花や作物に付いたアブラムシは、安全面を考慮してできるだけ農薬を使わずに駆除をしたいところですよね。
特にアブラムシは農薬に抵抗性を持った種類が増えてきており、モザイク病などを引き起こすウイルスを伝播することで作物に経済的被害をもたらす厄介な害虫として世界的に問題になっているのです。
そんなアブラムシが自宅で栽培している作物や花についてしまった場合、どのようにして駆除をしたらいいのか、おすすめの「農薬を使わない」駆除方法をご紹介します。
Contents
アブラムシの駆除を無農薬で行う方法
1.黄色いバケツや黄色い粘着テープで捕まえる
アブラムシの特徴として「黄色によってくる」という性質があります。
作物にたどり着けないように、作物の周囲に黄色の粘着テープを用意して捕殺したり、ウネの中央付近に黄色いバケツを置いて、水や油、乳酸飲料などを混ぜた液体を入れて放置しておくだけで、集まったアブラムシは勝手に溺れていきます。
畑が大きな場合は、かなりの数のバケツが必要になり少々大変ですが、ご家庭の花壇や家庭菜園の畑くらいなら、この方法はとても簡単でおすすめです。
【アブラムシ捕殺液の作り方】
- 黄色いバケツの3分の2くらいまで水を入れる
- 食用油(数滴)、乳酸飲料やヨーグルト、またはお酢を10mlほど入れて混ぜる
2.光の乱反射で寄せ付けない
アブラムシは、キラキラとした光の乱反射を嫌うという性質があります。
そのため、花や作物の株元に、光を反射する素材のものを置くだけで、忌避効果があります。
光の乱反射を利用した忌避方法はいくつかあるので、アブラムシ発生源となっている場所の規模によって使い分けましょう。
シルバーマルチ
農家さんのように防除したい範囲が広い場合は、シルバーマルチを利用するのが良いでしょう。
ウネ全体に光の乱反射が起きるので、アブラムシの忌避効果は大きいです。
ただ、他の方法に比べ、ややコストがかかってしまうのが難点です。
ガスマット
アブラムシを忌避したい範囲が狭く、株がまとまっているものであれば「ガスコンロ用の汚れ防止マット」が簡単です。
ハサミで切り込みを入れて、株元を囲むように設置すれば完了です。
スーパーでも購入ができ、ハサミさえあれば余計な作業をほとんどない簡単で安価な方法です。
アルミホイル
アルミホイルでもガスマット同様に安価で簡単にアブラムシを忌避できます。
ガスマットと同様に、株元に敷き詰めることで光の乱反射を起こしてアブラムシを寄せ付けません。
家庭のプランターや鉢植えなど、ガスマットが使いにくい場所はアルミホイルで十分でしょう。
3.ねばねばした液体で気門をふさぐ
アブラムシの弱点として「気門をふさぐと窒息する」という特徴があります。
気門とは呼吸をするための穴で、少し粘りのある液体がつくと呼吸ができずに死んでしまうのです。
自作する場合は、身の回りにある食品(牛乳やはちみつ、水あめ、デンプンなど)を水で溶いたものを使うだけでも効果があります。
もし自作の液体の効果に心配がある場合は、化学殺虫成分を含まない「粘着くん液剤」がおすすめです。
粘着くんには殺虫成分が一切含まれていないので、アブラムシに対しては「気門をふさぐ」という物理的な方法での駆除を行う液体です。そのため、アブラムシの薬剤抵抗性を発達させる恐れもありません。
また、気門を塞ぐという効果は多くのアブラムシの天敵には効果が無く、天敵は駆除せずにアブラムシだけを減らすことが出来ます。
一部、作物の種類(水ナス、かんきつ類)には、使用上の注意がありますが、人体への安全性は極めて高いので安心して使える液剤です。
今すぐに作物や花についたアブラムシを減らしたい場合は、この粘着くん液剤はとても扱いやすく、安全な駆除方法だといえるでしょう。
4.籾殻くん炭を畑に撒く
作物に直接スプレーをするのは嫌だ!という人には「籾殻くん炭」がおすすめです。
アブラムシは、籾殻くん炭の発する独特の臭いが苦手な為、土の上に薄くまくことでアブラムシの忌避効果を発揮して寄せ付けません。
ハウス栽培の場合は、野菜の株と株の間に間隔をあけてまくことで効果を発揮します。
農家さんの場合は、もみ殻は簡単に手に入ると思いますし、家庭菜園を楽しんでいる方であればホームセンターで購入も可能です。
籾殻くん炭の作り方や効能については「籾殻くん炭の使い方と作り方|害虫の忌避にも効果あり?」の記事をご覧ください。
もちろんネットでも購入可能なので、簡単にアブラムシを寄せ付けない方法をお探しの方は、籾殻くん炭がおすすめです。
5.天敵を使って防除する
アブラムシの天敵を使った防除も有効な手段の一つです。
※アブラムシの天敵についての詳しい説明は、別記事「アブラムシの天敵の種類と生物学的防除法について」をご覧ください。
自然の力を利用して、農薬を使わずにアブラムシを防除できればこれ以上に良いことは無いですよね。
ただ、放っておいて天敵がアブラムシを食べに来てくれるのであれば苦労はありません。
しっかりと「守りたい作物に付いたアブラムシ」を食べに来てもらわないといけないのが難しいところです。
天敵を使った防除方法の一つに「バンカー法」という物があります。
バンカー法については「ソルゴーの種類とバンカー法のアブラムシ防除効果について」で詳しくご説明していますが、この方法は、主にハウス栽培や農園などの比較的大きい規模でのアブラムシ防除に有効な方法です。
アブラムシの天敵は「生物農薬」としてネットなどで購入が可能です。
下記商品は、上から順番に「ナミテントウムシ」・「コレマンアブラバチ」・「タイリクヒメハナカメムシ」で、いずれもアブラムシの天敵です。
天敵を用いてアブラムシ防除をお考えの場合は、商品購入の前に、一度上記のバンカー法に関する記事を是非ご一読ください。
6.土壌の窒素濃度をコントロールする
アブラムシは硝酸態チッソが大好物なため、土壌の窒素濃度が高いとすぐにやってきてしまいます。
作物を育てるためにはチッソを効かせる場合も多く、作物の生育とアブラムシの兼ね合いで、どの程度のチッソ濃度にすればよいのか難しいところでしょう。
硝酸値が8000ppm以上になるとアブラムシが付きやすいといわれており、硝酸イオンメーターなどで土壌の硝酸値を5000~6000ppmくらいに抑えることで、アブラムシの発生を抑制することが出来るでしょう。
まとめ
農薬を使わずにアブラムシを駆除する方法をご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介した6つの農薬を使わないアブラムシ防除方法を、防除する規模別に表にまとめてみます。
花壇・家庭菜園 | 農園 | |
黄色いバケツ・テープ | ○ | △ |
シルバーマルチ | × | ◎ |
ガスマット・アルミホイル | ◎ | × |
自家製粘性スプレー | ○ | ○ |
粘着くん | ◎ | ◎ |
モミガラくん炭 | ◎ | ◎ |
天敵を用いたバンカー法 | × | ◎ |
チッソ濃度コントロール | ○ | ◎ |
今回ご紹介した方法は、いずれも作物やアブラムシの天敵にやさしく、作業する人にとっても安全な方法ばかりです。
農薬を使わないというのは、安全面だけでなく「農薬抵抗性のあるアブラムシを増やさない」という点でも大切な視点なのです。
もしあなたの大切な作物や花に大量のアブラムシがついてしまった場合は、今回ご紹介した6つの方法から自分に合ったものを選んで試してみてください。