アブラムシが運ぶウイルスによって感染する「モザイク病」とは?

モザイク病 ピーマン

作物に被害を与えることで世界的に問題になっている植物病原ウイルスの一つに「モザイクウイルス」があります。

このウイルスによって感染した作物は「モザイク病」という厄介なウイルス病になります。

モザイクウイルスのうち、「キュウリモザイクウイルス(CMV)」「カブモザイクウイルス(TuMV)」は世界的に経済被害の深刻なウイルスとして知られています。

これらのウイルスの媒介者となるのが、畑や花壇でよく見かける「アブラムシ」なのです。

今回は、アブラムシによって運ばれてくる厄介なウイルスの特徴と対策についてご説明します。


アブラムシって密集して動かないイメージだけど、ウイルスを運ぶんだね!

アブラムシの存在で最も厄介なのは「ウイルス病」を媒介する点じゃ。しっかりと対策を取らないと作物がみんなダメになってしまうぞい!

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アブラムシが媒介するウイルスとは?

有翅 アブラムシ

アブラムシは、生まれて約10日で成虫となり、1カ月強の寿命の中で毎日出産をする、とても繁殖能力のすさまじい虫です。

あまりの繁殖能力のすさまじさから、仲間のアブラムシが作物を埋め尽くしてしまうので、ある程度世代交代を繰り返すと寄生している作物の養分が足りなくなってしまいます。

そのため、約3世代目以降の子供は、離れた場所にある作物に飛び移ることが出来るように「羽のある有翅形」の子供を産むことで寄生する場所を広げるのです。

この「有翅形のアブラムシ」がウイルスを保毒していて、他の作物に移動した際にウイルスを伝搬してしまうのです。

※アブラムシの生態に関する詳しい情報は別記事「アブラムシはどんな害虫?農家の敵アブラムシの生態まとめ」を参照ください。

アブラムシが伝搬することで有名なウイルスには以下のものがあります。

  1. キュウリモザイクウイルス(CMV)
  2. カブモザイクウイルス(TuMV)
  3. ジャガイモYウイルス(PVY)

1.キュウリモザイクウイルス(CMV)

キュウリモザイクウイルス(CMV)は、ナス科、ウリ科などをはじめ1000種類以上の植物にモザイク病を引き起こします。

キュウリやトマトなどに多大な被害を与えるキュウリモザイクウイルスに抵抗性のある遺伝子はまだ見つかっておらず、感染した作物の多くは枯れてしまいます。

CMVは、保毒しているアブラムシがたどり着いた植物が、自分の好みかどうか味見するために、口吻を数秒突き刺しただけで感染してしまいます。

2.カブモザイクウイルス(TuMV)

カブモザイクウイルス(TuMV)は、アブラナ科の植物をはじめに、キク科、ナス科などの200種類以上の植物に感染してモザイク病を引き起こします。

感染すると、作物を枯らしたり、果実に奇形を生じさせたりします。

3.ジャガイモYウイルス(PVY)

ジャガイモYウイルス(PVY)は、主にじゃがいも、トマト、ピーマン、タバコなどで被害の大きいウイルスです。

日本では、普通系統(PVY-O)、えそ系統(PVY-N)、塊茎えそ系統(PVY-NTN)の3系統があり、感染すると葉脈にえそを生じて、葉を枯らせてしまいます。

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モザイク病とはどんな病気?

モザイク病

モザイク病に感染した作物は、葉・茎などに黄淡色の濃淡のある病斑が出現しはじめ、葉脈に沿って緑が薄くなっていたりすると気が付きます。病斑は次第に株全体にモザイク状に広がっていきます。

細菌感染性の病気とは異なり、一度感染してしまうと治療することが出来ない怖い病気です。

感染経路は、

  1. アブラムシやコナジラミなどの昆虫による媒介
  2. 摘葉や収穫の際に使用したナイフやハサミ、人の手についたウイルスによる感染

の2つが多いとされています。

モザイク病の感染が起きやすい時期は?

キュウリ

モザイク病がアブラムシによって感染させられる場合、翅(ハネ)を持った個体が多く出現する時期が、モザイク病の感染の起きやすい時期だと考えられています。

アブラムシの発生は春(4~5月)と秋(9~10月)に多く、この時期に多くの羽をもつ個体も飛来しているため、この時期になるとモザイク病に注意が必要な時期だといえるでしょう。

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作物がモザイク病にかかってしまったら

モザイクウイルスに感染したタバコの葉

作物が一度モザイク病に感染してしまったら、農薬では治療することが出来ません

感染した作物をそのままにしておくと、モザイク病に感染した作物で育ったアブラムシが世代交代を繰り返し、ウイルスを保毒した有翅形の個体が周囲の株に移動することで、ウイルスが圃場全体に広がってしまう恐れがあります。

既に感染してしまった株がある場合は除去をし、周囲にいるアブラムシを駆除する必要があります。

モザイク病にかからないようにするための予防策

バラの剪定

モザイク病の予防としてできることは、下記の3つです。

  1. 摘葉や収穫をする際のハサミなどの道具はしっかりと消毒をする
  2. モザイク病に強い種とのの接ぎ木をした苗を利用する
  3. アブラムシの発生を予防をし、ウイルスの伝搬を防ぐ

カブモザイクウイルスなどは、植物に感染してから葉に症状が現れるまでに10日以上かかる為、感染しているのに気づかないまま道具を使用することになります。

特に、ウリ科の作物などは収穫の際にハサミを使う事が多いので、使用後には必ず消毒をすることで他の植物への感染拡大を防ぐことが出来るでしょう。

また、アブラムシ自体を発生させないというのも重要な防除方法です。

アブラムシの防除方法については「アブラムシの駆除を無農薬で行う6つの方法」の記事で詳しくご説明しています。

まとめ


アブラムシが媒介するウイルス病って恐ろしいんだね!

感染を予防するためにもアブラムシの生態を知って、しっかりと防除するのが得策じゃの!

今回はアブラムシが媒介するウイルス病についてご紹介いたしました。

一度感染してしまうと除去する以外に手立ての無い「モザイク病」などのウイルス病は、できるだけ未然に防ぎたいものです。

一番大切なのは「アブラムシの防除」ですので、アブラムシの生態や特徴を踏まえて効果的な防除対策を行いましょう。