私が若い頃、東南アジアやインド、中東諸国を旅した経験から特に悩まされた害虫が「トコジラミ(別名:南京虫)」です。
清潔な日本の宿や一般家庭ではあまり見かけることが無いのですが、海外旅行に頻繁にいくことができるようになった昨今では、スーツケースなどにくっついて持ち込まれる例が多く、最近また日本で被害が増えてます。
今回は少々私の体験談を交えてつつ、南京虫の特徴や刺し痕、駆除方法や旅行先で刺されないための予防方法についてご説明します。
Contents
トコジラミ(南京虫・ベッドバグ)の生態
- 和名:トコジラミ 別名:南京虫(なんきんむし)床虫(とこむし)
- 学名:Cimex lectularius
- 英名:Bed bug
- 階級:カメムシ目トコジラミ科 触れるとカメムシ類と同じようにいやな臭いを発する
- 生息範囲:北海道から九州(世界中の温帯地域)
- 家の中の生息場所:光が苦手で、畳、壁の隙間、ベッドやカーペットの裏、古本など狭くて暗い隙間に隠れていることが多い
- 活動時期:自然環境では夏場(6~9月)だが、暖房されていると冬でも活発に活動する
- 体長:幼虫は1.5mm、成虫になると5-7mm程度で肉眼で見える
- 寿命:成虫の寿命は長く、室温条件(18~20℃)下で1年近く生きることがある
- 特徴①:吸血前は薄黄色からやや赤褐色だが、吸血後は吸血した血液が透けて見えるためより濃い茶色となる
- 特徴②:1匹の雌成虫は1日に5〜6個、生涯に200〜500個も産卵する
- 特徴③:成虫になっても翅は生えないので、飛ぶことはできない
- 弱点:熱に弱い(45~60°以上)
- 厄介な点①:噛まれて吸血されると、時には眠れなくなるほど強い痒みがでる
- 厄介な点②:南京虫は不特定多数の人の出入りが多い商業施設や宿泊施設等で発生することが多く、駆除が完全に終わるまで、営業停止にしなければならない場合がある。
トコジラミ(南京虫)に刺された跡や症状の特徴
寝ている間に刺されて、何に刺されたのか分からない時は、以下の特徴が当てはまれば南京虫がいる可能性が高いです。
- 噛まれると肌に赤い斑点(一円玉くらいの大きさ)が出来る
- 刺された痕は1~2週間以上消えないで残る
- 初めて刺された場合は痒みを伴わない場合が多い(個人差もある)
- 2度目以降に刺されると数時間~2日ほど経った後で痒みが出て、強い痒みが1~2週間以上続く
- 移動しながら吸血するので、傷が広範囲に広がる
南京虫は夜行性なので、寝ている間に吸血します。主に肌が露出している首や手足が刺されやすいですが、袖口や襟から衣服の中に潜り込むこともありますし、服の上から刺すこともあります。
刺し跡からどの虫に刺されたか判別が難しい場合は、こちらの「ダニに刺された時の症状の見分け方|家の中の虫刺され【皮膚の画像あり】」を見ると判別に役立てるかもしれません。
トコジラミ(南京虫)はどこから来るの?【侵入経路】
南京虫は翅(ハネ)がないので飛ぶことはできません。
そのため、飛んで室内に侵入することはなく、人間が外から持ち込むことが一番の原因で、服やカバンなどの荷物にくっついて家の中に侵入します。
もし、自宅で南京虫が発生した場合は、海外旅行先で使ったカバンや服についていたり、購入したアンティークの家具や古本についていたなどが侵入経路として考えられます。
ご自身が海外に行っていなかったリ、海外アンティークを購入していなくても、大衆浴場やタクシーの車内、電車など不特定多数の人が出入りする場所で偶然もらうこともあります。
最近は海外から日本に来る旅行者も増えているので、その際に持ち込んでしまうケースが増えています。
実際私が東京の物件管理会社で働いていた時も、お客さんが100%海外の人という特殊な物件だったこともあり、居住区内で南京虫が大発生し対応に追われたことが何度かありました。
トコジラミ(南京虫)の駆除に効果的な殺虫剤は?
最近、日本で問題になっている南京虫のほとんどは「スーパーナンキンムシ」という、市販の殺虫剤が効かなくなっている南京虫で、ピレスロイドという化学物質に対する抵抗性を持っています。現在、市販の殺虫剤のおよそ9割がこのピレスロイドを使用しています。
日本環境衛生センターによるトコジラミの効果的な防除法を調査によると、下記のよう菜専門家の意見があります。
一般に使用されている殺虫剤の多くは、トコジラミに対してゴキブリと同程度の殺虫力
が期待できると考えられます(中略)
日本各地で問題となっている集団の 90%近くがピレスロイド剤に対して抵抗性を示すような遺伝子の変異が認められる、との遺伝子解析結果も報告されています。欧米では以前からピレスロイド剤に対する抵抗性の発達が問題になっていて、これらの抵抗性個体が日本に持ち込まれた可能性が高いと言われています。これらの集団に対するピレスロイド剤の効果はほとんど期待できないことになりますが、これらのピレスロイド剤に抵抗性のトコジラミに対しても、有機リン系やカーバメート系の殺虫剤は感受性集団とほぼ同様な殺虫効力が認められることが報告されています。ただし、有機リン系やカーバメート系薬剤に抵抗性を示す集団も一部で見つかっています。
自宅や旅行先で南京虫の被害に遭った場合にできる対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。南京虫退治に有効な殺虫剤の選び方とその他の対処法についてまとめます。
1.薬事法の承認を受けた殺虫剤を使用すること
南京虫の駆除効果のある殺虫剤は必ず薬事法による承認が必要なので、最低限「医薬品」もしくは「医薬部外品」である必要があります。
かつてはゴキブリにも効果があれば南京虫にも効果があるとして、標榜に「トコジラミにも効果がある」とうたっているものもあったのですが、抵抗性の付いた南京虫が増えている現在では、有効殺虫成分をしっかり確認して、薬事法に承認されていない医薬品以外のものは購入しないようにしましょう。
2.有機リン系やカーバメート系の殺虫剤は非現実的?
ピレスロイド系の殺虫剤に対する抵抗性を持つ南京虫が増えてきているのですが、まだ有機リン系やカーバメート系の殺虫剤に対する抵抗性を持つ南京虫はそこまで多くありません(ただし、徐々に発見されてきています)
効果はあるのですが、これらの殺虫剤は素人が室内で散布することは難しく、海外では使用中止になっている国も多いため、有機リン系やカーバメート系の殺虫剤の使用は少々現実的ではありません。
室外に南京虫の発生源がある場合や、アンティークの家具など薬剤塗布後に処理をしやすいものであれば、ピレスロイド系殺虫剤よりも効果的かもしれません。
3.強力なピレスロイド系殺虫剤をピンポイントで利用する
多くの南京虫がピレスロイド系の殺虫剤に抵抗性を持ち始めているので、ほんの少し虫の体に付く位では死なない可能性が高いです。
潜んでいる場所がはっきりとわかっている場合に限り、強力なピレスロイド系殺虫剤を噴霧することで処理することができるかもしれません。
こちらの「トコジラミゴキブリアース」は第2類医薬品であり、ピレスロイド抵抗性を持つ南京虫にも効果的です。
ご自身で見える範囲の南京虫を駆除したい場合はこちらが良いでしょう。
4.エアゾール剤や燻煙剤の効果はあまりない?
南京虫は、日中はマットレスの下やソファーの隙間、畳の裏側、家具の内部、壁紙の裏側やコンセントの中など、狭くて暗い隙間に潜んでいることが多く、燻煙剤などの殺虫成分は奥まで届きにくいという問題があります。
ピレスロイド耐性を持っている南京虫を死滅させるには、しっかりと殺虫成分が行き渡る必要があるので、バルサンやエアゾール剤では完全に死滅させるのは難しいでしょう。
発生源や隠れている場所が分かっている場合以外は、専門の駆除業者に依頼するのが確実です。
殺虫剤以外の退治方法は?
殺虫剤以外の退治方法として以下に挙げられるものがあります。
- 掃除機で吸い取る
- 熱を加える(60 ℃以上を数分間、100℃なら数秒間)
- 隙間の封鎖
- 潜み場所となる場所を整頓する
いずれもある程度効果はあるのですが、発生している範囲や数によっては根絶するのは難しいでしょう。
衣服やバッグなど、部屋全体にいる南京虫でなければ掃除機で吸い取ったり、60℃以上のお湯で洗濯するなどしてある程度は駆除できるかもしれませんが、室内で発生している場合は家財にダメージを与えかねない熱処理などは難しく、せいぜい掃除機や隙間の封鎖程度しかできないでしょう。
旅先で被害に遭った場合は、バッグや衣類などを熱湯で消毒をするか高温の水で洗濯をすると被害は収まるかもしれませんが、宿泊先に南京虫がいる場合は宿を変えることが先決でしょう。
南京虫(トコジラミ)駆除の専門業者に依頼する
自分では手に負えない量のトコジラミが発生してしまった場合は、専門の駆除業者に依頼するというのも一つの方法です。
様々な殺虫剤に耐性を持つトコジラミは素人では駆除が難しい場合があるので、悩みながら時間をかけてしまうよりは、いっそのこと業者に依頼してしまった方が無駄に悩まずに済みます。
当サイトがおすすめする「衛生害虫110番」は、東証上場企業であるシェアリングテクノロジーが運営している害虫駆除サービスで、24時間365日無料で相談・見積もり依頼を受けつけています。
日本全国どこでも駆除依頼を受け付けているのはかなり珍しく、現地見積もりは無料で、見積もり後の追加料金は発生しないのも安心できます。
トコジラミ被害に悩んでいる場合は、是非一度相談してみてはいかがでしょうか。
旅行先での南京虫(トコジラミ)対策
とくに海外旅行先のホテルから南京虫(トコジラミ)を持ち帰ってしまうケースが増えています。多いのは安宿ですが、どんなホテルでも南京虫はいる可能性があります。
- 南京虫はツルツルした場所をのぼれないので、できれば鉄製などのツルツルしたベットフレームを選び、バッグやシーツ、衣服などが地面とベッドの両方に触れている状態をつくらない(南京虫がベッドに登ってこられない)
- スーツケースや旅行バッグを丸ごとビニール袋に入れておく
- 肌を露出しないように長袖を着て寝る。
- スーツケースやカバン、服などの荷物を床やソファ、ベッドに直接置かない
- 南京虫は熱に弱いので、旅行から帰って来たら着ていた服を60度以上のお湯に1分以上浸ける
- あらかじめ、旅行に持っていくスーツケースやカバンの中に防虫剤(パラジクロロベンゼンなど)を入れておくとトコジラミの侵入を防止できる。
※防虫剤には前述のピレスロイド系やパラジクロロベンゼンなどいくつかの種類があり、特徴と注意点が異なるので、使用前に必ずこちらもあわせてご覧ください。
【関連記事】>>>防虫剤のおすすめと選び方|服の虫食いに効果的な防虫剤はどれ?
ディートが有効成分の忌避剤を塗る
ディートを有効成分とする吸血昆虫用の忌避剤は南京虫にも効果があるので、旅先などの宿泊施設に南京虫がいそうな場合は、皮膚に塗ることで吸血被害を寝ている間程度は阻止することができます。
ただし長時間は持たず、塗りムラがあるとその場所から吸血されてしまいますので注意しましょう。
皮膚以外にも、バッグや衣類に塗布することで南京虫の付着を阻止することができますので、海外旅行で安宿に宿泊する予定のある人は用意しておくと良いでしょう。
下に紹介するのが、タイプ別のディートが主成分の虫除け商品です。
【液剤が飛び散らない拭くタイプ】
【手が汚れない塗るタイプ】
【吹きかけるミストタイプ】
まとめ
南京虫の薬剤耐性の強さはゴキブリ以上とも言われており、繁殖力もすさまじいので一度室内に発生してしまうと個人で駆除するのはかなり難しい虫です。
大切なのは旅行先などから持ち帰らないこと、そしてアンティークの家具や古本などを購入する場合は虫がついていないかしっかりと注意することが大切です。
もし、南京虫の被害にあったらいち早く発生源を特定し、場合によっては専門の駆除業者に依頼するなどの対策を講じるようにしましょう!