春から夏にかけて花を咲かせる「タンポポ(蒲公英)」ですが、近年見かけるタンポポの多くは「セイヨウタンポポ」と呼ばれる外来種であることをご存知でしょうか?
現在日本で確認されるタンポポの約8割はセイヨウタンポポ、もしくは在来種との交雑種と言われていて、セイヨウタンポポは日本の侵略的外来種ワースト100のひとつに数えられるほどです。
幸運なことに私が住む家の庭周辺には、日本の固有種である二ホンタンポポが咲いているので、セイヨウタンポポとの見分け方や違いを写真を交えて解説いたします。
Contents
タンポポの特徴
- 和名:タンポポ(蒲公英)別名:鼓草(ツヅミグサ)
- 英名:Dandelion
- 学名:Taraxacum
- 階級:キク科タンポポ属
- 分類:多年草
- 分布:日本全土
- 開花時期:3~4月
- 原産地:ヨーロッパ
- 特徴:朝方花が開き、夕方に閉じる
タンポポの花言葉
愛に関する花言葉が多いですが、ヨーロッパでは昔タンポポを愛の占いに使っていたことから、「神様が愛の結果を告げてくれる」という意味が持たされたとされています。
また、風で飛んでしまう綿毛の様子から「別離」という別れの意味を持つ花言葉もあります。
タンポポの種類と分布
日本固有種のタンポポの種類と分布
- エゾタンポポ:北海道・東北地方
- カントウタンポポ:関東・中部地方
- シナノタンポポ:関東・中部地方
- トウカイタンポポ:千葉県~和歌山県の太平洋側
- カンサイタンポポ:長野県以西
- シロバナタンポポ:関東地方以西
外来種のタンポポの種類と分布
- セイヨウタンポポ:日本全国
- アカミタンポポ:日本全国
二ホンタンポポとセイヨウタンポポの見分け方と違い
総苞片(総苞片の形状)で見分けよう!
二ホンタンポポとセイヨウタンポポの見分け方のポイントは、花びらの付け根にある総苞(そうほう)という場所の「総苞片(そうほうへん)が反り返っているかどうか」です。
セイヨウタンポポ:総苞片が反り返っている
二ホンタンポポとセイヨウタンポポの違いは総苞片を見ればすぐに分かりますが、まれに交雑種の場合では、この特徴がわかりにくいものもあります。
交雑種による総苞片での鑑別が困難化していることについては、下記の書籍でも詳しく説明されていますので、興味のある方は是非ご覧ください。
繁殖方法が違う|「他家受粉」と「アポミクシス」
セイヨウタンポポと二ホンタンポポの大きな違いのひとつに「繁殖方法」があります。
二ホンタンポポは、自分以外の株の花粉を受粉する必要(他家受粉)があるため、種子を作るにはハチなどの昆虫の手助けが必要です。
一方でセイヨウタンポポは、「アポミクシス」と言って受粉をせずに自分だけで種子を作ることができるので、周囲に昆虫がいないような環境でも自分のクローンをどんどん作り出して増えることができます。
この繁殖方法の違いが二ホンタンポポに比べて、セイヨウタンポポが圧倒的に増える理由の一つとされています。
セイヨウタンポポ:自分だけで種(クローン)を作り出して増えることができるので、受粉は不要
種子の量と重さが違う
セイヨウタンポポと二ホンタンポポの繁殖力の違いを生み出すのは受粉の仕組みだけではありません。
セイヨウタンポポの種子は、二ホンタンポポの2倍以上の量で、且つ小さく軽いのが特徴です。
そのため、より多くの種子を風にのって遠くに飛ばすことに長けており、一気に生息範囲を広げていきました。
一方で二ホンタンポポは、種子の量は少なく一粒一粒が大きく重いので、あまり遠くに飛ばすことができません。
二ホンタンポポの分布が各地域に限定されているのにはこういった理由があるんですね。
セイヨウタンポポ:種子の数が二ホンタンポポの2倍以上と多く、それぞれが小さく軽い
開花時期の違い
セイヨウタンポポは一年中発芽し、いつでも花を咲かせることができます。
一方で、二ホンタンポポは基本的には春にしか開花せず(種類によっては冬にも発芽することもある)、セイヨウタンポポに比べて繁殖の機会が少ないのが特徴です。
セイヨウタンポポ:一年中発芽・開花する
二ホンタンポポとセイヨウタンポポの特徴比較表
二ホンタンポポ | セイヨウタンポポ | |
分布 | 局地的 | 日本全国 |
形状の違い | 総苞片が閉じている | 総苞片が反り返っている |
繁殖方法 | 他家受粉が必要 | 受粉せずに種子を作れる |
種の量 | 少ない | 二ホンタンポポの倍以上 |
種の大きさ&重さ | 大きく重い | 小さく軽い |
開花時期 | 春(稀に冬にも開花) | 一年中開花する |
環境適応力 | 強い | やや弱い |
ここで注目してほしいのが、一番下の「環境適応力」です。
これまでご紹介したセイヨウタンポポの繁殖能力の強さから、圧倒的にセイヨウタンポポの方が環境適応力が強いように思われれしまうかもしれませんが、逆です。
セイヨウタンポポが分布を広げたり数を増やすことに長けているのは事実ですが、クローンでしか増えないという事は、多様性がないため環境の変化に対応できず、急な気候の変化などに耐え切れずに絶滅してしまう可能性が高いというデメリットもあります。
また、一年中発芽できても、夏など他の植物が生い茂る時期に発芽した個体は、背の高い植物に日光や養分を奪われて大きく育つことができません。
一方で二ホンタンポポは、繁殖力は弱いですが、他家受粉によって多様な個体が生まれるので、寒さや厚さ、病害虫などの影響で一気に絶滅してしまうリスクが少ないと言えます。
また、春に開花したら種を飛ばしてしまい、他の植物が生い茂る夏以降は地面の下で次の開花の季節を待つため、無用に個体数を減らすことなく済みます。
二ホンタンポポが生えている場所とは?
※上の写真は、我が家の庭にある池のほとりに咲いていた日本タンポポ
西洋タンポポは人によって持ち込まれ、小さく軽い種子の特徴を生かして風に乗って分布を広げていきました。
そのため、道端や空き地、駐車場、公園、グラウンド等の新しく開発された環境に生えるタンポポの多くは西洋タンポポである可能性が高いです。
一方で、日本タンポポは昔から環境の変わらない場所で、他所からの影響を受けないような場所、例えば「神社や寺の境内」「田畑」「雑木林」などに残っていることが多いです。
昔から風景の変わらない我が家の庭や田んぼの周辺にも、西洋タンポポに交じって日本タンポポが咲いていますので、新たに開発された環境以外で探してみると日本タンポポが見つかりやすいかもしれません。
二ホンタンポポの株や種子は購入できる?
ネットで検索してみると、日本タンポポの株や種子が販売されているのを見つけました。
時期によりますが、株でしたら春~初夏、種子であれば夏以降にAmazonなどの通販サイトで購入が可能になることもあるのでチェックしておくと良いでしょう。
それにしても日本タンポポは私の家の庭に沢山ありますが、種子を採取したら売ることもできるんですねぇ。
タンポポの綿毛が耳に入ると危ないって本当?
子供の頃に、親に「タンポポの綿毛が耳に入ると危ないから気をつけなさい」と言われたことがある人も多いのではないでしょうか?
この話は、子供が辺りを綿毛で汚さないようにするための大人の嘘だという話もありますが、2013年に「中国の女の子の耳の中に入った綿毛が、発芽して2センチほどの大きさにまで育ち手術をして取り除いた」という例があります。
この女児は当時1歳4か月と幼かったことから、自ら耳に異物(綿毛)が入った事を周囲に知らせることができず発芽にまで至ってしまったのでしょう。
もう少し年齢が上の子であれば自ら異変を知らせて取り除くことは可能であると思いますが、やはり危険であることには変わりなさそうですので、周囲に小さなお子さんがいる中でむやみに綿毛を吹き飛ばすのはやめた方が良さそうです。
まとめ
二ホンタンポポとセイヨウタンポポでは、それぞれ繁殖方法や環境への対応などで違いがあることがわかりました。
現在どんどん減っている日本固有のタンポポが、自宅の庭先に沢山咲いているというのはとても恵まれているんですね。
春~初夏に外を散歩した時にタンポポを見つけたら、花の裏側にある総苞を見て二ホンタンポポかどうか確認してみてください!