お気に入りの洋服がいつの間にか虫に食われて穴が開いていた!そんなことありますよね。
どこかにいるはずなのにあまり見かけない「衣類を食べる虫」
その原因は「カツオブシムシ」かもしれません。
家庭用の衣類を食べる害虫には「カツオブシムシ系」と「イガ系」の2種類がおり、その中でもカツオブシムシ系は原因として最も多くあげられる害虫です。
この記事では、カツオブシムシの対策と駆除方法についてご紹介します。
Contents
衣類を食べるカツオブシムシの生態と特徴とは?
日本にいるカツオブシムシ系のなかで、一般家庭の衣類を食べて加害するのは主に「ヒメマルカツオブシムシ」と「ヒメカツオブシムシ」の2種類です。
どちらの生態も駆除方法もほぼ同じなので、今回はより厄介な「ヒメマルカツオブシムシ」を中心に、生態と駆除方法について説明していきます。
ヒメマルカツオブシムシの生態
- 和名:ヒメマルカツオブシムシ
- 学名: Anthrenus verbasci
- 階級:カツオブシムシ科マルカツオブシムシ属
- 生息範囲:日本全国(世界中にいる害虫)
- 家の中の生息場所:タンス、クローゼット、絨毯、はく製、毛皮、ブラシ、昆虫標本
- 活動時期:年中(成虫は特に4月~5月)
- 体長:2.5mm~3.0mm
- 寿命:約1ヶ月~1.5ヶ月(成虫)
- 特徴①:黒い地肌の上に、白、褐色、黄色の毛がびっしり生えている
- 特徴②:鳥の巣が近くにあるとそこで発生していることが多い
- 特徴③:白や黄色っぽい服に飛んでくる
- 好物:デイジーやマーガレットなどのキク科の花、鰹節、昆虫の死がい、玄米・小麦、ホコリ、繊維
- 弱点:熱に弱く65℃で死ぬ
- 厄介な点①:殺虫剤が効きにくく、駆除しにくい
- 厄介な点②:幼虫の穿孔能力が高く、ビニール程度なら食い破って侵入する
- 厄介な点③:幼虫は半年以上絶食しても生き延びる
ヒメマルカツオブシムシとヒメカツオブシムシの違い
ヒメマルカツオブシムシ | ヒメカツオブシムシ |
見た目が黄色っぽくカラフル | 見た目が黒一色(黒褐色) |
動物性の繊維も植物性の繊維も両方食べる | 植物性の繊維は加害しない (動物性:ウール、カシミヤ、シルクなどを食べる) |
カツオブシムシの成虫は、人間を刺したり噛んだりすることが無いので害はなく、花の蜜を食べます。
衣類の繊維を食べて穴をあけてしまうのは主に幼虫で、ヒメマルカツオブシムシの幼虫は「綿」などの植物性の繊維も餌にしてしまうのに対し、ヒメカツオブシムシの幼虫はウールやシルク、カシミヤなどの動物性の繊維しか食べません。
もしヒメカツオブシムシの成虫が、植物性繊維の衣類についていたら、その中にいる虫の死がいを食べていると考えた方が良いでしょう。
ヒメマルカツオブシムシはどこからやってくる?
ヒメマルカツオブシムシが室内に入ってきてしまう原因として多いと考えられているのが「洗濯物についていて、取り込むときに洗濯物と一緒に室内に入れてしまう」という理由です。
または、白っぽい服を着ている人に飛来することもあるので、知らずに体につけたまま室内に入り持ち込んでしまうという可能性もあります。
白や黄色の花が好きなカツオブシムシは、白っぽいものが好きで洗濯物にとまっていることが多いのです。
室内に洗濯物を入れるときは、しっかりと衣類をはらってから入ることで室内への侵入を予防できるでしょう。
また、キク科の花が大好きなので、室内にデイジーやマーガレットなどを持ち込むときは、カツオブシムシが付いていないか必ず確認するようにしましょう。
ヒメマルカツオブシムシの対策と駆除方法
それでは室内でヒメマルカツオブシムシやヒメカツオブシムシを見つけた場合はどのように対処したらよいのでしょうか?
駆除方法と新たなカツオブシムシを寄せ付けないための対策を8つご紹介します。
※防除策はどれか一つが特効薬になるわけではないので、ご自宅の環境と照らし合わせて、できそうな項目は全てやると良いでしょう。
1.タンスにしまう前に衣類を洗う
タンスの中で衣類が食害を受けるのを防ぐために、衣類を収納ケースにしまう前に必ずきれいに洗いましょう。
一見、衣類についた幼虫や卵を洗い流すためかと思われがちですが、そうではありません。
ヒメマルカツオブシムシは、衣類の中でも食品などで汚れた部分があればそこを好んで食べる習性があるので、タンスにしまう前に、もし食べこぼしなどで汚れた場所があれば汚れを落としてから収納することで、衣類の食害を予防することが出来ます。
食事の汚れが付いたまま収納すると、汚れた場所がカツオブシムシの格好の餌となるでしょう。
2.虫干しをする
ヒメマルカツオブシムシは、湿度の高いところを好みます。
ずっとタンスの奥に眠らせておくと、それだけでカツオブシムシの幼虫が安心して食事をして成長する環境を提供してしまう事になります。
そのため、定期的に天気のいい日を狙って衣類を虫干ししましょう。
3.洗濯物を室内に入れる前に確認をする
前述した通り、室内へのヒメマルカツオブシムシの侵入は、干していた白系の洗濯物についたまま取り込んでしまう事が原因になったりもします。
特に、
- 近くにマーガレットなどの白いキク科の花がある場合
- 鳥の巣が近くにある場合
は、カツオブシムシが近くにいる可能性が高いので、より注意しましょう。
衣類についている卵や幼虫は落ちやすいので、定期的にコートなどの衣類のブラッシングをすることでタンスの中でのカツオブシムシの繁殖を予防することが出来ます。
4.室内を清潔にする
ヒメマルカツオブシムシは、床に落ちたホコリやペットの毛なども大好物です。
繁殖しているのは必ずしもタンスやクローゼットの中とは限りません。ベッドの下にたまったホコリだったり、ペットの毛を吸い込んだ掃除機の中だったりします。
タンスの中の糸くずなども幼虫の餌になるので、衣類を虫干ししたり防虫剤を入れるのと並行して、収納ケース内のホコリや糸くずの除去も忘れずに行いましょう!
せっかく衣類の幼虫や卵を駆除しても、収納するタンスなどに幼虫が繁殖していたら苦労が水の泡になってしまいます。
5.防虫剤を使う
殺虫成分にとても強い抵抗力をもつヒメマルカツオブシムシですが、防虫剤で「寄せ付けない」という対応は効果的です。
しかし、
収納されている衣類の虫干し
↓
収納ケース・タンスの清掃
↓
収納場所以外のホコリや糸くずの除去
と、全てやってきて初めて防虫剤の出番です。
カツオブシムシが出た段階でタンスや衣装ケースに防虫剤を入れても、カツオブシムシの幼虫は駆除されませんし、既に生息している幼虫や成虫が防虫剤の無い場所に移動して新たに繁殖をするだけです。
生態の所にも書きましたが、カツオブシムシの幼虫は絶食しても半年以上生き延びます。
つまり、単純に「防虫剤で場所を移動させてエサ不足で死んでくれるのを待つ」というのは防除対策として不十分なのです。
あくまで防虫剤は「寄せ付けない」という目的で使うので、今潜んでいるカツオブシムシたちを除去してから使用しましょう。
衣類害虫に対するおすすめの防虫剤と種類については、別記事で詳しく説明していますのでそちらをご覧ください。
6.エアゾール剤や燻煙剤をつかって成虫を駆除する
カツオブシムシの駆除方法として「エアゾール剤」や「燻煙剤」を使用するという方法があります。
しかし、タンスの奥や押し入れの奥深くなどは、薬剤が届きにくく、全ての成虫を駆逐するのは難しいでしょう。
また、幼虫や卵への効果はあまり見込めないため、カツオブシムシの成虫が大量発生してしまった場合など、次世代の産卵抑制などの目的で成虫を駆除するという点では効果的だと思います。
各薬剤の詳細については「おすすめの殺虫剤・防虫剤・忌避剤」の記事をご覧ください。
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7.ライトトラップで光におびき寄せる
ヒメマルカツオブシムシは、羽化後2~3週間経つと「走光性」が高まるため、明るいところに飛んでいくようになります。
暗い衣装ケースや押し入れの中から、明るい家の外に飛んでいき、キク科の植物の花粉を食べるようになる為ですが、その習性を利用して捕獲することができます。
この方法は、走光性が高まった成虫しか捕獲することが出来ないという点で、防除効果としては完全ではありませんが、成虫を衣類から引き離して捕獲するという点では、ある一定の効果が見込められるでしょう。
このライトトラップだけでは幼虫や卵の駆除はできないことにご注意ください。
8.熱で駆除する
最後に、最も簡単で効果的だと思われるのが「熱で駆除する」という方法です。
カツオブシムシは熱に弱く65度の高温で即死するので、その弱点を利用します。
ご家庭でできる方法としては、スチームアイロンを使用するという方法がありますが、おススメなのが「コインランドリーの高熱乾燥機」です。
コインランドリーの乾燥機は大抵80℃ほどの高温で衣類を回転させながら乾燥させるため、衣類についているカツオブシムシやその幼虫は一網打尽にできます。
スチームアイロンよりは費用が掛かりますが、お手軽に大量の衣類をカツオブシムシから守る方法としてとてもおすすめです。
まとめ
ヒメマルカツオブシムシは、とにかく幼虫の「対殺虫剤能力の高さ」と「半年以上飢餓状態でも生きられる生存能力の高さ」が厄介な害虫です。
多くの室内害虫との違いは「薬剤で駆除しにくい」という点です。
ヒメマルカツオブシムシの対策として有効なのは、
- 家の周囲の環境(キク科の植物がないか、野鳥の巣はないか)などを知ること
- カツオブシムシの特性(白い洗濯物につきやすいなど)を知ること
- カツオブシムシが棲み付きにくい環境を作ること
などの地道な対策です。
カツオブシムシの名の通り、鰹節などの食品にも湧くことのある害虫なので、家の中からしっかり追い出して、二度と入り込ませないように対策を取りましょう。