毛虫の類は触れると酷いかゆみを伴う種類がいますが、中にはハチに刺されたように激痛が走るものがいます。
先日、畑のブルーベリーを収穫していた妻が叫んだので見に行くと、若葉の裏に「イラガ」の幼虫がいました。
チャドクガなどと同様に、幼虫には毒のある大きな棘(トゲ)を持っていて、刺されるととても痛いんですよね。
本記事では、イラガの生態と駆除方法、刺された時の対処法についてまとめます。
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毒を持った毛虫|イラガの生態と幼虫の画像
- 和名:クロシタアオイラガ
- 学名:Parasa sinica
- 別名:デンキムシ、オコゼ、蜂熊、シバムシ、イラムシ
- 階級:チョウ目イラガ科
- 生息範囲:北海道・本州・四国・九州
- 活動時期:5~6月、8~9月
- 体長:幼虫は15mm~25mm
画像はクロシタアオイラガ(黒下青刺蛾)の幼虫と思われますが、妻を刺した個体をブルーベリーの葉を切り落として撮影しました。
イラガにはいくつもの種類がいますが、いずれも前後に触覚のような突起があり、毒針が付いているので刺されると激痛が走ります。
日本全国に分布していて、幼虫の発生時期は5~6月と8~9月の年2回、サナギで越冬します。
イラガが発生しやすい植物
イラガの繭
※画像:wikipedia
イラガは終齢幼虫になると、越冬するために晩秋には自らを繭でくるんでサナギになり冬に備えます。
白と茶色のマーブル模様の卵型の繭は、とても硬いので簡単には壊れません。
この状態になると繭や中の幼虫(終齢幼虫)には毒は無く、地域によってはこの繭の中の幼虫を「玉虫」と呼び、釣り餌として販売しているところもあります。
イラガに刺された時の対処法
イラガは別名「デンキムシ」と呼ばれるように、刺されると電気が走るようにビリビリと患部が痛みます。
刺された場所が何かにちょっと触れるだけでもビリビリして痛みますが、毒針毛が皮膚に残っていなければ痛みは1~2時間で引いてきます。
刺されたばかりの時はかゆみは一切なく、どこを刺されたかもわからないほど発赤や腫れなどは出ないのですが、刺された翌日に患部が小さく腫れました(画像)。
2.皮膚に毒針毛が残っているようなら粘着テープなどで取り除く
3.ステロイド入りの抗ヒスタミン薬を塗る
4.症状が改善しない場合は皮膚科へ行く
イラガに刺された時にやらない方がいいのは「掻きむしること」です。
掻きむしることで皮膚に残った毒針毛が奥に入りこんでしまったり、掻いた手にまで刺さったりして被害が拡大してしまう可能性があります。
まずは患部を洗い流してよく観察し、毒針毛が残っているようなら粘着テープやピンセットで取り除きます。
イラガに刺された場所に塗る虫刺されの薬は、下記の関連記事もあわせてご覧ください。
イラガの駆除方法と効果的な殺虫剤
庭木や果樹などについたイラガの駆除方法はシンプルで「物理的防除」か「薬剤(殺虫剤)」のどちらかです。
少数の幼虫や秋~冬の繭は物理的に防除
もしイラガの幼虫の発生数があまり多くなく、目視で確認できる程度であれば割りばしなどでつまんで厚みのある袋にひとつづつ捕殺するのも効果的です。
また、冬の時期に樹木の表面にできた「繭」をナイフなどでこそぎ落として駆除してしまうのもおすすめです。
繭は毒がありませんし、放置してしまうと翌年の春先にイラガが大量発生させてしまうことになりかねませんので、寒い時期の繭はとってしまった方が良いでしょう。
即効性ならスミチオン、低木への予防的利用ならオルトランDX
害虫防除の方法として「殺虫剤散布」は当然ですが効果的です。
イラガの防除法を調べると、キンチョールやゴキジェットなどを勧める声もありますが、我が家のブルーベリーの木や巨大な柿の木の葉の裏についたイラガの幼虫を、一つ一つ目視で葉の裏にスプレーするのは非効率的ですし割高になるのでお勧めしません。
それでも幼虫は駆除できますが、もしイラガが大量発生していて目視では見つけきれない場合や、樹木が高木だったり巨木である場合には、粒剤や乳剤を使って駆除する方がいいです。
【今すぐイラガの幼虫を駆除したい場合】は「スミチオン乳剤」
スミチオン乳剤は野菜や果樹につく害虫に幅広く効き、安全性の高さから昔から使われている薬剤です。(※毒性:普通物)
即効性を求める場合は、スミチオン乳剤を希釈して噴霧器で散布する方がすぐに効果が出て経済的です。
特に樹高が1m以上になる高木の場合は、この後ご紹介するオルトランDXなどの粒剤は効果が薄いので、乳剤をしっかり散布するというのが一番でしょう。
薬剤散布の回数は、イラガの種類によっては年2回(5~6月、8月以降)発生するものもいるので、それぞれのタイミングで計2回散布するようにします。
一方で、スミチオン乳剤はアブラナ科の植物には薬害を生じさせてしまうので使用は厳禁です。
イラガが発生しやすいカキには適用がありますが、植物によっては適用がなく使えない場合もあるので必ず購入前に適用を確認するようにしましょう。
噴霧器をお持ちでない方はこちらもあわせてご覧ください。
【低木への予防的利用】ならオルトランDX
有効成分:アセフェート2.5%、クロチアニジン0.25%
オルトランDX粒剤は、殺虫成分がアセフェートとクロチアニジンの2種類が配合されており、アセフェートに抵抗性を持ってしまっている害虫に対しても効果が期待できる薬剤です。
粒剤なので株元の土の上に撒いて使うことで、植物が根から薬剤を吸い上げ、植物体内を薬剤が浸透移行することで葉をかじるイラガの幼虫を駆除していきます。
この作用機序によって、液剤やスプレーなどのかけもらしによって駆除しそこなう個体がなくなるので、全てのイラガの幼虫をきれいさっぱり駆除できます。
欠点は、薬剤を吸い上げる効果が樹高50~100㎝程度しかないので、高木に使用する場合は効果が薄くなります。
また、スミチオンのように薬剤がイラガの幼虫に付着して駆除するタイプの薬ではないので即効性には乏しいです。
オルトランDXのような粒剤は、イラガの幼虫の発生時期に合わせて予防的に使用するのが効果的です。
オルトランについては下記の関連記事でより詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
まとめ
今回ご紹介したイラガに対する内容について、最後にもう一度簡単にまとめます。
・刺された時の対処法は、流水で毒針毛を流して掻きむしらないようにする
・毒針毛が残ってるようならテープで取り除き、ステロイド含有抗ヒスタミン剤を塗る
・症状が改善しないようなら皮膚科へ
・幼虫以外毒は無いので、繭は冬のうちに取り除いておく
・即効性&経済性を求めるならスミチオン乳剤を噴霧器で散布(2回)
・低木に予防的に利用するならオルトランDX粒剤も効果的
我が家には果樹畑(ブルーベリー、カキ、アプリコット、リンゴなど)があり、それらの多くにイラガが毎年のようにつきます。
不用意に半そで&素手で近づくと痛い目に合うので、家族一同気を付けていますが誰かしら毎年刺されています。
もしイラガの被害に遭ったのなら、今回ご紹介した内容を参考に被害が減るように対策をしてみてください。
イラガの付きやすいブルーベリーの育て方についてはこちら