ホームセンターでよく見かける「ラウンドアップ」ですが、一体どのような除草剤なのでしょうか?
今回は、野菜のそばに撒いても平気なのか、人体に影響は無いのか、どんな雑草に効果があるのかなど、ラウンドアップの使用方法や安全性についてまとめて解説致します。
Contents
ラウンドアップの基本情報
まず、ラウンドアップの基本情報は下記の通りです。
系統 | アミノ酸系 | |
有効成分 | グリホサート | |
殺草作用 | アミノ酸の生合成阻害 | |
適用草種 | 一年生雑草(イネ科) | 〇 |
一年生雑草(広葉) | 〇 | |
多年生雑草(イネ科) | 〇 | |
多年生雑草(広葉) | 〇 | |
処理方法 | 茎葉処理剤 | |
接触型 or 移行型 | 移行型 | |
効果発現の速さ | 遅効性(7~10日以上) | |
効果の持続性 | 無し | |
土壌中の移動性/残留性 | 小 / 小 | |
選択性の有無 | 非選択性 | |
人畜毒性 | 普通物 | |
特記事項 | 多年生雑草の根まで枯殺でき、 持続性・残効性がほとんどないので、 使用後すぐに作物の作付けができる |
まず、大きく分けてポイントとなるのは「茎葉処理剤」「移行型」「非選択性」の3つです。
※この先を読み進めていただく前に、別記事「除草剤にはどんな種類がある?おすすめの選び方をご紹介します」をお読みいただきますと、この先の説明が幾分か理解しやすいかと思われます。
- 茎葉処理剤:地面に撒くのではなく、雑草の葉や茎にかけることで効果を発揮する薬剤
- 移行型:薬剤が葉や茎に付着し、時間をかけて植物体内を移動し、薬効を発揮する薬剤
- 非選択性:薬剤が付いた植物は例外なくすべて枯れさせてしまう薬剤
ラウンドアップは、上記の特性から
- すでに雑草が生えているかどうか
- 薬効が現れるまで時間がかかっても大丈夫か(天候・作業スケジュールの問題等)
- 根まで枯らしてしまいたいかどうか
- 周囲に付着すると困る作物などは無いか
これら4項目がいずれも問題なければ、ラウンドアップを使用してもいいでしょう。
特に、スギナやハマスゲなど、地下の塊茎など増えるタイプの強害雑草は根まで枯らす必要があります。
駆除したい雑草の中に、スギナやハマスゲがある場合はラウンドアップはお勧めできます。
【関連記事】
>>>スギナの駆除方法と効果のある除草剤を教えます
>>>ハマスゲとはどんな雑草?カヤツリグサ科の駆除方法まとめ
ラウンドアップの種類別の比較
2017年月現在、ラウンドアップには下記の3種類の商品があります。
- ラウンドアップマックスロード
- ラウンドアップマックスロードAL
- ラウンドアップマックスロードAL2
1.ラウンドアップマックスロード
ラウンドアップマックスロードは、うすめて使う希釈タイプの除草剤です。
このタイプのいい点は、広範囲の除草に効果的かつ経済的である点でしょう。
また、スギナなどの強害雑草の場合は、次に紹介するラウンドアップマックスロードAL/AL2の濃度よりも濃くすることで効果的に除草ができるので、特にスギナを除草したい場合はこちらのタイプが良いでしょう。
また、好きな濃度に希釈して噴霧器(動噴)などに移し替えて散布すると、広範囲に効果的にまくことが出来ます。かけむらを無くすことで、除草剤の無駄もなく効率よく枯殺することが出来ます。
>>>「噴霧器の種類別におすすめを紹介!家庭用に小型の噴霧器はいかが?」
一方で、デメリットは自分で希釈する必要があること、自分が除草したい雑草の種類によっては希釈する濃度を調節する必要があるので、自分の庭に生えている雑草がどの種類のものかを把握しておく必要があるという点でしょう。
希釈の目安は以下の通りです
【25倍希釈】
スギナ
【50倍希釈】
ツユクサ、オオバコ、スベリヒユ、カヤツリグサ(ハマスゲ)、エノキグサ、笹、ヤブガラシ、クズ、ワルナスビ、ヒルガオ、ドクダミ、イタドリ、セイタカアワダチソウ、ススキ、ガガイモ、キクイモ
【100倍希釈】
ギシギシ、イヌタデ、タンポポ、ヒメオドリコソウ、アメリカセンタングサ、ハルジオン、ヨモギ、アカザ、スズメノカタビラ、メヒシバ、ノボロギク、アレチウリ、カナムグラ、よ
- 100倍液の作り方 >>> 水10Lに100ml
- 50倍液の作り方 >>> 水10Lに200ml ← マックスロードAL/AL2と同濃度
- 25倍液の作り方 >>> 水10Lに400ml
10Lの水では、200㎡(60坪)に撒くことが出来ます。
畑の面積(反・畝・町・a(アール)・ha(ヘクタール))への換算は、「1ヘクタール・1反・1坪はどれくらいの広さ?畑の面積の単位まとめ」の記事でご説明していますので、併せてご覧ください。
2.ラウンドアップマックスロードAL/AL2
ラウンドアップマックスロードALとAL2は、うすめずにそのまま使うタイプの除草剤です。
【ラウンドアップマックスロードAL】
【ラウンドアップマックスロードAL2】
キャップを開けてそのまま散布することが出来るので、噴霧器やじょうろなどが不要なのがメリットですね。
デメリットとしては、濃度の調節ができないため、強害雑草のスギナなどが生えている場所には、散布量を多めにするなどして対処する必要があるため、予想以上に多い量の除草剤が必要になってしまいやすい点です。
ラウンドアップマックスロードALとAL2の違いとは?
ラウンドアップマックスロードのうすめずに使える商品として「AL」と「AL2」の2種類があります。
両者の違いは、ALは「通常タイプ」、AL2は「速効タイプ」という点です。
ラウンドアップは元々遅効型の除草剤なのですが、AL2は散布翌日から雑草が枯れはじめるという効きはじめの速さが特徴です。
移行型・遅効型の薬剤は、効果の完成までに数日かかるので完全に根まで枯殺するまでにはやはり時間がかかりますが、効果は実感しやすいでしょう。
希釈タイプと薄めず使えるタイプはどっちがお得?
薄めずに使う「ラウンドアップAL/AL2」は、希釈タイプでは50倍液に相当するので、50倍液を基準にどれくらいの範囲に散布可能なのかを検証してみましょう。
先程ご紹介した「ラウンドアップ(希釈タイプ) 500ml」で50倍液を作る場合は、25L作ることが出来ます。25Lを散布する場合、約500㎡(150坪)に散布が可能となります。
一方で、「ラウンドアップAL 2L」の場合は、約70~130㎡(20~40坪)に散布が可能です。
両者を比較すると、希釈タイプの方が4~5倍広い面積に散布が可能であることが分かります。
両者の価格は数百円程度ラウンドアップ(希釈タイプ)の方が高い程度なので、広範囲に散布する場合、またスギナの除草で使う場合などは「ラウンドアップマックスロード(希釈タイプ)」の方がお得と言えるでしょう。
従来までのラウンドアップとの効果の比較表
もうすでに廃止商品となった「従来のラウンドアップ」や「ラウンドアップハイロード」と現在販売されているマックスロードとの効果の違いを比較したものが下の表です。
ラウンドアップ | ハイロード | マックスロード | |
朝露の効果 | 5% | ー | 80% |
低温時 | 70% | 85% | 95% |
散布1時間後の雨 | 50% | 65% | 95% |
乾燥時 | 50% | 60% | 100% |
スギナ枯殺率 | 35% | 53% | 100% |
ソルゴー枯殺率 | 38% | 63% | 100% |
※スギナ枯刹率は散布後25日経過時の値
※ソルゴー枯刹率は散布後24日経過時の値
朝露がある場合や降雨時などの効果の減弱は、従来のラウンドアップに比べ遥かに改善されていることが分かります。
ラウンドアップのような移行型の除草剤は、薬剤散布から効果発現まで時間がかかり、その間に雨が降ってしまうと効果が衰えてしまうというのが欠点でした。
しかし、ラウンドアップマックスロードでは、降雨による影響も朝露による影響も以前とは比べ物にならないほど改善されていることが分かりますね。
ラウンドアップの安全性は?
これだけ効果が強い除草剤なので安全性は気になるところですよね。
ラウンドアップの日本販売元である日産化学は、ラウンドアップの安全性について下記のように解説しています。
- 土に落ちた成分は短時間で土壌粒子に吸着され除草剤としての効果を失う
- 土壌粒子に吸着された成分は土中に浸透しないので、根から吸収されることもない
- 薬効を失った成分は、微生物によって水や炭酸ガスに分解される
- 植物独自のアミノ酸を合成する代謝経路(シキミ酸経路)を特異的に阻害するため、人や動物には影響が少ない
- グリシンから成るアミノ酸系除草剤であり、毒劇物に該当しない普通物である
しかし、2017年6月26日に米国カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)が、同州で定める通称プロポジション65の物質リストに、発ガン性物質としてグリホサートを加えると声明を出し話題になりました。
グリホサートはラウンドアップの主成分です。
ラウンドアップの安全性と発がん性については、「ラウンドアップに毒性・発がん性?各国・各研究機関の見解まとめ」の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。
まとめ
今回はドラッグストアで最もよく見かける除草剤「ラウンドアップ」についてご説明しました。
ラウンドアップに関しては、かかったものを全て枯らすという非選択性の除草剤としては最もポピュラーで、効果の強い除草剤の1つと言えるでしょう。
記事の途中で小型の電動噴霧器をご紹介しましたが、ラウンドアップのような移行型の薬剤は、ある程度の「かけムラ」があっても効果はありますので、必ずしも電動噴霧器が必要なわけではありません。
雑草の駆除範囲が広範囲にわたる場合や、スギナが生えている場合は、少々面倒ではありますが自ら希釈して散布する方が経済的でしょう。
しっかりと薬剤の特性を理解して利用すれば、除草剤は安全かつ手軽に雑草を駆除してくれます。
是非、記事中でご紹介した関連記事も併せてご覧いただき、悩める雑草を上手に駆除してしまいましょう!