こんにちは、田舎センセイです。
私は約10年ほど前にニュージーランドに住んでいて、ワイン畑やキウイフルーツの果樹園などで働いていました。
当時家族へのお土産として選んで送っていたのが「マヌカハニー」だったんですが、その抗菌力の強さは近年日本でも認知されてきていますよね。
日本でも目にすることも多くなってたマヌカハニーですが、ラベルには「UMF」や「MGO」というアルファベットとともに数字が記載されていて、その数値はいったい何なのか、何を基準に選べばいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では「マヌカハニーのラベルに記載されているUMFやMGOなどの数値と基準」と「偽製品をつかまないための予備知識」についてまとめます。
ちょっと専門的な内容で長くなりますが、これからマヌカハニーを購入したいと考えている人にとって、どの商品を選べばいいのか少しでも迷いにくくなるように解説いたしますね。
Contents
そもそもマヌカハニーとはどんなハチミツのことを指す?
1.MGOとUMFについて
2.本物のマヌカハニーと偽物のマヌカハニー
3.モノフローラルハニーとマルチフローラルハニー
4.NZ政府の第一次産業省(MPI)の基準とUMF協会の基準
5.マヌカハニー特有の成分「レプトスペリン」
MGOやUMFの数値を解説するまえにちょっと予備知識として入れておきたいのが、上記のポイントです。
特にマヌカハニーの抗菌効果などに期待をして購入を考えている方には知っておいてほしいことばかりです。
希少性も高く価格も高価なので、それに伴って「それって本当にマヌカハニーなの?」という商品も多いので、MGOやUMFの数値について触れるついでに「ちゃんとしたマヌカハニーを選ぶための知識」を入れていただきたいです。
商品パッケージに記載されている「MGO」と「UMF」とは
共通している点としては「どちらもマヌカハニーのグレーディング(格付け)に用いられる数値」ということ。
ではなんでハチミツの格付けが必要なのかというと、(後述する内容に関連するのですが)ハチが集める蜜という「天然物」であるがゆえに、マヌカハニーとひと口に言っても品質にばらつきが出ます。
そのバラつきを特定の指標で格付けすることで、品質の判断をつけやすくするという目的があります。そしてそれは偽製品対策という側面もあります。
MGO【Methylglyoxal/メチルグリオキサール】
MGO(メチルグリオキサール)とは、ドイツの研究者トーマス・ヘンレ博士によって発見された「マヌカハニーの抗菌活性成分」です。
「MGO100+」などと書かれているのは、マヌカハニー1kgに対してMGOが何ミリグラム入っているかを示していて、MGO100+ならマヌカハニー1kgに対してMGOが100ミリグラム含まれているということです。
因みに、MGOはマヌカヘルス・ニュージーランド社(Manuka Health New Zealand)の商標で同社が2008年にグレーディングの指標として使い始めました。
UMF【Unique Manuka Factor/ユニークマヌカファクター】
UMF(ユニーク・マヌカ・ファクター)は、「マヌカハニー特有の抗菌力を数値化したもの」です。
UMFは「UMF5+/UMF10+/UMF15+/UMF20+/UMF25+」のようにして表記されていて、その数値はUMF10+なら医療現場で殺菌消毒材として使われているフェノール用液10%に相当する抗菌力であるとされています。
効能・効果 フェノール用液の用法・容量 手指・皮膚の消毒 1.5~2% 医療機器・手術室・器具の消毒 2~5% 排泄物の消毒 3~5% ※参考:医療用医薬品 液状フェノール
しかし、このUMFの値をフェノール用液の抗菌力で表示することはされなくなりました。
現在ではマヌカハニーの抗菌活性成分であるMGOを主に指標にして算出しています(*1)
UMF協会がUMFをグレーディングの指標として使い始めたのが1998年。当時はMGOが無かったのですが、2008年にMGOが指標として登場してからUMFとMGOの相関関係が明らかになりました。
UMFとMGOの相関関係
UMF | MGO:含有量(mg/kg) |
UMF5+ | 83 |
UMF10+ | 263 |
UMF15+ | 514 |
UMF20+ | 829 |
UMF25+ | 1,201 |
※出典:UMFHA
上記のように相関関係があるのでMGOの数値からUMFを推定することは出来ますが、UMF数値はUMF協会によってライセンスを授与された商品にのみ与えられるので、正式にライセンス授与された商品にのみUMFのラベルが付いています。
後述しますが、MGOの数値はいくつかの点で単独で指標にするには懸念があるので、MGOの数値のみ記載されている商品よりも、UMFのラベルや品質保証の証明書が付いているマヌカハニーの方が信頼性が高いです。
偽製品の問題|本物のマヌカハニーと偽物のマヌカハニー
NZでの生産量と全世界の販売総量のつじつまが合わない
マヌカハニーの品質を知るためのグレーディング(格付け)にUMFやMGOが使われていることが分かったわけですが、ここで知っておきたいのが「偽製品」の問題です。
これだけ健康増進効果が期待されて、且つ希少で需要もあるマヌカハニーはUMFやMGOの数値が高いほど商品価値は上がり高額になります。
そのため、悪質な業者によって偽物や粗悪品、低品質な商品がマヌカハニーの名前で多く出回ってしまっている現状があります。
ニュージーランドの主要なハチミツ生産者団体による調査によると、毎年1,700トンのマヌカハニーが生産されているそうなのですが、世界で「マヌカハニー」と名前の付いた商品は毎年10,000トン以上売られていることが分かりました。(*²)
実際に2013年に砂糖水で薄められたマヌカハニーが香港の検査機関で見つかり、2016年にはMGOやその前駆物質(ジヒドロキシアセトン)が人為的に添加された商品が見つかりリコール(全品回収)が起きています。
実はメチルグリオキサール(MGO)やジヒドロキシアセトン(DHA)は、化成品が市販されていて比較的安価に購入可能なため、人為的に数値が増やされている懸念が残るんです。
MGOは温度や保存期間によって変化する
MGO(メチルグリオキサール)は化成品を添加する以外にも、保存時の温度(20~30度程度の低温で加温すること)や瓶詰後の保存期間などによって数値が増加することもわかっています。(*3)
基本的には加温されることなどでMGOが増えるのですが、一定の温度と保存期間を過ぎると今度は減少に転じるなど不安定さがあることも事実なようです。
これは少し本筋から離れるのですが、マヌカハニー含有の飴などの二次産品の成分に関してはMGOが加熱処理によって失われることもわかっているため注意が必要です。
例えば「ニュージーランド産マヌカハニー MGO100+使用」などと書かれていても、その製品内にはMGO100と同等の抗菌効果は無いと考えた方が良いでしょう。
もし加工品にもマヌカハニー同等の抗菌効果を期待する場合は、「加工後の成分量を示しているかどうか」をしっかり確認することが大切です。しかし、そこまでやってる商品は滅多にありません。
モノフローラルハニー or マルチフローラルハニー
ハチがマヌカの木だけから蜜を集めてきていれば純度が高いのですが、自然任せのため近隣に植えてある他の植物からも蜜を集めている可能性を排除できません。
単一の花からのみ蜜を集めてある場合を「モノフローラルハニー」、複数の花の蜜が混ざっている場合を「マルチフローラルハニー」と言いますが、できる限りモノフローラルハニーに近い方が「純度の高いマヌカハニー」と呼べると思います。
ただ、マルチフローラルハニーでもどの程度ならマヌカハニーと呼んでいいのかの基準については、NZ政府機関の第一産業省(MPI)が以下の指標(4つの成分&DNA検査)を軸にして定義づけています。(*4)(※実際に2017年に提唱、2018年から輸出品の規制に使用開始)
モノフローラル | マルチフローラル | |
PLA | 400mg/kg以上 | 20~400mg/kg |
MAP | 5mg/kg以上 | 1mg/kg以上 |
MBA | 1mg/kg以上 | 1mg/kg以上 |
HPA | 1mg/kg以上 | 1mg/kg以上 |
・MAP:2′-methoxyacetophenone
・MBA:4-methoxybenzoic acid
・HPA:4-hydroxyphenyllactic acid
特に上から二番目のMAPの指標が5mg/kg以上であればモノフローラル、1mg/kgの場合であればマルチフローラルなマヌカハニーであるというキーになる指標であると言われています。
ただ、このMAPの数値も加熱によって大きく減少したり、長期保存で不安定になることも報告されているようです。
2015年からマヌカハニーの指標に使われた「レプトスペリン」
マヌカハニーにしか存在しない「レプトスペリン」という成分が2012年に見つかり、2015年よりUMF協会がマヌカハニーの指標(マヌカハニー1㎏に対して100mg以上の含有が必要)として用いるようになっています。
レプトスペリンの発見者である兵庫県立大学の加藤陽二氏によると、前述の第一産業省の定める4つの指標はいずれも試薬として安価に入手可能で、MGOの時のように人為的に添加させて数値を操作される懸念されるが、レプトスペリンは一般には市販されていないので人為的な添加の可能性は下がるとしています。(*1)
一方で、第一産業省はレプトスペリンは不安定だとして、前述の4つの指標の中に含めなかったとありました。
まとめ
マヌカハニーのように効果や希少性の高さから価格が高額になる商品は、どうしても偽製品との見極めが重要になってきます。
本来はMGOやUMFの値は、そのマヌカハニーの抗菌力の高さなどの単純な指標として理解できるにとどめればよかったのですが、「その表記自体本当なの?」と疑ってみてもらえるような知識があると購入時に惑わされないで済むかなと思い、長々と書いてしまいまいました。
私もこのマヌカハニーの指標について調べるうえで、NZに20年以上住んでいる知人に連絡して情報をもらったり、文献を漁りましたが中々興味深かったです。
最後に簡単にまとめて終わりとします。
・MGOとUMFはマヌカハニーの抗菌力の指標
・UMFはMGOを含むいくつかの指標から算出したもの。UMF協会がライセンスを授与した商品のみにつけられる
・UMF5+はフェノール用液5%に相当する抗菌力
・MGOは加熱・保存・人為的添加などにより変化しやすい
・飴などの二次産品は加工後の数値の記載があるかを見よう
・純度の高いマヌカハニーを選ぶなら「モノフローラルハニー」を選ぶ
・新たな指標「レプトスペリン」も判断材料に
参考資料・文献
*1:マヌカハニーの特徴とその機能性:加藤陽二
*2:Riddle of how 1,700 tons of manuka honey are made… but 10,000 are sold
*3:FACTORS THAT AFFECT UMF VALUES
*4:Manuka Honey Grading Standards