あたたかい季節になると気になるのが室内への虫の侵入ですが、特に見た目からくる不快さが強いのが「ヤスデ」などの足の多い害虫です。
ご自宅に庭や畑がある場合で、特に落ち葉が積もる程の大きな樹が植えてあったり、ジメジメとした環境ができやすいご家庭ではヤスデの被害が多く見られます。
今この記事をご覧の方は、ご自宅にヤスデが侵入するなどして「ヤスデは刺すのか?毒はあるのか?」または「見た目が気持ち悪い!全て駆除したい!」などとお悩みかもしれません。
私自身も、以前、庭のあるアパートの1階に住んでいた頃に、家庭菜園をしていた庭の土部分とブロック塀との隙間に尋常じゃないほどのヤスデが発生していて悩んだことがありました。
幾つかの対策を講じることで幸いにも室内への侵入は一度もなかったのですが、塀を隔てたお隣の家にはかなりの数のヤスデが侵入したと聞きました。
今回は、そんな私の経験からヤスデを室内に侵入させない方法と駆除方法などについて、詳しく解説いたします。
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ヤスデとはどんな虫?【画像あり】
※画像引用:wikimedia
- 和名:ヤスデ(馬陸) ※画像はヤケヤスデ
- 学名:Diplopoda
- 英名:Millipede
- 階級:多足亜門ヤスデ網
- 生息範囲:日本全土
- 活動時期:4月~10月
- 体長:20mm~80mm
- 寿命:約4~5年
- 特徴:細長い胴体で、動きはのろい。※ムカデとの見分け方は後述
日本で不快害虫として問題になることが多いのがヤケヤスデという種類です。
ヤケヤスデは体長20mm程度で小柄ですが、一気に大繁殖することがあり問題となります。
ヤスデの多くは「腐植食性」で、落ち葉や堆肥、キノコなどの菌類を主食としており、基本的には土の中で生活して土壌を活性化する役割を持っています。
ヤスデが増える原因と時期
ヤケヤスデの存在が問題になることが多いのが5月末~7月初旬です。
この時期にヤスデの被害が増加するのには「ヤスデの産卵サイクル」と「長雨の季節」という2つの原因があります。
ヤスデ自体は3月~10月頃まで活発に活動していますが、初秋(8~9月)の時期に産卵をして10月に孵化します。
寒い時期には土の中で幼虫がどんどん大きくなっていき、秋に生まれた卵がちょうど成虫になるのが5~6月の梅雨の時期になります。
その梅雨の時期の長雨によって、窒息しそうになったヤスデが一斉に地表面に這い出して来るので、突然ヤスデが大発生したかのように見えて問題となることが多いのです。
ヤスデは水から逃れるために壁をよじ登る習性があるので、偶然室内に侵入してくると考えられており、人間に危害を加えようとしているわけではないのですが、この時期に特に厄介な存在となってしまいます。
【似ている虫】ヤスデとムカデの違い
※画像はムカデ
項目 | ヤスデ | ムカデ |
動きの速さ | 遅い | 速い |
行動 | 群れで行動 | 単独行動 |
1節の足の数 | 2対4本 | 1対2本 |
刺咬被害 | 人を刺さない | 人を刺す |
毒性 | ※ほぼ無毒 | 有毒 |
食性 | 腐植食性 | 肉食 |
歩き方 | まっすぐ歩く | くねくね歩く |
尻尾の有無 | 無し | あり |
ヤスデとよく似ている虫として混同されやすいのが「ムカデ」ですが、上の表を見ると分かる通りこれだけ多くの違いがあります。
特に決定的な違いは「1節の足の数」で、ヤスデは1つの節に対して片側2本ずつ計4本の足が生えていますが、ムカデは1つの節に対して1本ずつしか生えていません。
この足の数の違いは移動速度にも関係し、足の多いヤスデはもたもたと動きが遅いのですが、ムカデはかなり速いスピードで移動します。
ヤスデの食性は前述の通り腐敗した植物性のものや菌類ですが、ムカデは肉食でゴキブリなどの大きい昆虫やネズミなどを捕食することもあります。
ムカデについてのより詳しい解説は、下記の関連記事をご覧ください。
ムカデについての詳しい情報はこちらムカデの駆除方法と対策|家の中への侵入防止策と噛まれた時の対処法について
ヤスデは害虫 or 益虫?毒性はあるの?
ヤスデは本来土壌の落ち葉などを食べて土に返す働きをしているので、農作物を作るという観点から言えば「益虫」であるとも言える虫です。
実際に私の家の庭でヤスデが大発生した際に感じたのは、ヤスデが発生していた場所の土がとてもフカフカで、植えていたハーブがとてもよく育ってくれたという事です。
今でも畑で農作業をしたり、ハーブガーデンを作ったりしていますが、その時ほどふかふかの柔らかい土は現在まで作れていません。
日本に生息するヤスデの多くは強い毒を持たず、人を咬んだり刺したりすることがないので、こちらから関わらなければ直接的な危害をうけることは無いでしょう。
ただし、ヤスデに関して注意しなくてはいけないのが、体の側面から出す「臭液」です。
ヤスデが発する臭液(刺激臭を発する液体)は、ヨード、キノン、ベンズアルデヒド、青酸などを含むため、皮膚に触れると水疱ができてただれることもあり、特に口や目に入ると危険です。
衣類やカーペットなどに臭液が付くとシミ汚染の原因にもなるので、触れずに対処することが大切となります。
・臭液という臭い体液が、シミ汚染・かぶれ・刺激性の炎症の原因となる
・大発生して線路などに群がり、電車の運航を妨げることがある
ヤスデの天敵は?
ヤスデの天敵は、より大型の昆虫や爬虫類、野鳥等です。
しかし、ヤスデは群れになって大量に発生するため、天敵による駆除の効果はあまり望めない上に、臭液が強烈なせいかヤスデを好んで捕食する生物は多くありません。
ヤスデが家の中に入らないようにするための対策:シャットアウトSE
ヤスデが大雨の跡などに壁を登って室内に侵入するのを防ぐには、家の外にいるヤスデを全て駆除するのは効率的とは言えません。
ヤスデは外にいる分にはさほど害がないので、侵入させないための対策を取ることが大切です。
最もおすすめなのが「シャットアウトSE」を家の外壁に沿って帯状に散布するという方法です。
シャットアウトSEとはどんな殺虫剤?
シャットアウトSEは、重質粉剤と呼ばれる比重の重い粉でできた殺虫剤で散布しても舞い散りにくい特性を持っています。
殺虫成分は「エトフェンプロックス」と「カルバリル」で、人畜への安全性の高い薬剤とされています(※ただし、使用には手袋やマスクは必須で吸い込まないように注意が必要)
ヤスデ以外にも、ダンゴムシ、ムカデ、ゲジゲジ、フナムシ、ダンゴムシ、アリなどへの駆除効果があり、這って室内へ侵入してくる虫に広い効果を持ちます。
効果の持続時間は晴れの日が続けば約2か月ほど、雨が続くと効果が減弱してしまうので、長雨が上がったらすぐご自宅の周囲に散布すると良いでしょう。
3kg入りで150mの距離に散布できます。
※使用時には必ず注意書きをよく読んでからご利用ください。
ヤスデの駆除におすすめの駆除剤・殺虫剤
どれだけ対策をしてもどうしてもヤスデが室内に侵入してきてしまう場合は、「侵入した個体を室内で駆除する方法」と「元を断つ方法」の2つが必要になります。
室内にヤスデが侵入しても駆除する術がないと手をこまねいてしまいますし、かといって殺虫剤を大量に室内で噴射するのには抵抗がありますよね?
また、室内に侵入しようがしまいが庭でヤスデが大繁殖しているのに耐えられない場合は、繁殖している場所を目がけて駆除を行う必要があります。
この2点についておすすめをご紹介していきます。
室内に侵入したヤスデを駆除する方法:瞬間凍殺ジェット
室内に這って侵入してくるタイプの害虫駆除に効果的なのが、「凍らせて駆除するタイプ」の薬剤です。
殺虫成分が入っていないので室内で噴射しても健康被害の不安も少なく、常備しておけばヤスデ以外の害虫にも効果的なので一本あると良いでしょう。
ペットを飼っていたり小さなお子さんがいる家庭には特におすすめの殺虫剤です。
敷地内に発生しているヤスデを駆除する方法:サイベーレ0.5SC
サイベーレ0.5SCは白色の液体殺虫剤で、ピレスロイド系の殺虫成分が主成分の薬剤です。
特徴は「においが少ないこと」「水で薄めて使う薬剤であること」「1ヶ月以上の残効性が期待できること」「魚毒性が強いこと」などが挙げられます。
散布には蓄圧式などの噴霧器があるととても便利なので、上記のようにセットで販売されているものを購入するとお得です。
噴霧器などで希釈したサイベーレを壁面やヤスデが発生している石の下、ブロック塀と土の隙間などに散布すると強力な殺虫効果を発揮して駆除してくれます。
ピレスロイド系の殺虫剤は人畜毒性は低く安全なのですが、魚毒性が強いので周囲の河川や池に殺虫剤が流れ込まないように注意する必要があります。
ヤスデの最強防除法はコレ!
2.梅雨や秋雨の後に大発生するので、長雨の直後にシャットアウトSEを家の周囲にまく
3.さらに侵入を防ぐために、サイベーレ0.5SCを侵入口付近の壁面に塗布する
4.室内には凍殺スプレーを常備しておく
ヤスデやムカデなどの這って室内に侵入してくる害虫は、いつの間にやらどこからか入ってくるので一度侵入された経験があると恐怖で住んでいても気が休まりません。
ヤスデの侵入防止対策として、上記の4点が考えられる最も効果的な方法だと思いますので、室内への侵入をどうしても防ぎたい方は是非参考にしてみてください。
ちなみに、実際に私が試した方法は3番目以外(サイベーレ以外)で、それだけでも年間を通してヤスデの室内侵入を防ぐことができていました。
まとめ
今回は初夏~秋にかけて室内に侵入してくることが多いヤスデの防除方法と効果的な薬剤についてご紹介いたしました。
室内にまで侵入してくる場合は防除対象として何らかの対策が必要ですが、庭先や家庭菜園などの土の中にいる分には益虫ですので過剰に駆除する必要はないでしょう。
今回ご紹介した薬剤を効果的に散布するには、ヤスデが発生しやすい条件と産卵サイクルなどを参考にして、そろそろヤスデが土から這い上がってきそうだなという時を見計らって使う事が肝心です。
是非、梅雨の時期や秋雨の時期には家の周囲を一度見渡して、ヤスデの侵入経路になりそうな場所や餌になりそうなものを取り除くようにしておきましょう!