100均やホームセンターで簡単に購入できる「油粕(油かす)」は、窒素成分が豊富な有機肥料として利用されます。
安価で沢山購入できるので、有機栽培を好む人は化成肥料を避けて油粕を購入することが多いのですが、実は意外と使い方が難しく失敗が多い肥料でもあるのです。
もしかしたら、この記事を見に来ている方の中には、今現在、既にトラブルが起きて慌てて調べたという人もいるかもしれませんね。
今回は、有機肥料「油粕」の成分や特徴、失敗しないための使い方の注意点などについて詳しく解説いたします。
有機肥料を使う前に知っておこう!
Contents
油粕(油かす)とは?
油粕は、菜種(ナタネ)や大豆などのアブラナ科の植物の種から油を抽出した後に残ったカスの事を言い、日本に流通しているものの多くが菜種の油粕です。
窒素の含有量が多いのが特徴ですが、有機質が土壌に混ぜ込まれることによって得られる効果(微生物の活性化など)が油粕の特徴であり、多くの人が油粕をよくわからずに使って失敗してしまう一番の原因でもあります。
油粕の成分比較【ナタネ&ダイズ】
菜種油粕 | 大豆油粕 | |
窒素(N) | 5~6 | 6~7 |
リン酸(P) | 2~3 | 1~2 |
カリ(K) | 1~2 | 1~2 |
※各肥料成分の値は、商品によっても違うのであくまで参考地です
油粕は、窒素が多く含まれている一方で、リン酸やカリの含有量は少ないので、リン酸は「骨粉」や「バットグアノ」「溶リン」などで、カリは「草木灰」などで補給してあげると良いでしょう。
ナタネ油粕とダイズ油粕では、肥料成分にはそこまで大きな違いはありませんが、ナタネ由来のものよりもダイズ由来の油粕の方が効果の発現がやや早いのが特徴です。
油粕の効果と失敗しないための注意点
1.有機肥料が効果を発揮するまでには時間がかかる
油粕の効果を理解するためには、油粕は単なる肥料ではなく「有機肥料」であることを理解する必要があります。
有機肥料は、土に撒けば効果がすぐ出る化成肥料とは異なり、土壌でバクテリア等の微生物に分解され、雨水などにさらされて菌やカビが繁殖し、発酵して行くという過程を経て作物により良い土に変化していくものなのです。
油粕は窒素を多く含んでいますが、上記のような過程を経るため効果の発現が遅い「緩効性の肥料」と知っておくと良いでしょう。
2.発酵の過程で熱やガスが発生する
様々な過程を経て土壌を変化させていく油粕ですが、未発酵の油粕が土壌で水分に触れて発酵していく過程で「熱」や「炭酸ガス」を発生させます。
油粕を単なる肥料と思って土に撒き、すぐに作物を植えてしまうと、発酵の過程で発生するガスにさらされて根が枯れてしまうことがあります。
油粕を使った失敗の多くが、この肥料焼けによって作物や植物をダメにしてしまうというものなので注意しましょう。
3.地表に撒くとコバエが大量発生する
油粕の失敗例で多いのが「コバエが大発生」してしまったという物です。
特に未発酵の油粕をプランターの地表面に撒いてしまったりすると、ほぼ確実にコバエがやってきて卵を産み付け、一瞬で大繁殖してしまいます。
また、コバエ同様に悪臭も苦情の原因になることがあるので、未発酵の油粕を家で育てている鉢に使うのはお勧めできません。近隣から苦情が来ることもあるくらいなのでやめておきましょう。
さらには、油粕を土の表面に撒いた後に水がかかると、地表をカチカチに固めてしまい通気性が悪くなってしまいます。
畑の場合は土をかき回すことで改善できますが、鉢やプランターでは不可能なので、このような理由からも鉢植えに使う事は避けた方が良いでしょう。
未発酵の油粕と発酵油粕の違いは?
ここまではナタネやダイズ由来の油粕(未発酵)のものを中心に話しを進めてまいりましたが、既に発酵をさせれある「発酵油粕」もあります。
未発酵の油粕の特徴
- 土の中で発酵してから効果を発揮するので効き始めるまでに時間がかかる
- 発酵する過程で熱やガスを発生させるので、根の近くに植えると植物を枯らしてしまう
- 腐熟していないためカビやすい
- 悪臭が強いので、コバエをおびき寄せてしまう
- 形状は「粉末・粒状・ペレット」など様々
発酵油粕の特徴
- 既に一度発酵・分解させてあるので、使用後すぐに肥料成分が溶け出す
- 基肥よりも追肥に向いている
- 油粕だけでは足りない成分を、骨粉や米ぬかを配合することで補っている商品が多い
- 悪臭やコバエの誘引は未発酵よりややマシな程度で依然注意が必要
- 形状に粉末タイプのものはない(粉末タイプの油粕があればそれは未発酵のもの)
未発酵の油粕は、もともと春に効果が出ることを見越して、冬の間に屋外の樹木の根元に撒くことが利用法としてが多かったようです。
寒い冬の間に土の中で発酵がすすんでいくので、ガスやコバエの発生はさほど問題にならなかったのですが、これを温かい時期に家庭のプランターで利用すると大変なことになるります。
また、発酵油粕は未発酵のものに比べて、ガスの発生や効果発現が遅いなどの欠点がなく、追肥としても使えるというのが大きな違いといえるでしょう。
ただし、安価な発酵油粕の中には発酵の度合いが未熟なものも少なくないので、油粕特有のデメリットを避けたい場合は完熟発酵している油粕を選ぶようにしましょう。
<油粕(未発酵)>
<完熟発酵油粕>
油粕の使い方と施肥の適量は?
油粕を使用する場合は下記のポイントに注して施肥するようにしましょう!
・発酵油粕を追肥で利用する場合は、作物から3㎝以上離して土に置き、軽く土をかぶせる
・基肥として使う場合の目安は、1坪あたり800~900g
・追肥として使う場合の目安は、1坪あたり400~450g
どのような肥料も根や茎葉に直接触れる場所には巻かないというのは当然ですが、油粕の場合は濡れることで発酵が進みガスが発生することや、コバエをおびき寄せてしまう事、団粒化が進んで土の表面を固めてしまうことがあるので注意しましょう。
油粕を使った液肥の作り方
油粕は、水と混ぜて発酵させることで比較的簡単に即効性のある液肥を作ることができるので、以下に作り方をご紹介します。
2.油粕と水の割合が、1:10になるようにペットボトルに入れる
3.蓋をして降って混ぜ、夏なら1か月、冬なら2~3か月風通しの良い日陰で放置する
4.上澄み液を10~30倍に薄めて使用する
【油粕液肥の使い方と作り方の注意点】
- 発酵の過程で内容物が膨張する可能性があるので、ペットボトルの8分目程度になるように文量を調節する
- 作成段階で悪臭を発するので、特に夏は日陰の風通しの良い所で保管する
- 夏場の直射日光に当てられると、内容物が噴出することがあるので保管場所に注意する
- 施肥の際にも悪臭を発するので、室内やベランダでの利用には向かない
- 液肥自体の効力は1か月程度しか持たないので、完成したら早めに使いきる
- 散布頻度を上げたい場合は、30倍希釈などにして散布する
希釈後の液肥を土壌に散布した後に、悪臭やコバエが寄ってくる心配はさほどありませんが、原液はかなり悪臭が漂いますので、管理するときには気と付けた方が良いでしょう。
まとめ
油粕は、一般的な肥料と思って安易に鉢植えやプランターで利用すると大変なことになってしまう事がわかっていただけたでしょうか。
意外と使い方が難しい油粕ですが、土壌の微生物を活性化して、作物が育ちやすいふかふかの土を作るのには最適の有機肥料です。
正しい使い方と油粕の特徴を理解して、良い土づくりのために利用してみてはいかがでしょうか。