都市部での被害も増加しているアライグマは、元々日本にはいない生物でした。
アライグマは、手先が器用で運動能力も高いために動物園から脱走したり、アニメの影響でペットとして飼育していたものが飼いきれなくなくなって捨てられたりして定着したと言われています。
かわいい見た目とは裏腹に、凶暴で手を焼く人が多かったのですね。
今回は、そんなアライグマは今現在どのような地域に生息していて、どのような生態的特徴があるのかについてまとめます。
アライグマの生態的特徴
- 和名:アライグマ
- 学名:Procyon lotor
- 英名:Raccoon
- 階級:食肉目アライグマ科アライグマ属
- 生息範囲:日本中
- 家の中の生息場所:屋根裏、軒下、倉庫など
- 体長:頭胴長(40~60cm)、尾(20~40cm)
- 寿命:13~16年(飼育下では最長22.5年の記録がある)
- 特徴①:基本雑食で、昆虫、動物、植物、何でも食べる
- 特徴②:足の指が5本、しっぽに4~7つの黒いリング状の模様、夜行性
- 弱点:青色ストロボ
- 厄介な点①:ため糞(同じ個所に糞)をする
- 厄介な点②:アライグマ回虫症や狂犬病の媒介者になる
アライグマは森林や住宅地、農耕地、湿地、乾燥地等、様々な環境に適応できる順応性を持っています。加えて、雑食性のため果樹や野菜、虫、鳥(特にヒナや卵)、爬虫類、小動物、大型動物の死骸など何でも食べ、どんどん生息範囲を広げていきました。
アライグマの生息地
出典:「日本の動物分布図集(2010)」(環境省生物多様性センター)を使用し、アライグマの地図のみ切り取ったもの
上記の地図では、北海道、関東地方、近畿地方などで確認がされています。
出典:アライグマ防除の手引き – 環境省(平成26年3月改定)
2008年度の都道府県別のアライグマ捕獲頭数のグラフを見ると、北海道が最も捕獲頭数が多く、次いで兵庫、埼玉、長崎、千葉と続きます。
一方で、東北地方や中国地方ではあまりアライグマは捕獲されていないようです。
2008年のアライグマの捕獲頭数は14,000頭を超えましたが、そのうち北海道と兵庫県のみでおよそ6,000頭を占めます。
アライグマの繁殖
アライグマは、年に1回出産し、多くて7頭ほど(平均3~4頭)子供を産みます。
1回の出産で産む頭数は比較的多いにも関わらず、1歳未満の初期死亡率は50%未満と低く増えるスピードが速いのが特徴です。
また、1歳から出産が可能で、妊娠期間は約2ヶ月と、妊娠出産のサイクルも早いため、増殖スピードに拍車をかけています。
寿命も自然下でも13~16年と長いため、どんどん増殖していくのが想像できますね。
アライグマから感染するアライグマ回虫症とは?
アライグマ回虫(学名 Baylisascaris procyonis)は、アライグマの小腸にいる寄生虫で、アライグマの糞を通じて外にまき散らされます。
この寄生虫は1日に数万個の卵を排出する恐ろしい虫で、排出から2~3週間すると感染力を持つ「幼虫包蔵卵」になります。
これが誤って口から体内に入ると、重篤な脳障害を起こして死に至ります。
日本ではまだ発症例は確認されていませんが、アメリカでは1981年に初めて確認されて以降20例以上のアライグマ回虫症発症例がおり、少なくとも5人が亡くなっています。
日本の家屋に棲み付くアライグマもこの寄生虫を体内に宿している可能性は高く、「ため糞」をする習性のあるアライグマが、屋根裏や軒下などで糞をすることによって人体に影響を与える可能性も少なくありません。
また、アライグマは狂犬病ウイルスを媒介することでも知られています。(日本は狂犬病清浄国)
凶暴さであったり、農作物への被害が注目されることが多いアライグマですが、実は「感染症(アライグマ回虫症や狂犬病)」が恐ろしいのです。
まとめ
今回はアライグマの生態と生息地などについてご紹介いたしました。
野生化したアライグマは様々な問題をもたらす害獣として認識されるようになってしまいましたが、元はと言えば動物園やペットとして人間が持ち込んだのが始まりと言われています。
そんな中で、今度は駆除をするという流れになり、動物愛護団体と駆除(殺処分)について議論になることが多いのです。
アライグマによってもたらされる害は看過できないレベルにまで達しており、駆除に議論があるのは理解できますが、何らかの対策を講じる必要があるでしょう。
もし家の屋根裏などにアライグマが棲み付いた可能性がある場合は、害獣駆除を無許可で行うと罰則があるので、専門の業者に依頼するようにしましょう。
また、屋根裏の物音はアライグマではなく、ネズミ等の他の害獣である可能性もあります。家に住むネズミの種類と生態についてもあわせて確認しておくようにしておくと安心ですよ。