ分けするなどは考えず、自分が食べる分だけ採取するように心がけましょう。

    また、根元から掘り起こすと2度と生えてこないので、根元に近い部分をナイフなどで刈り取るようにして採取しましょう。

    行者にんにくに似た毒草「イヌサフラン・コバイケイソウ・スズラン」

    イヌサフラン

    ※上の画像はイヌサフランの花

    行者にんにくと間違えやすい有毒植物には「イヌサフラン」「コバイケイソウ」「スズラン」などがあります。

    まずは、それぞれがどの程度行者にんにくと似ているのかを見てみましょう。

    イヌサフラン

    イヌサフランの葉

    コバイケイソウ

    コバイケイソウの葉

    スズラン

    スズラン

    行者にんにく(本物)

    行者にんにく

    この行者にんにくは、天然物を我が家の畑で栽培しているもので、8年物なので比較的葉の数も多く大きく育った株です。

    先に紹介した3つの有毒植物とよく似ていますよね?

    中でもイヌサフランは、過去10年間(H19~28)で誤食による死亡者数が最も多い(6名死亡)有毒植物として厚生労働省のHPにて報告されています(有毒植物による食中毒に注意しましょう-厚生労働省)。

    あの有名なトリカブトを上回る死亡例(トリカブトは3名死亡)なので、どれだけ致死率が高いのかがお分かりになるかと思います。

    自生する行者にんにくを採取しようと考えている方は、誤食しやすい有毒植物を下記にまとめていますので、是非ご一読ください。

    行者にんにくと毒草との見分け方のポイント

    行者にんにく

    毒草と見分けるために覚えておきたい行者にんにくの特徴は以下の2点です。

    「ニンニク臭」「根元部分の赤紫色の薄皮」

    行者にんにくは、不用心に思い込みで収穫してしまわなければ比較的簡単に見分けることができます。

    一番のポイントは「におい」です。

    葉や茎の部分を嗅ぐとニンニク臭がするのですぐに行者にんにくだと分かります。

    また、上の画像のように根元に近い部分が赤紫色をしているのも見分けるポイントの一つですので、注意深く観察しましょう。

    【栽培】行者にんにくを自宅の畑で育てる方法

    行者にんにくの栽培

    行者にんにくを植えるときの土壌・場所はどこがいい?

    行者にんにくは、北海道や本州の高地に生えていることが多いことから「寒さに強く、暑さに弱い」という特徴があることがわかると思います。

    我が家の栽培方法を参考例としてご紹介します。

    行者にんにくを植える場所

    植えている場所は午前中のわずかな時間だけ日光が当たるような柿の木の下に植えています。基本的に半日陰で西日が当たらない場所を選びました。

    土壌酸性度は弱酸性です。

    土壌に撒く肥料は「堆肥のみ」

    柿の木の下に植えているので腐葉土などである程度はふかふかな土でしたが、そこに完熟発酵の牛糞堆肥を撒いている以外は特に化成肥料などは施していません。

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]実は我が家で育てている行者にんにくの苗は知人からいただいたものなんじゃが、苗をくれた知人は同じ地域に住んでいるにもかかわらず栽培には失敗してしまったようなんじゃ[/chat]

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]寒さとか気候条件は一緒なのに枯れてしまったってことは、日当たりとか土壌が影響している可能性が高いね[/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]ジメジメしすぎていない風通しの良い場所で、木陰のような場所に植えると良いぞい![/chat]

    行者にんにくの増やし方は「種」と「株分け」の2種類!

    上の写真は我が家の行者にんにく畑の様子ですが、最初は4本の苗からスタートし、6年かけて写真のような本数まで育ちました。

    種から育てる場合は、最初の4年間はプランターで育て、ある程度の大きさになったら地植えして2,3年育てます。

    苗から育てる場合も、ある程度の大きさのものであれば地植えを行い葉が2枚になる6年目のサイズになるまで育てます。

    最も簡単に増やせるのは「株分け」です。

    春か秋になったら行者にんにくを一度掘り起こし、根元から株を分けて植えなおすことで、倍・倍と増えていきます。

    植えてから6~7年ほど経つと花を咲かせるので種が採取できるようになりますが、播種から採取できるようになるまで6~7年必要になるので、株分けが最も効率の良い増やし方といえるでしょう。

    種をまく場合の適期は8月です。

    行者にんにくのおすすめの食べ方|味・栄養はどうなの?

    行者にんにく

    行者にんにくは、ニラやにんにくと同じように調理に使うことが多いのですが、味噌や醤油に漬け込んで保存食にすることも多く、ご飯のおかずとして大活躍してくれます。

    採れたての行者にんにくは天ぷらにしても美味しいですよ!

    以下、行者にんにくのおすすめの食べ方の一覧です。

    ・行者にんにく味噌
    ・行者にんにくの醤油漬け
    ・天ぷら
    ・卵とじ
    ・餃子
    ・おひたし
    ・豚バラ巻き
    ・生食(マヨネーズ味噌でいただくと美味)
    ・酢味噌和え
    ・野菜炒め

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]先生の一番のおすすめはどの食べ方ですか?[/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]色々食べた中では「豚バラ巻き」「行者にんにく味噌」じゃな!
    記事の後半でゴハンのお供に最適な行者にんにく味噌の作り方を紹介するぞい![/chat]

    行者にんにくにはどんな栄養があるの?

    行者にんにくは栄養価がとても高いことで知られている山菜で、下記の栄養素が含まれています。

    β-カロテン、ビタミンB6、C、K、葉酸、アリシン、チオエーテル類

    薬効としては、「血行促進」「冷え性改善」「抗酸化作用」など、血液に関する効能が高いとされています。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]臭いからして、いかにも効果がありそうだよね!滋養効果が高すぎて修行者が食べるのを禁止されたっていうのもわかるなぁ[/chat]

    行者にんにくを食べ過ぎると臭い?

    口臭

    行者にんにくは、にんにくの臭いの元である「アリシン」にんにくよりも豊富に含むことが知られているため、食べ過ぎると口臭に強く現れます。

    特に根元に近い部分の方が匂いが強く、熱を加えることで多少は臭いが落ち着きますが、生で食べるとかなり強烈な臭いなので注意しましょう。

    行者にんにく味噌の作り方

    行者にんにく味噌

    私のおすすめの食べ方「行者にんにく味噌」の作り方をご紹介します。

    1.行者にんにくの根元付近の余分な皮を剥いて洗う

    行者にんにくの下ごしらえ

    行者にんにくは根元付近に硬い皮があるので、それを一つ一つ手作業で取り除く作業が必要です。

    その部分に泥がついてることも多いので、しっかりと取り除いて水洗いします。

    2.行者にんにくをさっと茹でる

    茹でたギョウジャニンニク

    下ごしらえした行者にんにくを、大きめの鍋に入れてさっと茹でます。

    火を通し過ぎるとくたっとなりすぎてしまうので、ごくわずかな時間で済ませるようにしましょう。

    3.茹でた行者にんにくを刻む

    茹でたギョウジャニンニク

    茹でた行者にんにくを、お好みのサイズに刻みます。

    細かく刻んでしまっても良いですし、食感を残すために少し大きめにしても良いでしょう。

    4.油で炒めて、味噌と砂糖を加え、最後に白ゴマをふる

    行者にんにく味噌

    刻んだ行者にんにくをフライパンで炒めます。

    弱火で味噌と砂糖を加えて炒め、白ごまを最後に振りかければ完成です。

    お好みに合わせて最後にゴマ油を人たらししても美味しいですよ。

    まとめ

    行者にんにくはとてもおいしく栄養価も高いので、旬の時期に沢山食べたいところですが、生長が遅く希少価値も高いのでなかなか手に入れることができません。

    高価ですがAmazonなどで購入することもできます。

    また、比較的寒冷地に住んでいて畑をお持ちの方は、苗も販売しているので購入が可能です。

    苗も、最初から8年ものを購入すればその年に立派な行者にんにくを収穫することができますが、やはりそこそこのお値段がします。

    土壌や植える場所によってはうまく根付かないこともありますので、初めはもう少し幼年物の苗を植えて様子を見るなどしても良いかもしれません。

    とても美味しいので是非チャレンジしてみてはいかがでしょう?