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  • ベンレート水和剤の使い方|種子の消毒をしてカビ対策をする農薬とその効果は?

    ベンレート水和剤の使い方|種子の消毒をしてカビ対策をする農薬とその効果は?

    こんにちは、田舎センセイです!

    サボテンやコーデックス栽培にはまり、種から育てる「実生株」の育成にチャレンジしようと調べた時に、多くの園芸愛好家が「ベンレート」という薬品を使って種を消毒しているのを目にすることが多いと思います。

    私も当初は「ベンレートやダコニールなどの薬品を使って種を消毒している人が多いけど、本当に必要なんだろうか?」と思いながら、殺菌せずに普通に種をまいて半数以上の種をカビさせてしまって発芽にすら至らなかった経験があります。

    種子のカビやすさは品種によっても差があるので必ずしも必要な工程ではありませんが、貴重な種子を海外などから取り寄せたりしているのですから、万全を期したいところですよね?

    本記事では、ベンレートの特徴と使い方についての基本情報と、私が種子を消毒する時の実際の様子をご紹介します。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]パキポディウムなんかは特にカビやすいから種子消毒が必要だよね![/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]うむ、実際に消毒した様子は下記で紹介しているぞい![/chat]

    https://inakasensei.com/pachypodium-kabi

    ベンレート水和剤とはどんな薬剤?

    ベンレート水和剤

    商品名ベンレート水和剤
    有効成分ベノミル(50%)
    性状類白色水和性粉末
    安全性普通物
    有効年限4年

    ベンレート水和剤は、いわゆる「殺菌剤」でカビや病原菌の発生を抑制したり、既に植物体内で発生した病原菌にも作用して治療する効果のある薬剤です。

    ベンレート
    水和剤なので白い粉末状の剤形で、水に溶かして希釈液を作って散布します。

    殺菌剤の種類については下のダコニールの記事で詳しく解説していますが、ベンレート水和剤は「治療殺菌剤」ですので、予防効果だけでなく既に発生してしまったカビの殺菌にも効果があります。

    https://inakasensei.com/daconil1000

    ベンレート水和剤の特徴|トップジンMゾルとの違いは?

    ベンレートは「ベンゾイミダゾール系」の殺菌剤に分類されますが、チオファネートメチルを有効成分とする「トップジンM」も同様にベンゾイミタゾール系殺菌剤に含まれます。

    簡単に言うと、植物体内で作用する時にトップジンMもベンレートと同じような活性体に変化して殺菌効果を発揮する為で、いずれも病原菌の有糸分裂(細胞分裂)を阻害して死滅させる作用機序を持ちます。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]殺菌剤としての系統や病原菌に対する効果の発揮の仕方はほとんど同じなんだね![/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]それゆえにこの2つの殺菌剤を交互に散布しても効果は限定的などころか耐性菌を生みやすいので注意が必要じゃ![/chat]

    コーデックスのように、多くの人が種子の殺菌にベンレートを使っていることを考えると、海外や他の園芸家が採取した種子を購入して播種する時に、何度もベンレートを使うのはもしかしたらあまり良くないのかもしれないですね。

    私はその点を危惧して耐性菌のできにくいダコニール1000を種子の消毒に使っていて、カビが発生した時点でベンレートに切り替えるようにしていますが、これが実際にどの程度功を奏しているのかは正直わかりません。

    ベンレートとベンレートTの違い

    ベンレート水和剤には「GFベンレート水和剤」と「ベンレートT水和剤」の2種類が主にホームセンターなどで見かけることがありますが、違いがよくわからなかったので調べてみました。

    主な違いは下記の通りです。

    ・ベンレートはベノミル50%、ベンレートTはベノミル20%チウラム20%
    ・ベンレートの有効期限は4年、ベンレートTは3年
    適用範囲はベンレートの方が広い

    一番の違いは、ベンレートTには「チウラム」が含まれているという点ですね。

    厚労省HPを見ると、チウラムはジチオカーバメード系殺菌剤として園芸で用いられるほか、ゴムの弾力を大きくする促進剤として使われているようです。

    気になったのは、ゴムの製造で欠かせない添加物のひとつとして挙げられるチウラムは、「ゴムアレルギー」の原因物質のひとつと言われていて日本人の1割弱にアレルギー反応陽性を示すと言われています。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]ゴムアレルギーなどがある人はベンレートTは避けた方が良さそうですね。[/chat]

    私のようにゴムアレルギーはなく、ともに適用のある「花き類」に使用する場合などはあまり違いはないかもしれませんが、作物などに使う場合は適用を確認して選ぶようにしましょう。

    ベンレート水和剤の毒性及び薬害について

    ベンレート水和剤は、先に述べたように使用範囲は広く様々な病害に有効ですが、「耐性菌が出やすい」という欠点があります。

    使い勝手がいい分頻繁に使用してしまうと、病気の蔓延を招く可能性もあるので使用には注意が必要です。

    また、水生動物や無脊椎動物(ミミズなど)に強い毒性を持つので、使用後の薬液の処理には十分注意してください。

    また、皮膚や眼への刺激性がある点も忘れてはいけません。

    ベンレート水和剤の使い方

    ベンレート
    ベンレート水和剤は、粉末を水に溶かして希釈液を作り使用します。

    水1ℓに対して一包を溶かせば2000倍液が出来ます。

    ベンレート
    私が使うのは使用済みペットボトル500mlで、一包の半分を溶かして2000倍液を作り、種を浸すトレイに注いで使っています。

    ペットボトルを使っているのは、分量を量りやすいことと使い捨てにできるからで、使用後はできるだけ使い切って何度も使いまわさないようにしています。

    下の画像は私が種子を殺菌剤の希釈液に浸してるところです。(※この希釈液はベンレートではなくダコニール1000ですが…)

    デカリー
    浸水時間はだいたい10~12時間にしています。これくらいつければ大体の種子は水を含んで沈んでしまうので十分だと判断してます。

    まとめ

    本記事では、種子の殺菌によく使われるベンレート水和剤についての基本情報と使用上の注意点などについて簡単に解説いたしました。

    園芸をする方には馴染み深い農薬で、ホームセンターでも購入できるのですが、あくまでも「農薬」ですので、使用上の注意点は必ず守って使うようにしましょう。

    特にペットや小さなお子様がいるご家庭では、誤飲などの事故が起きないようにしっかり管理してくださいね!

  • STダコニール1000の使い方と特徴|殺菌効果と薬害に関する注意点

    STダコニール1000の使い方と特徴|殺菌効果と薬害に関する注意点

    こんにちは、田舎センセイです!

    我が家では野菜以外にも果樹や米、観葉植物に塊根・多肉植物等様々なものを育てていますが、病気の原因になるカビ細菌にはいつも頭を悩ませています。

    特に私が趣味で育てている塊根植物(コーデックス)は、種を発芽させるために高湿度&高温状態で数日腰水状態で容器を密閉させなくてはいけないのでどうしても種がカビやすい。

    これらに対抗する手段に「殺菌剤」があるのですが、生育段階や病気の状況などによって使うべき殺菌剤が違う事を知らない人も少なくないようです。

    そこで本記事では、最もよく使われる殺菌剤「STダコニール1000」について、効果的な使い方と特徴を具体的に解説いたします。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]先生はダコニールをよく使ってるよね![/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]うむ!ワシの場合は貴重な植物の種をカビさせずに発芽させるに欠かせない薬剤なんじゃよ[/chat]

    STダコニール1000とはどんな殺菌剤?

    ダコニール1000

    商品名ダコニール1000
    種類名TPN水和剤
    有効成分TPN(40%)
    性状類白色水和性粘稠懸濁液隊
    作用特製多作用点接触活性(FRAC_M5)
    安全性普通物
    有効年限5年

    殺菌剤の系統としては「有機塩素系」の殺菌剤で、同系統のその他の殺菌剤には「オーソサイド」があります。

    安全性は普通物ですが、眼・皮膚に刺激性があり、魚(水産動植物)に毒性があるので散布時には十分注意が必要です。

    果樹や農作物、花きなどに発生することの多い様々な病気(うどん粉病、炭疽病、斑点病など)に対する殺菌効果を持ち、発生前に散布することで病原菌の発生を抑制します。

    私のように種子の発芽段階でカビが発生しやすいような状況で、前もって希釈液に種子を浸水させて殺菌するなどの方法でも使われることがあります。

    ダコニールの特徴|ベンレートの違いは?

    殺菌剤には予防的殺菌剤と治療的殺菌剤の2種類がある

    殺菌剤
    一般的に殺菌剤は「予防殺菌剤」と「治療殺菌剤」の2種類があります。

    少々ややこしいのが、ほとんどの殺菌剤は「予防効果」を持つので、予防効果しか持たない殺菌剤を「予防殺菌剤」予防効果に加えて植物体内に入りこんだ病原体にも効果を発揮する殺菌剤「治療殺菌剤」としています。

    ダコニール1000は「予防的殺菌剤」です。

    そのため、既に植物体内に入ってしまった病原体には効果がないんですね。

    一方で、画像でダコニール1000の横に並んでいるベンレート水和剤」は、治療殺菌剤ですので植物体内に浸透して殺菌効果を発揮します。(※ベンレートについては下の記事をご覧ください)

    https://inakasensei.com/benlate

    私の場合は、植物の種を発芽させるために高湿度の密閉容器に入れておくと、予め種子の内部や周囲に付着した菌から糸状カビが発生してしまうので、予めダコニールを1000倍に希釈した水溶液に種子を数時間浸してから播種しています。

    そうすることで病原体の酵素に作用して、病原菌の胞子発芽や胞子形成を阻害するのでカビが発生しなくなります。

    しかし、繰り返しになりますが、直接菌を殺すのではなく病原菌の生育を阻害する機序のため、既にカビが発生してしまった場合にはダコニールの希釈液を何度散布しても殺菌することはできません。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]でもほとんどの殺菌剤は予防効果を持つんでしょ?それならダコニールではなく、治療殺菌剤であるベンレートなど他の治療殺菌剤の方を選んだ方が良いんじゃないの?[/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]そこでかかわってくるのが、農薬の特性とダコニールの持つ特徴なんじゃよ[/chat]

    ダコニール1000の特徴

    ・登録内容が幅広い
    ・耐性菌の発生事例がない

    ダコニール1000が殺菌剤の中でも使用されることが多い理由に、「登録内容が幅広い」ことと「耐性菌ができにくい」という2つが挙げられます。

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]70種類以上の作物&180種類の病害に登録があって、且つこれまでに耐性菌の発生事例がないというのがポイントじゃ![/chat]

    農薬利用の難しい所は、治療効果があるからといって同じ薬剤を繰り返し使っていると耐性菌が出てきて、薬剤が全く効かなくなりさらに被害を増やしてしまう可能性があるんですね。

    薬剤利用に関しては地域差や環境要因、土壌の違いなど様々な要素が絡み合うので、必ずこの殺菌剤を使えば大丈夫といえないのが難しい所でもあります。

    基本的には、治療殺菌剤はローテーションを組んで耐性菌ができないように注意しながら散布をするのですが、それでも耐性菌ができてしまうことがあります。

    その点、予防殺菌剤であるダコニール1000は「耐性菌ができにくい」というメリットがあるので、病原菌が発生してしまう前に予防的に散布をすることで、被害拡大の防止と耐性菌の出現阻止の効果があるわけです。

    [chat face=”buta.jpg” name=”” align=”left” style=”type1″]予防殺菌剤は耐性菌ができにくいのかぁ![/chat]

    [chat face=”mu.jpg” name=”” align=”right” style=”type2″]ダコニール1000は有機塩素系の殺菌剤だけど、系統や作用機序をこまめに変えるようにして他の殺菌剤のローテーションに加えて散布すると良いぞい[/chat]

    下の記事で紹介した「トップジンM」はベンレートと同じベンゾイミダゾール系の殺菌剤なので、同じローテーションで続けて使うと意味がなくなってしまいます。

    https://inakasensei.com/topjin

    殺菌剤の系統をしっかり理解して、そのローテーションの中にダコニールを入れることで、耐性菌を出現させにくくする効果が得られると思います。

    ダコニール1000の使用上の注意点と薬害について

    ダコニール1000

    基本的には薬害の出にくい殺菌剤ですが、日中の気温が高温になる時間帯の散布は薬害が出やすくなってしまうので注意が必要です。

    使用後に容器を洗うときにうっかり原液を指で触ってしまったのですが、少し刺すようなピリピリとした刺激を感じました。

    皮膚刺激性魚毒性があるので、使用時の服装と使用後の液体・空き容器の処理は使用方法にのっとって行うようにしてください。

    個人的な使用感について

    実生
    私が実際にダコニールを使うシーンで一番多いのが、塊根植物や多肉植物を種から育てるときです。

    一番の問題は「カビ」なのですが、果樹や農作物に散布するほど大量には使わないので、30mlのダコニールが最も使い勝手がいいと感じています。

    ベンレート水和剤も持っていますが、粉末を水に溶かすのが少しめんどくさいので、種を希釈液に浸して予防的な殺菌を行う場合はダコニールを使います。

    ただし、解説してきたようにカビが発生してしまった場合はダコニールでは効果がありませんので、ベンレートを散布、もしくは希釈液を腰水に加えて吸水させるようにしています。

    まとめ

    殺菌剤には「治療殺菌剤」と「予防殺菌剤」の2種類があり、ダコニール1000は予防薬剤であることが分かっていただけたと思います。

    既に作物や果樹、観葉植物、花きに病気が発生してしまっている場合は、ダコニールではなく治療殺菌剤である他の殺菌剤を使わなくてはいけません。

    ただし、その場合は耐性菌が出現しにくいように散布する必要があります。

    しっかりと散布スケジュールを組み、適応内で適切に使用する必要があるので、散布前に十分に用法を確認するようにしましょう!