「田舎の自然豊かな環境で子育てがしたい!」
今現在そう考えている、乳幼児を育児中のご夫婦は多いのではないでしょうか。
「人が飽和状態で皆ストレスを抱えている都会よりも、土地も広く空気も美味しい田舎でのびのび育った方が子供にとっていいに違いない!」
そう思いますよね?
近年では、都市部への人口の集中によって、地方都市や田舎の若年層の人口減少が急速に進み、過疎化がとまりません。
その主な原因は「仕事が無い」という理由で、自然豊かな田舎に移住して子育てをしたくても容易に実行することが出来ないのが現状でしょう。
しかし、今後私のようにフリーランスや在宅勤務(リモートワーク)の業務形態をとる人も増え、仕事をする場所が必ずしも都市部でなくてよいとなれば、田舎への移住を決断する人も増加すると考えられます。
そのような動きはこの先10年以内に加速するでしょう。
もし、あなたが幼い子供を連れて田舎に移住をするとした場合に、一体どのようなメリットやデメリットがあるのかを、1歳児を連れて田舎に移住してきた私の実体験をもとに解説したいと思います。
Contents
田舎での子育てについて考えてみる
田舎で子育てをしている身として思うのは、
「自然たっぷりの環境は子育てにとって間違いなく良い、ただしデメリットの方が多い」
という事です。
(※あくまで私の考えです)
田舎での暮らしに憧れを抱いて移住をしたは良いものの、不便さや田舎特有の人間関係などに嫌気がさして都会に引き返した例などは、ネットで調べるとゴロゴロ出てきます。
私も、東京での人の多さとストレスを抱えた社会を目の当たりにして、田舎での移住を考えはじめた人間の一人です。
しかし、実際に田舎に移住して感じたことは、田舎ならではの「不便さ」は、育児にとってはかなり致命的であるという事。
豊かな自然と新たな環境に胸を躍らせて田舎の良い面ばかりを見ていると、移住はできても定住まで行きつかずに都会に引き返してしまうでしょう。
Googleで「田舎 移住」と検索するとそのような失敗談はたくさん見つかります。そして、それらの失敗の多くは、リサーチ不足・準備不足が招いたものが大半であると思っています。
そのような失敗を予め防ぐためにも、「デメリット」も忘れずにリサーチするようにしましょう。
移住をする場合はどんなシチュエーションが考えられるのか?
田舎への移住に関するデメリットが多かろうが、有無を言わさず移住をせざるをえない場合もあります。
移住をするきっかけとなる出来事として、下記のような理由が考えられるでしょう。
A:親族がその土地(田舎)にいる場合
- 祖父母のいる環境での子育てが目的
- 両親の介護に伴う移住
- 家業を継ぐため(Iターン)
- 結婚、離婚で実家に戻る場合(田舎に嫁ぐ場合)
B:全く縁故が無いにもかかわらず田舎に移住する場合
- 子供のアトピー、喘息、アレルギー疾患の治療のため
- 子供のいじめや不登校のため
- 転勤など親の仕事の都合
- 食育など、教育面での考えから
- 田舎暮らしへの憧れから
それぞれのシチュエーションにおいて、田舎への移住で得られるメリットやデメリットが違うでしょう。
A-①のように、祖父母のいる環境で子育てをするのであれば、子供を見る目も増えるので抱えている育児の問題が解決されることも多いでしょう。
また、B-①やB-②のように、現段階でお子さんが抱えている病気やいじめなどの問題を解決するための移住も、移住すること自体が問題解決につながるのでメリットが多いでしょう。
ただ、B-⑤のように、単純な田舎暮らしでの憧れのみで、デメリットが見えていない場合は注意が必要です。
田舎は子育て世代にとっては中々シビアな側面が多くあります。
まずはそんなデメリットから見てみましょう。
田舎で子育てをするデメリットは?
子育てに関して感じる田舎暮らしのデメリットは、下記のようなものが挙げられます。
1.同世代の子供が少ない
田舎は都会に比べて当然「少子高齢化」で、小さなお子さんは都会に比べるとかなり少ないです。
子供が少ないという事は、子供が遊べるような場所や遊具、子供向けのサービスも少ないという事になります。
私が東京で働いていたころは、ベビーカーで入りやすいスロープの付いたお店や、子供を遊ばせておくキッズスペースのあるお店もたくさんありました。
「子供が少ない場所に行く」という事は、「子供が楽しめる場所が少ない」という事にもつながります。
遊びたい盛りの子供たちが田舎でも楽しんで遊べるように、親がしっかりと工夫をする必要があるかもしれません。
2.小児科(病院)が近くに無い
私が子育てをして思い知らされたのが「子供は頻繁に熱を出す」ということです。
我が子が「0歳~1歳6か月」の期間に都会で生活をしていましたが、一番助かった事は「徒歩10分圏内に産婦人科、小児科、耳鼻科、皮膚科、歯科がそれぞれ2件以上あった事」です。
病院の一般診察が終わている時間に、我が子が転んで柱の角に頭をぶつけてしまった時や、深夜に高熱を出した時など、徒歩圏内に夜間救急を行っている病院があることがどれほど心強かったか忘れません。
田舎に住んでいる今では、最寄りの小児科まで車で20分、一番近い耳鼻科でも車で10分の距離です。
歩き出したばかりの子供はいつどんなケガを急にするかわかりません。
もしかしたら一分一秒の遅れが、その子の一生に関わる大惨事になるやもしれないと思うと、病院の少なさや、医療の質の低さは、田舎で子育てをするうえで一番の懸念点かもしれません。
3.子供の遊び場となる公園は遠く遊具も少ない
田舎は自然がいっぱいですが、だからと言って人の土地である畑や田んぼではサッカーやキャッチボールはできませんし、勝手に山に入るのも危険です。
小学校くらいまでは、公園の遊具や砂場などが遊び場になることが多いですが、田舎暮らしだと公園に行くまでに「車での送り迎えが必要」な場所も多いでしょう。
私の住んでいる場所は、最寄りの公園まで車で5分の距離で、徒歩20分はかかります。
前述しましたが、子供が少ないこともあって充実した遊具は無く、鉄棒とシーソー程度の質素な公園が多いです。
自然の中でどのように遊ぶかは工夫次第でいくらでもありますが、都会のような整備された公園はそれほど多くは無いです。
4.少子化で統廃合を繰り返しているため学校が少ない
子供が少ないという事は、学校も少ないという事です。
ひと学年の人数も都会に比べると少なく、1学年1クラスという学校も少なくありません。
幼少期は学校で多くの時間を過ごすので、学校周辺の環境(通学の距離や道の整備の度合いなど)はとても大切なポイントですが、都会に比べるとやはり田舎は劣っていることが多いです。
小学校、中学校までは良くても、高校・大学でそれなりのレベルを求める場合は、田舎を離れ下宿をさせたり、子供について親も一緒に都会に戻ることもあります。
お子さんの幼少期のみの滞在と決めているのであればよいかもしれませんが、教育の質を求めた場合は、家族全員がずっと一緒に田舎にいるというのは難しいかもしれません。
5.預けられる保育園も少ない
学校が少ないのと同様に保育園も少ないです。
共働きを考えているご家庭の場合は、保育園の数や保育園までの距離を調べておいた方が良いでしょう。
親戚がいる地域への移住の場合は、子供を見てもらうことが出来るかもしれませんが、そうではない場合は、保育可能な施設の有無をしっかり調べておくようにしましょう。
田舎で子育てをするメリットは?
では、田舎で子育てをするメリットにはどのようなものがあるでしょうか?
1.アトピー治療・喘息治療に良い
自然豊かな環境で暮らすことで、アトピーや喘息、アレルギー疾患、化学物質過敏症が改善したというのは実際に良くあります。
実際に、オーストラリアを中心にした国際共同論文において、「農家で育つとアレルギーになりにくい(※1)」という結果が出ています。
5歳までに「都会」「小さな町&郊外」「田舎」の3つのうち、どの環境で育ったかを世界22カ国の人に尋ねたデータの中から、抽出したサンプルに下記の5つの疾患について成人になってからの罹患率を聞いています。
- 気管支過敏症
- アトピー
- 気管支喘息
- 鼻アレルギー
- 肺機能
すると、それぞれの育った環境別の、疾患別罹患率は下記の表のようになりました。
都会 | 小さな町&郊外 | 田舎 | |
気管支過敏症 | 18% | 16% | 12% |
アトピー(全般) | 38% | 31% | 18% |
気管支喘息 | 6.1% | 5.5% | 4.4% |
鼻炎(鼻アレルギー) | 36% | 32% | 25% |
肺機能 | – | – | – |
このような結果になった理由としては、幼少期に家畜の糞や土壌に含まれる微小細菌などが体内に入ることで、早いうちから多量のアレルゲンにさらされて抗体ができるからだと考えられています。
このことから幼少期にアレルギー性の疾患が我が子に見つかったことがきっかけで、田舎に移住するというのは、かなりのメリットが期待できます。
近所で家畜を飼っているような場所に行くと、お子さんのアレルギー性疾患が良くなる可能性があるかもしれません。
※1:9月29日:農家で育つとアレルギーになりにくい(Thoraxオンライン版掲載論文)
2.子供が少ないので地域の目が行き届きやすい
子供が周囲に少ない分、地域の人の目がしっかりと子供を見てくれていることのを実感します。
その田舎特有の人付き合いや距離感が苦手な人はそもそも田舎向きではないかもしれませんが、昔ながらの「地域に育ててもらう」というのは田舎ならではの良い側面でしょう。
隣人、地域の人たちとの距離が近い田舎だからこそ、子育てをする環境としては親は安心なことも多いはず。
マンションの隣人や上の階にどのような人が住んでいるのか、全くわからない都会とは違う、田舎ならではのメリットと言えます。
3.食育などを行いやすい
田舎の主な仕事は「農業」です。
お米が出来ていく過程を見ることが出来たり、家庭菜園もしやすく、もしかしたら近隣に畜産業を営んでいる人がいれば家畜を見せてもらえるかもしれません。
都会では、教育としてお金を払って自然体験をさせるようになってきていますが、田舎に住んでいれば毎日が自然体験です。
都会にお住みの方で食育を家庭でも行いたいと考えている方の中には、家庭用水耕栽培器などを活用されている方もいるかもしれませんが、田舎に暮らすことで食育は自然と行うことが出来るでしょう。
4.移住政策として子育て支援に力を入れている自治体もある
※参考:日経電子版
自治体によっては、子育てをしている若い世代の夫婦を呼び込むべく、移住政策として子育て支援に力を入れているところもあります。
例えば、子供の医療費助成などの制度は、都市部よりも田舎の方で手厚いことが多いです。
上のグラフは、各都市の「通院・入院別の子供医療費助成期間」です。
例として、宮城県の仙台市では、通院は小学校3年生(9歳)までしか受けられず、入院も中学校3年生(15歳)までです。しかも所得制限があるので、収入の多い方は助成を受けられないことがあります。
しかし、私の住んでいる宮城県の別の市(田舎)では、所得制限なしで通院・入院共に18歳まで助成されます。その他の仙台市以外の市はおおよそ私の市と同様の基準を設けています。
一方で、「(学生であれば)大学卒業まで助成(22歳)」としている自治体が1つだけありますが、これは「北海道南富良野町」です。しかも、所得制限もないのです。
そのほかにも、私の住む宮城県の市では「任意予防接種の費用全額免除」「二人目以降の幼稚園授業料無料化」「育児用品購入費用の助成(3千円)」など様々な制度があり、乳幼児を育てている身としてはとても嬉しい制度が沢山あります。
このように、地方では子育て支援制度が充実していることがあるので、子供を連れて移住をする際には、その自治体の子育て支援制度もしっかりと見ておくと良いでしょう。
5.都市部に比べて待機児童が少ない
都市部で問題になっている待機児童数ですが、田舎は保育施設が少ないものの、子供の数も少ないので待機児童数は都会に比べるとさほど多くはありません。
上の表は、平成29年度の宮城県の各市町村の待機児童数(0歳児も含む)です。
仙台市の待機児童は232人で、他の市は多くても仙台市の3分の1程度の待機児童数となっています。
0歳児を含んだ待機児童数でこの人数なので、お子さんの月齢によってはもう少し定員に余裕があるかもしれません。
まとめ
子育てという側面で見ると、田舎での暮らしはメリットとデメリットの両方がそれなりにあることが分かります。
我が家の場合は、祖父母との同居と息子のアトピーの改善、食育や自然環境での子育てをしたかったこともあって移住してきたので沢山のメリットがありました。
その反面、全ての移動が車であることと、病院が遠いことはやはりデメリットと言わざるを得ません。
都会での子育ても、メリットデメリットの両側面がありますが、「移住」という決断は人生の中で大きなことであるのは間違いありません。
決して「都会より田舎の方が子育てにとって良いことばかりではない」という事を、しっかりと認識して、そこにあるデメリットが許容できるかどうかしっかり見極めることが、長く田舎で暮らすうえでとても重要になってくるでしょう。