大切な植物の根や葉を食害してしまう「コガネムシ」は、キラキラとした綺麗な見た目とは裏腹に植物を枯らしてしまう事もある害虫です。
成虫は葉を食害して穴だらけにしますが、最も厄介なのは土の中にいる幼虫で、根を食べつくしてしまうので知らず知らずのうちに植物が枯れてしまいます。
今回はコガネムシの成虫と幼虫の駆除方法について、効果的な薬剤とご自宅で簡単に作れるコガネムシトラップの作り方をご紹介します。
Contents
コガネムシとはどんな虫?
- 和名:コガネムシ 別名:黄金虫
- 学名:Mimela splendens
- 英名:scarabaeid beetle
- 階級:甲虫目コガネムシ科
- 生息範囲:日本全土
- 活動時期:成虫:4月末~10月初旬、幼虫:4~5月・10~11月
- 体長:約2センチ
- 寿命:幼虫:9か月、成虫:1~2か月
- 特徴:光沢のある体をしており、幼虫はカブトムシの幼虫に似ているが一回り小さい
- 弱点:フェロモントラップが有効
- 厄介な点:幼虫が土の中で根を食害するので加害されていることに気付きにくい
【似た虫】コガネムシとカナブンとハナムグリの違いとは?
画像:コガネムシ(flicker)
コガネムシとよく似た昆虫にカナブンやハナムグリがいますが、いずれもコガネムシ科の昆虫でとても良く似ています。
まずはあなたが見かけた昆虫が本当にコガネムシかどうかを確認するところから始めましょう!
外観の特徴は下記の通りです。
コガネムシ:頭部と羽の付け根の形が楕円形
カナブン :頭部と羽の付け根の形が二等辺三角形
ハナムグリ:頭部と羽の付け根の形が二等辺三角形で、羽に白い点状の模様がある
また、食性の特徴も異なり、コガネムシの成虫は葉、幼虫は根を食害するのに対し、カナブンとハナムグリは植物自体(葉や根)を食害することはありません。
カナブンは樹液を吸い、ハナムグリはその名の通り花弁の中に潜り込んで花粉を食べます。
カナブンやハナムグリの幼虫は根は食べず、腐葉土などを食べるため大きな問題になることは少ないとされています。
コガネムシの発生時期
成虫:4月末~10月初旬
幼虫:1年中(特に4~5月、9~10月)
コガネムシが食害する植物は様々ですが、夏ごろに水をいくらあげても植物が枯れてしまうことなどから被害に気づき始めます。
その時には幼虫に根を食い荒らされて「時すでに遅し」という事が少なくないため、地上部分の葉を成虫が食べているのを発見するより前に対策を取る必要があります。
コガネムシが加害する植物
コガネムシには数多くの種類がおり、食性は種類によって様々です。
マメコガネ/ヒメコガネ
:主に穀物・野菜等の葉を食害するアシナガコガネ/ドウガネブイブイ
:主に広葉樹・果樹・庭木の葉を食害するスジコガネ/ナガチャコガネ
:主に針葉樹の葉を食害する※参考:SAKAE GREEN NEWS
上記の種類のコガネムシは、それぞれ特定の植物の葉を食害した後に芝生地に移動して産卵するため、幼虫は芝生の根を食べて育ちます。
コガネムシによる芝生の被害を減らすためには、上記の特定の植物を近くに植えないという生態的防除法がポイントとなるようです。
しかし、コガネムシの中にはウスチャコガネやヒラタアオコガネの成虫のように、摂食行動をとらずに交尾と産卵だけをする種もおり、その場合は芝草地のみで繁殖していきますので生態的防除法はとれません。
後述しますが、コガネムシの防除法としてフェロモントラップが有効なので、どの植物の葉が加害されているかを見てコガネムシの種類を判別する手掛かりになるので、種類ごとに食害する植物の種類が違う事を覚えておくと良いでしょう。
コガネムシの退治方法・対策
コガネムシの成虫の退治方法と捕獲器の作り方
コガネムシの成虫を退治するには「手で捕獲」「薬剤散布」「フェロモントラップで誘引捕獲」の3つの方法があります。
プランターに付く数匹の成虫であれば手で捕獲するだけでも十分ですが、あまりにも数が多い場合は薬剤散布が効果的です。
プランターや鉢植えの土への産卵を防ぐためには土の上にカバーをするという方法もありますし、フェロモントラップなどでおびき寄せて捕殺することもできます。
コガネムシを誘引して捕殺するコガネムシトラップの作り方は後述しますが、まずは物理的に捕殺する時に効果的な道具「コガネムシ捕獲器」の作り方をご紹介します。
コガネムシ捕獲器の作り方
コガネムシは、人間が近づくと葉からぽろっと落ちて死んだふりをします。
何も用意せずにコガネムシを捕まえようとすると、そのまま簡単に土に潜ったり飛んで逃げてしまうので、上記の画像のような手順で捕獲器を作ると逃がさずに捕獲できます。
コガネムシの成虫を捕獲できるフェロモントラップ
コガネムシの雄は雌の放つフェロモンにおびき寄せられる習性があるので、フェロモントラップが有効です。
上記商品はマメコガネムシ用のフェロモントラップですが、この他にも下記の通り各種コガネムシに使えるフェロモントラップが販売されています。
【販売されているコガネムシ用のフェロモントラップの種類】
マメコガネ・ヒメコガネ・スジコガネ・ツヤコガネ・アオドウコガネ・ドウガネブイブイ・アシナガコガネ・ヒラタアオコガネ・ナガチャコガネ・オオサカスジコガネ・セマダラコガネ
私個人的には、フェロモントラップは高価であること、効果が持続する期間が1~2か月程度であることに加え、上記の通り数多くのコガネムシがいるのでどの種類を購入すれば良いのか迷ってしまうことなどが欠点であると思います。
コガネムシの駆除方法としてどうしても農薬を使いたくない方にお勧めです。
プランターや鉢植えに来るコガネムシの幼虫の対策
コガネムシで最も厄介なのが幼虫の存在です。
根を食害する幼虫の侵入を防ぎたいところですが、その方法はたった一つ「土の中に産卵させないこと」です。
土の中にいる幼虫を駆除するための薬剤は後述しますが、まず簡単な方法として鉢植えやプランターの土を隠してしまってコガネムシが侵入しにくいようにしてしまうという方法があります。
成虫のコガネムシが土に接近できなければ土に産卵される可能性も減りますので、そもそも幼虫が発生しません。
その方法としておすすめなのが「ココヤシファイバー」や「パームマット」などのヤシの繊維を土の表面に敷き詰めてしまうという方法です。
鉢の土表面をココヤシファイバーで覆う事によって虫が侵入しにくくなり、産卵される心配がなくなります。
もし自宅のバルコニーなどでプランターで植物を育てている方で、コガネムシの成虫を見かけたことがある方は早めに対処しておくと良いでしょう。
また、コガネムシの産卵対策としてバークチップも有効です。是非こちらの記事もあわせてご覧ください。
コガネムシの駆除に効果的な薬剤
コガネムシの幼虫に効果的な薬剤:ダイアジノン粒剤
ダイアジノン粒剤はコガネムシやハムシ類の駆除に効果的な有機リン系の薬剤で、播種時に土壌に散布することによって飛来してくる成虫や土壌に産卵しようとする成虫への殺虫効果を発揮します。
種をまく前に土壌に混ぜ込むと効果的なのですが、均一に混ぜるよりも畝の表層に薬剤がある方がガス効果で殺虫力が高いことがわかっているようです。
同剤を全面処理土壌混和,つまり圃場全面に処理し,その後トラクターにより耕転,畝立てを行うと,薬剤の粒子は土中深くまで均一に分布する。作条処理土壌混和,つまり畝上に薬剤を散粒し,レーキ等で土中に混和すると,薬剤の粒子は地表面近くに集中して分布する。両処理方法で処理量が同じである場合には後者の方が地表面における薬剤の有効成分濃度は高くなると考えられることから,羽化後土中から地表面に出現する,
あるいは発芽間もない子葉を食害,産卵するため飛来してくる成虫に対してより高い殺虫効果を示すと考えられる。
上記の研究はキスジノミハムシに対する殺虫効果の検討ですが、土中に産卵するコガネムシにも同様に言えるポイントだと思います。
コガネムシの成虫に効果的な薬剤:スミチオン乳剤
スミチオン乳剤は野菜や果樹につく害虫に幅広く効き、安全性の高さから昔から使われている薬剤です。(※毒性:普通物)
コガネムシの成虫にはスミチオン乳剤を散布すると良いでしょう。
一方で、スミチオン乳剤はアブラナ科の植物には薬害を生じさせてしまうので使用は厳禁です。
散布する作物がアブラナ科の植物かどうかを使用前に確認しておきましょう!
コガネムシトラップの材料と作り方
前述したコガネムシ用のフェロモントラップは高価で手が出ないという方は、殺虫剤入りの誘引剤で似たものを自作することが可能です。
徳島県ではこの誘引剤でコガネムシ防除に効果を上げていると愛媛県公式サイトに作り方が書いてありましたので引用してご紹介します。(※愛媛県の当該ページは既に削除されています)
コガネムシトラップの材料
・砂糖:200g
・米酢:150cc
・きな粉:400g
・オルトラン粒剤 or ダイアジノン粒剤:100g
※上記分量は10アールの広さ用のため、ご自宅で使用する際は比率はそのままに少ない分量で作成しても問題ないと思われます。
※愛媛県のHPに記載されていたレシピは、オルトラン粒剤やダイアジノン粒剤ではなく、ディプテレックス粉剤でしたが、既に販売中止されている薬剤であることと、劇物でご紹介しにくいことから上記の2薬剤で代用しました。
販売中止となっているためディプテレックス粉剤との効果の比較はできませんでしたが、上記薬剤でも効果が出ていますので大丈夫でしょう。
コガネムシトラップの作り方
1.材料を全て混ぜて誘引剤を作る
まずはコガネムシをおびき寄せるための誘引剤を作ります。
材料を全て混ぜ合わせて練り込んでいきましょう。
形状は「きな粉団子」ですが、殺虫剤(オルトランorダイアジノン)を混ぜ込むので、食事に使う調理器具との混用は避けてくださいね。
2.空の牛乳パックにカッターで窓を作る
誘引剤を作ったら、空の牛乳パックを使って誘引剤を設置する箱を作りましょう。
4面あるうちの2面にカッターで大きく窓をあけると、コガネムシが入ってくる侵入口になります。
3.牛乳パックを青くする
切り込みを入れて窓を作ったら、牛乳パック全体を目立つように青くします。
これはコガネムシが青い色のものを好んで寄ってくると言われているためで、塗装するのでも良いですし、青いテープや紙を貼って青くするのでも良いでしょう。
4.誘引剤を中に入れ、コガネムシトラップを設置する
牛乳パックを青く染めたら最初に作った誘引剤を50~60g程度にして設置します。
※今回ご紹介した分量で作ると1,000gを超えるので、予め何か所に設置するかを考えてから分量を決めるようにしましょう。
設置場所は地上から約1.5m位の場所に設置すれば完了です。
まとめ
コガネムシの食害にあったら、注意しなくてはいけないのは葉を食べる成虫よりも土の中で根を食べる幼虫です。
成虫を発見した時点で土の中に産卵されている可能性があるので、早めに対処することが望ましいです。
土を掘り返してみて1匹でも幼虫を見つけたら、是非ダイアジノンを散布してみてください。幼虫が大量に地表に這い出てくるかもしれませんよ!