融雪剤の使い方|撒くタイミングや成分別の効果について解説します!

融雪剤

冬季に積雪のある寒冷な地域では、路面の凍結や積雪によるスリップ事故や転んで怪我をすることが少なくありません。

定期的に除雪をしても凍結面や根雪になった部分は取り除くことが大変ですよね。

私自身も北海道(札幌)の出身で、今も冬に積雪のある宮城県北部に住んでいるので、冬季の路面凍結の大変さや恐ろしさは身に染みてわかります。

そんな北国での生活に欠かせないのが「融雪剤」や「凍結防止剤」です。

上手く使う事で路面の凍結を防止したり除雪の作業を軽減させることができますが、様々な種類があるために使い分けや注意点をご存知ない方が多くいらっしゃるようです。

そこで本記事では、冬季の路面凍結対策として用いられることの多い「融雪剤」「凍結防止剤」の使い方・散布のタイミングや効果などについて解説いたします。


文字だけを見れば「雪を解かす」のと「凍らせない」ってことで使うタイミングの違いなのかなぁ?

うむ、それではまずはその両者の違いから見ていくとするかのう

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融雪剤と凍結防止剤の違いとは?

凍結路面

融雪剤と凍結防止剤との違いですが、実は「路面の凍結や積雪を防ぐ」という点で言えば大きな違いはありません

詳細はあとでご説明しますが、一般的に融雪剤は「塩化カルシウム凍結防止剤は「塩化ナトリウムであることが多いので成分上の違いがあります。

塩化カルシウムは溶けるときに熱を発するので「融雪剤」とされ、塩化ナトリウムなどは凝固点を下げる(本来は0度を境に凍結するのを、ー20度など、より低温度じゃなくては凍らなくする)ことで凍結を防ぐために「凍結防止剤」という言い方をします。

しかし、先に挙げた塩化カルシウムも凝固点降下作用があるので凍結防止剤とも言えます。

つまりは、この違いをちゃんと理解していれば融雪剤なのか凍結防止剤なのかはさほど問題ではないのです。

それよりも、その成分ごとにメリットデメリットがあり、お住まいの地域の気候や使用する場所によって使い分けることが出来るかどうかが大切です。

融雪剤か凍結防止剤かではなく、塩化カルシウムなのか塩化ナトリウムなのか、はたまた酢酸マグネシウムなのか尿素なのかという成分レベルでの使い分けに注意を払いましょう。


なるほど、雪や氷を解かすのは「発熱」「凝固点の降下」なんだね!

うむ、厳密にはそれ以外の方法もあるんじゃが、その点で言えば「塩化カルシウム」は両方の性質を持っていて、「塩化ナトリウム」は凝固点効果のみという点が違う所じゃのう
融雪剤と凍結防止剤の違いまとめ

融雪剤(塩化カルシウム):凝固点降下作用がある、溶けるときに熱を発する
凍結防止剤(塩化ナトリウム):凝固点降下作用がある

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融雪剤の成分別の特徴とメリット&デメリット

塩害

融雪剤や凍結防止剤と呼ばれるものには様々な成分の物があり、それぞれメリットとデメリットがあります。

一般的に融雪剤・凍結防止剤と呼ばれるものには下記があります。

・塩化カルシウム
・塩化ナトリウム
・塩化マグネシウム
・酢酸系(カルシウム/ナトリウム/マグネシウム)
・尿素
・カーボンブラック/炭素微粒子

それぞれの特徴について具体的に解説します。

「塩化カルシウム」をつかった融雪剤・凍結防止剤

名称塩化カルシウム
化学式CaCl₂
発熱あり
凝固点降下マイナス50度
メリット融雪効果&即効性が高い
極寒地でも使用できる
デメリット皮膚につくとただれる危険性がある
塩害
その他防湿剤&防塵剤としても利用可能

塩化カルシウムは、私のような北海道民は「塩カル」などと略して呼ぶこともあるほど雪国ではポピュラーな融雪剤です。

水に反応して発熱するので雪や氷を溶かす速度が速く、凝固点もマイナス50度まで下がるので、北海道などの雪が多くとても寒い地域で使われます。

一方で注意が必要なのが「塩害」と「人体への付着」です。

塩化物であるため散布場所周辺のコンクリートや鉄骨、土壌に対して塩害を起こしてしまい、金属の腐食や植物の生育を妨げるなどの問題が起きます。

また、散布後に自動車が走ることによって自動車のサビの原因にもなります

また、水に反応して発熱するので皮膚につくと皮膚炎を起こしてしまうことがあり、散布時には必ず手袋をして融雪剤散布スコップを使わなくてはならないのもデメリットです。

安くて効果が高い反面、デメリットも多いのが塩化カルシウムの特徴です。

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「塩化ナトリウム」をつかった融雪剤・凍結防止剤

名称塩化ナトリウム
化学式NaCl
発熱無し
凝固点降下マイナス20度
メリット融雪効果が長時間持続する
最も安価
デメリット極寒地域では効果が薄い
塩害

塩化ナトリウムは、塩と同じですが融雪剤用として販売されているものは食用ではないので注意が必要です。

融雪剤・凍結防止剤としては最も安価凍結防止効果が長持ちするので、高速道路などでの凍結防止剤としてよく使われています。

凝固点降下作用はマイナス20度までしかないので、朝晩の冷え込みでマイナス20度程度まで下がるような極寒地域では効果を発揮しません。

また、塩化カルシウム同様に塩害が起きるので使用時には注意が必要です。

「塩化マグネシウム」をつかった融雪剤・凍結防止剤

名称塩化マグネシウム
化学式MgCl₂
発熱なし
凝固点降下マイナス30度
メリット即効性が高い
融雪効果が長時間持続する
比較的安価
人体に優しい
デメリット塩害(Nacl・CaCl₂より軽度)

塩化マグネシウムは、塩化ナトリウムと同様に発熱はせず凝固点を降下させて凍結を防止します。

ポイントは、塩化ナトリウムに比べて凝固点が低い(マイナス30℃)ことと、塩害が軽度であること。(※金属腐食性はあるが、塩化ナトリウムや塩化カルシウムに比べて土壌や環境への影響は少ない)

また、フレーク状の融雪剤があり、水に溶けやすく即効性が高いのも特徴です。

価格もさほど高くないので、人体や土壌(土・コンクリ・鉄)に優しく使える融雪剤としてとても使いやすいのが特徴です。

「酢酸ナトリウム(カルシウム・マグネシウム)」をつかった融雪剤・凍結防止剤

名称酢酸ナトリウム
化学式CH₃COONa
発熱無し
凝固点降下マイナス25度
メリット塩害(金属腐食)の心配がない
微生物によって無害な物質に分解される
デメリット高価
コンクリートの劣化が進みやすい
散布後に酸っぱい臭いがする

塩害対策として近年使われるようになっているのが「酢酸ナトリウム」などの塩化物を使っていない凍結防止剤です。

上の表では代表して酢酸ナトリウムの性質をご紹介していますが、塩化カルシウム同等の融雪効果がありながらも、鉄の腐食がほとんど起きない(塩害の心配がない)のが特徴です。

デメリットは「コンクリートの劣化」と「高価である」という点。

凍結防止剤の性能等の取りまとめ調査について」 長谷川(北陸技術事務所)によると、酢酸系の凍結防止剤の金属腐食に関してはほとんど心配はいらないが、凍結防止剤による凍結融解の繰り返しによるコンクリートの剥離現象である「スケーリング劣化」において、塩化ナトリウムに比べて酢酸ナトリウム・酢酸カリウムの劣化が激しいと言う結果が報告されています。

同じ酢酸系でも、コンクリート部分の劣化を抑えるのであれば、酢酸マグネシウムが最も優れているようですね。

塩化カルシウムなどに比べて、1.5~2倍以上の値段がするのですが、特に安全性や塩害対策をしたい方におすすめです。

「尿素」をつかった融雪剤・凍結防止剤

名称尿素(カルバミド)
化学式(H2N)2C=O
発熱無し
凝固点降下マイナス12度
メリット金属腐食性がほぼ無い
デメリット即効性・効果の持続性に乏しい
融雪効果はあまり高くない
河川等の富栄養化につながる
アルカリ成分と反応すると異臭

自動車や橋脚などの金属部分の腐食を防ぐために「尿素」を主成分とした凍結防止剤もよく使われています。

メリットは「金属腐食性(塩害)が無い」という点。

一方で、尿素は凝固点効果がマイナス12度程度極寒地での利用は適さず、融雪効果&効果の持続性に乏しいのが欠点です。

また、道路のセメント(アルカリ成分)と反応してアンモニアを発生させるので、風通しの良い所で使った方が良いでしょう。

比較的積雪量が少なく、自動車の交通量が多くて風通しの良い場所で使うのに適しています。

「融雪淡・カーボンブラック・炭素微粒子」をつかった融雪剤・凍結防止剤

名称粉炭・カーボンブラック・炭素微粒子
化学式C
発熱無し
凝固点降下
メリット植物や農作物に影響がない
(商品によっては)安価
デメリット太陽光を利用するため日陰では使えない
カーボンブラックは発がん性の疑い

炭も融雪効果を持つ物のひとつですが、これまで紹介した物とは少々違い「太陽熱を集めて溶かす」というとても原始的な方法です。

「太陽熱で・・・」という事からもわかる通り、日が出ている日中の晴れた日に効果がありますが、日陰の場所や曇った日では効果があまりないのが欠点です。

一方で、植物や農作物、コンクリートや金属には影響を及ぼさないので安全であるのがメリットと言えます。

ただし、カーボンブラックを原材料にしている融雪剤に関しては、カーボンブラック自体がIARC(国際がん研究機関)において発がん性評価グループ2B「人に対する発がんの可能性がある」と位置付けられています。(※参考:平成平成28年度ばく露実態調査対象物質の評価値「カーボンブラック」)

特徴別の融雪剤評価一覧

寒い地域でも使える融雪剤|凝固点降下の程度比較

 凝固点
塩化ナトリウム約−20℃
塩化カルシウム約−50℃
塩化マグネシウム約−30℃
酢酸系(ナトリウム・カリウム・マグネシウム)約−25℃
尿素約−12℃
融雪炭・カーボンブラック・炭素微粒子

融雪剤を使いたい地域の最低気温が融雪剤の凝固点降下温度よりも低い場合は「効果が出にくい」ので、極寒地に住んでいる場合は塩化カルシウムなどを選ぶようにしましょう。

錆びない融雪剤|塩害(金属腐食)の程度比較

 金属の錆びやすさ
塩化ナトリウム錆びやすい
塩化カルシウム錆びやすい
塩化マグネシウムやや錆びやすい
酢酸系(ナトリウム・カリウム・マグネシウム)錆びない
尿素錆びない
融雪炭・カーボンブラック・炭素微粒子錆びない

雪国の車が傷みやすい理由の一つに融雪剤による「塩害」があると言われています。

ご自宅の前や駐車場などに散布する場合は、塩害の有無に注目して選ぶのも良いでしょう。

コンクリートへの影響|スケーリング劣化(コンクリートの劣化)程度

 コンクリートの劣化のしやすさ
塩化ナトリウム(※塩化ナトリウムを基準とする)
塩化カルシウム劣化しにくい
塩化マグネシウムとても劣化しにくい
酢酸系ナトリウム劣化しやすい
酢酸カリウム劣化しやすい
酢酸マグネシウムとても劣化しにくい
尿素
融雪炭・カーボンブラック・炭素微粒子

塩化ナトリウムを基準としたときに、酢酸ナトリウムや酢酸カリウムはコンクリートの劣化がしやすいので注意が必要です。

一方で、酢酸マグネシウムや塩化マグネシウムは水と変わらない劣化度合いということでとても劣化しにくいことが分かりました。

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融雪剤を撒くタイミングはいつがいい?

凍結路面

融雪剤を使うときに迷うのが「散布するタイミング」です。

融雪剤と聞くと積もっている雪の上に撒くような印象がありますが、最も効果的なのは「雪が積もる前に地面に撒く」というタイミングです。

平成22年度の寒冷地土木研究所の「凍結防止剤の散布処方に関する基礎的研究」によると、雪が降る前の事前散布と降った後の事後散布では、事前散布の方が効果的だったことが報告されています。

もしすでに雪がかなり積もっているのであれば、ある程度しっかりと除雪してから雪の降っていないときに散布すると効果的です。

天気予報を見て雪が降りそう、もしくは路面の凍結予報が出ている時には事前に道路に融雪剤や路面凍結剤を散布しておくようにしましょう。

・効果的なのは雪が降る前のタイミング
・すでに雪が積もっている場合は、除雪をしてから撒く

 まとめ

今回様々な成分の融雪剤についてご紹介いたしましたが、いずれも一長一短で万能な融雪剤・凍結防止剤というのは無かったという印象です。

ただ、融雪剤の使用に関しては「塩害による金属の腐食」という副次的なデメリットが大きいので、そこを避けたい方は、高価ではありますが鉄・コンクリートへの影響がない「酢酸マグネシウム」が選択肢の一つになるのではないでしょうか。

しかし、酢酸マグネシウムはあまりネットでも販売されていないので、ホームセンターで探すか、塩害の程度の低い「塩化マグネシウム」を選ぶというのでも良いかもしれません。

また、塩害などを特に気にしないのであれば、安価で融雪効果が持続する「塩化ナトリウム」か、安価で溶ける際の発熱によって融雪効果が高い「塩化カルシウム」が第一選択になってくると思います。

冒頭でも触れたとおり「融雪剤か凍結防止剤か」ではなく、成分によってこれだけメリットデメリットが違うので、ご自身の使用シーンに合わせた選択が必要になってきます。

私の故郷の北海道では塩害があっても塩化カルシウムが選択肢にならざるを得ないのは、凝固点の問題で致し方なかったんですね。

本記事が、周辺環境を守りつつ冬季の路面凍結を上手く防ぐ助けになれば幸いです。