日本国内には約1200種類の蜘蛛(クモ)が確認されていますが、人間に影響を与えるほどの強い毒を持つのはごく僅かです。
ほとんどのクモが毒を持っていますが、いずれも昆虫や小動物を捕食するのに効果的な程度の毒で、実際は人間に影響を与えるほどの毒を持っている蜘蛛はそう多くありません。
日本古来からいる在来種のなかで毒グモと呼べるのはほんの数種類で、特に毒性の強い危険な毒グモは海外から侵入した外来種が多くを占めます。
本記事では、これまでに日本で確認された毒グモの画像とともに、生態と特徴、毒の種類と強さ、生息地域について解説します。
Contents
毒蜘蛛の定義と毒の種類について
まず最初に簡単に何をもって「毒グモ」とするのかを簡単に定義しましょう!
ほぼ全ての蜘蛛が捕獲した昆虫を麻痺させて食べやすくするために毒を持っていますが、「その毒が人間にも作用するかどうか」というのが一番大切な視点になります。
毒蜘蛛の毒には、獲物を麻痺させて動けなくするための「神経毒」と、消化を助けるための「組織毒(壊死毒)」の2種類があります。
※沖縄に生息する「オオジョロウグモ」
大型で毒性がそこそこ強いとされる「ジョロウグモ」でも、人間が刺咬被害に遭った時に重篤な症状になるかといえばそうはなりません。
今回ご紹介する毒蜘蛛は、人間に対しても致死性の毒を持つものに限っています。
日本に生息する毒蜘蛛一覧【画像あり】
1.セアカゴケグモ【外来種】
※画像:opencage
・時期 :3~8月(6~10月に特に多い)
・毒の強さ :強い(海外では死亡例アリ)
・毒の種類 :神経毒
・毒の成分 :α-ラトロキシン(雌のみが保有)
・生息場所 :地面に近い人工物(雨水溝、公園のベンチの下、フェンスなど)
・見た目 :光沢のある黒い色をしていて、胸腹部背面に赤い模様がある
・大きさ :雌の体長は約7~10mm、雄は小さく4mm程度
見た目も毒々しいセアカゴケグモは、元々オーストラリアに自然分布していたとされている毒蜘蛛で、1995年に大阪府高石市で発見され徐々に分布が広がっています。
2018年8月時点では44都道府県で確認されており、日本のいたるところに潜んでいる毒蜘蛛として認知されてからは日本の侵略的外来種ワースト100にも選ばれました。
毒を持っているのは雌のクモのみで、雄は咬みつきさえすれど牙が短く人間には特に問題はありません。
基本的には臆病な蜘蛛なので、人間が近づくと巣から落ちて死んだふりをするほどですが、不用意に近づくと驚いて咬みついてくることがあります。
毒を持つ雌蜘蛛に咬まれた場合、最初はほとんど痛みは感じないが、徐々に痛みが患部から広がり、数十分後には「だるさ」「ぼーっとした感じ」「頭痛」を感じ、「胸や脇の痛み」に加え、「末端の痙攣」と「呼吸困難」が始まります。
1匹に噛まれただけであれば毒の量も微量なので大事に至ることは少ないとされていますが、もしセアカゴケグモに咬まれた場合は速やかに医療機関を受診した方が良いでしょう。
「赤い」という色のイメージから「タカラダニ」と混同されることも少なくないのですが、大きさを含め全く違うので容易に見分けがつきますよ。
また、同じヒメグモ科に属する「ハンゲツオスナキグモ」というクモも良く間違われるクモなので覚えておくと良いと思います。この蜘蛛は毒は無く、逆にセアカゴケグモなどが入り込みにくくなる手助けになる存在なので嬉しい存在と言えるかもしれません。
2.クロゴケグモ【外来種】
・時期 :3~8月
・毒の強さ :強い(海外では死亡例アリ)
・毒の種類 :神経毒
・毒の成分 :α-ラトロキシン(雌のみが保有)
・生息場所 :地面に近い人工物(雨水溝、公園のベンチの下、フェンスなど)
・見た目 :雌は黒く腹部は幅広い。セアカゴケグモよりも小さく赤い模様がある
・大きさ :雌の体長は約8~10mm、雄は小さく3~6mm程度
クロゴケグモは別名「Black Widow(ブラックウィドー:黒い未亡人)」と呼ばれ、セアカゴケグモによく似ていますが、2018年4月時点では東京都を含む3都県でのみ発見されています。
ガラガラヘビの10~15倍の毒を持つと言われるクロゴケグモですが、手の上に乗せたくらいでは咬みつくことは稀で、腹部をつまんで押しつぶすような危害を加えた時にようやく咬みつく動作をみせたという調査結果もあります*¹。
セアカゴケグモ同様に毒を持つのはメスのみで、毒の量も少ないので健康な成人であれば万が一咬まれても死に至ることは稀でしょう。
咬みつかれた後の症状はセアカゴケグモと似ていて、咬まれた直後の痛みは強くありませんが、時間の経過とともに全身に症状が移り、重症例では進行性の筋肉麻痺症状が現れます。
3.ハイイロゴケグモ【外来種】
・時期 :6~10月
・毒の強さ :強いが、死亡例の報告は無し
・毒の種類 :神経毒
・毒の成分 :α-ラトロキシン(雌のみが保有)
・生息場所 :地面に近い人工物(雨水溝、公園のベンチの下、フェンスなど)
・見た目 :灰褐色の丸い胴体で、腹部背面に縁取りのある斑紋が点在
・大きさ :雌の体長は約6~9mm、雄は小さく3~4mm程度
ハイイロゴケグモは、セアカゴケグモ同様に海外からくるコンテナなどに付着して運ばれてきたと考えられており、港湾地域やそこに隣接する地域でよく見つかっています。
2017年2月時点では13都府県で発見されていますが、日本での刺咬被害の報告はありません。毒性は強いですが、攻撃性はセアカゴケグモよりも弱いとされています。
1回の繁殖で約5000個の卵を産むとされていて、ゴケグモの中では多産なので分布を広げる可能性も少なくありません。
セアカゴケグモやクロゴケグモよりも目立ちにくいですが、十分注意するようにしましょう。
4.アカボシゴケグモ(ヤエヤマゴケグモ/アカオビゴケグモ)【在来種】
・時期 :不明
・毒の強さ :強い(死亡例はないが重症例はアリ)
・毒の種類 :神経毒
・毒の成分 :α-ラトロキシン(雌のみが保有)
・生息場所 :不明
・見た目 :胸腹部の赤い模様がセアカゴケグモよりも大きい
・大きさ :不明
アカボシゴケグモ(ヤエヤマゴケグモ・アカオビゴケグモ)は、かつてはセアカゴケグモと混同されていましたが、日本在来種の別種であると判明しています。
とても珍しい蜘蛛で、日本の八重山諸島でのみ生息が確認されていて、情報が不足していて詳しい行動時期や大きさ、生息場所については不明としました。
遭遇する可能性としては極めて低いですが、日本在来種の有毒ゴケグモとしてご紹介しています。
5.カバキコマチグモ【在来種】
※画像:千葉市HP
・時期 :3~8月(6~7月に特に多い)
・毒の強さ :日本にいる生物の中で最強クラス(日本での死亡例は無し)
・毒の種類 :神経毒
・毒の成分 :カテコールアミン、セロトニン、スペルミン、ヒスタミン
・生息場所 :ススキ原、水田、背丈の高い草のある草むら
・見た目 :身体は茶褐色で、顎周辺は黒い
・大きさ :体長はオスが10~13mm、メスは12~15mm
日本に生息する在来の毒蜘蛛として知られているのは「コマチグモ」のみ。
コマチグモ類の中でも特に代表的なのが「カバキコマチグモ」で、日本国内の蜘蛛刺咬症のほとんどがこのカバキコマチグモによるものなんです。
毒の種類は「神経毒」で、刺されると数日は激痛に苦しみ、ひどい場合だと数週間痺れが残ることもあるそうです。今の所日本での死亡例はありませんが、海外では死亡例が報告されているので毒は強力。
ススキなどのイネ科の植物の葉をちまきの様に巻いて巣をつくり、そこに産卵します。
刺咬被害の多くは、誤って巣を破壊してしまい産卵前後で気の立った雌蜘蛛に咬まれたり、産卵後の雄蜘蛛が人家に侵入して咬みついたという事例だそうで、基本的にはカバキコマチグモから人間を狙って咬みつくことは少ないとされているので、見つけても近づかずに放っておけば害は少ないでしょう。
まとめ
今回ご紹介した日本に住む毒蜘蛛は、いずれも人間に対して致死性の神経毒を持つものの、攻撃性はさほど強くないので刺激をしなければあまり問題の無い蜘蛛ばかりでした。
それぞれの蜘蛛が持つ毒も、元々は餌となる昆虫を麻痺させて食べやすくするためのものなので、毒の量も微量ですので健康な大人なら重篤になることは稀だとされています。
しかし、子供や高齢者の場合にとっては危険度も増すため、自宅周辺でこれらの毒蜘蛛の確認情報があった場合には、毒蜘蛛を刺激しないように十分周知しておく必要があります。
また、家の中に出ることの多い蜘蛛については、下の関連記事でまとめていますのでこちらも合わせてご覧ください。