こんにちは、田舎センセイです。
我が家には多くの果樹や観葉植物があり、剪定時や根腐れを起こした時に病患部を削り取るような処置をすることがありますが、そのままにしておくとカビの繁殖や病原菌の侵入によって深刻なダメージを負ってしまうことがあります。
そのような処置を行うときに、病患部に塗布することで早急に皮膜を作り、切り口の回復を早めてくれる「殺菌効果を持った癒合剤(ゆごうざい)」があります。
癒合剤を使わずとも植物自身の回復力で何とかなることもありますが、私が趣味で育てている多肉植物や塊根植物(コーデックス)の様な水分量が多い植物の場合は、できるだけ早く切り口に皮膜を作ってあげることで必要以上の水分の飛散を防いであげたいところ。
本記事では、いくつかある癒合剤のうち殺菌効果のある「トップジンMペースト」の使い方や特徴、代用品やその他の代表的な癒合剤「カルスメイト」と違いについて解説します。
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【癒合剤】トップジンMペーストとはどんな薬?
農林水産省登録 | 第13411号 |
性状 | 橙黄色粘稠懸濁液 |
毒性 | 普通物 |
有効成分 | チオファネートメチル3.0% |
有効期限 | 4年 |
トップジンMペーストは、日本曹達(NISSO)が販売している国産の強力殺菌剤です。
癒合剤とされるものの中には殺菌効果を持たないものもありますが、トップジンMペーストは有効成分である「チオファネートメチル」が水溶液や植物体内でMBC(カルベンダジム)という成分に変化し、殺菌作用を発揮します。
トップジンMペーストのような、MBCが殺菌作用を発揮する殺菌剤の事を「ベンズイミダゾール系殺菌剤」と呼びます。
塗布から表面に皮膜を素早く作ってくれるだけでなく、植物体内に侵入している病原菌を死滅させてくれる効果があるので、カビや病気で腐りかけた病患部を除去した後に塗ることで瀕死の状態の植物を復活させることもあります。
私のように根腐れが起きやすい乾燥地帯原産の塊根植物を育てていると、日本の気候に耐え切れずブヨブヨになってしまうことも多いのですが、腐った個所を取り除いてトップジンMを塗布することで回復した例もあります。
トップジンMペーストの特徴
・病患部の殺菌以外にも、剪定後の予防的利用にも使える
・粘度が低いので液だれしやすい(塗布時に刷毛などが必要)
・臭いはあまりない
キャップを取ると透明な中蓋があり、広範囲に塗布する場合はこれを取って使うと効率が良さそうです。
トップジンMペーストを実際に使ってみた
私は植物の剪定時の切り口保護と殺菌目的でトップジンMペーストを利用することが多いのですが、「アデニウム」という植物の剪定時に使った時の様子を下記関連記事にて詳しくご覧いただけます。
この程度のサイズの切り口であれば、中蓋は外さない方がいいですね。
私が使っているのは容量が200gの物ですが、100gから1kgまでいくつかバリエーションがあるので、使用期限が4年であることを考えると、どの程度頻繁に使うかを考えて容量をよくみて選んだ方がいいでしょう。
前述の通り、粘度が低いので刷毛や筆を使って広げるようにした方が無駄なく塗れると思います。蓋を取ったまま横倒しにしているといつの間にか床にこぼれていたので、使用後は必ずしっかりとキャップを締めておくようにしましょう!
トップジンMの剤形別の特徴
トップジンMには、ペースト以外に「ゾル」「水和剤」「オイルペースト」「粉剤」の4つの剤形があります。
剤形ごとに適用・使用法が違いますので、「トップジンM」という部分だけを見て商品を選ばないように注意しましょう。
トップジンMゾル
トップジンM水和剤
トップジンMオイルペースト
トップジンM粉剤
トップジンMペーストとカルスメイトの違い
癒合剤としてトップジンMペーストと比べられることが多い商品に「カルスメイト」があります。
カルスメイトの主成分は「酢酸ビニル樹脂」で、トップジンMペーストとの違いは「カルスメイトには殺菌効果が無い」こと。
殺菌剤ではなく切り口や傷口に雨があたったり病原菌が入るのを防ぐ「保護剤」としての意味合いが強く、主成分自体は木工用ボンドとほとんど変わりません。
色が褐色なので樹木の傷口が目立ちにくいことと、すぐに乾いて皮膜をつくるのでべたべたしにくいのが特徴です。
健康な枝の剪定後の保護にはカルスメイトで問題はありませんが、殺菌作用は無いのでカビや病原菌に対する効果はありません。
ただし、剪定の強度や時期、実のなる木には殺菌剤が入っているトップジンMは使わない方がいいという意見もあるようなので、状況によってトップジンMペーストと使い分けるのが良いでしょう。
癒合剤の代用品(木工用ボンド・墨汁・ペンキ)は使えるのか?
今回ご紹介したトップジンMペーストやカルスメイトなど癒合剤として販売されている商品以外に、癒合剤の代用品として使えるといわれているものに「木工用ボンド」や「ペンキ」などがあります。
※木工用ボンドの成分を見てみると、カルスメイトと同じ酢酸ビニル樹脂が主成分になっている
特に木工用ボンドは前述の通りカルスメイトが同様の成分であることから代用品として使う人も多いようなのですが、愛知県植木センターの調査(平成26~28年度)によって、木工用ボンドは癒合組織(カルス)の形成には効果が無く、樹木の種類によっては皮膜内部で黒カビが発生する可能性があると書かれています。
さらに、無処置の場合でも条件が良ければ代用品による処置と変わらない結果も見られたようなので、木工用ボンドを使うくらいなら無処置でもよく、効果を得たいのであればやはり市販の癒合剤を使った方が癒合促進効果は確実です。
ご紹介した愛知県の植木センターでは、切り口の大きな樹木ではトップジンMペーストを第一選択としておすすめしているようですので、家にあるからといって木工用ボンドを使わずにちゃんと癒合剤を買って使いましょう!
まとめ
代表的な癒合剤である「トップジンMペースト」について、実際に使用した感想と効果について解説いたしました。
癒合剤のポイントは、使用前後で癒合組織の形成促進が図られているかどうかという点にかかってくるのですが、愛知県植木センターの調査でもトップジンMペーストの癒合促進効果は顕著だったという結果が出ています。
私個人の使用感としても、使いやすく価格も手ごろなので使ってみて良かったですし、誤って根腐れを起こしてしまった場合でも回復させる手立てがあるというのは心強く感じました。
あくまでも農薬のひとつなので、適用外使用にならないように注意してご利用ください。