ラウンドアップに毒性・発がん性?各国・各研究機関の見解まとめ

とても強力で多くの雑草に効果のあるラウンドアップですが、その安全性については様々な議論がされています。

ラウンドアップの主成分である「グリホサート」については、2015年にWHO外部組織であるIARC(国際がん研究機関)が、毒性や発ガン性の懸念があるとの発表しています。

そして最近では、2017年6月26日に米国カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)が、同州で定める通称プロポジション65の物質リストに、発ガン性物質としてグリホサートを加えると声明を出しました。

既に世界中で多くの人が使っているラウンドアップなどのグリホサート系薬剤への警鐘という事で心配になっている方も多くいらっしゃることと思います。

今回は、ラウンドアップの安全性に関するこれまでの各国・各研究機関の見解をまとめてみましょう。


僕もスギナの除草にはラウンドアップが効果的と聞いてから使っちゃってるよ~

今回はラウンドアップの安全性に関する様々な発表や意見をまとめてみるぞい!

※世界中で使われているラウンドアップ、またはグリホサート系の薬剤の安全性については、当サイトが「安全」かどうかの断定をすることは不可能ですので、各国・各研究機関がどのような見解を示しているのかまとめるに留めます。

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています

ラウンドアップの安全性についての各方面の見解

世界のデータ

1.日産化学(ラウンドアップの日本での販売元)

日産化学によると、ラウンドアップ(グリホサート)の安全性については下記の様に述べられています。

  • 土に落ちた成分は短時間で土壌粒子に吸着され除草剤としての効果を失う
  • 土壌粒子に吸着された成分は土中に浸透しないので、根から吸収されることもない
  • 薬効を失った成分は、微生物によって水や炭酸ガスに分解される
  • 植物独自のアミノ酸を合成する代謝経路(シキミ酸経路)を特異的に阻害するため、人や動物には影響が少ない
  • グリシンから成るアミノ酸系除草剤であり、毒劇物に該当しない普通物である

薬剤の作用機序や主要成分からみる安全性に関して説明がされています。

2000年に、日本農薬学会誌にのせられている「グリホサートの毒性試験の概要」によると、ウサギ・イヌ・ラットなどを用いて、

  • 薬剤を点眼し目への影響を調査
  • 皮膚への刺激性を調査
  • 12カ月間口から飲ませる
  • 催奇形性(子に与える奇形などの影響)の調査

等を行ったところ、眼に対する刺激は軽度~中等度であったものの、その反応は可逆性で次第に回復し、催奇形性や繁殖能力への影響も見られず、皮膚刺激も軽度でした。

これらの結果から、毒物ではなく「普通物」に相当すると結論付けられました。

2.IARC(国際がん研究機関)の見解

2015年3月20日に、WHOの外部機関であるIARCが、グリホサートを含む5つの有機リン系農薬について評価の結論を発表しました。

その結果というのが、グリホサートはグループ2A「probably carcinogenic to humans(おそらく、人に発がん性がある)」という評価だったので、世界中に衝撃が走りました。

その時点ですでにラウンドアップをはじめとするグリホサート系の薬剤が世界中で使われていたからです。この発表からすぐに、日産化学が発ガン性の心配はないとする声明を出しています。

一点注意が必要なのは、グループ2Aの「おそらく発ガン性がある」というのは、その物質の発ガン性の強さからの分類ではなく、発ガン性があると言える根拠がどれだけあるかという「証拠の重み(the wight-of-evidence)」で分類している点です。

一番重い評価のグループ1は「発ガン性がある」という断定ですが、グループ2Aはグループ1の物質の次に発ガン性が強いという訳ではないという事です。

IARCが出したグリホサートに関する結論は下記のようなものでした。

人の非ホジキンリンパ腫に対して限られた根拠があり、さらに動物実験では発がん性の明白な根拠がある

しかし、その「人の非ホジキンリンパ腫に対する限られた根拠」とする内容を見てみると、職業や生活習慣などの質問と同様にグリホサートの年間使用日数に関する質問があり、それらの回答から疾患に関する関連性を見るという手法を取っていました。その結果、非ホジキンリンパ腫とグリホサートの年間使用日数に「相関関係」が見られたという物でした。


因果関係ではなく、相関関係という所がポイントじゃよ

つまりは、ケースコントロールスタディとして、非ホジキンリンパ腫の人に生活習慣等を質問し、その結果グリホサートの使用回数が多かったというもので、「グリホサート=非ホジキンリンパ腫の原因」が分かったわけではないのです。

世界的にもこのIARCの結論には異論が続出し、ドイツのリスク評価研究所(BfR)やカナダ、オーストラリアなどの研究機関も、発ガン性があると結論付けるにはあまりにも根拠が不十分だとして非難の声をあげています。

3.FAO/WHO(JMPR:合同残留農薬専門家会議)での声明

2016年5月16日に、FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機構)はJMPR(合同残留農薬専門家会議)において、グリホサートは

予想される接触による暴露量で遺伝毒性を示す可能性は低く、食事を介した暴露によるヒト発がんリスクの可能性は低い

と結論付けられました。

前述のIARCはWHOの外部機関ですが、意見が分かれていることが分かります。


「予想される接触による暴露量」ってことは、普通に使ってれば毒性には問題ないってことかな?

みんなが普段食べている食塩も量を間違えれば毒になるし、ラウンドアップの経口毒性は食塩より低いと言われているのう

4.日本政府の見解

これらの流れを受けて、2016年7月12日に、日本の内閣府食品安全委員会は、グリホサートにおける発ガン性や遺伝毒性はないと結論付けています。


日本政府の現在の見解は「問題なし」という事なんだね!

今のところはそういう事じゃな

5.アメリカ カリフォルニア州の見解

冒頭でもご紹介しましたが、2017年6月26日、米国カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)が、同州で定める通称プロポジション65の物質リストにグリホサートが発ガン性物質として登録されました。

このニュースはSNSなどでも拡散され、大きな話題を呼びました。


あれ、カリフォルニア州だと発ガン性物質登録されてるよ!?

アメリカでリスク管理を取り上げる場合は、カリフォルニア州の「プロポジション65」が例に上がることが多いのでよく耳にするかもしれんのう

このプロポジション65は、アメリカカリフォルニア州独自で定めた州法で、発がん性物質と生殖毒性物質が飲料水源に排出されるのを禁止し、かつそれらの物質が人に暴露される可能性がる場合は事前に警告を行う事を義務付けています。

今回のOEHHAの発表は、前述のIARCの報告(2015年)をもとにされており、その後2016年に日本の内閣府食品安全委員会が「発ガン性や遺伝毒性はない」と結論付けています。

6.アメリカ連邦政府当局の見解

カリフォルニア州のOEHHAの発表からさかのぼること3か月、アメリカ連邦政府の最新の見解では、

2017年3月に連邦政府当局からグリホサートは「ヒトに対して発がん性があるとは考えにくい“not likely to be carcinogenic to humans”」

と発表されています。


アメリカ連邦政府当局とカリフォルニア州でも見解が分かれているんだね。

「カリフォルニア州で発がん性物質に登録!」というニュースの見出しに驚いてしまった人もいるじゃろうが、ここまで見て現在のラウンドアップ(グリホサート)の置かれている状況、その他の研究機関の見解が整理できたかのう

7.モンサント社がラウンドアップが原因で癌になったと訴えられた裁判で敗訴【※2018/8/11追記】

米国カリフォルニア州在住の男性が癌になったのはラウンドアップのせいだとして、販売元のモンサントを提訴した裁判で、モンサントに約2億9000万ドルを支払うように命じた判決が下されました。(モンサントは上訴する意向を示しています)

スポンサーリンク

ラウンドアップをめぐる毒性・発ガン性への見解【時系列】

医学論文

ラウンドアップをはじめとするグリホサート系除草剤の毒性・発ガン性についての様々な見解を時系列でまとめてみましょう。

2000年5月20日:日本農薬学会「グリホサートの毒性試験の概要」

→ 毒物ではなく普通物

2015年3月20日:IARC(国際がん研究機関)

→ グループ2A(人に対しておそらく発ガン性)に分類

2016年5月16日:FAOとWHOの合同会議(JMPR:合同残留農薬専門家会議

→ 遺伝毒性・人の発ガン毒性の可能性は低い

2016年7月12日:日本内閣府食品安全委員会

→ 遺伝毒性・発ガン性はない

2017年3月:アメリカ連邦政府当局

→ グリホサートが人に対して発ガン性があるとは考えにくい

【その他諸外国・研究機関の反応】

◆カナダ: 用法を守れば健康に害を及ぼすものではないProposed Re-evaluation Decision PRVD2015-01, Glyphosate”. Health Canada (2015年6月17日).

◆ニュージーランド:グリホサートの発ガン性に関しては証拠が十分であるとは言えないReview of the Evidence Relating to Glyphosate and Carcinogenicity”. Environmental Protection Authority Te Mana Rauhī Taiao (2016年8月)

◆オーストラリア:グリホサートの暴露は、人に発ガン性・遺伝毒性のリスクをもたらすものではないRegulatory position:consideration of the evidence for a formal reconsideration of glyphosato”. Australian Pesticides and Veterinary Medicines Authority (2016年9月)

◆ECHA(欧州化学機関):人におけるグリホサート暴露による任意の癌形(非ホジキンリンパ腫)との間の関連性は、示された疫学データが農薬の発ガン性の可能性を検出するために限定されたもので説得力がない“同上-Australian Pesticides and Veterinary Medicines Authority

◆EFSA(欧州食品安全機関):the weight-of-evidence(証拠の重み)は、グリホサートの使用に関連したヒトへの発ガン性のリスクはない “同上-Australian Pesticides and Veterinary Medicines Authority

2017年6月26日:米国カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)

→ 同州が定めるプロポジション65にグリホサートを発ガン性物質として追加

2018年8月11日:アメリカ裁判所

→ ラウンドアップの業務用製品「レンジャープロ」のジェネリック製品を仕事で使用していた男性が、癌を発症したとして2016年にモンサントを提訴。米裁判所はモンサント社に約2億9000万ドルの支払いを命じた。

まとめ

現在に至るまでのラウンドアップなどのグリホサート系除草剤の遺伝毒性・発ガン性についての各国・各研究機関の見解をまとめました。

最後にもう一度整理すると、

【発ガン性 or 遺伝毒性の可能性は低いと言っているグループ】

  • 日本農薬学会
  • FAO/WHOのJMPR(合同残留農薬専門家会議)
  • 日本内閣府食品安全委員会
  • アメリカ連邦政府当局
  • ドイツ
  • カナダ
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • ECHA(欧州化学機関)
  • EFSA(欧州食品安全機関)

【発ガン性があると言っているグループ】

  • IARC(国際がん研究機関)
  • OEHHA(カリフォルニア州環境保健有害性評価局)

※これら以外にも見解を示している国・機関があると思いますが、各国の声明や論文に示されていたものを中心に抜粋しています。

上記のようにまとめると、発がん性・遺伝毒性の可能性は少ないとしているところが多いのが分かります。

しかし、結論に至るまでの検証は様々(例えば、「動物実験において膨大な量の暴露によって一部腫瘍が増大するラットが見られたが、許容量を超えなければ発がん性があるとは言えない」など)なので、原則として通常使用による毒性の有無、発がん性などの危険性を評価していると考えなくてはなりません。

カリフォルニア州の発がん性物質として追加のニュースは、インパクトもありラウンドアップを市場から追放しようと考える人もいるかもしれませんが、その前に様々な研究機関の見解などを合わせてみて判断するようにしましょう。

※追記:

米裁判所の判決でモンサントが敗訴したことから、同様の裁判が続々と起こっていくことが予想されるようで、この流れでラウンドアップの発がん性に関する問題は大きく動き出す可能性があります。

モンサント社は上訴するとのことなので、今後の動向にも注目する必要がありそうです。

【参考】