苦土石灰|読み方・成分・効果・メリットとデメリットを徹底解説!

苦土石灰

雨の多い日本では、酸性に傾き過ぎた土壌成分を中和・改善させるための土壌改良剤が数多くあります。

その中でも土壌成分の改良効果が高いものに「石灰」があります。

畑や一般のご家庭の家庭菜園などでも土壌成分が酸性に傾きすぎていることがあり、石灰を活用することで作物を丈夫に育てることが可能となるので、石灰の購入を検討している方も多いでしょう。

しかし、ホームセンターに行くと、苦土石灰消石灰有機石灰など、「〇〇石灰」と名の付く商品がたくさん並んでいて、違いがよくわかりませんよね。

今回は、その中でも特に需要の高い「苦土石灰」を中心に、その他の石灰と比較しながら徹底的に解説していきます!


まず読み方からして分からない・・・

安心せい!読み方から全て解説するぞい!

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています

苦土石灰の読み方は?

苦土石灰

苦土石灰は、「くどせっかい」と読みます。

苦度(くど)とは「マグネシウム」の事で、この後の苦土石灰の成分でも書きますが、マグネシウムが含まれた石灰を「苦土石灰」と呼びます。

苦土石灰は、地域によっては様々な呼び名があり、

  • 苦土カル
  • 苦土タンカル
  • 苦土カルシウム
  • 苦灰石
  • 白雲石
  • 苦土炭酸カルシウム
  • 炭酸苦土石灰
  • 苦土炭酸石灰

など、これら全て「苦土石灰」の事です。

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苦土石灰の成分とは?

ドロマイト

1.苦土石灰の成分

苦土石灰は、前述のように「マグネシウム」が含まれた石灰です。

原料は「ドロマイト」(Ca・Mg(CO3)2という鉱物を熱して砕いて作られています。

石灰は炭酸カルシウムですので、
「炭酸カルシウム+マグネシウム」が苦土石灰という事になります。

前述のように、苦土石灰に様々な名称(苦土タンカルや炭酸苦土石灰)があるのも、石灰が炭酸カルシウムであることに関連してついた名前であることが想像できますね。

成分上の特徴は、カルシウム・マグネシウム・アルカリ成分です。

2.消石灰の成分

消石灰は、生石灰に水を加えて反応させ不活性化させたものです。

学校の校庭にライン引きで使われていたのもこの消石灰です。

消石灰も苦土石灰同様にカルシウム成分を含み、アルカリ成分がとても強い(pH12)のが特徴です。

主成分は、カルシウム・アルカリ成分です。

3.有機石灰の成分

貝殻

有機石灰は、ホタテやカキなどの貝殻や、卵の殻などを砕いて作られてた動物性由来の石灰です。

主成分は、カルシウム・アルカリ成分です。

苦土石灰・消石灰・有機石灰の成分まとめ

消石灰や有機石灰との成分の違いは下記の通りです。

苦土石灰炭酸カルシウム + マグネシウム
消石灰炭酸カルシウム
有機石灰炭酸カルシウム

苦土石灰の効果とメリットは?

1.酸性に傾いた土壌成分の中和

苦土石灰を畑に撒くと、酸性に傾いた土壌のPHを中和させ、アルカリ性側に傾かせることが出来ます。

苦土石灰は、消石灰(pH12)に比べるとアルカリ成分の含有量は少ないので、消石灰に比べると土壌成分の変化の度合いは穏やかです。

一方で、有機石灰は苦土石灰よりもさらにアルカリ成分は少ないので、より穏やかに土壌成分を変化させることが出来ます。

石灰散布以外の土壌成分の調整方法は「土壌が酸性&アルカリ性だと何が悪い?phを下げる方法&上げる方法」で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。

2.カルシウムとマグネシウムの補給

石灰の散布のもう一つの目的として、土への栄養(カルシウム)補給が挙げられます。

石灰をまくことで、土にカルシウムを補給し、植物の根を丈夫にする効果が期待できます。

加えて、苦土(マグネシウム)が含まれているので、石灰によるカルシウムの補給ができるだけでなく、同時にマグネシウムの補給が可能になります。

マグネシウムは、植物が葉緑素を作るために必要な成分で、マグネシウムが不足すると植物の下葉が黄色っぽく変色してきてしまいます。

苦土石灰を使うメリットは、

土壌を中和するのと同時に、カルシウム&マグネシウムの栄養補給が可能である点

と言えるでしょう。

苦土石灰の代用品として「草木灰」を使う事も可能ですが、草木灰は主成分がカリウムなので、中和目的での利用ではカリが過剰になってしまい、植物がマグネシウムやカルシウムの吸収阻害が起きてしまいます。

栄養補給をしつつ土壌を中和する場合は、草木灰と苦土石灰を併用してバランスをとる方法もおすすめです。

石灰を散布するメリットのまとめ

苦土石灰土壌成分の中和(pH上昇)、カルシウム補給、マグネシウム補給
消石灰土壌成分の中和(急激なpHの上昇)、カルシウム補給
有機石灰土壌成分の中和(緩やかなpHの上昇)、カルシウム補給、微生物の活性化
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苦土石灰のデメリットと注意点は?

1.撒き過ぎによるヨウ素欠乏症とpHの過上昇

苦土石灰は、必要量以上に土に散布すると、土壌のpHがアルカリ性に傾きすぎるだけでなく、鉄やマンガンなどのヨウ素欠乏症になる恐れがあります。

苦土石灰は、カルシウムやマグネシウムの栄養補給だけでなく、土壌の酸性濃度を中和する働きも併せ持つので、苦土石灰を多量に散布することで土壌がアルカリ性に傾きすぎ、かえって作物を弱らせてしまう可能性もあります。

苦土石灰を撒く前に、土壌診断を行う事が大切です。

土壌診断を行う時に使うおすすめの機器については「土壌のphを測定する方法とおすすめのph測定器」の記事でご紹介しています。

石灰の過剰散布によるデメリットは下記の通りです。

苦土石灰アルカリ性になりすぎる、ヨウ素欠乏症
消石灰アルカリ性になりすぎる、土が固くなり根の成長を阻害
有機石灰過剰散布によるデメリットは特に無し

2.化学肥料を入れるタイミングに注意

苦土石灰や消石灰などの散布と同時に化学肥料を撒くと、肥料に含まれる窒素成分と化学反応を起こしてしまい、アンモニアガスが発生してしまったり、不溶性のリン酸カルシウムに変化してしまって肥料の効果が減弱してしまうので注意が必要です。

苦土石灰や消石灰使用時には、必ず1週間以上間隔をあけてから肥料を混ぜるようにしましょう。

3.種や苗をすぐ植えられない

苦土石灰や消石灰を土に撒くことで土壌成分に大きな変化が起きます(酸性の中和)。

そのため、土壌に石灰を撒いたのと同時に播種や苗の植え付けをしない方が良いとされています。(※ただし、苦土石灰の商品によっては散布と同時の播種が可能なものもありますし、全く発芽しないという訳ではありません)

消石灰であれば、散布から10日~14日後、苦土石灰であれば、(できれば)1週間程度間隔をあけてからの播種が推奨されています。

苦土石灰1週間程度あけてからの播種が推奨
消石灰10日~14日あけてからの播種が推奨
有機石灰土壌散布直後の播種が可能

4.植物ごとの特徴の把握

ブルーベリーの木

植物には生育に適した土壌のph濃度があり、中にはブルーベリーやスイカ、栗のように酸性の土壌を好む作物もあります。

そのため、良く調べずに石灰を撒きすぎると、かえって作物を弱らせてしまう事になりかねません。

石灰を撒く前に、必ず育てたい野菜の生育に適した土壌のpH濃度を調べるようにしましょう。

苦土石灰の撒き方と使用量の適量は?

苦土石灰には、粉状のものと粒状のものがあります。

土の上にパラパラと撒く場合は、風で飛ばされない粒状タイプの苦土石灰を選ぶと良いでしょう。

使用量の目安としては、1㎡に100g、およそ片手で一握り分の苦土石灰をパラパラ撒くような量で、土壌のpHが0.5上昇(アルカリ性に傾く)します

ただし、土壌の性質が火山灰土であるなど、土の性質によっては散布量を減らす必要があります(火山灰土の場合は、苦土石灰散布量は50~60%程度に留める)

また、成分特徴の項目でもご説明しましたが、苦土石灰、消石灰、有機石灰では、アルカリ成分の含有量(強さ)が違うので、消石灰を撒く場合は、前述した使用量の目安の8割程度の量で充分でしょう。

【アルカリ成分の含有量(強さ)】

有機石灰 < 苦土石灰 < 消石灰

苦土石灰の価格は?

価格の比較

ホームセンターなどに行くと、各種の石灰が並んでいますが、最も安いのが消石灰、次に苦土石灰、そして最も高いのが有機石灰となっていることが一般的です。

消石灰と苦土石灰の価格差はさほどなく、20Kg700~800円位で購入可能ですが、有機石灰は20Kg1000円以上するものが多いでしょう。

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苦土石灰・消石灰・有機石灰の違いとは?

苦土石灰消石灰有機石灰
原料ドロマイト石炭石貝や卵の殻
価格やや安い安い少し高い
成分カルシウム
マグネシウム
カルシウムカルシウム
アルカリ成分普通強い弱い
撒き過ぎによる注意点ヨウ素欠乏症
土壌の過アルカリ化
土が固まる
土壌の過アルカリ化
特になし
有機質の追加効果無し無し有り

 


この3種類の比較表だね!

これらの特性から、どのような場合にどの石灰を撒くのがいいのかまとめてみるぞい!

まとめ

【苦土石灰】

  •  土壌への栄養補給が主目的。
  • 極端な酸性土壌の改善には向かない。
  • 追肥効果も得られるので一般家庭の菜園などに向いている。

【消石灰】

  • 酸性に傾いた土壌の中和が主目的。
  • 追肥効果はほとんどなく、散布量によっては過度にアルカリ性に傾いたり、土が固くなる可能性もあるので素人には扱いにくい。
  • 初めて播種する畑などに使う事が多い。

【有機石灰】

  • カルシウム成分の追加や、有機質の追加による微生物の活性化などが主目的。
  • 土壌を中和する力は弱く、比較的高価であることから土壌成分の改善には向かない。
  • 散布後すぐの播種や苗の植え付けも可能で扱いやすい。

今回は、苦土石灰を中心に、消石灰・有機石灰の効果・成分・使用上の注意点などをご紹介しました。

土壌成分の改良効果のあるものについては、「籾殻(もみがら)くん炭」もおすすめです。

以前こちら「籾殻くん炭の使い方と作り方|害虫の忌避にも効果あり!」で詳しく解説しましたが、害虫の忌避効果もあり、苦土石灰と同程度の土壌成分の中和効果もあるので、アブラムシやアザミウマなどの害虫にお困りの場合は籾殻くん炭を試してみるのも良いでしょう。

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