登山やハイキング、キャンプなどで野山に行くときに、気をつけなくてはいけない事のひとつに「草木かぶれ」があります。
特に「ツタウルシ」や「ヤマウルシ」などの、ウルシ科の植物が持つウルシオールという油脂成分が野山での草木かぶれの原因になることが多く、かぶれ症状も重篤化しやすいので注意が必要です。
野山に入るときには長そでや長ズボンは必須ですが、装備が十分でも肌が露出していたところにウルシが接触してしまったり、誤って触れてしまい肌がかぶれてしまう事はあります。
今回は、誤ってツタウルシやヤマウルシなど、ウルシオールを持つ植物に触れてしまい肌がかぶれてしまった時の症状の特徴とアメリカ皮膚科学会が推奨する8つの対処法についてご紹介します。
Contents
ツタウルシやヤマウルシに触れた時のかぶれ症状の特徴とは?
ウルシオールによるかぶれ症状は「アレルギー性の接触皮膚炎」で、金属アレルギーと同様に肌に触れた部分がかぶれてしまう症状です。
【ウルシオールかぶれの症状の特徴】
- ウルシへの接触から8~48時間後に症状が現れる
- 激しいかゆみ、赤い発疹、大きさのまばらな水疱ができる
- 植物が皮膚に触れたところをなぞるように水疱ができる
- ウルシオールはすぐに肌に吸収され、水疱の液体がついてもかぶれは感染しない
- 症状の改善は早くて2~4週間、遅いと1年近くも治らないことがある
ウルシかぶれは「アレルギー反応である」というのがポイントで、ウルシオールと一言で言っても様々な種類があり、金属アレルギーのようにかぶれの度合いも、人によってアレルギー反応が強く出る人とでない人がいます。
ウルシかぶれの予防方法
登山などでウルシ科の植物がある可能性のある野山に入る際は「長そで長ズボン」は鉄則ですが、体質によっては接近するだけでかぶれてしまう人もおり、かぶれを予防するのはなかなか難しいです。
一番の予防法は、かぶれる可能性のある植物に近寄らない事です。
かぶれを起こす植物には、樹脂への接触で初めてかぶれを起こすものや、葉にある刺毛によってかぶれを起こす植物などもあり、こちらの「かぶれる植物の種類まとめ|草木かぶれの原因となる植物8種」を参考に、事前にかぶれを起こす可能性のある植物を知っておくことも重要でしょう。
中には、一度かぶれてしまうと体質的にかぶれやすくなってしまい、時には症状が重篤化しやすくなる植物もあるので第一には「かぶれないように注意する」事が大切です。
今回紹介しているツタウルシやヤマウルシのウルシオールという油脂成分は、ゴム手袋をしていても浸透してくるほど強力なので、特徴を見分けられるようになり、あやしいと思えば近づかないようにしましょう。
1つ予防策としては、かぶれ防止用のローションやクリームを塗ってから山に入るというのも一つの方法ですが、症状の軽減はできても素肌で触れてしまうとかぶれるのは避けられないでしょう。
確実にウルシのある場所に行く場合は、ベルツ水と言われる「グリセリン、水酸化カリウム、アルコール」を主成分とする化粧水の下地液にも使われるもの(※下記商品の名前はグリセリンカリ液Pですが同じもの)を使用し、その上にコールドクリームなどの油分の多いクリームを塗ればある程度は肌を保護する効果があります。
この方法は漆職人さんが作業前に肌を守るために行う方法の一つです。
ウルシかぶれを起こした時の8つの対処法
実際にツタウルシやヤマウルシに触れてしまい、かぶれてしまった場合の対処方法については、米国皮膚科学会が2014年4月に8つの対処方法を発表しています。
その方法とは下記の通りです。
- ウルシに接触した部位の皮膚をすぐにぬるま湯と石鹸で洗う
- 接触時に着用していた衣服を全て洗う
- ウルシ油が付着したと思われるものを全て洗う
- 発疹をかかない
- 水泡を破らない
- コロイドオートミールやベーキングソーダを加えたぬるめの風呂、または低温のシャワーを短時間浴びる
- 掻痒にはカーマインローション、軽度であればヒドロコルチゾンを塗り、冷水で湿布する
- 掻痒の軽減には抗ヒスタミン剤を服用する、局所抗ヒスタミン剤は発疹や掻痒を悪化させる可能性があるので使わない
引用※m3 -臨床ニュース「ウルシかぶれ対処法を紹介 【米国皮膚科学会】」
※掻痒(そうよう):かゆみのこと
緊急を要するかぶれ症状と専門受診の判断基準
注意点としては、①の石鹸で洗うときに先に水をつけてはいけないという所です。
油脂性のウルシオールは水では落ちず、先に肌に水をつけてしまうとウルシオールが伸びで患部が広がってしまう恐れがあります。そのため、先に石鹸を泡立てて患部を洗い、最後にぬるま湯で流すようにしましょう。
また、緊急を要するウルシかぶれの症状として、
ウルシかぶれは通常1-3週間で治るが、7-10日後も改善がない場合や感染を疑う場合は、専門医を受診する。呼吸困難、嚥下困難、腫脹、多数の発疹や水泡がある場合は、直ちに救急外来へ行くことを推奨
と書かれています。
コロイドオートミールとは?
朝食で食べられる事の多いグラノーラなどによく入っている「オーツ麦」が原料のオートミールは、お風呂に入れる美容法があるほど保湿効果が高くかゆみを抑える効果が知られています。
コロイドは膠質(こうしつ)とも呼ばれ、ものすごくざっくりいうと「牛乳」のように水溶液に脂肪が沈殿しているような化学的な状態などのことを言います。(※不正確な表現ですが、あくまで一例です)
コロイドオートミールの掻痒に対する効果は、かゆみを伴う皮膚疾患のある犬に対する研究で効果が実証されているように、近年ではアトピー性皮膚炎や乾燥肌を持つ人への美容液やシャンプーなどに含まれることも多くなっています。
※参考文献:獣医皮膚科臨床 – そう痒を伴う皮膚疾患に対するコロイド化オートミール含有シャンプーの臨床応用
痒み対策として、オートミールをお風呂に入れてもいいかもしれませんが、コロイドオートミールを主原料とした保湿剤があるのでこちらの方が簡単にかゆみを抑える効果が期待できるでしょう。
また、ベーキングソーダとは「重曹」の事です。こちらは普通に薬局やスーパーで売っているので簡単に購入できますし、お風呂に入れても簡単にお掃除ができるのでお勧めです。
カーマインローションで掻痒対策
カーマインローションとは、収斂作用(しゅうれんさよう)のある化粧水で、たんぱく質を変性させることによって組織や血管を縮め、肌の火照りを押さえたり、止血・鎮痛効果が期待できます。
塗った部分をヒンヤリさせる効果があるので、項目⑦であるようにカーマインローションを冷シップにして患部に張り付けることによって、炎症・痒みを押さえてくれる効果がります。
比較的安価で購入ができるのでありがたいですね。
カーマインローションと並んで記載されている「ヒドロコルチゾン」はステロイド剤なので、使用前に医師の診察を受けて処方された場合に利用する方が良いでしょう。
ムヒなどの局所抗ヒスタミン剤は止めた方が良い?
項目⑧には、「抗ヒスタミン剤の服用はかゆみ止めに効果があるが、局所抗ヒスタミン剤は発疹や掻痒を悪化させる可能性がある」とあります。
服用する(飲むタイプの)ヒスタミン剤には、花粉症の薬などに代表される市販薬もありますが、他材との併用に注意が必要な物や、腎臓や肝臓に負担をかけるタイプの薬剤などもあるので医師の診断のもと使用するのが良いでしょう。
また、「ウルシかぶれにはムヒを塗ればいい」などと書いているサイトもありますが、アメリカ皮膚科学会の発表では「悪化させる可能性があるので使用しないように」とあります。安易に使用しないようにしましょうね。
まとめ
今回は、ツタウルシやヤマウルシなどによる「ウルシかぶれ」が起きた時の対処法として、米国皮膚科学会が推奨する8つの対処法をお伝えいたしました。
また、予防策としては漆職人さんが作業前に肌に施す方法をご紹介しましたが、完全に防御できる方法ではないので、一番はやはりウルシには近づかないことが大切ですね。
ウルシかぶれは治療によってかゆみを抑えることはできますが、発疹の治りを早める効果はほとんどありません。症状がひどい時は必ず病院に行って医師の診断を受けてください。
軽度のウルシかぶれであれば今回ご紹介した対処法で症状の緩和を行うことが出来るでしょう。ただし、「症状が確実にウルシかぶれだと断定できない場合」や「患部が広範囲にわたる場合」は医師の指示を仰ぐようにしましょう。