晴れた日にコンクリートの上で見かける「真っ赤な小さい虫」はタカラダニという虫です。
世界で約40種類以上確認されている虫で、日本で確認されるタカラダニの多くは「カベアナタカラダニ」という種類です。
壁の穴に生息するから「カベアナ」なのではなく、眼の後ろに「ウルヌラ」と呼ばれる穴を持つアナタカラダニの特徴に由来します。
真っ赤な見た目の不快さと、屋外に干してある衣服や布団につくこと、刺すのではないかという恐怖心から、保健所へのダニの相談件数のうちの1割がこのタカラダニに関する相談が占めています。
今回は、そんなタカラダニの生態と防除方法についてまとめます。
Contents
タカラダニとは?
- 和名:カベアナタカラダニ(宝ダニ)
- 学名:Balaustium murorum
- 階級:前気門亜目タカラダニ科
- 生息範囲:日本全国(世界中にいる害虫)
- 生息場所:コンクリート面(建物の外壁や床)、苔の上
- 活動時期:5~6月
- 体長:0.3~1mm
- 寿命:成虫の期間は約1,2か月。産卵すると24時間ほどで死ぬ
- 特徴①:メスのみの単為生殖で増える
- 特徴②:暑さに強い
- 特徴③:人を刺すことは無く、生きているタカラダニに害はない
- 好物:花粉、アブラムシ、コケなど
- 弱点:基本的に弱い
- 厄介な点①:見た目が赤くて目立ち不快
- 厄介な点②:潰してしまうと体液で皮疹が起きることがある
タカラダニの生態
タカラダニの生態はまだ謎の部分が多いのです。
タカラダニに関する相談で多いのが「家の中への侵入」なのですが、何を求めてタカラダニが移動をして、室内に侵入してくるのかは現在はわかっていないようです。
実験で捕獲されたタカラダニは全てメスだったことから「単為生殖」であると思われているので、繁殖のための配偶者を探す行動ではないと推測されています。
日光のよく当たるコンクリートでできた屋上などで多く発見されることから、家の外壁を上って屋上に向かう習性があり、その途中で室内に迷い込んでしまうのかもしれません。
タカラダニは害があるの?
ダニの仲間には人を刺して、痒みを伴う皮疹を生じさせる種類も多くいますが、このタカラダニは人を刺すことはありません。
カベアナタカラダニに関する研究(*1)によると、
ダニ幼虫・若虫・成虫を貝製ボタンでできた小容器に入れ、肌に6時間接触したところ、被験者に痒みや皮疹はほとんど生じなかった。 -カベアナタカラダニの生態と防除―新たな知見を加えて―大野(2015)
とあるように、生きたタカラダニの接触実験を行っても、刺されたり皮疹を生じるような実害はなかったと報告されています。
しかし、同実験で、潰したタカラダニを同様に接触して観察したところ、被験者にかゆみを伴う皮疹が現れたことから、ダニの体液がアレルギー反応を誘引する可能性があることが分かっています。
ですので、タカラダニを見つけても絶対に潰さないようにしましょう!
タカラダニの駆除方法
多くの人が知りたい「タカラダニの駆除方法」ですが、タカラダニ自体はとても弱い虫なので、見える範囲のタカラダニを駆除するのはとても簡単です。
飛ぶことはありませんし、人を刺すことも無いので、まずは見えている範囲のタカラダニを下記の方法で駆除しましょう
1.放水して駆除をする
タカラダニの多くが「乾燥したコンクリート面」で発見されることから、水にも弱いと考えられています。
タカラダニの発生個所が屋外のブロック塀や屋上などであれば、放水をして流してしまうのは一つ簡単で効果的な方法でしょう。
2.殺虫剤で駆除をする
タカラダニには市販されているピレスロイド系の殺虫剤も有効です。
ドラッグストアなどで販売している殺虫剤を使用することで駆除が可能ですが、発生場所が特定しにくいので、残効性のあるフェノトリンなどのピレスロイド系殺虫剤が良いでしょう。
室内で発生した場合にも使えるこちらの殺虫剤がおすすめです。
3.コケがついていたら除去する
コケの付いたコンクリート壁でタカラダニを見かけることが多く、タカラダニはコケを食べることが確認されています。
コケのある場所が産卵場所にはならないようですが、摂食行動で集まってくることも想定されるので、タカラダニの発見場所に苔が生えていたら除去するようにしましょう。
タカラダニの最も効果的な忌避方法は「防水材塗布」!
タカラダニの駆除は簡単でも、再発生の予防法を取らないとまた5~7月になると発生してしまう恐れがあります。
そんなタカラダニの防除方法で最もおすすめしたいのが「防水材の塗布」です。
前述の研究(*1)では、防水材を塗ってある屋上にタカラダニをほとんど見かけなかったことから、防水材にタカラダニに強い忌避効果を持つのではないかと仮説を立てて実験したところ、防水剤を塗布した部分にはタカラダニが寄り付かなかったことが分かりました。
その効果は、2年半後でも持続していたことから、防水材塗布は長期間にわたってタカラダニの忌避効果を持つことも実証されました。
防水材はどこに塗ると良いのか?
防水材がタカラダニの忌避効果を発揮することが分かった所で、どこに塗布すると良いのでしょうか?
タカラダニは、上の画像で示す2か所で卵が多く発見されたことから、産卵場所が
- 壁の亀裂
- 壁と床の継ぎ目のわずかな隙間
であると考えられています。(*2)
その理由として、
- 雨風などの外的要因から身を守ることが出来る
- 天敵であるアリやクモが入り込みにくい
- 適度な湿度を保つことが出来る
等が考えられています。
ご自宅のタカラダニを見かけた場所の周囲に、このようなコンクリートの切れ目があればそこがタカラダニの産卵場所になっていることが考えられます。
まずはその場所に放水、もしくは残効性のある殺虫剤で成虫の駆除を行い、防水材を塗布することでその年のタカラダニの再発生予防、また今後数年間の防除対策とすることが出来るでしょう。
どの防水材を使用すると良いのか?
一般的に、タカラダニに忌避効果を持つとうたっている防水材はありませんが、前述の研究(*1)では「ウレタン防水材」を使用して実験をしており、その結果忌避効果が占められています。
ウレタン防水材には「1液型」と「2液型」の2種類があり、2液型は主材と硬化剤を混ぜて使用する必要があり、素人が使うと配合の失敗によって硬化不良などを起こすことがあるので、1液型のものを選ぶようにしましょう。
1液型は配合する必要が無いので扱いやすいのですが、デメリットは一度開封すると時間が経つにつれて硬化してしまうため「使い切る必要がある」という点です。
タカラダニ防除を目的に購入する場合は、使用範囲に合った量を購入するようにしましょう!
壁面の亀裂や床面と壁の継ぎ目に塗装する場合は、こちらの商品が量も少なく使い切りに適しているのでお勧めです!
また、広範囲に塗装をしたい場合は、しっかりとした塗装業者にお願いすることをおすすめします。
まとめ
今回はタカラダニの生態と防除方法についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
簡単に今回の内容を下記にまとめます。
- タカラダニは刺さないが、潰すとアレルギー反応を起こす恐れがある
- 生態の多くはまだ謎な部分が多い
- 水や殺虫剤で簡単に駆除できる。
- 殺虫剤は残効性のある「フェノトリン」のピレスロイド系殺虫剤がおすすめ
- 産卵場所は「コンクリート壁の亀裂」「壁と床の継ぎ目」
- ウレタン防水材が忌避効果を持つので、産卵場所に塗布すると良い
- ウレタン防水材は、1液型で使い切ることができる量のものを購入する
見た目は不快ですが、タカラダニはあえて潰さなければ実害は少ない害虫ですので、そこまで心配する必要はないでしょう。
発生する期間も短いので、ご紹介した残効性の高い殺虫剤を壁面の亀裂などに散布すれば、その年の発生は十分抑えられるでしょうし、完全に防除したい場合はウレタン防水材を使えば十分だと思います。
タカラダニに悩まされている方は、是非今回ご紹介した方法を使って防除してみてください。
関連記事>>>家の中の虫はこいつかも?あまり知られていない室内の害虫10選
参考(*1):カベアナタカラダニの生態と防除(大野 2011)
参考(*2):カベアナタカラダニ Balaustium murorumの産卵場所(大野ら 2015)