作物を育てる前に「土づくり」をしっかりしてから野菜を育てようとは思っても、
「どうしたらいい土になるのかわからない!」
「出来れば安く良い土に仕上げたい!」
そう思いますよね。
酸性の雨が多い日本では、場所によっては土壌が酸性に傾き過ぎていたりで、作物をそのまま育てるには適さない場合があります。
そこで今回は、お米を収穫した後に取れる「籾殻(モミガラ)」を低温でいぶして炭化させた「籾殻くん炭」という土壌改良資材を使って、とても簡単に優れた土壌づくりをする方法をご紹介したいと思います。
Contents
籾殻くん炭とは?
籾殻くん炭は、お米を精米する時に取れる「外側の殻:籾殻」を、400℃以下の低温で長時間かけてじっくりと燻して炭化させたものです。
籾殻は炭化させてもタール分などを含まないので、とても安全に使えます。
さらに、籾殻が燃える際に炭化した籾殻に小さな気泡ができるので、そこが微生物の住みかとなり、資材として土壌に混ぜると菌などが増え植物が元気に育つようになります。
籾殻くん炭の成分
主成分 | 含有量 |
ケイ酸 | 50.36% |
炭素 | 40.49% |
窒素 | 0.42% |
水素 | 1.04% |
微量要素 | 含有量 |
カリウム | 11,000mg |
カルシウム | 5,700mg |
ナトリウム | 1700mg |
マンガン | 790mg |
鉄 | 190mg |
亜鉛 | 110mg |
銅 | 微量 |
カドミウム | 無し |
※引用:関西産業株式会社HPより 1995年3月 三重大学生物資源学部分析
籾殻くん炭の効果
1.土壌改良効果(保水性・排水性・通気性)UP
籾殻くん炭は、昔から土壌改良資材として使われてきました。
保水力が重量比680%でありながらも、排水性は高く土壌がふかふかになります。
また、燃焼時に無数に空いた穴が通気性もUPさせ、作物の根張りも良くしてくれます。
2.土壌のpH濃度(酸性)を中和する
籾殻くん炭のpHは8~10とアルカリ性のため、酸性土壌の中和に使用することが出来ます。
3.微生物を増殖させる
籾殻くん炭は、炭化により色が黒いので、土壌に撒いた場合に地表の温度を上げます。
地温上昇に加えて、通気性の良さからバチラス菌などの土壌菌が増えて活発に活動することで、作物の根が活性化して生育を助けます。
4.雑菌抑制(消臭効果)
籾殻くん炭内部に微生物が棲み付くことによって、生物膜層が張られ雑菌成分や汚水成分の分解・浄化に役立ちます。
炭化していて臭いも吸着するので、堆肥などを使った際の消臭効果もあります。
5.害虫の忌避効果
作物に付く害虫でとても厄介な「アブラムシ」は、この籾殻くん炭の臭いが嫌いなため、土壌表面に薄くまくことで害虫忌避効果もあります。
以前こちらの記事「アブラムシの駆除を無農薬で行う6つの方法」のうちの1つで、籾殻くん炭を使う方法をご紹介しました。
アブラムシの防除方法には様々ありますが、籾殻くん炭を使うと「安価」に「効果大」で、農薬を散布するのに比べて大幅な経費削減につながるのもメリットです。
籾殻くん炭のデメリットは?
籾殻くん炭が土壌成分を改良する点についてとてもメリットが多いことはわかりましたが、使い方によってはデメリットもあります。
たった一点注意すれば防げることなのですが、それは「くん炭を入れすぎない事」です。
籾殻くん炭は比重がとても軽いため、混ぜすぎると土が軽くなりすぎてしまって作物を支えきれなくなってしまいます。
また、籾殻くん炭のpHは8~10とアルカリ性なので、混ぜすぎると土壌のpHがアルカリ性に傾きすぎてしまい、作物に適した弱酸性の土壌からかけ離れてしまう恐れがあります。
よほど極端に使わなければ、土壌pHがアルカリ性になってしまう事はまずないと思われますが、使用量に注意が必要なのは間違いないでしょう。
土壌の酸性濃度の変化が気になる場合は、籾殻くん炭を撒く前に土壌診断を行うと安心です。
土壌の酸性濃度を測るおすすめの測定器は、別記事「土壌のphを測定する方法とおすすめのph測定器」でより詳しくご説明しています。
アルカリ性に傾き過ぎた土壌のphを酸性に戻すのは少々難しいので、撒き過ぎには注意が必要です。
しかし、万が一籾殻くん炭を撒きすぎて土壌が過度にアルカリ性に傾いてしまった場合は「土壌が酸性&アルカリ性だと何が悪い?phを下げる方法&上げる方法」でコントロールする方法をご紹介していますので、こちらもあわせてご覧いただくと良いでしょう。
籾殻くん炭の適切な使用量は?
では、どの程度籾殻くん炭を使用すればいいでしょうか?
籾殻くん炭使用量の目安は、1割程度が目安となります。
30リットルの土であれば、その内の3リットル未満が籾殻くん炭の使用目安になります。
固い土壌の質の変化を実感するには1割程度の使用が理想で、籾殻くん炭使用量が5%程度だと、まだ土壌の柔らかさの点では実感しにくいかもしれません。
坪単位での使用量は、土の量(深さ)によって変わってくるで、正確な数値は場所によって違いうのですが、
土の深さが10センチと仮定して計算すると
1坪(約3.3㎡)の土地で、10cmの深さの土がある場合は、容積は0.33㎥なので、土の量は約330ℓです。330ℓの1割なので、目安となる籾殻くん炭の使用量は33ℓ
となります。
しかし、実際は作物を育てるウネの部分に撒く場合が多いので、実際の使用量はもっと少なく、1坪あたり10リットルバケツで1杯分などで十分でしょう。
ネットでは、2リットル~50リットルなど大きな幅で販売されています。
【2リットルのおすすめ】
【40リットルのおすすめ】
籾殻くん炭の作り方
籾殻くん炭は、ご自身でも作ることが出来ます。
量をたくさん作る場合は、「くん炭器」を購入しましょう。
くん炭器は、「トタン製」と「ステンレス製」の2種類がありますが、トタンは錆びてしまって数回しか使えないことがあるので、ちょっとだけ高くなりますがステンレス製をおすすめします。
作る量が少量で良ければ、たき火を利用してる作ることもできます。
1.籾殻くん炭の材料
- よく乾燥したもみ殻
- 薪 / 新聞紙 / ワラ など
- ライター
- 水
- (くん炭器)
2.籾殻くん炭の作成手順
- 薪(木材)をくみ上げて火をつける
- 火が安定したら薪が隠れるくらいまで籾殻をかける
※燻炭機があれば、燻炭機を火にかぶせて、籾殻をくん炭器の周りを覆うようにかける - 表面が黒く炭化してきたら、下の方から籾殻を混ぜていく
- 全て炭化したら、籾殻を平らにして広げ、水をかけて冷ます
- しっかりと乾燥させる
作り方は凄くシンプルですが、いくつか注意点があります。
- 炭化が始まるまでかなりの時間がかかるので、時間に余裕をもって作業をする
- 炭化したもみ殻は高温なので、長靴なども溶かします。やけどに注意!
- 水をかけて冷ます時に、しっかり水をかけないと再発火したり灰になってしまうので、多すぎると思うくらい水をかける
- 再発火を防ぐために、完成した籾殻くん炭は湿ったままビニールの袋に入れて保存する
小さなたき火を覆うくらいの籾殻の場合は、燻炭を作るまでに約半日。
燻炭機を使用して大量の籾殻くん炭を作る場合は、30~40時間くらいかかることもあります。
一度火をつけたらその場を離れられないので、しっかり予定を組んで行いましょう。
また、保管の際は紙袋はNGです。万が一乾燥が不十分だった場合に、再発火して大変なことになってしまいます。
湿ったまま、ビニール製の袋に入れるようにしましょう!
籾殻くん炭の使い方
完成した籾殻くん炭の使い方は下記のように様々です。
- 定植穴に入れる
- 土全体に混ぜ込む
- 株元に薄く(0.5cm~1cm)撒く
籾殻くん炭は窒素成分を含まないため、他の肥料と化学反応を起こす恐れもありませんし、土壌のチッソ濃度をあげてしまう事によって害虫が寄ってくる心配もありません。
特に、アブラムシは籾殻くん炭の臭いが苦手なので、アブラムシ忌避を目的として籾殻くん炭を使う場合は、株元に薄くまくという方法が良いでしょう。表面に撒くという方法は、地表を黒い色のくん炭が覆う事で、太陽熱を吸収し地表温度を上げ、土中の微生物の活性化にも効果もあります。
また、土壌成分の改良や保水性の確保などを目的とする場合は、土に混ぜ込むか定植穴に入れる方法をおすすめします。
まとめ
ホームセンターでも手軽に購入できる「籾殻くん炭」の効果と使い方、作り方についてご紹介いたしました。
お米を取る際に「産業廃棄物」として出るもみ殻が、くん炭にすることでとても優秀な土壌改良資材に生まれ変わるのが驚きです。
私は害虫駆除の視点での籾殻くん炭の効能に注目していましたが、土壌成分を豊かにするという点でも素晴らしいメリットがあることが分かりました。
畑の害虫や作物の生育不足でお悩みの方は、籾殻くん炭を試してみたはいかがでしょうか?
また、酸性土壌の中和には「石灰」の利用も効果的です。
こちらの「苦土石灰|読み方・成分・効果・メリットとデメリットを徹底解説!」の記事で、石灰による土壌改良効果をご紹介していますので、あわせてご覧ください。
【土壌改良資材についての特徴や使い方まとめ記事】