メタリックブルーの巨大なアリに似た虫の正体は「ツチハンミョウ」【画像・生態】

オオツチハンミョウ

こんにちは、田舎センセイです!

先日我が家の庭先に「巨大なアリ」のような形をしているメタリックブルーの体をした虫を発見しました。

田舎で色んな虫がいる我が家ですが、この虫をこの場所で見たのはこれが初めて。長年この地に住んでいる家族も初めて見ると口をそろえて言っていましたが、その正体は「ツチハンミョウ

実はこの虫はとても面白い生態をしていて、成虫になるまでの工程がまるでギャンブルの様な低確率の生存競争を勝ち抜いているんです。

本記事では、そんなツチハンミョウの特徴や生態について解説いたします。


ツチハンミョウって結構珍しい虫なんだね!

田舎の我が家でも中々見かけないし、結構珍しいのう

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています

ツチハンミョウの画像と生態

オオツチハンミョウ
・名前  :ツチハンミョウ(土斑猫)
・英名  :Blister Beetle
・階級  :コウチュウ目ツチハンミョウ科
・分布  :日本全国
・見た目 :メタリックブルーのボディ、大きな顎
・大きさ :2㎝~3㎝弱

ツチハンミョウはコウチュウ目ツチハンミョウ科の昆虫の総称で、日本には約10数種類いると言われています。

我が家で発見したのは(おそらく)オオツチハンミョウで、かなり腹部も大きくこれから産卵する雌だったのかもしれませんね。

ツチハンミョウの生態が面白いと冒頭で描きましたが、どんな生態・習性があるのか簡単にまとめてみます。

  1. 死んだふりをする(擬死
  2. カンタリジンという毒を持っている
  3. 甲虫類にしてはあり得ないほど多くの卵を産む
  4. ハナバチ類の巣に寄生する
  5. 通常の完全変態よりも工程が多い「過変態」で成虫になる

なんか盛りだくさんだね

かなり特異な生活史があるので、ファーブル昆虫記でも取り上げられている虫なんじゃよ。

死んだふりをする「擬死」&足の関節から黄色い毒の汁(カンタリジン)を出す

ツチハンミョウは実の危険を感じるとひっくり返って脚をまげて死んだふりをします。

ツチハンミョウ類は翅が退化しているので飛ぶことができず、卵を沢山産む必要がある(※後述します)のでお腹がパンパンに膨れて大きい個体が多いです。そのためか「擬死」と呼ばれる死んだふりをするといわれています。

オオツチハンミョウ
お腹は確かに大きくて、とんで逃げるような翅もありませんね。

また足の関節から黄色い汁を分泌することがあるのですが、それは猛毒カンタリジンという成分で、直接肌につくと水ぶくれができてしまうほどの毒性を持っています。


このカンタリジンの毒性についてはあとでもう少し解説するぞい!

ツチハンミョウは約4000~6000個と沢山の卵を産む

ツチハンミョウはコウチュウ目の昆虫にしては異常なほど多くの卵を産みます。

その数は約4000~6000個とも言われていて、これだけの卵を産むせいかお腹が大きく成虫の外見はお腹が重そうでアンバランスです。


なんでそんな沢山の卵を産むの?その割にはツチハンミョウってそんなに見かけることのない珍しい昆虫だよね?

それはツチハンミョウが成虫になるまでの過程が過酷で成功率の少ない方法をとっているからなんじゃよ

ツチハンミョウはハナバチ類の巣に寄生して成虫になる

シロスジヒゲナガハナバチ
※画像「シロスジヒゲナガハナバチ」:wikimdia commons

ツチハンミョウが成虫になるまでの過程がギャンブルに満ちていて、成虫になれる確率が極端に低いために、ヘタな鉄砲も数うちゃ何とやらではないですが、子孫を残す確率を上げるために少しでも多くの卵を産む必要があるわけです。

ツチハンミョウが成虫になるまでの過程

①卵を大量に生む
②卵から孵った幼虫は、ハナバチがやってくるアザミなどの花によじ登る
③花に蜜を吸いに来たハナバチ(♀)にしがみついて巣まで連れて行ってもらう
④ハナバチ(♀)が巣についたら、卵の周りに飛び降りる
⑤蜜や幼虫を食べて成長する
⑥成虫になるまでハナバチの巣で過ごす

以上がツチハンミョウの幼虫が成虫になるまでの過程をざっくりと説明したものです。

まず②で、ハナバチが蜜を吸いに来ないような花によじ登ってしまうとアウト(=死)。

次に、③でハナバチの雌(♀)にしがみつけなかったらアウト。

また、③でしがみついたのがハナバチ以外の虫だったらアウト。

またまた、③でしがみついたのがハナバチであっても雄(♂)だったら、どこかでハナバチの雌に飛び移る超ラッキーなことが起きでもしない限りアウト。

④で、ハナバチの雌が巣に戻った時に巣の中に飛び降りられないとアウト。

このようにツチハンミョウの幼虫は、一見ギャンブルにも思えるような低確率の工程をクリアしていかないと成虫になれないという、極めて非効率的な方法で成虫になるための試練に挑むんですね。

そして近年ではハナバチ自体の数が減少傾向にあるため、地域によってはツチハンミョウも絶滅危惧指定されているところもあります。

完全変態よりも工程の多い「過変態」

ツチハンミョウは、成長に至るまでの過程を

卵→幼虫→擬蛹(ぎよう)→幼虫→蛹(さなぎ)→成虫

という工程を経るのですが、これは一般的な昆虫が成虫に至るまでの工程よりも多いので「過変態(かへんたい)」と呼ばれます。

幼虫がハナバチの巣に侵入すると、巣内部の卵や蜜を食べ「擬蛹」と呼ばれるサナギによく似た形状になり動きを止めます。その後また芋虫状の幼虫に戻り、今度は本当の蛹になります。


ハナバチに寄生したり、毒出したり、過変態を経て成虫になったり、話題に事欠かない虫なんだね

ツチハンミョウの毒と危険性:カンタリジンの致死量

ツチハンミョウの足関節などからは、猛毒のカンタリジンを主成分とする毒性の強い黄色い液体が分泌されます。

ツチハンミョウが英語で「Blister beetle(=水膨れの甲虫)」と呼ばれているように、この液体が肌に触れると火傷の後のような水疱ができてしまうので、例え死んでいる個体だとしても素手で触るのは危険です。

カンタリジンの致死量は(体重にもよりますが)約30mgと言われていて、この量はツチハンミョウを一匹食べると十分に死に至るだけの量を摂取できてしまいます。

スポンサーリンク

蟲姫物語とドラマ『あなたの隣に誰かいる』

ツチハンミョウと言えばもう一つ「蟲姫物語」も忘れてはいけません。

霧子村の民話で、ある城の美しい姫に身分違いの恋をした貧しい男は蟲になって姫に近づこうとするが、姫の夫となる男に踏み潰され、男が人間に戻っていた時には長い歳月で姫は死んでいた。愛する姫を失った蟲の男は、姫の娘・雪姫を姫の生まれ変わりと信じ、娘が成人するのを待ち、手をかけて子供を作るが、それでも本当の愛は手に入らない。年をとらず、死なず、呪われた命を持った男は、娘を愛し、子供を作っては娘を殺し、間にできた子供を愛し、これを482年と行ってきた。娘たちを愛することで、姫との永遠の愛を手に入れようとした。

※引用 - wikipedia:あなたの隣に誰かいる

2003年に放送されたテレビドラマ「あなたの隣に誰かいる」で、蟲姫物語を元にしたとされるサスペンスドラマがあったんですが、私はこのドラマがとても印象的でリアルタイムで見ていたのを覚えています。


いかりや長介さんの遺作とも呼べる作品だよね

北村一輝さんが演じる蟲男が不気味で本気で怖かったのう

蟲姫物語は引用文の通りではありますが、実際に民話として残っているお話で、この蟲男が返信したとされる虫が「ツチハンミョウ」とされているんですね。

ドラマではいかりや長介さんに刺された北村一輝さん演じる蟲男の耳からツチハンミョウらしき虫が飛び出てくる描写がありました。

まとめ

ツチハンミョウは調べれば調べるほど面白い虫で、それ以降成虫を見かけると「よくあの方法で成虫にまでなれたね」と声をかけたくなるほど稀有な存在だと認識するようになりました。

ツチハンミョウについては、毒はありこそすれ室内に侵入してくる害虫でもないですし、動きも特別早いわけではないのでそっとしておいてあげれば問題はありません。

逆にその面白い生態を知って興味を持つ人が増えてくれるといいですね。

興味を持った人は是非書籍などもいくつかあるので見てみてくださいね!

created by Rinker
¥2,200 (2024/11/07 16:12:24時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥366 (2024/11/08 04:28:12時点 Amazon調べ-詳細)