殺虫剤を選ぶ時に、皆さんが願うのは「もう虫は見たくない!」という事ですよね。
お風呂やトイレなど、水回りで見かけることの多い「チョウバエ」なんかは、視界に数匹いれば、その幼虫や卵が見えないところに成虫の何倍もの数がいることを想定しなくてはいけません。
以前、チョウバエの生態をご紹介しましたが、目に見えている成虫をいくら駆除しても、次から次へと卵がかえり、幼虫が羽化するので、残念ながら「あなたの悩みは一向に解決しない」のです。
そのことを知っていると、成虫を数匹でも見つけると「そいつらを駆除してもまだどこかに潜んでいるのではないか?」と考えてしまって、夜眠れないこともあるでしょう。
このIGR剤をおすすめする一番の理由は、安全性でも即効性でもありません。(即効性はむしろ無い)
通常の殺虫剤は効果が成虫限定であることが多いのですが、このIGR剤は見えないところに潜んでいる「幼虫や卵にも効果がある」というのが私がおすすめする一番の理由なのです。
当サイトで「ノシメマダラメイガ」や「チョウバエ」の駆除剤として何度もおすすめをしているIGR剤ですが、では具体的にいったいどのような薬なのでしょうか?
- IGR剤は普通の殺虫剤と何が違うのか?
- 安全と言われるけど、なぜ安全と言えるのか?
- どのような点が害虫駆除に効果的なのか?
多くの疑問があると思いますので、ここで少し詳しくIGR剤についてご説明したいと思います。
Contents
IGR剤とはどんな薬剤?
IGR剤とは、Insect Growth Regulator (昆虫成長抑制剤)の頭文字を取ったもので、昆虫に特有の性質を抑制することで害虫を駆除する製剤です。
IGR剤には、大きく分けて2パターンの作用機構があります。
- 昆虫の表皮(キチン)の形成を妨げる:キチン合成阻害剤
- 脱皮や変態などを行う昆虫ホルモンを乱す:昆虫ホルモン剤
1.キチン合成阻害剤
昆虫の皮膚は、たんぱく質と「キチン」という成分が主成分として成り立っています。
キチン合成阻害効果のあるIGR剤は、この「キチン」が作られないようにしてしまうのです。
昆虫は、卵>幼虫>成虫と変態をしていくうえで、何度も脱皮などを繰り返しますが、キチンが作られないと、表皮が柔らかいままなので、脱皮の途中で皮膚が破れて体液が漏れるなどして死んでしまいます。
当然のことながら、この「キチン」という成分は人間や動物は持っていないので、この薬剤が人畜に対して安全であるという事はお分かりいただけると思います。
※口から直接体内に入ると有毒ですので飲んだりしないでくださいね。
2.昆虫ホルモン剤
ホルモンに関する製剤は、昆虫が脱皮や変態をする際に必要とする「脱皮ホルモン」と「幼若ホルモン」を乱して殺虫効果を発揮する薬剤です。
この薬剤でホルモンを乱された虫は、サナギから羽化する段階が上手くいかず死んでしまったり、過剰に脱皮を繰り返して成虫になれずに死んでしまったりします。
この製剤の効果は長く効くので、次世代の産卵率・孵化率の低下にも効果があります。
IGR剤がおすすめの理由
1.安全性が高い
従来の殺虫剤は、合成ピレスロイド剤や有機リン剤など「昆虫の神経系」に作用して殺虫効果を発揮しますが、このIGR剤は昆虫に特有の性質に働きかけるタイプの薬剤なのです。
合成ピレスロイド剤などは、人畜に対する毒性はとても弱く、人体に入っても途中で分解・代謝されるので安全性はとても優れているのですが、このIGR剤はそもそも人体にはない虫特有の仕組みに効果を発揮するという点で安全なのです。
前述した通り、「キチン」という昆虫の皮膚を形成する成分にのみ働きかけるものと、昆虫の「脱皮や変態に関わるホルモン」に作用するものがあり、どちらも人間には無い働きなので安全性が高いのです。
2.幼虫や卵にも効果がある
従来の殺虫剤では、卵や幼虫には効果が無いものが多かったため、目の前にいる成虫を駆除しても、排水溝内などで卵が孵化し、また数日後には成虫が現れるという繰り返しでした。
しかし、IGR剤は幼虫や卵にも効果があるため、幼虫や卵のある場所(害虫の発生源)が特定できていれば、駆除することが可能です。
3.効果が長く、次世代の発生抑制ができる
IGR剤の特徴として、「長く効く」という利点があります。
IGR剤によってホルモン異常をきたした成虫は、産卵数に減少がみられ、その卵の孵化率も減少します。
そのため、日に日に見かける成虫の数が減っていき、知らないうちに見えないところにいた卵がかえって大発生!などという事が起きる心配はなくなります。
ただ、キチン合成阻害剤は「脱皮時に死ぬ」という特性のため、即効性はありません。
予防的に使用することで、成虫を見かけなくなりますので、発生源を特定しておく必要性があるでしょう。
私がおすすめするチョウバエ・ユスリカ・ボウフラ駆除に最適なIGR剤はコレだ!
お風呂やトイレのチョウバエには「コバエ用ムース BIG」
【効果のある虫(の幼虫)】
- チョウバエ
- ショウジョウバエ
- ニセケバエ
- ハヤトビバエ
- クロコバエ
- トビムシ
- ハネカクシ
お風呂やトイレなど水回りでよく見かける「チョウバエ」(別名:便所バエ)は、薬剤の散布しにくい配管の中、排水溝、下水溝、浴槽下のスペースなどで発生することが多い虫です。
このコバエ用ムースBIGは、即効性の無いIGR剤に加えてピレスロイド系殺虫剤も混合してあるため、成虫を見かけたら通常のスプレー剤と同様に使用することが可能です。
また、薬剤の届きにくい配管や排水溝の中には、ムース状の薬剤を充満させることで気化した薬剤が奥まで浸透して幼虫や卵に行き渡ります。
注意点としては、可燃性のガスを使用しているので、使用中は窓を開けるなどして換気に十分注意する必要があります。3時間もすれば、充満させた薬剤が全ていきわたるでしょう。
チョウバエの発生しやすい時期に定期的に使用することで、お風呂場などで見かけることは無くなるでしょう。
【高評価のポイント】
これ一本で、家庭内のチョウバエ・コバエの駆除・予防の全てに対応できる!!
貯水槽や浄化槽、側溝のチョウバエやユスリカには「デミリン発泡錠」
【効果のある虫(の幼虫)】
- チョウバエ
- ショウジョウバエ
- ノミバエ
- ユスリカ
- ニセケバエ
貯水槽や側溝などの、水が沢山溜まっている場所には「デミリン発泡錠」がおすすめです。
紹介しているものは低毒性の脱皮抑制に効果を発揮するIGR剤なので、水が溜まっていて流れの少ない場所に錠剤を入れるだけで効果を発揮します。
目安としては、水量が30~60Lの場所で1錠投入します。
水が少ない場所には、同量の水に溶かして使用することもできます。
河川のボウフラやユスリカには「スミラブ粒剤「SES」」
【効果のある虫(の幼虫)】
- チョウバエ
- 蚊(ボウフラ)
- ユスリカ
- ウジ(ハエ)
スミラブ発泡錠剤SESは、ウジやボウフラの羽化を防止するIGR剤です。
哺乳動物や魚類に対する毒性が極めて低いため、沼や池、河川へも使用可能で、ユスリカなどが大量に発生している場所に有効です。
水量1トンに対して10グラムの使用でよく、臭いや色も無いので浄化槽にも使いやすいです。
徐放性粒剤のため1~3カ月の残効性があり、長く効くという特徴があります。
ゴミ溜めのウジ虫や、雨水升のボウフラは「スミラブS粒剤「SES」」
【効果のある虫(の幼虫)】
- チョウバエ
- 蚊(ボウフラ)
- ユスリカ
- ウジ(ハエ)
ひとつ前のスミラブ粒剤「SES」とは成分は全く同じですが、溶け方が違います。
このスミラブS粒剤は水に溶けやすいため、スミラブS粒剤を水に溶かした溶剤を、噴霧器などで蚊の発生源に噴霧することでも防除効果が発揮できるのが特徴です。
※別記事で「家庭でも使えるおすすめの噴霧器」をご紹介していますので、こちらもあわせてご覧ください。
ゴミ溜めや堆肥にわいたウジ虫や、雨水升のボウフラ駆除なども簡単に行えますし、噴霧器に希釈液を入れて、蚊の発生源となる藪に散布することで蚊の発生も抑えることが出来ます。
スミラブ(S)粒剤「SES」は、成虫のハエや蚊には効果が無い点に注意が必要です。
まとめ
今回は、IGR剤がチョウバエやユスリカ、ボウフラの駆除におすすめな理由をまとめました。
IGR剤は、チョウバエやユスリカのみならず、家の中で発生し、お米につくノシメマダラメイガという害虫にも効果があります。
昆虫特有の性質を利用した殺虫作用機構による安全面はもとより、幼虫や卵にまで効く点や次世代の虫の発生を予防する点などがおすすめの理由としてご紹介しました。
目に見える範囲での殺虫効果だけでは、毎回嫌な虫を見なくてはいけませんが、IGR剤なら、予防的に使用することで見えないところで成虫になれずに駆除されていきます。
これは虫嫌いな人にとっては、とても大きなメリットではないでしょうか。
コバエや蚊などを見ずに済むように駆除したいという人は、IGR剤を試してみることをおすすめします。
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