石灰硫黄合剤の散布方法と注意点|梅や松などの庭木の殺菌消毒を行いました

石灰硫黄合剤の散布

こんにちは、田舎センセイです!

我が家では1月後半になると庭木の殺菌消毒を業者に依頼して、石灰硫黄合剤を散布してもらっています。

自給的農家ではありますが田んぼや畑以外にも果樹を多数栽培しているので、その病害虫対策として年1回のこの作業はほぼ恒例行事となっています。

本記事では石灰硫黄合剤の散布に関する注意事項やよくある質問などについてまとめます。


普通の農薬とちょっと違う所が多いんだよね

その特殊性もあって注意点も多いので是非使用する前に見ておくと良いぞい!

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石灰硫黄合剤とはどんな農薬?

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多硫化カルシウム(CaSxを主成分とした殺菌・殺虫効果を持つ農薬で、とても古くから使われているのですが、強アルカリ性の性質を持つことや硫黄の臭いが強烈であるなど他の農薬とはかなり異なる特徴を持っています。

冬季に散布することで、冬の間に植物にくっついて越冬するような害虫に特に効果的で、防除の難しいカイガラムシハダニなどに効果があります。

石灰硫黄合剤の特徴

1.古くからある薬剤で、使用方法を守れば安全性は高い(毒性は普通物)
2.強アルカリ性の性質を持つ
3.果樹の越冬病害虫防除に高い効果を示す
4.有機農産物の日本農林規格(有機JAS)に適合する農薬
5.酸性物との混用不可薬害など注意すべき点が多い

石灰硫黄合剤の500mlや1ℓなどの少量タイプは悪用などが原因で生産・販売中止

石灰硫黄合剤の難点として「少量タイプが無いので一般家庭では使いにくい」というものがあります。

2000年代には500mlや1ℓのタイプが販売されていたのですが、自殺や犯罪などに悪用されることがあったために現在では生産・販売自体が中止になっています。


大容量の石灰硫黄合剤は一般家庭では使いきれる量じゃないから困るよ~

酸性の物質と混ぜ合わせると有毒な硫化水素を発生させるので、それが悪用される原因だったんじゃ

現在では10ℓや18ℓの商品が一般的でネットで注文が可能ですが、やはり一般家庭ではここまでの量は不要なので扱いに困る所です。

石灰硫黄合剤とイオウフロアブルの違いとは?

一般家庭でも使いきれる少量タイプの石灰硫黄合剤の販売が中止になってから、500mlや1ℓの商品を探す人が石灰硫黄合剤と間違えて「イオウフロアブル」を購入するケースがあるようです。

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共に「イオウ」とあるので間違いやすいですが、両者は全く異なる薬品なので石灰硫黄合剤をお求めの方は間違えないように注意しましょう。

イオウフロアブルは微粒子の硫黄を水に溶けやすい状態にしたもので、主成分は硫黄が52%。

同じくイオウとありますが石灰硫黄合剤との混用は基本的に不可(※かんきつでは衣装直前の混用は可能)で、果樹のうどん粉病やさび病、ハダニなどに効果がある薬品です。

詳しくはイオウフロアブルの製品情報をご覧ください。

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石灰硫黄合剤の散布時期とタイミングについて

石灰硫黄合剤の散布の時期は、一般的には植物の休眠期である冬季(1月・2月)に行うことが多いです。

落葉果樹などの発芽後の散布では薬害を生じやすいので我が家では1月に散布することが多いのですが、植物によっては夏季に散布可能なものもあるので使用タイミングは説明書の通りに行えば問題ありません。

冬季の散布に比べて、日中の気温が高くなる夏季では希釈倍率を高めて濃度を薄くして使うなど使用法が異なることにも注意しましょう。

※石灰硫黄合剤の適応と使用上の注意について

石灰硫黄合剤を使用する際の注意点

石灰硫黄合剤 車
石灰硫黄合剤はその特性から結構な数の注意点があります。

基本的には商品パッケージに記載されている注意点や、上でご紹介した「石灰硫黄合剤の適応と使用上の注意について」を各自でご確認いただいて使っていただくようにしてください。

①有害な硫化水素が発生するので酸性物質との混用は避ける
②金属に付着すると錆びるので、自動車などにかからないように注意する
③皮膚や目についたら直ちに洗い流す
使用後の噴霧器を放置すると腐食して使えなくなるので、すぐに水洗いする
⑤腐った卵のような悪臭を発するので散布の時間帯と近隣に注意を払う
⑥必ず0℃以下にならない場所に保管する

付着による健康上の問題や、家の壁面や自動車への腐食、使用した散布機(噴霧器)の洗浄、悪臭などが主な注意点です。

上の写真は、以前散布した時に車の移動を忘れてしまい、私の車にかかってしまった時のもので、展着剤を使用していたこともあり水で流すくらいでは落ちませんでした。(※展着剤については後述)

誤ってかかってしまった場合はできるだけ早く洗い流さないと錆びの原因になります。

また、悪臭がするというのはこの農薬の使いにくい点の1つで、我が家のように隣家までの距離が数百mくらい離れている場合は風向きなどに注意すればさほど問題はありませんが、都市部などで隣家との距離が近い場合には注意が必要です。

散布後数時間は臭いが漂っていますが、半日もすれば落ち着きます。翌日になれば散布した植物に近づくとにおいがする程度になります。

ただ散布時は窓ガラスを締め切っていても家の仲間で臭いが入ってくるほどの強烈な臭いなので、使用時は近隣住民に予め声をかけておくなどの配慮は必須でしょう。

石灰硫黄合剤が皮膚についてしまった場合の対処法

石灰硫黄合剤は農薬中毒の中でも比較的発生件数の多い薬剤(2001~2003年の3年間で発生した農薬中毒のうち約1割を占める)で、発生した8件の農薬障害のうち7件は皮膚についたことによる化学熱傷で、1件は眼障害だったそうです。

強アルカリ性の性質を持つので、皮膚についた時に火傷と同じような化学熱傷を引き起こすことがあるので、症状がなくても付着した箇所があれば適切に対処する必要があります。

その対処法は以下のサイトでとても詳しく書かれていました。

石灰イオウ合剤はアルカリ性で,やけどに類似した症状(化学熱傷)を起こしやすい。低濃度のアルカリでは麻酔作用が生じて,気づきにくいことが多い。しかし,石灰イオウ合剤が付着したら直ちに石けんと水で15分以上洗浄することが必要であり,付着してから1時間以上経過してから洗浄しても効果がない。報告書は石灰イオウ合剤が付着したら,自覚症状がなくても,直ちに洗浄すべきであることを農業者に周知して,治るのに時間を要する化学熱傷を減らすことが望まれることを強調している。

※西尾道徳の環境保全型農業レポート「No.127 意外に事故の多い石灰イオウ合剤」より引用


それにしても先日我が家に散布に来た業者のおじいさん、、ゴーグルはおろかマスクすらしてなかったんだけど・・・

・・・絶対に真似するんじゃないぞい!
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雨による流亡を軽減するために「展着剤」の加用が推奨

この石灰硫黄合剤という薬品は、植物に散布されると葉の上で酸化する過程で微粒子のイオウが生じて殺菌・殺虫効果を発揮すると言われているので、散布直後に雨が降ってしまうと効果が減弱してしまいます。

そのため「展着剤(てんちゃくざい)」を加えて使用することが推奨されています。

展着剤にはいくつか種類があるのですが、ホームセンターなどでも売られているもので言えば「ダイン」などがポピュラーです。

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石灰硫黄合剤によるウメノキゴケの除去効果

ウメノキゴケ
以前当サイトでもご紹介したメノキゴケなどの樹木に着生する地衣類の除去に石灰硫黄合剤を使うことがあります。

ウメノキゴケ
ご自宅の庭木の樹皮や庭石をよく見ると灰色っぽい苔のような物がついていれば、それは「ウメノキゴケ」という地衣類の一種です。 コケといっても、...

ウメノキゴケ自体は植物を弱らせる存在ではなく、植物自体の樹勢が弱まっている時に付着しやすいと考えられているので、必ずしも農薬散布による除去が必要かと言われれば時と場合によります。

ただ、ウメノキゴケがつきすぎて枝が折れてしまったり、枝が覆われてしまうことで新芽が出ずにさらに樹勢を弱めてしまう事につながることもあるので、必要な場合は冬季の石灰硫黄合剤の散布も効果的です。

まとめ

我が家では毎年1回は必ず冬季に石灰硫黄合剤の散布を行いますが、そのおかげもあってか庭木や果樹の病害虫の発生はさほど多くないと思います。

個人で散布するにはややハードルの高い薬剤ですが、冬季の病害虫防除にとても効果的なので、使用方法や注意点などをしっかりと確認して使ってみてください。