日本の秋を知らせる植物のひとつに「ススキ」がありますが、このススキを含む日本の生態系を脅かす存在として知られているのが「セイタカアワダチソウ」です。
草丈が高く真っ黄色な目立つ花をつけるセイタカアワダチソウは、日本の侵略的外来種ワースト100にも選ばれた繁殖力のとても強い植物です。
秋が近づくと河原の土手一面に黄色い花が咲き、ススキの姿はチラホラとしか見えません。
このセイタカアワダチソウは「花粉症やアレルギー(喘息)の原因になる」と地元の人に聞いてから、あまり良い印象が無かったんですが調べてみると、
「あれ、こいつ意外と可哀そうな植物かも?」
と思うようになりました。
本記事では、セイタカアワダチソウはの生態と花粉がアレルギー症状の原因になるかどうか、また効果的な駆除方法についてご紹介します。
Contents
日本の侵略的外来種セイタカアワダチソウとはどんな花?
セイタカアワダチソウの画像と生態
- 和名:セイタカアワダチソウ(背高泡立草) 別名:代萩、セイタカアキノキリンソウ
- 英名:Canada goldenrod
- 学名:Solidago canadensis var. scabra
- 階級:キク科アキノキリンソウ属
- 分類:維管束植物
- 分布:日本全国
- 形態:多年草、地下茎で増え、茎から花のてっぺんまでは1~3mにまで生長する
- 特徴:日本の侵略的外来種ワースト100
セイタカアワダチソウが生い茂る時期
セイタカアワダチソウは、11月頃まで花をつけることから蜜源植物として広められたという話もあり、カナダなどでは寒い時期にもセイタカアワダチソウから蜜が採れるので貴重な花として重宝されています。
日本でも、秋の雑草として土手などで群落を作って密生している姿を見かけますね。
セイタカアワダチソウの花言葉
花粉症やアレルギー(喘息)の原因は、セイタカアワダチソウではなく「ブタクサ」!両者の違いは?
セイタカアワダチソウが一面に生い茂ると「花粉症やアレルギー性喘息の原因になるんだよ~」という話をよく耳にします。
しかしこれはとんだ濡れ衣です。
セイタカアワダチソウは虫媒花といってハナアブやミツバチなどの虫によって受粉をする植物で、杉に代表されるような風に花粉をのせて飛ばす植物(風媒花)ではありません。
さらに花粉の形状も風に飛ばすには非効率的で、重さもかなり重たいので、そもそも風に飛ばすようには進化していないと考えられています。
侵略的外来種ということで印象の良くないセイタカアワダチソウは、本来は人間にとってはアレルギーの原因になるような花粉の飛散をしていないにもかかわらず、そのイメージの悪さから悪者にされてしまっているようです。
実際に花粉を飛ばしている元凶は「ブタクサ」です。
ブタクサと検索して調べるとセイタカアワダチソウの画像が沢山出てくるので、多くの人がこれらを勘違いしているのが分かりますね。
どちらもキク科の植物ではありますが、全く別の植物です。
ブタクサ=セイタカアワダチソウだと思っている人もいましたので、多くの人が勘違いしていることと思います。
ブタクサは杉の木のように花粉を風で飛ばして繁殖する植物ですので、花粉症や喘息に悩んでいるからと言ってセイタカアワダチソウを駆除しても症状は収まりません。
セイタカアワダチソウを駆除したのに一向に花粉症がおさまらないとお悩みの方は、一度花粉症のアレルギー検査をしてみると「実は犯人はブタクサだった」という事になるやもしれませんよ?
セイタカアワダチソウとススキのせめぎ合い
セイタカアワダチソウが悪者扱いされる理由の一つに、「日本の在来種であるススキの居場所を奪っていく姿が憎らしい」というのもあるのではないでしょうか。
ススキとセイタカアワダチソウが生息するエリアが、ともに「湿っていて日当たりのいい土手などの斜面」なので、秋に土手に行くと両者が陣地を奪い合っているように咲く姿を見ることができます。
この姿を見ると、黄色い花びらを広げているセイタカアワダチソウの方が優勢に見えることも多く、どうしても悪者のイメージがついてしまいますよね。
実際の所、日本のススキも北アメリカでは侵略的外来種として猛威を振るっているので、何とも皮肉な感じがします。
アレロパシーはセイタカアワダチソウ自身を自滅させる
実際のところは「セイタカアワダチソウとススキのどちらが強いのか?」というと、実は最終的にはススキの方が勝つと言われています。
セイタカアワダチソウには、cis-DME(シス-デヒドロマトリカリエステル)と呼ばれる物質を根から分泌するという性質があり、この物質は「アレロパシー作用」を持つことが分かっています。
アレロパシー(Allelopathy)とは周囲の植物の成長や種子の発芽を阻害する作用の事で、自らの生育地域へ他の植物種の侵入を妨げ、自種群落を拡大させるという生態的仕組みです。
セイタカアワダチソウが侵入してきた当初は、このアレロパシー作用によって生息地域が競合するススキなどの生育を阻害して猛威を振るうようになりました。
しかし、このアレロパシーは一定の濃度に達するとセイタカアワダチソウ自身の生育をも阻害してしまうので、最初はススキよりもセイタカアワダチソウが優勢になりますが、時間が経つとススキの方が勢力を取り戻すようになります。
セイタカアワダチソウは自分の作用によって自滅してしまうんですね。
セイタカアワダチソウの駆除方法と効果的な除草剤
セイタカアワダチソウを効果的に駆除するための方法は2つあります!
まずは「除草剤」を使うという方法。
セイタカアワダチソウは地下50センチ程度とかなり深くまで根が張り、地下茎でどんどん増えるので根を枯死させる「浸透移行系の除草剤」が効果的です。
一番ポピュラーなのはラウンドアップですが、この薬剤については何度も当サイトでご紹介しているので、下記の関連記事をあわせてご覧ください。
そしてもう一つは、「時期を見て刈り取る」という方法です。
セイタカアワダチソウは7月下旬~8月中旬頃に刈り取ると、秋になっても花をつけず結実しないまま生長し、冬になれば枯死してしまうので効果的です。
まれに花をつける場合もありますが、この時期に刈っておくと草丈が低いままの状態で秋を迎えるので、セイタカアワダチソウの圧迫感のある群落を作らせない効果はあります。
あまり早くに除草しすぎずに、花をつける少しまえに刈り取るほうが良いことを覚えておきましょう。
あまりに広範囲に密生していて草刈り作業が大変な場合は、草刈り専門業者に依頼するのも一つの方法です。
下の記事ではおすすめの草刈り専門業者をご紹介しています。
まとめ
秋になると黄色い花を咲かせ、土手などに群生する姿から花粉症やアレルギー喘息の原因ではないかと言われることの多いセイタカアワダチソウですが、これらの情報はすべて濡れ衣であることが分かりました。
確かにセイタカアワダチソウの繁殖力はすさまじく、悪者になってしまうのもわからなくはないのですが、見方を変えれば秋に土手を歩いて黄色い花が咲き誇っている景色はきれいでもあります。
繁殖力が強いことと、他の植物の成長を阻害してしまうことを除けば、人間に直接の害を及ぼすことは無いので、秋になる前に刈り取るなどして対応をすれば十分共存できるのではないでしょうか。
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