畑や家庭菜園などで葉物野菜を育てていると目にすることが多い「ハムシ」という小型の甲虫は、その名の通り葉や根を食害するので農家の敵です。
土の中で成長する種もおり、見えないところで悪さをされるとなかなか対策がとりにくいため、防除法に頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。
ハムシには数多くの種類がいるので、今回は畑や菜園で見かける事の多いハムシの特徴と防除法についてご紹介します。
Contents
ハムシとはどんな害虫?
- 和名:ハムシ類 別名:葉虫、金花虫
- 学名:Chrysomelidae
- 英名:Leaf beetle
- 階級:甲虫目ハムシ科
- 生息範囲:世界中
- 活動時期:1年を通して活動する、成虫は春から夏(4~7月)にかけて作物を食害する
- 体長:2mm~1cm(6~7mmが一番多い)
- 寿命:約1年~1年半
- 特徴:特定の科の作物を食べる種類がおり種類が多い、飛ばない種類が多い
- 弱点:キラキラと光るもの、光の乱反射
- 厄介な点①:幼虫・成虫共に作物を食害し、根を食べられると生育不全で枯れてしまう
- 厄介な点②:成虫を捕獲しようとするとポロリと落ちて逃げてしまう
ハムシの発生時期と被害状況
幼虫:5~6月
成虫:1年中(特に4~7月で多い)
ハムシ類の多くは4~5月に産卵し、1週間弱で孵化して幼虫になります。
ハムシの幼虫は1か月ほどかけて成虫になるので5~6月の時期には成虫と幼虫の両方の食害を受けやすいです。
一般的に、幼虫は根を食害し、成虫は葉を食害することが多いのですが、ダイコンサルハムシのように幼虫も成虫も葉を食害する種もいます。
ハムシの種類別の特徴と防除法
1.ウリハムシの画像・特徴・防除法
ウリハムシの特徴
ハムシの中でも特にキュウリやスイカなどのウリ科の植物に寄生するのが「ウリハムシ」です。
・ウリ科の作物がやられている
・動きが早く、飛ぶ
・葉の食害痕が円形に切り取られて穴があいている
ウリハムシは4月~10月頃に発生し、成虫の姿のまま土の中で越冬します。
葉の食害痕が特徴的で、葉が円形に切り取られる(※トレンチ行動)ので穴だらけになるため、食べられた葉の跡を見るとウリハムシの仕業であることがすぐに分かります。
発生サイクルは基本的に年1回ですが、暖かい地域では稀に秋(9月頃)に2世代目が発生することがあります。
成虫は葉を食害し、幼虫は主に根を食害しますが、ひどい場合では地上部分の果実や茎の中にまで侵入して食害することもあります。
食害されやすい植物
キュウリ・ズッキーニ・カボチャ・スイカ・ゴーヤ・メロン等
ウリハムシの駆除&防除法
2.成虫を確認したら物理的に捕殺する
3.幼苗期はビニルキャップなどで囲って飛来を防ぐ
4.シルバーマルチやアルミホイルなどを株元に置いて光の乱反射で忌避する
5.周囲にネギを植える or 前年度にネギを植えた畑でウリ科の作物を育てる
6.適用のある薬剤を使う
ウリハムシの防除方法としては上記の6つが効果的と言われていますが、既に圃場で見かけた場合は土壌にも多数潜んでいることが想定されます。
成虫を定期的に捕殺しつつ、薬剤を用いて土壌の幼虫などを駆除するのが最も効率的と言えるでしょう。
また、ウリハムシはネギの臭いを嫌うので、ウリ科の作物を育てている農家さんはネギを近くに植えたり、毎年ウリ科の作物を植える場所をネギを育てた場所に移動させるという対策を取っている人もいます。
ただし、既に幼虫まで発見してしまっている人は、薬剤処理を行うのが望ましいでしょう。
<追記(2018/7):我が家のメロンがウリハムシの被害に!!>
畑で育てていたメロン(コロタン)をよくよく見てみると、穴だらけになっていました。
完全に体半分ほどメロンにめり込ませてかぶりついてるウリハムシの集団。
もう一匹や二匹っていうレベルではありません。
キュウリはあまり被害を受けていませんでしたが、何故かこのメロンに集中してました。
2.キスジノミハムシ(キスジトビハムシ)の画像・特徴・防除法
キスジノミハムシの特徴
ハムシの中でも3mm程度と小柄で、アブラナ科の作物を食害するのが「キスジノミハムシ(キスジトビハムシ)」です。
・体長は3~4mmと小さい
・成虫による葉の食害痕は針を刺したように小さな穴が点々とあく
・幼虫による根の食害痕は網目状に広がる
キスジノミハムシの発生のピークは7~8月で、成虫の姿のまま土の中で越冬します。
幼虫は根を食害するのですが、大根のように果実部分が土の中にあるアブラナ科の植物は被害が大きくなり、特に高冷地で大根栽培を行っている農家さんが被害に遭うケースが多いです。
捕獲しようと近づくとノミのように飛び跳ねることからこの名前が付きました。
近年特に農業被害が拡大しているのがこのキスジノミハムシです。
食害されやすい植物大根・キャベツ・白菜・チンゲン菜・コマツナ・カブ等
キスジノミハムシの駆除&防除法
2.成虫を確認したら物理的に捕殺する
3.シルバーマルチやアルミホイルなどを株元に置いて光の乱反射で忌避する
4.緑肥用の燕麦をすき込む
5.適用のある薬剤を使う
キスジノミハムシは土中での食害がとても問題になっているため、成虫を発見した場合は土の中にも潜んでいることを覚悟した方が良いでしょう。
その場合は、地上をシルバーマルチによってキラキラと光らせて忌避する効果もあまり高くないと思われるので、播種時点での粒剤などによる幼虫発生の予防などが効果的と言えます。
また素手で物理的に防除しようとしても飛び跳ねて逃げてしまうのでなかなかうまくいきませんが、下に布を敷いてから叩き落とすことで大多数の成虫は捕獲することができます。
キスジノミハムシは燕麦の成分を嫌うため、大根の前作として緑肥用の燕麦を出穂するまで育てたら土壌にすき込むことによって強力な忌避効果を発揮します。
土壌にすき込んだら2,3週間ほど腐熟させてから大根を育て始めれば、その畑でのキスジノミハムシの発生数がとても少なくなるとのことなので、これから大根を育てようと考えてる方は是非試してみてください。
3.サンゴジュハムシの画像・特徴・防除法
※出典:opencage.info
サンゴジュハムシの特徴
ハムシの中でもサンゴジュやオオデマリ、ガマズミなどの庭木の葉を食害するのが「サンゴジュハムシ」です。
・卵で越冬する
・葉柄や芽の中に産卵する
サンゴジュハムシの発生のピークは4~9月で、成虫は5月と7月の年二回発生します。
成虫・幼虫共に葉を食害するので、葉が大きく変色してしまうことから気が付きます。
食害されやすい植物
サンゴジュ・ガマズミ・オオデマリ・ミズキ・ニワトコ 等
サンゴジュハムシの駆除&防除法
2.食害を受けた葉や枝は剪定して取り去ってしまう
3.適用のある薬剤を使う
サンゴジュハムシは見つけ次第捕殺し、加害を受けた葉や枝は産卵されていることがあるので剪定して取り除くことが基本の防除法になります。
数が多い場合は適用のある薬剤を使用し、葉の裏にいる成虫にも薬剤がかかるようにしっかりと散布しましょう。
4.ヘリグロテントウノミハムシの画像・特徴・防除法
※出典:opencage.info
ヘリグロテントウノミハムシの特徴
ヘリグロテントウノミハムシは、テントウムシの仲間の「ナミテントウムシ」に擬態していてそっくりな見た目をしていますが、れっきとしたハムシの種類です。
・近寄るとノミのように跳ねる
・5月頃に成虫がモクセイ科の樹木に寄生して葉を食害する
ヘリグロテントウノミハムシの発生のピークは4~6月で、成虫のまま越冬します。
新芽や柔らかい葉に産卵をして、幼虫は葉を食害して成長します。
ヘリグロテントウノミハムシが擬態しているそっくりなテントウムシがこちらのナミテントウ(上に乗ってる黒い方)です。
テントウムシはアブラムシなどの害虫を食べてくれる益虫ですが、間違ってヘリグロテントウノミハムシを益虫と思って可愛がらないようにしましょう!
食害されやすい植物
ヒイラギモクセイ・モクセイ・ヒイラギ・ネズミモチ・イボタノキ 等
ヘリグロテントウノミハムシの駆除&防除法
2.食害を受けた葉や枝は剪定して取り除く
3.適用のある薬剤を使う
ヘリグロテントウノミハムシは若い葉や若芽に産卵をするので、食害を受けた葉は剪定して適用のある薬剤を使うのが効果的です。
また、樹木の下の落ち葉の下などで越冬をするので、剪定とあわせて枯れ葉の掃除も忘れずに行うようにしましょう。
5.ダイコンハムシ(ダイコンサルハムシ)の画像・特徴・防除法
※出典:フォト蔵
ダイコンサルハムシの特徴
ダイコンハムシ(別名:ダイコンサルハムシ)は、その名の通り大根などのアブラナ科の植物を好んで食害する害虫です。
・体長は3~4mmと小さく、色は黒い
・成虫による葉の食害痕は大きな穴が沢山あく
・寒さに強く、真冬でも土の中で活動することがある
・活動時期が他のハムシと少しずれていて、秋(9~10月)に活発になる
・成虫は飛ばず、歩行移動する
・幼虫も成虫同様に葉も食害する
ダイコンサルハムシの発生のピークは9~10月で、成虫の姿のまま土の中で越冬します。
一般的な害虫の活動期である春~夏は土の中で過ごし、秋になってから活動を始めるという珍しいタイプのハムシです。
発生場所は本州以南で、暖かければ真冬でも活動します。
成虫の寿命が約1年半と長いのが特徴で、産卵数も多いので秋に一気に個体数が増殖します。
食害されやすい植物
大根・白菜・水菜・小松菜・シュンギク・ネギ 等
ダイコンサルハムシの駆除&防除法
2.成虫を確認したら物理的に捕殺する
3.防虫ネットで作物に近寄らせないようにする
4.適用のある薬剤を使う
ダイコンサルハムシの特徴は「移動が歩行」「秋まで土の中で成長する」という点です。
飛来防止よりも、防虫ネットなどで物理的に作物に近寄らせないようにするほか、収穫後の土壌の殺菌処理を徹底することで次年度以降の発生を抑えるようにするのがポイントです。
防虫ネット使用上の注意点としては、ネットの端を土壌にしっかりと埋め込まなくてはいけないこと。また、既に成虫が発生しているところをネットで覆ってしまうと逆効果ですので、後述するダイアジノン粒剤などで土壌処理を行った後に設置するようにしましょう。
周囲のアブラナ科の雑草で大量発生してしまう事もあるので、圃場周辺の雑草処理も効果的です。
ハムシの駆除に効果がある農薬・薬剤
※画像は我が家の畑に生えたイタドリに寄生するハムシの幼虫(イタドリハムシの幼虫にしては色が少し黒い?)
既に発生してしまっているハムシの駆除には薬剤散布が最も効果的です。
注意点としては、各ハムシに効果があるとされる薬剤でも、食害されている植物に適用がない場合は使用できないという点です。
下記に各ハムシに効果のある薬剤をご紹介しますが、2018年時点での適用表に基づいた内容で変更の可能性もあるため、各自で散布する植物に適用があるかご確認ください。
スミチオン乳剤
スミチオン乳剤は野菜や果樹につく害虫に幅広く効き、安全性の高さから昔から使われている薬剤です。(※毒性:普通物)
ウリ科の植物に寄生するウリハムシ、サンゴジュに寄生するサンゴジュハムシなどに効果があります。
一方で、スミチオン乳剤はアブラナ科の植物には薬害を生じさせてしまうので使用は厳禁。
アブラナ科の植物に寄生する「キスジノミハムシ」や「ダイコンサルハムシ」へは使用しない方が良いです。
ダイアジノン粒剤
ダイアジノン粒剤はダイコンサルハムシやキスジノミハムシの駆除に効果的な有機リン系の薬剤で、播種時に土壌に散布することによって飛来してくる成虫や土壌に産卵しようとする成虫への殺虫効果を発揮します。
ダイアジノンの効果的な使い方については、下記の文献において殺虫効果の出やすい散布方法が記載されていました。
同剤を全面処理土壌混和,つまり圃場全面に処理し,その後トラクターにより耕転,畝立てを行うと,薬剤の粒子は土中深くまで均一に分布する。作条処理土壌混和,つまり畝上に薬剤を散粒し,レーキ等で土中に混和すると,薬剤の粒子は地表面近くに集中して分布する。両処理方法で処理量が同じである場合には後者の方が地表面における薬剤の有効成分濃度は高くなると考えられることから,羽化後土中から地表面に出現する,
あるいは発芽間もない子葉を食害,産卵するため飛来してくる成虫に対してより高い殺虫効果を示すと考えられる。
上記の文献は、テフルトリン粒剤とダイアジノン粒剤について処理方法別の効果の比較をしており、両材とも蒸気圧が高くガス化された成分が殺虫効果と忌避効果を示すとされています。
その効果をより発揮するには、圃場に撒いたものをトラクターで耕うんして薬剤が均一に分布してしまうより、畝の上に薬剤を撒いてレーキで土をかけ地表面に薬剤を分布させた方が殺虫効果が高いと結論付けています。
アルバリン顆粒水和剤
アルバリンはジノテフランを有効成分とする新規ネオニコチノイド系の薬剤で、有機リン剤や合成ピレスロイド剤などに抵抗を持った害虫にも効果的です。
浸透移行性が高いので、希釈して散布することで広く効果を発揮します。
大根や小松菜などのアブラナ科の作物にも適用があるので、キスジノミハムシやダイコンサルハムシの駆除に使うことができます。
畑で上記のハムシが発生してしまっている場合におすすめの薬剤です。
まとめ
今回、この記事を書くにあたって多くの農家さんとつながりのある農業関係の会社に勤める知人に相談したところ、ハムシに困っている農家さんが沢山いること、そして効果的な対策は下記の4つであることを教えてもらいました。
2.暑い時期にビニールを張ってハムシのいる土壌を太陽熱で消毒する(高温で熱消毒)
3.地道に捕殺
4.薬剤で駆除
この知人は有機農家さんとの取引を行っている方なので、多くの農家さんが1~3の方法でハムシと戦っているようですが、やはり一度発生してしまうと無農薬での駆除は難しいとのことでした。
成虫が発生している場合は既に土の中に多くの幼虫や卵があることが多いので、一般的に紹介されている忌避方法(シルバーマルチ・コンパニオンプランツ)は、新たに飛来する個体を忌避できても根本的な駆除には至らずイタチごっこになるのもわかりますね。
ハムシを見つけ次第地道に捕まえて殺すことでも一定の効果はありますが、ハムシの多くは危険を感じると飛び跳ねたり葉から落ちて逃げる習性を持っているので網や布を株元に用意しておくことが大切です。
新たにアブラナ科やウリ科の植物を植える場合は、事前に土壌をハムシが嫌がるような状態に殺菌・燕麦のすき込みなどを行っておくことで被害を最小限に抑えられるでしょう。
既に作物が食害を受けている場合は無農薬での対処は難しく、適応のある薬剤で対処するのが効果的であるようですので、当記事でご紹介した薬剤を例に散布を検討してみてください。