こんにちは、田舎センセイです。
暖かい時期になると水のたまった場所に大量に発生する蚊柱(かばしら)ですが、その原因となるのが「ユスリカ」という小さな羽虫です。
「カ(蚊)」とついていますがハエの仲間で、飛び回っている成虫は吸血はおろか食事さえもせずに短い寿命を終えます。
大量に発生して人の頭上に集まる(高い所に集まる)習性から、虫が嫌いな人にとっては不快害虫として敬遠されていますが、実はアレルギーの原因になることもわかっているので不快なだけでは済ましたくない害虫なんです。
本記事では、ユスリカの種類や習性、駆除方法、アレルギーの原因となりやすい状況について詳しく解説いたします。
Contents
ユスリカの生態的特徴とは
・学名 :Chironomidae
・英名 :non-biting midges
・階級 :ハエ目(双翅目)ユスリカ科
・分布 :日本全国
・時期 :4月~10月
・見た目 :蚊によく似ている
・大きさ :1㎝弱
日本にいるユスリカは1200~2000種程度確認されていて、幼虫が水中で体を揺するように動かすことから、漢字で「揺蚊(ゆすりか)」と書きます。
ユスリカが発生しやすい場所
ユスリカの幼虫は生活排水などで汚れた川や水路、沼などの水の流れが滞りやすい水のたまった場所に多く発生します。
前述の通り日本だけでも1000種類以上いるとされるユスリカは、止水以外にも清流やおよそ他の水生生物が生息しないであろう酸性の湖にも生息しているなど環境適応力が群を抜いて高い昆虫なので、水が溜まっている場所であれば発生する可能性は大いにあります。
幼虫は底に溜まった汚泥などを食べて成長するので、水質改善の働きもになっていることが分かっています。
室内への侵入は「走光性」の習性が原因|換気扇やエアコン
ユスリカは外で成虫が発生した後、光に引き寄せられる「走光性」という習性のため室内への侵入が起きやすいです。
特に換気扇やエアコンなどを通じて侵入してくることが多く、食品を扱う施設においては異物混入などの原因になることがあり敬遠されています。
対策は後述しますが、侵入した成虫を駆除するのではなく、そもそも大量発生させないことがポイントです。
ユスリカは蚊とは違って「吸血しない」
ユスリカの見た目は蚊に似ているため、蚊と同じように吸血されることを恐れてしまう人がいますが、ユスリカは吸血しません。
口吻が退化しているので吸血することはなく、それどころか成虫は食事すらとることなく寿命を終えます。
ユスリカが発生する時期・季節
春先(4~5月)と秋(9~10月)に羽化した成虫が飛び回るのを見ることが増えます。
ただし、フユユスリカ属の秋の終わりから冬の期間に発生しやすい種類もいるので、まったく寒い時期に発生しないわけでもないのです。
ユスリカの種類の一例
セスジユスリカ | 体長約6mm、都市部に多い、黄緑色、初夏~秋 |
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ウスイロユスリカ | 体長約3~5mm、翅に雲のような模様、赤っぽい |
オオユスリカ | 体長6~12mm、びわこ虫とも呼ばれる |
アカムシユスリカ | 体長8~10mm、色は黒い、幼虫は釣り餌の赤虫につかわれる |
キソガワフユユスリカ | 体長4~5mm、冬に成虫が発生、綺麗な水を好む |
上記は数あるユスリカの中でもほんの一例にすぎませんが、日本で見かけたり大量発生することで話題になりやすい種類です。
都市部で暖かくなると大発生することが多いのが「セスジユスリカ」、「オオユスリカ」や「アカムシユスリカ」は観賞魚用の餌として幼虫が生餌や乾燥した状態で流通しています。
ユスリカによる実害:アレルギーの発症
私の息子はダニをはじめ様々なアレルギーを持っているため、アレルゲンとなる害虫については下の書籍を参考に注意しています。
実はダニに次いで虫による喘息アレルギーの発症が多いとされているのがユスリカだそうです。
この本を読むまでは、ユスリカによるアレルギーの発症原因は「室内に侵入したユスリカの死骸が乾燥して飛散し、それを吸引することによって発症する」とか「屋外に飛び回っている成虫を吸い込むことが原因」と書かれているものを多く目にしました。
しかし、この本によるとユスリカによるアレルギーの発症ルートは主に以下の2つ。
- 赤虫が魚の餌として使われること(職業性感作)
- 河川や水路などの水域から成虫が発生して口などに入って発症する(吸入性環境感作)
そして、ユスリカに対するアレルギーは主に漁業関係者など職業性暴露者がほとんどだそうです。
ユスリカの幼虫(アカムシ)が赤い色をしているのはヘモグロビンのせいで、そのヘモグロビンがユスリカによるアレルギーの原因物質であるため、アレルゲンとなるヘモグロビンの量は「幼虫>成虫」。つまりは成虫を吸い込むよりも幼虫に触れる方がアレルギーを発症しやすいそうです。
また、ユスリカによってはアレルギーの原因となるヘモグロビンを持たないものもいるので、全てのユスリカがアレルギーの原因になるわけではないとのこと。
ユスリカによる監査喘息は7~8月の夏に多く報告されています。
※私がメダカの餌に使っているキョーリンの乾燥アカムシ
ユスリカがアレルギーの原因になるとしても、外を飛び回る大量の成虫を気にしすぎることはないというのは少し安心できますね!
ユスリカの駆除方法と対策|効果的な殺虫剤
ユスリカの対策としては下の3つが挙げられます。
2.侵入防止対策
3.殺虫剤(昆虫成長抑制剤:IGR剤)の使用
「発生源の清掃」に関しては、側溝が発生源になっている場合は汚泥の清掃や、雑草・ゴミの除去によって多少はユスリカの発生を抑制することが可能ですが、物理的な負荷が大きいうえに確実にユスリカを発生させずに済むと言い切れません。
「侵入防止対策」に関しても、エアコンや換気扇等の外部とつながる穴を塞ぐわけにもいきませんし、明るい所に自然と集まるのでどこからともなく侵入してきます。洗濯物に付着して入りこむこともあるので厄介です。
一番確実なのが「そもそも成虫にさせない方法」、それがIGR剤です。
IGR剤(Insect Growth Regulator):昆虫成長抑制剤
実はIGR剤については以前、下の記事でかなり詳しく書いています。
IGR剤には、「キチンという昆虫の皮膚を形成する成分にのみ働きかけるもの」と「昆虫の脱皮や変態に関わるホルモンに作用するもの」の2種類があります。
これは昆虫特有の機能にのみ作用するので「人畜毒性が低い」のが一点。更に、成虫のみならず「幼虫や卵にも効果的で、尚且つ効果が長く次世代の発生抑制ができる」というのがもう一点。
デメリットとしては即効性が無く、卵や幼虫の段階で散布する必要があるため成虫が大量発生してしまった時点では効果が薄いことが挙げられます。予防的な使用が基本になります。
そもそも成虫の寿命は長くても2~3日ですし、人間に直接害をなす虫ではないのでユスリカの駆除の緊急性はさほど高くないように思います。
しかし、近くにアレルギーをお持ちの方がいる場合やユスリカの存在自体が不快な方は、幼虫の時点で前もって発生源を特定してIGR剤で対策をとると効果的だと思います。
ユスリカ退治に効果的なおすすめのIGR剤
各薬剤の特徴に関しては、商品ページか上記のリンクで紹介しているIGR剤についてのまとめ記事を参照ください。
まとめ
ユスリカはダニに次ぐアレルギー発生源となるアレルゲン害虫ですが、幼虫の方がアレルギー発生源として可能性が高いこと、予防的にIGR剤を使えば発生自体を抑えられることが分かりました。
普段から決まった場所でユスリカが発生している場合は、薬剤の使用も含めて検討してみてくださいね!
参考サイト・書籍
・日本防疫:ユスリカ(セスジユスリカ)の駆除方法と効果的な対策
・ユスリカ -その驚くべき適応力-
・アレルゲン害虫のはなし ―アレルギーを引き起こす虫たち―