野菜や果物の甘さを測るには「糖度計」があると便利です。
しかし、ホームセンターなどで取り扱いがないことも多く、購入する際にどのようなポイントに注目して選べばいいのか分からないという話をよく聞きます。
この記事では、糖度計の種類と使い方の解説と、価格帯や仕組みの違いによるおすすめの糖度計をご紹介いたします。
Contents
糖度計とは?
糖度計とは、果物や野菜に含まれる糖分の含有量を測定する器械を言います。
一般的に、果汁など糖度を測定したい作物や果実のしぼり汁を機器にたらして測定するという方法を想像されるかと思いますが、果実の外皮に光を照射するだけで測定することができる「非破壊式」の糖度計もあります。
「糖度が高い=甘い」と考えがちですが、レモンやグレープフルーツなどの酸味も併せ持つ果実などの場合は、計測値としての糖度が高くても実際に口にしたときに甘いと感じるかどうかは必ずしも一致しません。
また、詳しくは後述しますが、糖度計(屈折計)で算出されるBrix値は、果汁などほとんどが糖分で構成されるものは「Brix値=糖度」と言えますが、ジャムやラーメンのスープなどを計測する場合は「Brix値=濃度」として考えます。
一言で「糖度計」と言っても、測定する仕組みによっては「屈折計」「濃度計」などと呼ぶこともあります。
Brix値とは?20℃におけるショ糖溶液の濃度を重量%で示したもの
糖度計の種類と特徴【おすすめの糖度計】
1.アナログ式
別名「屈折計」とも呼ばれるタイプの糖度計で、果汁などを機器にたらしてから窓をのぞき込んで色の境界線を見ることで数値(Brix値)を計測します。
手持ちタイプとされているもののほとんどがこのアナログ式の商品で、安価なものが多く「ひとまず糖度を計測するものが欲しい!」と考える方におすすめです。
上記でご紹介しているものは、特に価格が安くコスパに優れた糖度計ですのでお勧めです。
・価格が安いものが多い
・電池が不要・電子機器的な故障がない
・必要な試液(果汁)が1~2滴程度と少なくて良い
・定期的に数値の校正が必要
・メモリを読むのに慣れが必要
2.デジタル式
a.ポケット糖度計(アタゴ社製)
果汁をたらすと自動で数値化されるタイプの糖度計が「デジタル式」ですが、その中でも小型で持ち運びに便利なものが「ポケットデジタル糖度計」です。
デジタル糖度計で有名なのがアタゴ社の糖度計です。
アナログ式に比べて高価になりますが、測定範囲の広さによっては手ごろな商品もあるので、簡便さとコスパの良さを求めている方にお勧めです。
一方で、アナログ式に比べ試液の量がやや多く必要なため、水分含有量が低い野菜(カボチャ・イモ類)などの糖度を測定したい場合は、測定に必要な量の試液の確保が難しいことがあります。
・数値がわかりやすい
・自動温度補正が搭載されているものが多く、熱い液体も測定可能
・アナログ式に比べると試液が多く必要
・電池交換が必要
・電子機器的な故障の可能性がある
・価格帯に幅があり、高価な物も多い
b.ペンタイプ糖度計(アタゴ社製)
多くの糖度計が試液を計器に垂らして使用するのに対し、ペンタイプの糖度計は計測したい液体に計器を浸けて測定することができます。
ジャムなどには計器を挿して使えるので、糖度を測定しながら調節することができますし、温度も100℃まで対応可能なのでスープやカレーなどが熱いままでも測定が可能です。
また、液体をかき混ぜながら測定することが可能なため、濃度ムラができやすい試液に対しても使いやすいのが特徴です。
皿に垂らした試液にチョンと触れさせることで測定も可能なので、必ずしも大量の試液が必要なわけではなく、使用範囲が広いというメリットがあります。
・様々な測定方法を選ぶことができる(挿す・浸す・つける)
・濃度ムラがある液体でも測定しやすい
・使用しながら濃度を調節することができる
・比較的高温の液体も計測可能
・比較的高価である
3.非破壊式
非破壊式の糖度計は、その名の通り試液を採取するために果物や野菜を切ったり絞ったりすることなく計測できるタイプの糖度計です。
一昔前なら、一般農家では手が出ないほど高価でしたが、最近では比較的お手頃価格の商品も出てきています。
メリットは何と言っても作物を無駄にすることなく測定が可能な点や、木になったままの果実の糖度も測定できることでしょう。
一方で、デメリットも意外に多く、価格が高いことは勿論ですが、光を照射して測定するため、計測場所の環境要因や作物の種類(皮が厚い、表面の凹凸が多い、厚さが薄い)などによっては安定した測定が難しく、使用に向かない作物もあります。
上で紹介している機器は「ぶどう用」の非破壊糖度計で、このほかにも「リンゴ」「モモ」「ナシ」などがあります。
・果物や野菜を無駄にしなくて良い
・収穫前の果物や野菜の糖度を測定することができる
・測定場所の温度と光量の影響を受けやすい
・値段がとにかく高い
・皮の厚いミカンや、凹凸の多いイチゴ、薄い葉物野菜の測定には向かない
>・安定した糖度測定にはコツが必要
糖度計の仕組み(原理)
屈折率を用いた測定
試液(果汁など)を用いた測定の多くは、光の屈折率を用いて糖度(密度)を測定しています。
通常、光は水や空気中をまっすぐ進みますが、液体に糖分が溶け込んでいると透過した光が屈折することから、糖度として計測できるように作られているのが屈折糖度計です。
この場合、果汁など試液に溶けているのがほぼ糖分である場合は「糖度」として計測しますが、塩分やたんぱく質なども屈折率を変化させるので、塩分が含まれている「ラーメンのスープ」はもちろん、ゲル化剤としてペクチンを含むことが多い「ジャム」の計測値(Brix値)は、糖度ではなく「濃度」として計測される点に注意が必要です。
光(近赤外光)を用いた測定
近赤外光は、人間には感知できない光(800~2500nm)で、特定の周期の波を持ったいわゆる電磁波の一種です。
ものすごく簡単に言ってしまえば、この近赤外光を果物に照射すると、対象物の濃度によって特定の周期の光のみが吸収されるため、その吸収度合いによって濃度を測定するという仕組みになっています。
光の吸収度合いによる測定のため、測定環境の影響や対象物の形状による計測の可否制限が多く、安定した測定ができるようになるにはコツが必要なことが多いです。
糖度計を購入する時にチェックすべきポイント
2.計測可能温度
3.糖度計の計測タイプ(アナログ式・デジタル式(ポケット&ペン)・非破壊式)
4.測定精度
糖度計を購入する際に「自分がどのような状況で使用するのか」を念頭に置いて選ぶ必要があります。
糖度計の計測タイプについては前述の通りですので、自分の使用シーンに合わせたものを購入する必要がありますが、一番気を付けなくてはいけないのが「Brix値の計測可能範囲」です。
同じメーカーの糖度計でも、糖度が0%~40%まで測定できるものから、40%~80%まで測れるものなど様々です。
ご自身がどのような作物・果物の糖度を測定したいかによって購入すべき糖度計が違いますので注意しましょう!
果物・野菜・ジャム・蜂蜜の糖度の目安
果物 | 糖度 |
みかん | 10~14% |
グレープフルーツ | 10~11% |
イチゴ | 8~9% |
カキ | 15~18% |
スイカ | 10~13% |
メロン | 13~18% |
リンゴ | 11~17% |
なし | 11~16% |
ブドウ | 10~20% |
野菜 | |
大根 | 3~4% |
茄子 | 4~5% |
人参 | 5~7% |
玉ねぎ | 7~8% |
じゃがいも | 4~6% |
サツマイモ | 8~12% |
とうもろこし | 14~17% |
カボチャ | 19~20% |
加工品 | |
ジャム | 40~65% |
蜂蜜 | 70~90% |
※数値参考:ATAGO
糖度がさほど高くない野菜を計測する場合と、ジャムやはちみつの糖度を計測する場合では選ぶべき糖度計が違います。
目安としては、果物&野菜は20%以下、ジャムは40%~70%、はちみつは70%以上を測れる糖度計である必要があります。
野菜や果実の糖度は、当然計測する時期によって熟度が違うので幅がありますし、特にブドウなどは品種によっても大きく糖度が違います。
上記の表でご紹介している糖度の幅をしっかりとカバーできる糖度計を選ぶと安心でしょう。
また、日本で販売されているジャムは低糖度ジャムと高糖度ジャムがあり、多くが低糖度(約40%)なので、40%付近をカバーできる糖度計であると良いでしょう。
ご自身で糖度を調節しながらジャムを作りたい場合は、100℃近辺まで高温の液体でも計測できるものを選ぶ必要がありますので注意です。
蜂蜜は糖度が78%を下回るとアルコール発酵が進み常温保存ができないため、販売されている蜂蜜の糖度を計測する場合は70%以上が計測可能なら良いですが、ご自身で養蜂をされている場合は50%~90%くらいの範囲をカバーできる商品が良いでしょう。
・ジャムは、40%~70%が測れる糖度計
・はちみつは、50~90%が測れる糖度計
まとめ
糖度計は計測方法から価格帯まで様々ですが、高価だからいい糖度計とは限りません。
ご自身の糖度計の使用頻度や必要とする測定精度・測定範囲に照らし合わせてみて、最も適した商品を選ぶようにしましょう!