虫刺されは、屋外でも室内でも条件によっては1年中起きうるトラブルです。
虫刺されの原因となる虫の種類によっては、数時間でかゆみが引くものもあれば、2~3日経っても依然かゆいものもあります。
そんな時に必要なのが「虫刺されの薬」ですが、「かゆみ止めの薬はどれも同じ」と、なんとなく選んでしまっていませんか?
実は、症状の程度や刺された部位、使うのが子供か大人か等によって選ぶべき薬が違う事をご存知の無い方も少なくありません。
今回は、虫刺されによる肌・皮膚のかゆみに効く薬のご紹介と、状況別の薬の選び方についてご紹介します。
前職が製薬関係の仕事だった私が、できるだけ簡単にお薬の特徴についても解説しますので、ご安心して最後までお付き合いください。
もし虫刺されの原因がどの虫によるものかわからない場合は、下記の記事もあわせてご覧ください!
Contents
虫刺されの薬を選ぶ時の注意点
まず初めに虫刺されの薬を選ぶ時にはいくつか注意点があります。
- ステロイドが入っているかどうか
- ステロイドが入っている薬の場合は、ステロイドの強さのレベルはどうか
- 薬を使いたい部位、使いたい相手(小児 or 大人)はどうか
虫刺され用の薬と言えど、立派な薬なので使用上の注意があります。
一番大きなポイントとしては「ステロイドの有無」と「使用する場所」及び「使用する人の年齢」です。
これらのポイントがどのように薬選びに関係してくるのかを、次の項目で解説したいと思います。
虫刺されによる肌・皮膚のかゆみに効く薬の選び方
1.虫刺されの薬を「ステロイド使用・非使用」で選ぶ
虫刺されの薬の成分には大きく分けて2つの種類があります。
- 抗ヒスタミン剤:かゆみ成分を押さえる抗ヒスタミンが主成分。炎症を抑える効果はない
- ステロイド剤 :効果が強く、かゆみと共に皮膚の炎症も抑えてくれるが副作用がある
抗ヒスタミン剤が主成分の虫刺されの薬は、かゆみを沈めてくれる効果がありますが、化膿やひどい腫れを治してくれる効果はありません。反面、使用期間や使用部位等の使用上の注意が少ないのが特徴です。
一方で、ステロイドが入っている虫刺され薬は、かゆみと共に皮膚の炎症を抑えてくれるので、虫刺されの場所が酷く腫れてしまっている場合や、水ぶくれが破れて化膿してしまっている場合、無意識でかき壊してしまうためにできるだけ早く治してしまい場合等に向いています。
ただしステロイドが入っている虫刺されの薬には「使用期間」と「使用する部位」に関する注意書きが必ずあります。
ステロイド非使用の虫刺され薬【ムヒS】
ムヒSは、ステロイド非使用のかゆみ止めです。
虫刺され後の皮膚の状態が「かゆみのみ」の場合は、ステロイド非使用の薬を選びましょう。
目や口に入らないようにすれば、顔への使用に制限は特になく、生後3か月以上(使用開始目安年齢)のお子さんにも使用が可能です。
ただし、
- 肌に腫れがある場合
- 化膿している場合
- かき壊して傷がある場合
- 生後3カ月未満のお子さんの場合
などでは、効果が不十分だったり、強すぎてしまう可能性があるので使用しない方が良いでしょう。
ステロイド使用の虫刺され薬【ムヒアルファEX】
ムヒアルファEXは、ステロイドを使用しているかゆみ止めの薬ですので、かゆみを抑えると同時に皮膚の炎症も治します。
皮膚がかぶれてしまっていたり、湿疹が広範囲に広がってしまったり、虫刺され痕が炎症を起こして腫れてしまっている場合にはこちらが良いでしょう。
しかし、ステロイドが入っていて効果が強い分、下記の注意点があります。
- 化膿している部分には使用しない
- 顔には広範囲に使用しない
- 長期間使用しない(ムヒアルファEXの場合、顔は2週間以内、その他の部位は4週間以内)
- 小児の使用開始目安は生後6カ月以上
以下は、体の部位別のステロイド外用薬の吸収率の違いです。
腕の内側(基準値) | 1 |
頭皮 | 3.5倍 |
おでこ | 6.5倍 |
ほっぺ | 13倍 |
頸部(のど・首) | 6倍 |
脇の下 | 3.6倍 |
背中 | 1.7倍 |
手のひら | 0.8倍 |
陰部 | 42倍 |
足首 | 0.4倍 |
足の裏 | 0.1倍 |
※参考:maruho
上の表を見ると、陰部・ほっぺ・おでこ・頸部(のど・首)のステロイド吸収率が特に高いことがわかります。
ステロイドに対する過剰な心配は不要で、適切に使えば怖い薬ではないのですが、ステロイドが含まれている虫刺されの薬を使う場合は、虫刺されの部位が上記のステロイドの吸収率が特に高い部位でないことを確認すると良いでしょう。
また、普通の虫刺されがステロイド含有のかゆみ止めの薬で2週間以上かかっても完治しないことは考えられないので、治らない場合は自分で治療をする範疇を超えた症状である可能性が高いです。すぐに病院に行くようにしましょう。
ステロイドの強さが心配の時は【ムヒアルファSⅡ】
こちらのムヒアルファSⅡも、前述のムヒアルファEXと同様にステロイドを配合したかゆみ止めの薬ですが、何が違うかというと「ステロイドの強さ」が違います。
ステロイドには強さのレベルが5段階あります。
- Ⅰ群:Strongest(最強)
- Ⅱ群:Very Strong(とても強い)
- Ⅲ群:Strong(強い)
- Ⅳ群:Medium(普通) ← ムヒアルファEX
- Ⅴ群:Weak(弱い) ← ムヒアルファSⅡ
その内、先ほど紹介した「ムヒアルファEX」に含まれるステロイドは、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(PVA)というもので、上から4番目のランク「Medium(普通)」です。
一方で、この「ムヒアルファSⅡ」のステロイドは、デキサメタゾン酢酸エステルというもので、一番弱い「Weak(弱い)」のランクです。
また、子供へのステロイドの使用の目安については、下記のような基準であることが多いようですので注意するようにしましょう。
お子様にもステロイド剤を使っても良いかですが、目安(市販薬の場合)としては、生後6ヵ月〜1歳の乳児は「Weak」 、1〜7歳の幼児は「Medium」 、7〜15歳の小児と成人は「Strong」 です。生後6ヵ月未満は使用不可、妊婦または妊娠していると思われる人は、使用前に薬剤師または登録販売者に相談となっています。 – HealthPress
2.虫刺されの薬を「子供(赤ちゃん・乳幼児)」にも使えるかどうかで選ぶ
赤ちゃんにも安心して使える【ムヒ・ベビー】
虫に刺されたのがご自身ではなくお子さん(特に1歳未満の乳幼児)の場合は、月齢によって使用可能なものとそうでないものがあります。
最も低い月齢(生後一か月~)から使えるのが、この「ムヒ・ベビー」です。
メントール成分も無く、無着色・無香料で顔に使用することもできるので、万が一赤ちゃんが虫に刺されてしまった場合は、ムヒ・ベビーを使うと良いでしょう。
ステロイドは入っていないので、陰部のオムツかぶれにも使用することができます。
掻きこわし予防にもなる【ムヒパッチA】
虫刺されを悪化させてしまったり治りを遅くさせてしまう一番の原因が「掻きこわし」です。
寝ている時や無意識のうちに患部を掻きむしってしまって、症状を悪化させてしまう事が多いのも子供の虫刺されの特徴です。
パッチ剤(肌に貼るタイプ)であれば、掻きこわしを予防することができるので便利です。
対象年齢は1歳以上で、虫刺されの場所が顔以外で、傷や水膨れが無い場合はムヒパッチがおすすめです。
OTC医薬品って何?
虫刺されの薬や風邪薬等を調べていると出てくる「OTC医薬品」という言葉ですが、OTCとは「Over the Counter」の頭文字をとったもので、薬局などのカウンター越しに対面販売で購入できる「一般用医薬品」を指しています。
今回ご紹介している「ムヒ」などもOTC医薬品ですね。
第2類医薬品と第3類医薬品の違いは?
また、今回ご紹介した虫刺されの薬(各種ムヒ)ですが、それぞれ「第2類医薬品」と「第3類医薬品」の名前がついています。
これはOTC医薬品の分類で、薬局で買えるOTC医薬品だけど、使用方法の難しさや注意点・副作用の強さなどで分類されています。
OTC医薬品の分類は下記の通りです。
- 要指導医薬品:薬剤師が対応、対面で書面での情報提供(義務)、ネットでの購入不可
- 第一類医薬品:薬剤師が対応、書面での情報提供(義務)、ネットでの購入が可能
- 第二類医薬品:薬剤師または登録販売者が対応、説明は努力義務、ネットでの購入が可能
- 第三類医薬品:薬剤師または登録販売者が対応、説明の規定無し、ネットでの購入が可能
今回の虫刺されの薬に関していえば、ステロイドが含まれているのが「第2類医薬品」、ステロイドの入っていない抗ヒスタミン薬は「第3類医薬品」であることがわかります。
ステロイドが入っている「第2類医薬品」でも、販売担当者は必ずしも薬剤師でなくてもOK(登録販売者でもOK)で、販売時の説明は努力義務となっています。
ネットで購入できる医薬品である分、ステロイド配合なのかどうかや、対象年齢ごとに使い分ける必要なあるのかどうか、症状や部位によって使えない場合があるかどうかなどは、ご自身でしっかりと薬品の特徴をみて購入する必要があります。
まとめ
今回は、虫刺され用の薬を選ぶ時の注意点について解説いたしました。
もしご家庭で虫刺され被害に遭って薬をお探しの場合は、今回ご説明した内容にしっかり注意して、症状や年齢、患部によって適切な薬を選べるようにしておくと安心です。
ただし、どうしても痒くて掻いてしまい、皮膚の状態が極度に悪化している場合などは、強いステロイドでしっかりと治した方が良い場合もあります。
OTC医薬品を使っても肌の状態があまり良くならない場合は、病院に行き医師の指示を仰ぐようにしましょう。