希少植物の輸入に関するワシントン条約(CITES)とは?罰則・附属書の内容を簡単に解説!

cites

こんにちは、田舎センセイです!

園芸の趣味があり、より珍しい品種を海外の通販サイトで輸入をしようとしたことがある人は「CITES(サイテス)」という文字を目にしたことがあるのではないでしょうか?


多肉植物やコーデックスの本を見ると、CITESⅠとかCITESⅡとか書かれてるのを目にするよね!

このCITESが何なのかよくわからない人のために、できるだけ簡潔に気になる点をまとめてみたので参考にしてみてください!


しっかり理解しようとするとかなり複雑でややこしいので、さっくりと理解したい人にオススメじゃ!

※当記事に掲載している情報は2019年4月4日時点での内容ですので、CITESの内容更新(約3年スパン)によって情報が古くなる可能性があります。CITES分類品種については最新の情報が無いか各自でご確認いただきますようお願いいたします。

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CITESとは「ワシントン条約」の英語の頭文字

ワシントン条約は希少な野生動植物の輸出入を規制するための条約で、正式名称を「絶滅の恐れのある野生動植物種の国際取引に関する条約」といいます。

これを英語に直すと「Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora」となり、その頭文字をとって「CITES/サイテス」と呼ぶことが多いです。

今回は園芸品種をメインにお話しするので植物中心になりますが、わかりやすいもので言えば「象牙(ぞうげ)」なんかが最たるものですね。海外に売ればお金になるので乱獲されて絶滅に瀕してしまう。そういう動植物を守るための条約です。


ワシントン条約のことだったんだね!ところで、植物の種類によってCITESⅠとかCITESⅡとかあるけど違いは何なのかな?

CITESは以下の3つの分類を見ることが多いぞい!
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附属書によるCITESの分類(CITESⅠ・CITESⅡ・CITESⅢ)

CITESは、絶滅の危険性や希少性の度合いによって「附属書Ⅰ~Ⅲ」の3つのランクで規制の対象種を分類しています。

附属書Ⅰ(CITESⅠ)が最も規制の度合いが強く、商業目的のための取引は禁止されていて、輸出国・輸入国双方の許可証が必要になるなど厳しく取り締まられています。

附属書Ⅰ~Ⅲ

附属書Ⅰ:絶滅の恐れがある種で、取引による影響を受ける、あるいは受けるおそれのあるもの
附属書Ⅱ:現在は必ずしも絶滅の恐れはないが、取引を規制しなければ絶滅の可能性があるもの
附属書Ⅲ:締約国が自国内の保護のため、他の締約国の協力を必要とするもの

そして各ランクごとの規制内容は以下の通り。

附属書Ⅰ商業目的のための取引禁止
・学術目的(繁殖目的を含む)の取引は可能
・輸出国、輸入国双方の許可書が必要
附属書Ⅱ・商業目的の取引は可能
・輸出国政府が発行する輸出許可書が必要
附属書Ⅲ・商業目的の取引は可能
・輸出国政府の発行する輸出許可書、または原産地証明書などが必要

つまり、CITESⅠは基本的に個人で海外との輸出入を行うのはかなり難しい(というかほぼ無理)、CITESⅡは書類をとれば商業取引はOKということです。


そっかぁ、どうしてもCITESⅠの植物が欲しくても諦めるしかないのかなぁ

絶対無理っていうわけじゃないんじゃが、かなりハードルは高いと考えた方がいいのう

CITESⅠ(附属書Ⅰ)の植物を輸入することは出来る?

CITESの国内管轄である経済産業省HPのQ&Aには、以下のような回答が載っています。

[Q1-8]附属書Ⅰに掲載されている動植物等であっても、商業取引できるものがあるとききました。それはどのようなものでしょうか。

ワシントン条約では、附属書Ⅰ掲載種の動植物等は絶滅のおそれがあるため、原則として商業取引が禁止されています。しかしながら、以下のような一定の要件を満たすものは例外として、限定的に商業取引を行うことが可能となっています。

  1. 商業目的で繁殖させることを認められた条約事務局登録施設において繁殖させた動植物等(植物の施設登録は任意)(CITES 輸出許可書において、動植物の由来を示すコード(Source code)「D」が付される)。
  2. ワシントン条約発効前(最初に附属書に掲載された日付より前)に野生から採取、又は人工的に繁殖させた動植物等(CITES 輸出許可書において、由来を示すコード(Source code)「O」が付される)。

経済産業省HPより引用

CITESⅠの植物でも「許可を取った登録施設で繁殖されたもの」については、限定的にではありますが商業取引が可能となっています。

現地のCITESⅠの動植物を勝手に捕獲/採取してきたのではなく、しっかりと許可を取って繁殖しているという「原産地証明書」をもった育成者に限っては、CITESⅡの扱いで取引が可能だそうです。


不可能ではないけど、個人レベルではかなり難しそうだね

ワシントン条約に違反した場合の罰則は!?

条約違反による動植物の国内持ち込みは、例え違反していることを知らなくても罪になる。税関での輸入差し止め、及び輸入品の没収・罰金の支払い義務が発生する。税関でチェックを受けずに持ち込んだ場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金がかせられる可能性がある。加えて、条約違反の輸入は外国為替及び外国貿易法違反にもなり100万円以下の罰金または1年以下の懲役の罰則がかせられる。

国内取引はワシントン条約ではなく「種の保存法」

CITESは海外からの輸出入に関する条約でしたが、国内での希少野生動植物の取引に関しては「種の保存法」による規制があります。

CITESⅠの動植物はそのまま種の保存法の「国際希少野生動植物種」に分類され、「国内取引の原則禁止」がルールとして定められています。

主な規制内容は、

種の保存法・販売、頒布を目的とした陳列・広告も原則禁止
・例外は以下の3つ
→ 学術研究、繁殖目的で許可を受けたもの
→ あらかじめ登録を受けたもの
→ 一部の科を繁殖させたもの

CITESⅠの野生動植物は、国内でも「あげる、売る、貸す」の他に「もらう、買う、借りる」も罰則の対象として禁止されています。


販売を目的にした「陳列・広告」も罰則の対象になるんだね!

うむ!CITESⅠの動植物をメルカリに載せたりしたら、譲渡などの実態の伴う取引が無くても罰則対象になるってことじゃの!

種の保存法の罰則は?

違法な譲渡・捕獲・輸出入に関しては、個人の場合で「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」法人では「1億円以下の罰金
違法な陳列・広告に関しては、個人の場合で「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」法人では「2000万円以下の罰金
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CITESに分類されている塊根植物(コーデックス)や多肉植物は?

CITESⅡに分類される主なコーデックス&多肉

オベサ
パキポディウム全種、ユーフォルビア全種、アロエ全種、サボテン全種、ソテツ全種、ネペンテス全種、ボウェニア全種、アガベの一部、オペルクリカリアの一部、アデニアの一部、キフォステンマの一部、等

上記に挙げたのは一部で全てではありませんが、コーデックス&多肉好きなら一つは必ず持っているような品種もCITESⅡに分類されていることが分かりますね。

さらに、上記に挙げたパキポディウムやユーフォルビア、ソテツなどの中にはCITESⅠの品種もあります。(※それらはCITESⅡとは重複せずCITESⅠ扱いになるのでCITESⅡからは除かれています)

CITESⅠに分類される主なコーデックス&多肉

パキポディウム・Pachypodium ambongense
・Pachypodium baronii
・Pachypodium decaryi
ユーフォルビア・Euphorbia ambovombensis
・Euphorbia capsaintemariensis
・Euphorbia cremersii
・Euphorbia cylindrifolia
・Euphorbia decaryi
・Euphorbia francoisii
・Euphorbia moratii
・Euphorbia parvicyathophora
・Euphorbia quartziticola
・Euphorbia tulearensis
ソテツ
オニソテツ
・Cycas beddomei
・Encephalartos spp.
アガベ・Agave parviflora
フォークエリア・Fouquieria fasciculata
・Fouquieria purpusii

上でご紹介したのはごく一部(※紹介した科に関してはほぼ全て抜粋)ですので、CITESに分類されている品種を詳しくご覧になりたい方は、経済産業省のワシントン条約附属書(植物界)をご覧ください。

まとめ

私のように園芸を楽しみ、レアなコーデックス栽培に幸福感を感じる人は少なくないと思います。

珍しい植物を探すうえでCITESなどの情報に触れることもあると思いますが、おおよそ気になる内容としては「購入が可能かどうか・罰則はあるのか・現在CITESに分類されている品種は何か」辺りかと思います。

現在はCITESⅡの分類で特に不自由なく手に入る品種でも、CITESは約3年ごとに更新されるので、いつかはCITESⅠになって自由に輸入できなくなる日が来るかもしれません。

ただ、あれですね、CITESのように「今現在どの種が絶滅の危機に瀕していて希少性が高いか」というのがわかると、かえってコレクター魂に拍車をかけてしまいそうと感じるのは私だけではないはず。

自分たちの趣味である園芸が世の中の種の存続に関係しているという自覚を持ちながら、責任を持てる範囲で楽しむことが大切ですね。

参考

政府広報オンライン
WORLD WILDLIFE DAY
東京商工会議所「原産地証明」
経済産業省