こんにちは、田舎センセイです。
我が家は宮城県の北部にありますが、田舎暮らしブログをするほどなのでそれはそれは自然ばかりで都会では見かけることのない生き物も沢山います。
我が家から徒歩数分の所にある池には、妻が子供のころから何年も変わらずとクロサンショウウウオが産卵し続けています。
全国的に見ても数が減ってきていると言われているクロサンショウウウオの生息地になっている珍しい場所が家の近所にあるので、今回は生体の観察を兼ねて少し卵塊を採取してみました。
本記事では、クロサンショウウウオの生態や生息地・分布などに付いてまとめたいと思います。
Contents
クロサンショウウオの卵塊
詳しい場所は控えますが、我が家の敷地から歩いて数分の場所にある止水地。
毎年雪解けの時期(2月末)頃になると、この場所に沢山の卵塊がみられます。
水面の反射で見にくいのですが、手前に見える卵塊以外にも奥の方にかなりの数を視認することができました。今年もかなりの数が産卵されてます。
写真をご覧の通りでお分かりになるかと思いますが、決して綺麗な清流に産卵されているわけではなく、サンショウウオは水の綺麗なところにしかいないというのは違うんですね。
このアケビの様な白濁した卵塊の中には20~80個の卵が入っていると言われていますが、岸に近い方が沢山卵が入っていて、池の内部の深い所の卵の数は少ないそうです。
岸に近い所の卵塊を採取し、取り過ぎた分は池に戻しました。
この白濁した卵塊はクロサンショウウオ特有のもので、他のサンショウウオの卵は透明なため鑑別は容易。この見た目だったらほぼ100%クロサンショウウオ。
今回のクロサンショウウオの卵の採取は、この場所が私たち家族以外に知っている人がいない事、またこのエリアに外部から人が入りこんだ時に乱獲されないように、私の息子たちにもこの生き物の生態系を少しでも学んでもらうために行いました。
孵化した幼体は、個別飼育で共食いされるのをできるかぎり防いだ後、ある程度の大きさになったら元の池に放す予定です。
最終的にはクロサンショウウオの卵塊は2つを残して、残りは元の池へ。
網目の比較的大きい虫網でもとることができたのはこのゼリー状の膜(?)があるからで、そっと手のひらに載せて持ち上げてみると見事に卵を守っているのが分かりました。
冷たくて気持ちよかったのでずっと持っていたかったくらいですが、卵が割れてしまうといけないので自重。
クロサンショウウオの生態
アクア・トトぎふ No – 36:クロサンショウウオ posted by (C)kyu3
※我が家ではまだクロサンショウウオの卵塊が孵化していないので、生態の画像はお借りしました。
和名 | クロサンショウウオ/黒山椒魚 |
英名 | Japanese black salamander |
学名 | Hynobius nigrescens |
分布 | 東北全域~埼玉、岐阜辺りを南限にする |
分類 | サンショウウオ科サンショウウオ属 |
特徴 | ・アワビの様な特徴的な卵塊 ・幼生は水中で生活し、のちに陸上にあがる |
生体の全長は15㎝前後でサンショウウオ科の中では比較的大きい。
肉食で、幼生の時には水中の昆虫やエビ、ミミズ、サシなどに加え、頻繁に共食いをみせる。幼体になると陸に上がりワラジムシ、ナメクジなどを捕食する。
陸に上がると基本時には土の中や落ち葉の下で生活をする。
クロサンショウウオの寿命
サンショウウオ類は寿命が長いものが多く、種によっては50年以上生きたというものも少なくないのですが、自然環境下では外敵などの理由もありクロサンショウウオの寿命は長くても15年~20年位であろうと想定されているようです。
人工飼育下で、環境を整えて外敵のいない状況であればもっと長く生きる可能性もあるので、飼育をしたいと考える方はそれ相応の覚悟を決めて飼いはじめる必要があります。
また、幼体のころから頻繁に共食いや外敵などに捕食されるなどの理由で、自然環境下では孵化した個体の僅か2~5%くらいしか生き残らないとも言われているので、母数をどう考えて寿命を計算するかによって変わってくるであろうとは思います。
クロサンショウウオの生息地・分布
※生物多様性センター:生物多様性調査 種の多様性調査 第1期 より
データとしてはやや古いですが、生物多様性センターの調査(平成9~10年)のものをお借りしてきました。上記の地図の宮城県の所に分布しているところに我が家もあります。
前回調査よりも20年以上経過していますが、現在の分布はどのようになっているのでしょうかね。
生息エリアは「山に近い平地」から「2000mを超える高山」にまで生息していると言われていて、我が家は前者の山の斜面にあるひっそりと隠れた池に毎年産卵しています。
分布の南限近くが、栃木、群馬、埼玉、福井、岐阜だそうですが、そのエリアでは主に標高1000m以上の高所に生息していると記されています。(*1)
クロサンショウウオは2020年3月現在「準絶滅危惧種」
日本のレッドデータ検索システムによると、クロサンショウウオは統一カテゴリーとして「準絶滅危惧種」に指定されています。
カスミサンショウウオやクロサンショウウオなどのサンショウウオ類は、ペットとして飼育することを楽しむ人も意外と多く、ヤフオクなどのネットオークションでも取引が頻繁に行われています。
卵塊の採取などは個人で生き物に触れ合う程度であれば問題はありませんが、売買目的での乱獲は生態系を壊す可能性が大きいので注意が必要です。
レッドリスト掲載種(絶滅危惧種)の飼育について
環境省のQ&Aには以下のようにあります。
Q.レッドリスト掲載種(絶滅危惧種)を飼育・栽培したいのですが?
A.
法律・条例等で捕獲等が規制されている種もあるため、地方環境事務所・都道府県等へお問い合わせください。絶滅危惧種にとって「捕獲・採集」は大きな減少要因となっています。絶滅危惧種を将来にわたって残していくために、一人一人が「むやみにとらない」意識を持つことが大切です。
また、現在種の保存法によって捕獲等が規制されている国内希少野生動植物種の中にサンショウウオが数種挙げられています。
現時点ではクロサンショウウオはこの中には含まれていませんが、今後個体数の変化によって加えられる可能性も低くないので、間違っても「クロサンショウウオは沢山捕獲しても大丈夫」と勘違いしないようにしましょう。
・アマクササンショウウオ
・オオスミサンショウウオ
・ソボサンショウウオ
・トウキョウサンショウウオ
・トサシミズサンショウウオ
・ツクバハコネサンショウウオ
まとめ
長年我が家からほど近い止水地にクロサンショウウオが産卵していること、そして年々クロサンショウウオ自体の個体数が減ってきていることから、観察し生態系の理解を深める目的で卵塊をわずかに採取しました。
今後、少しでも個体数の保全につなげるには、産卵場所を知っている私たち家族がその環境をできるだけ維持していくことが大切だろうと考えます。
また、これからクロサンショウウオを飼育をしたいと考えている方に、安易な乱獲や売買に繋がらないよう個体数の変化や飼育の難しさなどについても情報が提供できればと思っています。
クロサンショウウオのその後の成長記録は以下の記事をご覧ください。
参考サイト・文献
*1:第2回自然環境保全基礎調査
※:クロサンショウウオの生活史