お米を精米する際に出る「米ぬか」は、家畜の飼料やぼかし肥の材料として使うことができます。
田舎で生活しているとわざわざホームセンターなどで購入する必要もなく、ただ同然で手に入ることもある米ぬかですが、実は化成肥料のようにそのまま土に撒くというような使い方はできません。
米ぬかを肥料として使うためには、いくつか大事なコツと注意点があるのです。
今回は、栄養満点の米ぬかを畑の肥料として土に混ぜて使うときのポイントと注意点などについて詳しく解説していきたいと思います。
Contents
米ぬかの成分と特徴
米ぬかの成分 | |
窒素(N) | 2~2.6 |
リン酸(P) | 4~5 |
カリ(K) | 1 |
米ぬかは、化成肥料に比べると効果は薄いですが、肥料成分としては窒素とリン酸がバランスよく含まれているので、精米後の廃棄物の再利用としては十分すぎるほどの栄養価といえます。
米ぬかには、上記の栄養素以外にも、ビタミンE、ミネラル、食物繊維、ポリフェノールを多く含むため、土壌の微生物を活性化するのに最適です。
しかし、肥料用として販売されている以外の米ぬかは「生の米ぬか」であるため、そのまま土に撒いてしまうとデメリットの方が強く出てしまうのでお勧めできません。
そのまま撒いてしまうと、生の米ぬかは撥水性を持つため水をはじいてしまったり、水分を吸って団粒化して土壌を硬化させたり、雑菌や虫が大繁殖してしまいます。
また生の米ぬかは鮮度もあるため、長期間の保存には向かないので注意が必要です。
生の米ぬかと脱脂米ぬかの違い
生の米ぬか
コイン精米所などで無料でもらえる米ぬか。
堆肥やぼかし肥を作る時の発酵促進剤として使う事が多く、そのまま土壌に撒くことはほとんどない。
脱脂米ぬか
生の米ぬかから油を搾り取った肥料用の米ぬか。
分解が緩やかなので、土壌の基肥として播種の2~3週間前に土に混ぜ込むことで、土壌の改良効果が得られる。
米ぬかを土に混ぜるときの注意点
2.脱脂米ぬかは、作物を植え付ける2~3週間以上前に土に混ぜ込んで発酵させる
3.夏~秋の暑い時期の発酵はコバエ・ゴキブリ・ナメクジの温床になるので避ける
4.発酵が進むにつれてガスが発生し、発熱するため作物を植えるタイミングには注意する
生の米ぬかを使うと、米ぬかに含まれる糖質や脂質に微生物がおびき寄せられ、一気に分解が進みます。
その微生物による有機質の分解の過程で、土壌の窒素が使われてしまい土の中が「窒素飢餓」の状態になってしまうため、作物に窒素が行き渡らなくなって障害が起きやすくなってしまいます。
また、米ぬかが水にぬれると発酵が一気に進みます。
発酵は「熱」と「ガス」の発生を伴うので、作物があると根腐れや酸素欠乏を起こしてしまいます。
通常は別の場所で米ぬかと土を混ぜ、長い時間をかけてじっくりと発酵させてから肥料として撒くという使い方をします。
夏の暑い時期にこの発酵を行うと、カビなどによる急速な発酵が進み、コバエ・ナメクジ・ゴキブリが好んで卵を植え付けに来て虫の温床になってしまうことがあるので、冬の寒い時期に発酵の過程を行う事が多いです。
米ぬかを肥料として使うメリットとデメリット
メリット
- 豊富な栄養分が土壌の微生物を活性化させる
- 肥料成分が少ないため、多少撒きすぎても作物に障害が起きにくい
- 安く手に入る
米ぬかを使うメリットは、肥料としてよりも土壌改良資材としての効果が高く、土壌の微生物を活性化して作物が栄養を吸収しやすい土づくりに役立つという点です。
窒素、リン酸、カリのそれぞれの栄養素のどれかが突出しているわけではないので、散布量が多くなっても土壌の栄養素のバランスが偏らないので安心であるというのもメリットでしょう。
コイン精米所で無料で手に入る米ぬかを、自分で発酵させて肥料にすれば安価に土壌を作ることができますね!
デメリット
- 使い方を間違えると、虫が大量に湧きやすい
- 発酵の過程で熱とガスを発生させるので注意が必要
- 肥料としての効果は、化成肥料と比べるとさほど高くない
- 有機質の分解に時間がかかるため、効果が出るのが遅い(緩効性)
- 鮮度があるので、保存に注意が必要
- 発酵させて使う必要があるため、初心者にはやや扱いが難しい
米ぬかのデメリットは、生の米ぬかをそのまま使うことができず、肥料として使うためには自ら発酵をさせなくてはいけないという手間があるという点でしょう。
しっかりとした知識をもとに利用しないと、作物が枯れたり害虫が大量に発生してしまう可能性もあり、デメリットが前面に出てきてしまう可能性が高いです。
また、即効性が無いので、じっくりと土づくりを行いたい人にとっては有益ですが、すぐに効果が欲しい方には向かず、初心者向けではない肥料と言えるでしょう。
まとめ – 米ぬかは肥料というよりは土壌改良資材!
米ぬかは、有機肥料として土壌の微生物を活性化させる効果が高く、肥料としてよりも土壌改良資材としての役割が大きいことがわかりました。
油粕などのそのほかの有機肥料同様に、土壌で発酵をさせる場合は「発酵の時期」「施肥から播種までのタイミング」などに注意を払いながら使う必要があるため、初心者には少々扱いにくいという欠点があります。
有機肥料を使っての作物の栽培は、10人10通りの方法があるほどで、どのやり方が一番いいという答えは無く、試行錯誤しながら使うというのも一つの方法です。
ただ、やはり安易に使うと虫が大発生して目も当てられない結果になることがあるので、米ぬかなどの有機肥料を使う場合は、最低限しっかりと効果とデメリットを理解してから使うようにしましょう。