衣類を食害する害虫に「イガ」「コイガ」という小さな蛾の昆虫がいます。
今回は、タンスの奥や押し入れなど暗いところを好み、知らないうちに大量発生なんてこともあるイガ・コイガの駆除方法と対策をご紹介します。
Contents
衣類を食べるイガ・コイガの生態と特徴とは?
イガ類は、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシと並んで、衣類を食害する「4大衣類害虫」のうちの1つです。
イガは「衣蛾(イガ)」と書き、その名の通り衣類を食害する小さな蛾です。
家で発生するイガ類には「イガ」と「コイガ」の2種類があり、どちらも生態と防除対策に大きく違いが無いので、イガを中心に話を進めたいと思います。
イガの生態
- 和名:イガ
- 学名: Tinea translucens
- 階級:チョウ目ヒロズコガ科
- 生息範囲:日本全国(世界中にいる害虫)
- 家の中の生息場所:タンス、クローゼット、絨毯、毛皮、革製品
- 活動時期:年中(成虫は特に7月~10月)
- 体長:6mm~7mm (翅を広げると9~16mm)
- 寿命:約1週間~10日(成虫)
- 特徴①:幼虫期が30~50日と短く、年に何度も発生を繰り返す
- 特徴②:鳥の巣が近くにあるとそこで発生していることが多い
- 特徴③:薄く黒い斑紋がある(コイガには無い)
- 好物:鰹節や魚粉などの動物質の食品、ウールなどの動物性の繊維(特に食べこぼしや汗汚れなどの場所)
- 弱点:比較的防虫剤が効きやすい
- 厄介な点①:光が苦手でライトトラップが効かない
- 厄介な点②:年に2~3世代など頻繁に発生を繰り返す
イガとコイガの違い
※写真はイガの幼虫
イガ | コイガ |
薄黒い斑紋がある | 斑紋は無い |
翅を広げると9~16mm | 翅を広げると9~12mm |
年に2~3世代交代する | 年に3~4世代交代する |
動物質のもののみ食害する | 動物質、植物質、場合によっては 化学繊維も食害する |
幼虫は巣ごと移動する | トンネル型の固定巣を作る |
イガとコイガの違いで最も大きいのは、イガは動物質のもののみを食害するのに対して、コイガは植物質の繊維や化学繊維までも食害することがあるという点です。
食品につくこともありますが、繊維への食害に比べると頻度はさほど多くありません。
両者ともに、ウールなどを食害することが多いのですが、特に食べかすなどが付いている場所を好んで食害することが知れらており、タンスにしまう前に選択をする「しまい洗い」が防除において大切であることが分かります。
また、上の写真のようにイガの幼虫は繊維を噛み切って巣にします。
イガは、巣ごと移動してタンスや衣装ケースの奥の暗い場所で成長しますが、コイガの巣はトンネル状で固定された巣を作ります。
どちらも頻繁に世代交代をするので、知らないうちに大繁殖!なんてこともあるので注意が必要です。
イガ・コイガの対処法
それでは、イガ・コイガの駆除方法と対策はどのようにしたらよいのでしょうか。
基本的な防除対策は、「カツオブシムシ」と共通している点が多いので、ここでは簡潔にまとめます。細かい防除の手順については別記事「カツオブシムシの対策と駆除方法まとめ」をご覧ください。
それ以外のイガ・コイガの駆除方法で効果的な物については、しっかりとご紹介したいと思います。
1.しまい洗いをする
イガとコイガの違いについての項目でも言及しましたが、衣類などの繊維の食害の中でも特に「汗汚れ」や「食べかす汚れ」のついている場所を好んで食害します。
そのため、タンスにしまう前に「しまい洗い」をすることで、大切な衣類の食害被害を減らすことが出来ます。
また、洗濯することで衣類についていた卵が落ちるので、次世代の発生の抑制にもつながります。
2.室内の掃除をする
イガやコイガの餌になるようなホコリや髪の毛などを取り除くために室内の清掃をすることも大切です。
これは、イガやコイガのみならず、その他の家の中に発生する不快害虫の予防にもつながるので、定期的に掃除をするようにしましょう。
3.洗濯物を取り込むときに卵の付着に注意をする
イガやコイガの室内への侵入経路として多いのが「洗濯物に植えつけられた卵」です。
イガ類の卵は落ちやすいので、洗濯物を取り込むときに軽く叩いたリすることで卵が室内に侵入するのを防ぐことが出来ます。
イガ・コイガは(カツオブシムシ類も)、野外ではツバメや雀などの野鳥の巣に生息していることが多いので、家のそばに鳥の巣がある場合は特に洗濯物への卵の付着に注意しましょう。
4.室内を飛んでいる成虫はエアゾールやバルサンで撃退
こちらも、カツオブシムシと共通ですが、室内にイガ・コイガの成虫を発見したら、できるだけ駆除してしまいましょう。
発生している数が多い場合は、室内充満型のエアゾール剤やバルサンなどの燻煙剤が効果的です。
ただ、衣装ケースや押し入れの奥深くに潜む幼虫には効果が無いので、あくまで外に出てきている成虫の駆除対策となります。
コイガは、イガに比べて1匹のメスが生む卵の数は約80個と多いので、1匹の成虫を駆除するだけでも次世代の発生の予防につながります。
ピレスロイド系のスプレー剤でも効果がありますので、少しでも室内にいる成虫を駆除するようにしましょう。
※おすすめのエアゾール剤や燻煙剤は、カツオブシムシのページをご覧ください。
5.スチームアイロン、高速熱乾燥機などで熱処理をする
衣類についた卵や幼虫については、アイロンやコインランドリーの乾燥機で熱処理をするという方法もあります。
カツオブシムシは約65度まで耐えられるので熱での駆除はやや大変ですが、イガやコイガは50度前後で死滅するとされているので、収納する前にコインランドリーで乾燥機を使用すると良いでしょう。
衣類の数が少ない場合は、ご家庭で衣類全体にまんべんなくアイロンがけをするだけでも虫の発生を予防することが出来るのでお勧めです。
6.防虫剤を使用する
イガやコイガの駆除対策で最もおすすめなのが「防虫剤」です。
当たり前のようですが、同じ衣類害虫のカツオブシムシ系は防虫剤の効果がそこまで見込めません。
一方で、イガ・コイガは防虫剤が効きやすく、1~5までの防除対策に加えて防虫剤を使えば、大抵の虫は駆除できるでしょう。
もちろん、頻回の清掃や洗濯物を取り込むときに卵をはたき落とすなどの項目を怠ると、定期的に外から招き入れてしまう事になるので、またどこからか発生してしまうことがあるかもしれません。
衣類を保管しているタンスや衣装ケースの密閉度が高い方が、防虫剤の効き目も良いのでそれぞれの防虫剤の効果が発揮されるように、用法用量を守って使用しましょう。
おすすめの防虫剤は、安全性の高い「ピレスロイド系のエンペントリン」です。
そのほかにも防虫剤には成分別で3種類あるのですが、いずれも使用方法を間違えると衣類にシミがついてしまったり、健康被害を及ぼす危険性があります。
「衣類害虫に対するおすすめの防虫剤と種類別の注意点」については、別記事でまとめてありますので是非ご一読ください。
※カツオブシムシと違い、ライトトラップは効果なし!
成虫になると光に向かう習性(走光性)が生まれるカツオブシムシとは違い、イガ・コイガは光が苦手で暗いところに潜む習性があります。
その習性は成虫になっても変わらないので、光でおびき寄せて駆除するライトトラップ系の防除方法は効果がありません。
衣類に穴が開いていたことからカツオブシムシと決めつけて、ライトトラップを購入し、「実はイガだった!」なんてことがあればお金の無駄ですよね。
衣類に穴が開いていてライトトラップを検討している場合は、その犯人がカツオブシムシ系なのかイガ系なのかをしっかりと見極める必要があるでしょう。
まとめ
イガ・コイガの駆除方法と対策についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
最後に今回のポイントを簡単にまとめたいと思います。
- イガ類は衣類についた食べカス汚れや皮脂汚れなどの部分を好んで食害する
- 近くに鳥の巣がある場合は衣類害虫の発生に注意
- もしイガ類が発生したら、洗濯→掃除→熱処理→防虫剤(エンペントリン)
イガ類が発生している環境では、カツオブシムシも発生する可能性も高いので、イガ類の対策と合わせてカツオブシムシについても予防策を練ることをおすすめします。
これらの衣類害虫の生態を知って、大事な服を衣類害虫から守りましょう。