私の住まいは東北の田舎ですが、初夏になると家の周囲にダンゴムシやワラジムシに似た黒い虫が地表を這いずり回っているのを見かけるようになります。
沢山の節があって、見た目はダンゴムシのようなのですが、足は6本、頭部が幅広く、お尻の方にいくにつれて体幅が細くなっている虫なのですが見たことはあるでしょうか?
この虫は「シデムシ」(の幼虫)で、ミミズや哺乳類の死骸を食べて土に埋めるという、いわゆる自然界の掃除屋さんの役目を持つ虫なんです。
本記事では、ちょっと不気味な見た目だけど、変わった習性を持つシデムシの生態について解説いたします。
シデムシの生態【画像あり】
シデムシの成虫の画像
※画像:wikimedia
シデムシの幼虫の画像
※画像は成虫・幼虫共に「オオヒラタシデムシ」
シデムシの生態
- 和名:シデムシ 漢字:死出虫、埋葬虫
- 学名: Eusilpha japonica(オオヒラタシデムシ)
- 英名:Silphidae; carrion beetle; sexton beetle
- 階級:甲虫目(鞘翅目)シデムシ科
- 生息範囲:北海道・本州・四国・九州
- 活動時期:春~夏
- 体長:5mm~30mm
シデムシは、日本には約30種類以上いることがわかっています。
漢字では「死出虫」や「埋葬虫」と書きますが、その字の通り哺乳類などの動物の死骸があると出てきたり、動物の死肉を地中に埋めるという習性をもっています。
哺乳類だけではなく、ミミズを捕食したり、ゴミ捨て場に湧くハエの幼虫を捕食したりします。
シデムシの特徴
※我が家の芝を上るシデムシの幼虫
シデムシは「臭い」
シデムシは腐肉や汚物などに集まることが多いためか、シデムシ自体もとても臭い液体を分泌します。
上の画像は我が家の芝生の上にいたシデムシの幼虫ですが、誤って踏んでしまったり触れてしまった時にとても嫌なにおいを発していて、シデムシの仕業だと気付きました。
成虫も同様に臭いにおいを発しますので、誤って触れてしまわないように気を付けた方が良いでしょう。
手や衣類にシデムシの臭いが付くとなかなか取れません。
シデムシは「子育てをする」
シデムシのとても珍しい特徴として、「親が子(幼虫)に腐肉を処理して口移しで与える」という行動が観測されています。
シデムシのような甲虫の中で、育児のような社会性のある行動をとるものは他になく、昆虫学者の中でも研究対象として挙げられることが多い虫でもあります。
シデムシは「共食いをする」
前述のような社会性のある行動がみられる反面、見つけた食料となる動物の死骸の大きさによって、子に与える食料が不足すると判断されると子減らしのために、自らの子を食べてしまいます。
「母の日」は母親と子どもがきずなを確認する日だが、自然界には慈愛と正反対の行動をとる母親が多く存在する。例えば甲虫「シデムシ」の母親は、エサを巡る“イス取りゲーム”に負けた子どもを食べてしまう。 - National Geographic
上記引用元のナショナルジオグラフィックの記事では、「慈愛と正反対の行動をとる悪母」としてシデムシを紹介していますが、私はシデムシを「子に餌を口移しで与える”育児をする珍しい虫”」として認識していました。
給餌するような一見母性のあるシデムシが、子減らしのために我が子を食べてしまうというのは、なんとも興味深い特徴でもあります。
まとめ
シデムシは見た目の不気味さとは裏腹に、動物の死骸を掃除してくれる森の掃除屋さんであることがわかりました。
ご自宅の周囲で発見するとその不気味さから駆除をしたいと考えるかもしれませんが、貯蔵穀物などを食べる虫ではないので、生ごみなど腐敗臭がするものを家の中で保管でもしていない限り家の中で問題になることは少ないでしょう。
我が家も生ごみを置いている勝手口の周囲に見かける程度で、室内に入ってきたことは一度もありません。
あまり疎ましく思わずに、放置しておいて問題ない虫であることを理解していれば安心でしょう。