土壌改良資材の一つとしてホームセンターや園芸用品店で売っている「バーク堆肥」ですが、具体的に何からできていて、どのような効果があって、どのように使うと良いかご存知ですか?
バーク堆肥は、市場に出回っているものの中には粗悪なものも少なからずあるので、今回解説する内容をしっかり頭に入れて、バーク堆肥の品質を見分けられるようにしましょう!
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バーク堆肥の原料・主成分は?
バーク堆肥は、英語で「Composted bark」と言います。
バーク(Bark)というのは、「樹皮」の事で、針葉樹や広葉樹の皮を剥がして砕き、家畜糞や少量の化学肥料を混ぜて発酵を促進させます。それらを堆積することで、高温発酵が進み、市販されているバーク肥料の形になります。
腐葉土やバークチップとの違いは?
バーク堆肥とよく比べられるものに「腐葉土」や「バークチップ(Bark chips)」があります。
腐葉土は、葉を発酵させた土で原料が違いますし、バークチップは原料は同じですが、樹皮を砕いただけで発酵をしていないというのが大きな違いです。
そのため、バーク堆肥は腐葉土やバークチップの代わりになるかという質問がよくありますが、答えはNOです。
腐葉土は窒素分を多く含みますが、バーク堆肥に窒素はほとんど含まれていないので、土壌に与える影響や効果は明らかに異なります。
バークチップについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
バーク堆肥が分類される「特殊肥料」とは?
バーク堆肥は、「肥料取締法が定める”特殊肥料”に属する」と全国バーク堆肥工業会のウェブサイトに記載されています。
特殊肥料と聞くと”特別な肥料”であると思いがちですが、厳しい規格で管理されているのはどちらかというと「普通肥料」の方で、
特殊肥料は「規格化がしにくく、魚かすや米ぬかのように農家さんの経験や五感によって品質の認識が可能なもの」を指します。
簡単に言うと、
法律で厳しく管理して取り締まらなくても各自で品質の良し悪しは確認できるよね!っていう類の肥料を特殊肥料と位置付けています。
以下が、農林水産省HPにある肥料取締法についての資料にあった記述です。
特殊肥料とは、魚かすや米ぬかのような、農家の経験と五感により品質の識別できる単純な肥料や、堆肥のような、その価値や施用量が必ずしも主成分の含有量のみに依存しない肥料で、農林水産大臣が指定したものをいう。※参考:農林水産省-肥料取締法
つまり、市販されているバーク堆肥の成分や製法は様々で、品質にばらつきがあることが十分考えられるので、購入の際はしっかりと各自で確認する必要があるといえます。
いくつかのサイトで、「特殊肥料なので効果が保証されている」などと説明しているものがありましたが、そういう意味ではないので間違わないようにしてくださいね。
言うなれば、人ぷん尿、コーヒーかす、肉かす、草木灰なども特殊肥料に分類されています。
バーク堆肥の効果は?
バーク堆肥の特徴や効果にはどのようなものがあるかというと、下記の通りです。
- 保肥効果が高く長時間持続する
- 土壌改良効果が安定して長期間続く
- 保水力が高まる
- 土壌の微生物が多様化し、植物に好影響を与える
中でも、バーク堆肥は分解しにくい「リグニン」という有機物が多く含まれるため、発酵が進むにつれて微生物に分解されにくくなり、土壌の状態が長期間安定するようになります。
「分解しにくい」という特性から、多種多様な微生物がバーク堆肥を分解しようと集まってくるようになります。その結果、土壌の微生物がそのほかの特定の病原菌等の繁殖を抑えてくれるようになるので、土壌の状態が安定します。
他の土壌改良資材に比べて分解しにくいので、その状態が長期間持続するというのがバーク堆肥が好んで使われる理由です。
また、肥料をしっかりと保ち続ける効果も高く、バーク堆肥に含まれるフミン酸と呼ばれる腐植酸が、植物の根に栄養分(リン酸)を吸収しやすくさせる効果があるので、植物が元気に育つのです。
バーク堆肥の効果的な使い方とは?
バーク堆肥の効果的な使い方のポイントは、下記の4つです。
- 撒き過ぎない(土の容量の10~15%程度に留める)
- 乾燥させずに湿った状態のものを使う。多量にまく場合はしばらく水に浸す。
- 表層部に撒くようにする
- 窒素肥料(効果が緩やかなもの)を一緒に加える
バーク堆肥を利用するうえで効果的な使い方というのは、バーク堆肥のデメリットにも直結するものが多いです。
デメリットに関しては後述しますが、バーク堆肥の特徴の一つに「肥料成分がほとんどない」というのを既に説明しましたね。
この特徴からバーク堆肥を「撒きすぎてしまう人が多い」のですが、分解しにくく土壌の改善効果が長続きするという事は、土壌に馴染むまでにも時間がかかるという事です。
バーク堆肥が土壌に馴染むまでには、年単位の時間がかかると言われています。
乾燥したバーク堆肥の利用やバーク堆肥の撒き過ぎは、土壌が中々安定しない原因を作ってしまいかねないので注意が必要です。
「使いすぎない」というのは、効果的な使い方として重要なポイントです。
4つ目の、「窒素肥料を一緒に加える」というポイントについては、次の注意点・デメリットの項目でご説明します。
バーク堆肥を使う際の注意点とデメリットは?
バーク堆肥に関しては、注意点やデメリットがいくつかあるので項目ごとに解説します。
1.使い過ぎによる窒素飢餓が起きる可能性
先ほど、バーク堆肥は分解されにくいという特徴があるために、多種多様な微生物がやってくるとご説明しました。
バーク堆肥が分解しにくい理由に、バーク堆肥は炭素率(C/N比)が高い(炭素を多く含んでいる)というのが挙げられます。※炭素が多いと微生物は分解しにくい
これも後述しますが、NPO法人日本バーク堆肥協会が定めるバーク堆肥の品質基準のうち、炭素率は35以下という基準があります。
炭素率が35以下という事は、「炭素(C)が窒素(N)の35倍以下に抑えなさいよ」という事なのですが、炭素率が20を超えてくると微生物が分解する時に土中の窒素を利用してしまうので、炭素率の高いものが多量にあると植物が窒素飢餓に陥ってしまうのです。
「肥料成分が無いから・微生物が増えるから」と言ってバーク堆肥を多量に投入すると、植物に窒素が行き渡らなくなってしまうのです。
そのため、バーク堆肥の使用量は抑え、追加で効果が緩やかな窒素肥料を加えてやると、窒素飢餓の心配もなく微生物が活発にバーク堆肥を分解して豊かな土壌を育ててくれるのです。
バーク堆肥と合わせて投入する緩効性の肥料はこちらがおすすめです。
2.発酵が未熟なバーク堆肥は使わない
バーク堆肥を選ぶ際のポイントの一つに、「腐熟度未熟なものを避ける」という物があります。
発酵度合いが未熟なバーク堆肥には、フェノール酸という成長阻害物質が含まれていることが多いので注意が必要なのです。
フェノール酸は元々樹皮費含まれているものなのですが、完熟しているとこの成分は検出されません。未熟なバーク堆肥を多量に土に混ぜ込むと逆効果になることがあるので、商品選びには注意が必要です。
バーク堆肥の発酵度合いの見分け方とは?
- 色はできるだけ黒いもの
- 繊維が細かいもの(大きな破片が入っていないもの)
- アンモニア臭がしないもの
- パッケージに記載されているCECの値が70meq/100g以上のもの
売られているバーク堆肥が完全に発酵しているかどうかを見極めるポイントは、上記の4つです。
発酵度合いが進んでいるものは黒いですし、それぞれの繊維が比較的細かくなっています。
また、未熟な堆肥は鼻につくような刺激臭(アンモニア臭)がするので、臭いをかいでみることでも発酵度合いが分かります。
もしパッケージにCECという「陽イオン交換容量」の値が書いてあれば、70meq/100g以上の数値であれば、十分に腐熟が進んでいるという目安になりますのでチェックしましょう。
※土壌中の腐植が進むと、CECの数値が上昇するので腐植の進行度合いの目安になります。
バーク堆肥の品質基準
有機物の含有率(乾物) | 70%以上 |
炭素率[C/N比] | 35以下 |
陽イオン交換容量[CEC](乾物) | 70meq/100g以上 |
pH | 5.5 – 8 |
水分 | 55 – 65% |
幼植物試験の結果 | 生育阻害その他異常を認めない |
全窒素[N] | 1.2%以上(乾物) |
全リン酸[P2O5] | 0.5%以上(乾物) |
全カリ[K2O] | 0.3%以上(乾物) |
※バーク堆肥の品質基準【NPO法人日本バーク堆肥協会】を参照
上記の表は、NPO法人日本バーク堆肥協会の平成25年度のデータを基にした品質基準です。
表を見ると、半分以上を水分が占めていて、窒素・リン酸・カリの栄養分はほとんど含まれていないことが分かります。
市販されているバーク堆肥には、追肥されているものもあるのでしっかりとパッケージの成分を見て品質を判断するようにしましょう。
まとめ
今回は、バーク堆肥の使い方と効果についてご紹介いたしました。
バーク堆肥は、分解されにくく追肥効果に乏しいという事から土壌に加えすぎて失敗してしまう人が多いので、しっかりと分量を守って使う事で最大限効果を発揮することが出来ることを肝に銘じておきましょう。
バーク堆肥の活用のポイントは、
「撒き過ぎない&完全に腐熟したものを使う」
です。
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