山菜の女王とも呼ばれる「コシアブラ」は、山菜の王様「タラの芽」と並んで春~初夏に楽しめるとてもおいしい自然の恵みです。
我が家の敷地内や周辺の山の中にもコシアブラが沢山あり、若芽が出る季節になると山に入って収穫をします。
日持ちがしないコシアブラはスーパーで見かけることはあまりないので、食べてみたいという人の中には、自分で里山に山菜狩りに行こうと考えている人もいるでしょう。
今回はそんな方のために、コシアブラの見つけ方と有害植物との見分け方、採取の方法と保存方法、そして里山に入る時の注意点などについて解説したいと思います。
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コシアブラの特徴
- 和名:こしあぶら(漉油) 別名:ゴンゼツノキ、ゴンゼツ(金漆)、アブラギ
- 学名:Acanthopanax sciadophylloides
- 階級:ウコギ科ウコギ属
- 分類:落葉高木
- 分布:北海道~九州
- 花期:8~9月
- 形態:成長すると5~10m以上になる、枝は太く、樹皮はすべすべしていて白っぽい
- 特徴①:山菜の女王と呼ばれるほど美味、独特な香りがする
- 特徴②:葉は掌状の小葉で5枚
コシアブラの名前の由来
コシアブラの名前の由来はいくつかあり、漢字で「漉油」して表す説では、コシアブラの樹脂を塗料として使っていたからコシアブラという名前が付いたという説。
または「越油」と書き、越後の特産の油という説。
さらには、当時日本人が多く留学のために渡っていた中国の「越の国(現在の浙江省)」から伝来したから付いたとされる説があります。
コシアブラが採れる場所
コシアブラは、里山の山間部であれば比較的いたるところに見られます。
特に、ブナの木が生い茂る場所で採れることが多く、登山道や林道の脇、樹が伐採されて日当たりが良くなっているところで見つけることが多いです。
上の画像のようなブナ林であれば、周囲を見渡すことでコシアブラが見つかるかもしれませんが、あまり奥の方に入り込んで戻れなくなってしまわないように注意しましょう。
山菜取り初心者は、最初は経験者と一緒に山に入るのが望ましいでしょう。
山菜採りのおすすめの服装や持ち物については、こちらの記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
【関連記事】>>>【初心者必見】山菜採りを安全に楽しむための服装と必要な持ち物まとめ
コシアブラが採れる時期
西日本など温かい地域では、4月初旬から食べ頃の新芽を見つけることができるでしょう。
私の住んでいる東北などの寒い地域では、5月のゴールデンウィーク辺りが一番採取に適した時期で、標高の高いところまで行けば6月頭くらいまでは若々しい芽を取ることができます。
コシアブラの芽の採り方と美味しい部位
コシアブラの木を発見したらいよいよ芽を摘み取ります。
摘み取り方は簡単で、付け根から優しく折り曲げてあげるだけで取れます。
特に美味しいのが「頂芽」と呼ばれる、茎や枝の一番先端に出る芽で、味も香りもとても濃いのが特徴です。コシアブラの木を発見したら「頂芽」のみを取るようにしましょう。
コシアブラの保存方法と美味しく食べられる期間
コシアブラは天ぷらや和え物などにするとおいしい山菜ですが、足が早く日持ちしないのでスーパーなどで見かけることはあまりありません。
収穫してからどんどんと味が落ちていくので、保存期間の目安は下記の通りです。
- 採取後に下処理をしない場合で2~3日
- 下茹でしてアク抜きし、冷蔵保存で1週間
- 冷凍保存んで1~2か月
- 味噌漬けや塩漬けで、約1年
生で保存する場合は、乾燥させないように根元を湿らせたキッチンペーパーなどで包み、新聞紙でくるんで通気性の良いポリ袋(穴をあけるか口を軽く縛った程度にする)にいれて、野菜室に入れておきましょう。
アク抜きは沸騰したお湯に対して2~3%の塩を入れ、2分ほど茹でたら冷水にとってしばらくさらしておけば大丈夫です。
調理する際は、こしあぶらの付け根の部分にある「ハカマ」と呼ばれる部位(芽を包んでいる部位)を取り除いてから行うようにしましょう!
コシアブラを採取する時の注意点
コシアブラとヤマウルシの違い・見分け方【芽】
コシアブラの若芽
コシアブラを採取するために山に入る時に気をつけなくてはいけない事のひとつに「ヤマウルシ」があります。
上の画像はコシアブラですが、ヤマウルシの若芽がコシアブラに似ているので間違って触ってしまい、皮膚がかぶれてしまうケースがとても多いです。
ヤマウルシの若芽
こちらがヤマウルシの芽です。全体的に赤いのが特徴で、コシアブラは軸以外は明るい緑色をしています。
コシアブラとヤマウルシの違い・見分け方【樹皮】
コシアブラの樹皮
コシアブラの樹皮は、滑々していて灰白色なのが特徴です。
ヤマウルシの樹皮
一方でヤマウルシの樹皮は、棘はありませんがコシアブラに比べてやや濃いグレーで、木肌が縦に波打っているのがわかります。コシアブラとの樹皮の違いは一目瞭然ですね!
ヤマウルシを触ってしまってかぶれたら
ヤマウルシによるかぶれは「接触性のアレルギー反応」なので、コシアブラと間違えてヤマウルシを触ってしまい、樹液に触れた部分が痒くなるのが8~48時間後と言われています。
すぐに反応が出るわけではないので、山から出てきて気がついたらいたるところが痒くなっていることでウルシを触ってしまったことに初めて気が付くことも少なくありません。
ウルシの樹液が付いた部分を、掻いてしまったり、その手で他の場所をこするとかぶれが広がってしまうので、ウルシかぶれに気が付いたら掻きむしらずに、ぬるま湯と石鹸で洗い流し、着ていた衣服はすべて洗濯してしまいましょう。
こちらの「ツタウルシ・ヤマウルシによる「ウルシかぶれ」の症状と8つの対処法」の記事で、山に入ってウルシにかぶれてしまった際の対処法についてまとめてありますので、これからコシアブラを採りに山に入ろうとしている方は一度目を通しておくと良いでしょう。
コシアブラの放射能汚染
野生の山菜は、これまでの検査で東日本大震災による放射能被害の影響が強く出ていることで知られており、H25年春の調査で、数ある山菜のうち、特にコシアブラの放射性物質の数値が高く検出されたことが林野庁のホームページで注意喚起されています。
コシアブラは、平成25年春に広範囲で食品の基準値を超える放射性物質が検出されました。放射能汚染された場所のコシアブラは採らないで下さい。コシアブラは空間線量率が0.2μSv/h以上の場所では強く汚染されている可能性があります。それ以外にコシアブラの汚染度を高める条件にどのようなものがあるのか、現時点では不明です。
ー 林野庁「山菜採取に当たっての留意点」
こしあぶらは保存が効かないため、スーパーなどで見かけることはほとんどありませんが、ごくまれに道の駅などで地元の人が採った山菜が並ぶ中に陳列されていることがあります。
毎年国と自治体が行っている検査結果によって、基準値を超えた放射性物質が検出された場合は出荷の制限及び出荷自粛が課せられるのですが、地元の方の採取した山菜などについてはどの程度まで検査されているかはわからないので、もし気になる場合は生産者に問い合わせてみると良いでしょう。
また、山菜収穫時期になると新聞などでも検査の値が載るので注視するほか、こちらの「食品中の放射性物質検査データ」のデータベースで、産地別のコシアブラの放射性物質の検出量の詳細なデータを見ることができます。
個人で山に入ってコシアブラを採取する場合は、その場所が山菜を採取していい場所なのかどうか、また空気中の放射線量が高い場所でないかどうかをしっかりと調べてから行くことをおすすめします。
まとめ
今回は春~初夏の味覚「こしあぶら」について解説をいたしました。
中々市場に出回らないコシアブラですが、基本的な知識と山菜採りのエリアの下調べさえできれば、レジャーとして山菜採りをたのしむこともできます。
そのためにも、有害植物との見分け方や、採取に入る山の情報の下調べ、放射性物質の情報の確認等をしっかり行っておくようにしましょう。