アザミウマは、園芸をしたり畑で作物を作っている人にとってはおなじみの昆虫ですが、一般の方にはあまり知られていないかもしれません。
花や作物に付く害虫として世界中で猛威を振るっている「アザミウマ」ですが、いったいどのような虫なのでしょうか。
アザミウマの生態を知って、効果的な防除を行えるように準備をしましょう!
アザミウマとはどんな虫?
- 和名:アザミウマ(薊馬)
- 学名:Thysanoptera
- 英名:Thrips
- 階級:アザミウマ目
- 生息範囲:日本全国(世界中にいる害虫)
- 活動時期:4月~10月(夏の高温、乾燥期に大発生)
- 体長:約1~2mm
- 特徴:細長い胴体と頭部をもつ。翅のある種と無い種がいる
- 好物:花や作物の、茎、葉、花、果実を吸汁加害する
- 弱点:キラキラ反射するもの
- 厄介な点①:ウイルス病の媒介者になる
- 厄介な点②:作物や花を吸汁加害してダメにしてしまう
- 厄介な点③:生態的特徴から薬剤防除しにくい
アザミウマの種類は?
日本に生息するアザミウマは、確認されているだけでも200種類以上いて、それらの中でも特定の作物に寄生する種や、薬剤耐性の強い種など様々なアザミウマがいます。
それらをまとめて「アザミウマ類」としたときに、アザミウマ類には下記のような種類がいます。
【畑でよく見かけるアザミウマ】
クリバネアザミウマ/チャノキイロアザミウマ/ネギアザミウマ/ヒラズハナアザミウマ/ミカンキイロアザミウマ/ミナミキイロアザミウマ/モトジロアザミウマ/クロゲハナアザミウマ
この中でも、最近よく問題になるのが「ミナミキイロアザミウマ」や「モトジロアザミウマ」などでしょう。
一般的には、アザミウマにはオルトラン水和剤などの薬剤が効果的なのですが、ミナミキイロアザミウマには効果が薄く、別の薬剤にした方がよいとされています。
このことからも、畑でアザミウマを発見した場合は、まずアザミウマの種の特定をするというのも大切な防除ポイントとなります。
オルトランについては、様々な剤形があり使い方がわかりにくいという声も多く聞かれます。
そのため、各オルトランの特徴や使用上の注意点について、下記の関連記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
オルトランについてオルトランの使い方と特徴|GFとDX粒剤・水和剤と液剤の違いや毒性について
<オススメはこちら>
アザミウマが発生しやすい作物・植物
アザミウマは、花につく害虫としてとてもよく知られていますが、作物や果樹なども加害します。
まずは、アザミウマが良く発生する作物や植物にはどのようなものがあるのかまとめてみます。
アザミウマが加害しやすい花・植物
アジサイ/サザンカ/ツバキ/カーネーション/バラ/マリーゴールド/シクラメン/イヌマキ
アザミウマが加害しやすい野菜
ネギ/アスパラ/キュウリ/ゴーヤ/イチゴ/スイカ/メロン/シュンギク/トウガラシ/ピーマン/ニラ/ナス/トマト
アザミウマが加害しやすい果樹
ブドウ/柿/柑橘類
アザミウマの特徴とは?
世界的大害虫として恐れられている「アザミウマ」は、いったいどのような特徴をもった虫なのでしょうか。
アザミウマ特有の生態もあるのですが、実はアブラムシと共通している点がいくつかあります。 以下の7点は、アザミウマとアブラムシに共通の特徴です。
- キラキラしたものが苦手
- 黄色い物に寄ってくる性質がある
- 同一薬剤を使い続けると薬剤耐性を持つ種が増える可能性がある
- ウイルス病の媒介者となる
- 天敵による防除方法が有効
- 硝酸態チッソが多い土壌を好む
- 繁殖力が旺盛
アザミウマに対する防除法として、アブラムシの防除法が使えるものも多いので、アブラムシの防除法に対する記事も併せてご覧いただけると良いでしょう。
アザミウマが発生する場所には、アブラムシも同様に発生していることも多く、共に防除できる方法を使うというのは効果的であると思います。
また、アザミウマ特有の生態的特徴としては以下のような点が挙げられます。
- 年10回ほど発生し、短期間で世代交代を繰り返す
- 完全変態(卵→幼虫→蛹→成虫)を行う
- 土の中で蛹(サナギ)になる
- 10度以下で生育がストップする
アザミウマが厄介な害虫である理由
※写真はアザミウマによる巻き葉
アザミウマは、数ある害虫の中でも防除しにくい害虫の一つとされています。
その理由として、
- 休眠せず、気温などの条件が揃えばどんどん増殖する
- 巻き葉を作り群生して吸汁する
- 花に潜り込んで吸汁するため、農薬が届きにくい
- 葉の内部に産卵するため、寄生されていることに気づきにくく、対処が遅れる
- サナギになるときに土に潜るため、農薬が届きにくい(天敵がサナギを襲えない)
- サナギから成虫になると、地面から茎をつたって這い上がるが、地面近くにいることも多いため天敵に出会いにくく、天敵による捕食がアブラムシほど効果的ではない
- 薬剤耐性を持つ種が増えてきている
- 様々な植物に寄生するので、周辺の雑草を含めて防除しないと、どこからともなくやってくる
- 咲き終わった花殻が発生源になるので、こまめに摘み取らないとすぐに増える
などの特徴が挙げられます。
アザミウマの繁殖力もさることながら、
「土中で蛹になる」「花の中に潜り込んで吸汁する」「巻き葉を作る」「作物の下の方にいる」など、「隠れていることが多く防除方法が効きにくい」という特徴が厄介であることが分かります。
農薬を散布してもすべての成虫にまで届きにくく、天敵による防除も天敵に出会いにくい場所に潜んでいるのです。
アザミウマに被害を受けたらどうなる?
アザミウマは、春先から夏の暑い時期に大発生をして、群生して吸汁加害をします。
アザミウマの成虫は、針のような形状の器官で作物の葉の表面や果実などを切り裂いて、そこに別の口吻を差し込んで吸汁します。また、成虫は葉の内部に産卵するため、幼虫も同様に吸汁します。
被害の多くは、新葉・花・果実などで、新葉は被害を受けると色が抜けてしまい、さらに被害が進むと白い斑点が沢山ついて落葉します。
花の場合は、開き始めたつぼみを好んで加害し、もぐり込んで吸汁しては被害を受けたつぼみは開かず落ちてしまいます。被害の初期段階では、茶色いシミのようなものが見え、次第に全体に広がって枯れてしまいます。
果実や野菜が加害を受けると、表皮に小さな斑点ができたり、かさぶた状になります。
アブラムシと違って、吸管が無いので「かじりながら」吸汁するため、作物への被害はアブラムシ以上に大きなものになることが多いです。
【アザミウマの吸汁被害の特徴】
- 花びらに茶色いシミ、全体に広がって変色したり、咲かずに枯れる
- 新葉に加害を受けると、色が褪せ、白い斑点が付いたり、湾曲・奇形葉を生じる
- 果実は、がくの部分に被害を受けやすく表皮が褐色のかさぶた状になる
- かじりながら吸汁するため、作物に傷がつき被害が大きい
- ウリ科の植物は「黄化えそウイルス病」などのウイルス病にかかりやすい
まとめ
この記事では、アザミウマの生態と特徴、アザミウマの種類、被害の特徴などについてご紹介しました。
アザミウマは、アブラムシ同様作物などを吸汁して、ウイルスを運んだり食害したりする厄介な害虫で、その生態的特徴から防除しにくいことが分かりました。
また、種類も豊富で、種によっては薬剤を変えなくてはいけないこともあるので、発見した際には種類の見極めも大切な要素となるでしょう。
アザミウマの効果的な防除法については「アザミウマを無農薬で駆除する効果的な7つの方法とは?」の記事で詳しく紹介していますので、是非あわせてお読みいただければと思います。
今回ご紹介したような、アザミウマの生態的特徴をしっかりと把握して、発生した場合の防除方法に活かしていきましょう。