皆さんは衣類用防虫剤にはどのような種類があって、どのような違いがあるのか知っていますか?
衣類用害虫に効果のある防虫剤は、防虫成分の違いによって大きく4つに分けられます。
それらの防虫剤にはそれぞれ特徴があり、成分によっては使用方法を間違えると健康被害が出たり、衣類をダメにしてしまう恐れもあるのです。
この記事では、衣類を食害する「衣類害虫」に効果を発揮する「防虫剤の種類とおすすめ」をご紹介いたします。
そういう用途別の防虫剤の選び方もあるの?
(ブタなのにスーツなんか着るのか・・・。)
Contents
防虫剤の4種類の防虫成分とは?
冒頭で「防虫剤には4種類ある」とお伝えしましたが、その4種類とはどのようなものなのかというと、
- ピレスロイド系(エムペントリン製剤)
- パラジクロロベンゼン製剤
- しょうのう製剤
- ナフタリン製剤
上記の4種類に分類されます。
①ピレスロイド系は【無臭】
③しょうのう製剤
④ナフタリン製剤
は【有臭】という点じゃな!
これら4種類の成分で分けた場合に、①のピレスロイド系の防虫剤は無臭で、それ以外(②③④)は有臭というのが大きな違いです。
そして、一番注意をしなくてはならないのが
「②③④の臭いのある防虫剤は、2成分以上での併用をしてはいけない」
という点です。
異なる成分の防虫剤を併用してしまうと、収納ケース内でお互いの防虫成分が反応しあってしまい、ガスが発生して衣類に油性のシミがついてしまう危険性があります。
成分別の特徴と使用上の注意点
1.ピレスロイド系防虫剤(エンペントリン)
除虫菊から抽出された殺虫成分の効能を化学的に強めたもの(化合物)の総称。
蚊取り線香やエアゾール系の薬剤などもピレスロイド系の殺虫剤が主流です。
蚊取り線香は火をつけて殺虫成分を空気中に蒸散しますが、防虫剤のエンペントリンは常温でも揮発して衣装ケース内に広がって、害虫を駆除します。
特徴は、
- 無臭
- 安全性が高い
- 他種薬剤と併用してもOK
- 効果が高い
- 常温揮発で隅々まで効果が届く
- 高濃度になると、銅や真鍮と反応して変性させてしまう可能性がある
※効果の強さについては、衣類害虫の代表である「ヒメカツオブシムシ」の食害防止効果が、パラジクロロベンゼン系の1000倍とのデータもあるそうです。(※引用:防虫剤について – テクノスナカタ)
一方で、安全性はとても高く、昆虫には即効性を示すが人畜には低毒性で、アレルギー毒性も無いとされています。歴史の長い防虫剤の安全性研究の結果、化審法の審査を通過して発売された近年で最も安全性の高い防虫剤と言えます。
口に入れたと仮定した場合の毒性は、普段口にしている「食塩」よりも毒性が低いという研究結果が出ているので、どれだけ安全なのかが分かりやすいですね。※急性経口毒性試験(LD-50)より
注意点としては、「銅や真鍮を含む金属のついた服(ボタンなど)には使えない」点です。殺虫成分が化学反応を起こし、金属が変色する恐れがあります。
5月人形の兜などは銅が使われていることもあるので、使用の際には十分注意しましょう。
2.パラジクロロベンゼン製剤
4つの防虫剤成分のなかで「最も臭いが強い」のがパラジクロロベンゼン製剤です。
害虫に対して即効性がある一方で、昇華性が高いので効果が長続きしないという側面を持っています。
融点が53℃ととても低いので、夏場の保存場所によっては溶けてしまう可能性があるのが注意点。
また、プラスチックや塩ビ、樹脂などには使えません。
通常利用では安全性には問題が無いとされていますが、肌に直接薬剤が触れたり、保管場所が高濃度になった場合に健康被害を訴える例もあるので、用法用量をしっかり守るようにしましょう。
特徴をまとめると、
- 臭いが強い
- 即効性があるが、効果持続時間が短い
- 融点が低いので保管場所によっては溶けてしまう危険性がある
- プラスチックや塩ビ、樹脂などを変性させてしまう可能性がある
- 高濃度になると健康被害の危険性がある
3.しょうのう(樟脳)
防虫剤の成分としては最も古くからある「しょうのう(樟脳)」は、クスノキ由来の防虫成分です。
クスノキの葉や枝を蒸留し、抽出したものを冷却して結晶化させて作ります。
植物由来のハッカのような匂いが特徴で、着物の防虫剤として使われることが多いです。
注意点としては、しょうのう自体は有毒で、万が一飲み込んだ場合はすぐに病院へ行く必要があります。飲み込んだ場合は、精神錯乱や神経、筋肉系への異常をきたします。
※樟脳は脂溶性のため、乳脂肪分が含まれる牛乳を解毒として飲ませるのは逆効果
天然由来成分という事で、ピレスロイド系などの防虫剤に比べて安心とうたっているような情報を見かけますが、「天然植物由来=無害」ではないので、しっかりとした情報をもとに使用するようにしてください。
特に、子供の誤飲の事例が多いので「天然由来成分だから子供服の保存には樟脳」という理由だけで選ぶと危険ですよ。
また、プラスチックや塩ビに反応することもあるので注意が必要です。
特徴をまとめると
- 植物由来のハッカのようなスッとした香りがある
- 着物の防虫剤に多い
- 飲み込んだ場合は有毒なので病院へ(油分のある物(牛乳など)は飲ませない)
- プラスチック、塩ビに反応して変性させてしまう可能性がある
4.ナフタレン
コールタールの蒸留によって作り出された成分で、強い臭いがあります。
防虫効果はさほど強くはありませんが、ゆっくりと効きはじめ効果が長く続きます。
金属や金箔、銀糸など人形によく使われる素材へのダメージが少ないので、五月人形やお雛様の防虫用などに使われることが多いです。
しかし、直接触れるとただれてしまったり、誤飲してしまったら健康被害が出るので安全面ではピレスロイド系に劣ります。
特徴をまとめると、
- 臭いが強い
- 即効性は無いが、効果が長く効く
- 直接肌に触れると炎症を起こす
- 金属や金箔などへの影響がないので、人形の防虫剤としてよく使われる
各防虫成分の比較表
種類 | ピレスロイド系 (エンペントリン) | パラジクロロ ベンゼン系 | しょうのう | ナフタレン |
におい | 無 | 有 | 有 | 有 |
有効期間 | 6か月~1年 | 3か月~6か月 | 6か月程度 | 6か月~1年 |
効果の持続性 | 長期間持続 | 即効性・短期間 | 平均的 | 長く効く |
効果の強さ | ◎ (サナギ化した幼虫にも効果あり) | △ | △ | △ |
安全性 | ◎ | ×~△ | △ | × |
他種との併用 | 〇 | × | × | × |
用途 | 毎日着るような服 | 害虫被害が 多い場所 | 着物など和服の保存に多い | 人形・鎧兜 長期間保存するもの |
使用不可例 | 銅、真鍮など金属が付いているもの | プラスチックや 塩ビや樹脂の素材 | プラスチックに反応する可能性がある。金箔などは直接触れないように | 特になし |
特徴① | 商品の種類が豊富 | 肌に直接触れると炎症を起こす危険性がある | 有毒 | 肌に直接触れると炎症を起こす危険性がある |
【防虫成分別】おすすめの防虫剤
1.エンペントリン(ピレスロイド系)の防虫剤
かおりムシューダ 1年間有効タイプ
定番の「ムシューダ」の香りがあるタイプの防虫剤「かおりムシューダ」です。
ピレスロイド系の中では最も効果の長い「1年間有効」のタイプで、効果が長く続きます。
香りには下記の4種類があります
ムシューダ 1年間有効 無香タイプ
ムシューダの臭いのしない「無香」タイプです。
防虫剤に香り成分は不要!という方におすすめです。
ムシューダは、使用場所によって下記のタイプがあります。
2.パラジクロロベンゼン製剤の防虫剤
ネオパラエース
ネオパラエースは、特殊加工の包装によって薬剤が直接衣類につかないのが安心の商品です。
洋タンス用の商品はこちら
3.しょうのう(樟脳)の防虫剤
藤沢樟脳
天然樟脳
樟脳には、マツの精油からとれるα-ピネンから合成されるものもありますが、天然由来の樟脳をご希望の方は、上記の「藤沢樟脳」もしくは「天然樟脳」がおすすめです。
4.ナフタレンの防虫剤
ネオパース
まとめ
今回は衣類の防虫剤として使われている成分別に4種類ご紹介いたしました。
どんな防虫剤でも100%安全なものはありません。
記事中で例に出した食塩のように、普段口に入れているものでも度を過ぎると毒になります。
そう考えると、防虫剤の中では(用法用量をしっかり守れば)ピレスロイド系のエンペントリンは4種類の中で最も安全な防虫剤と言えるでしょう。
小さなお子さんがいるからと言って、天然由来成分の樟脳が必ずしも安全であるとは言い切れず、天然か化学薬品かのみの判断で商品を選ぶのではなく、しっかりと各防虫成分の特徴を把握して、自分に合ったものを選びましょう。
衣類を食害する害虫の代表格「カツオブシムシの駆除方法と対策」と「イガ・コイガの駆除方法と対策」については、別記事でご紹介していますので、そちらを参照ください。