こんにちは、田舎センセイです!
先日、私の住む宮城県栗原市で珍しく「雪虫(ゆきむし)」を見つけました。
北海道出身の私にとっては降雪を知らせる風物詩として馴染み深い虫なのですが、東北で生まれ育った妻は「雪虫」と言われてもピンとこなかったようです。
子供の頃は雪虫を見かければ1~2週間で雪が降ると教えられて信じていましたし、数匹単位で見かける分には可愛らしいなと思っていたんですが、気候によっては大量発生することもありますし、田舎で農業をしている妻の実家に来てからは「雪虫=害虫」の認識も強くなりました。
これだけ北海道民には高確率で認識されている虫なのに、実はあまり生態は知られていなかったりします。
勿論「雪虫」っていうのは主に北海道での呼び名であって正式名称ではありません、実際の正体を知ってる北海道民って少ないんですよね。
私も雪虫の正体を知ったのはそんなに昔ではありません。
そこで、本記事では「雪虫」と呼ばれる虫の正体と生態、大量発生する原因と言われているものなどについてまとめたいと思います。
Contents
雪虫の正体は「アブラムシ」の仲間だった
雪虫と呼ばれる虫の種類「トドノネオオワタムシ」「リンゴワタムシ」「ケヤキフシアブラムシ」など
北海道で「雪虫」と呼ばれる虫は、実は農業害虫としてよく知られている「アブラムシ」の仲間で、白い蝋状の物質を分泌してワタのように身にまとって飛んでいる虫を総称して「雪虫」と呼んでいます。
主にワタアブラムシ類を「雪虫」と呼び、具体的には
- トドノネオオワタムシ
- リンゴワタムシ
- ケヤキフシアブラムシ
などが雪虫と呼ばれることが多い種類です。
2019年の10月~11月に北海道で大量発生したのが「ケヤキフシアブラムシ」、上の写真で私の手の上に載っているのが「トドノネオオワタムシ」です。
ケヤキフシアブラムシに比べてトドノネオオワタムシの方が一回りほど大きいですが、どちらも見た目はさほど変わらずどちらも北海道では雪虫と呼びます。
あの白い綿毛の正体は?
各地で異なる雪虫の呼び名
- 雪虫
- ゆきんこ
- 綿虫(ワタムシ)
- 雪の妖精
- しろばんば
- オナツコジョロ
- オオワタ
- シーラッコ
など。
これだけ地域によって様々な呼び名があるので、本記事では私の出身地である北海道での一般的な呼び名「雪虫」で通していますが、どれだけの方に通じるか不安になってきました。
SNS経由で兵庫県でも「雪虫」という呼び名で呼ぶことがあると教えていただきましたが、日本全国どの地域でどの呼び名で呼ばれているのかを調べてみたら面白そうですね。
同じ”雪虫”という呼び名の「セッケイカワゲラ」
※画像:wikipedia
念のため触れておきたいのが、北海道~本州の積雪地帯に生息する「セッケイカワゲラ」という虫も「雪虫」と呼ばれる虫です。
本記事で「雪虫」と呼びながらワタムシ類の生態について触れていますが、記事をご覧の方の出身地域によっては、こちらのセッケイカワゲラの方を雪虫としている方もいると思うので念のため触れておきます。
雪虫の生息地・分布
雪虫と呼ばれる虫の中でも一般的な「トドノネオオワタムシ」の場合は、北海道から本州まで生息していて、京都、奈良、兵庫あたりのエリアでも見かけますが、四国や九州ではあまり見かけません。
雪が降る降らないに関わらず、分布自体はかなり広いようですね。
雪虫(トドノネオオワタムシ)の生態と特徴
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雪虫とまとめてしまうと何種類かいるワタムシたちをごっちゃにしてしまう事になるので、ここでは我が家で見かけた「トドノネオオワタムシ」に関してまとめたいと思います。
分類 | 半翅目タマワタムシ科/カメムシ目アブラムシ科 |
成虫体長 | 約3mm~5mm |
加害樹種 | ヤチダモ、アオダモ、ハシドイ、トドマツ、トネリコ |
分布 | 北海道、本州、シベリア、朝鮮 |
トドノネオオワタムシは、ヤチダモなどの「モクセイ科」の樹木の幹の隙間などで卵の状態で越冬して春先(4~5月に孵化)し、新芽や葉の裏側に寄生します(第1世代)
その後、第2世代は全て翅をもった成虫になり、6~7月にトドマツに移動します。この時点では白い綿毛はありません。
夏の間はトドマツの根の周囲で寄生して数世代をすごしたのち、9月頃に翅の生えた個体(雌)が生まれ、産卵のために10月下旬から11月頃にまたモクセイ科の樹木に移動します。
この産卵のためにトドマツからモクセイ科の樹木に移動するときに観測されるのが、私たちが「雪虫」として認識する白い綿毛を身に着けた個体です。
つまり雪虫として見かける個体は全部「雌(メス)」なんですね。
この生態とサイクルによって、トドノネオオワタムシによる被害はモクセイ科の樹木は「葉や新芽」に起き、トドマツでは「根」に被害を受けるので苗木が枯れるなどの被害が出ます。
雪虫対策や防除法は?
雪虫の発生は前述の通り「産卵のために木から木へ移動する時に起こる」ので、たとえ大量発生したとしても長くて1週間程度で収まることが多いと言われています。
そもそも「雪虫を発生させない」という観点で言えば、トドノネオオワタムシの寄生樹となるモクセイ科の樹木やトドマツを近くに植えないという防除法が言われていますが、これを個人レベルで行うのは不可能ですよね。(ケヤキフシアブラムシの場合は、ケヤキや竹、笹などの植物)
大量発生時には目や口も開けられず、衣服や車が雪虫だらけになってしまうという被害が出ますが、やはり一時期の現象なので樹木を伐採するなどの根本原因の除去に至るまでのものにはなりえません。
個人レベルでできる対策としては、大量発生時は外出を控えたり、やむ終えず外出せざるを得ないときは口に入らないようにマスクをして移動するなどが挙げられます。
雪虫自体は人の体温で弱ってしまったり、目的の樹木に向かう過程で別の場所に降り立ってしまうとすぐに息絶えてしまうほど弱い存在なので殺虫剤なども必要はありません。
発生する根本原因を取り除くのが一番いいのですが、それはやはり難しいので個人レベルで最低限の対策をするにとどまるのではないかと思います。
雪虫が大量発生する原因として考えられるのは「夏季の高温」
2019年に北海道で大量発生した雪虫が観測されましたが、その種類は一般的に北海道で雪虫として見られるトドノネオオワタムシではなく、ケヤキフシアブラムシという種類でした。
ケヤキ(欅)の木は北海道には天然分布していないのですが、おそらく後で植えられた本州産のケヤキの木に発生した個体が大量発生につながったんでしょう。
雪虫が大量発生する原因としては、気候条件や夏場の気温の高さなどが大きく影響するようです。
飛翔能力の乏しい雪虫は、天候が良くて風もほとんどない晴れた日に一斉に飛び立つので、夏場の高温で大量発生した雪虫が条件のいい日にまとめて移動したのが大量発生の原因だと思われます。
まとめ
北海道出身の私にとっては、冬前に見かける雪虫は季節の風物詩として故郷を懐かしく思わせてくれる存在なのですが、同時に正体がアブラムシで樹木の葉や根を食害する害虫であるという事も事実なので憎らしい存在でもあります。
数年ごとに大量発生するなどして話題になることがありますが、そうでもない限り一般の方にとって(北海道では特に)問題視されることは少ないでしょう。
以上、雪虫の生態や特徴などに関する豆知識をまとめました。