土壌改良資材のひとつ「草木灰(そうもくばい)」は、農林水産省が定める肥料取締法に基づく特殊肥料に分類されている資材です。
近年では貴重な草木灰ですが、どのように使えば効果的に土壌を改善できるのか、また自分で草木灰を作る方法や注意点などについて解説いたします。
有機肥料を使う前に知っておこう!
Contents
草木灰とは?
草木灰とは、その名の通り藁や枝などの草木を燃やした後に残る灰の事で、主成分はカリウム、即効性のあるアルカリ性の土壌改良資材です。
古くは800~900年前から農業で使われていたという記述があるほどですが、近年では安価な化学肥料の台頭により、草木灰に代わって使われる資材が多くなって出番は減少してきました。
ホームセンターでも購入できますが、比較的高価な値段で売られていることも多いです。
肥料として使うほかにも、山菜のアク抜きに使用したり、じゃがいもの種イモを植える際に、防腐目的で切り口に塗布するなどの使い方があります。
草木灰の成分
成分 | 比率 |
K(カリ) | 6~7 |
P(リン酸) | 3~4 |
N(窒素) | 0 |
酸化カルシウム(木灰/草灰) | 20~30 / 1~2 |
上記の表に一般的な草木灰の成分比率を示しましたが、当然「何を燃やしたかによって成分が変わってくる」のが草木灰の特徴です。
冒頭でも書いた通り、草木灰は「特殊肥料」に分類されております。
(※参考:肥料取締法 – 農林水産省)
特殊肥料は特別な肥料なのではなく、「規格化がしにくく、魚かすや米ぬかのように農家さんの経験や五感によって品質の認識が可能なもの」を指します。
薪ストーブやキャンプファイヤーの灰は木灰なので、石灰成分が多くアルカリ性が強い草木灰になりますし、ワラなどが主原料の草灰は、石灰分が少なくアルカリ性に傾ける力は弱いですが、その分ケイ酸を多く含む灰となります。
また、焼成時の温度によっても成分が変わり、高温で焼いた草木灰は白っぽくなり、カリの成分がやや少なくなってしまうので、低音で焼かれた黒っぽい灰の方が栄養価が高いという事も知っておくと良いでしょう。
草木灰の効果・メリット
草木灰によって得られる効果やメリットは以下の通りです。
・水溶性のカリウムが多いので即効性が高い
・栄養分(リン酸・カリウム)の追肥効果がある
・病害虫の忌避効果がある
・石灰に比べて、土壌を固めてしまわない
防虫・防腐効果のために作物の葉などに灰を振りかけることもあり、虫除けの効果があるというのも特徴のひとつです。
前述の通り、原材料によって成分にバラつきがあるため一概には言えませんが、最も多い使い道としては「酸性土壌の改善」と「カリの追肥効果」が目的の土壌散布でしょう。
草木灰のデメリットと使用上の注意点
・過剰散布はカリが過剰になり、マグネシウムやカルシウムなどの吸収を阻害してしまう
・窒素成分は焼却しているのでゼロに近く、単肥としては不十分
・化成肥料や配合肥料、堆肥との同時利用は避けた方が良い
・灰に含まれるカリは水溶性なので、雨などで溶けだしてしまいやすい
特に注意したいのは「過剰散布」と「化成肥料との同時利用」の2つです。
害虫防除や酸性土壌の改善を目的に草木灰を過剰利用すると、土壌のカリが過剰になってしまい、マグネシウムなどの他の栄養分の吸収を阻害してしまうので注意が必要です。
草木灰には窒素成分がほぼ無いため、草木灰だけで土づくりをするには栄養価が不十分です。
そのため、他の肥料を併用する必要があるのですが、化成肥料などとの混用は肥料に含まれるアンモニアが化学反応を起こしてガスが発生してしまい、せっかくの肥料効果が減弱してしまうだけでなく、危険が伴うので避けた方が良いです。
草木灰と化成肥料を併用する場合は、施肥するタイミングを適切な期間ずらす必要があるので注意しましょう。
草木灰の適正な使用量は?
草木灰のデメリットとして、雨によって効果が流亡してしまいやすいという事を挙げましたが、そのことによってどの程度散布すればいいのか迷ってしまう人もいるかもしれません。
適切な散布量は、元々の土壌の成分と育てる作物によって変わってくるので一概には言えませんが、1坪あたり100~150g程度で十分でしょう。
雨が降って効果が減弱すると考えて最初から大量に散布しようとする人もいますが、前述した成分(カリ6~7%)で計算して、理想の数値になるように散布するようにしましょう。
草木灰の作り方
草木灰は、農地の枯れ草や剪定後の枝などをかき集め燃やして作ります。
具体的な手順は下記の通りです。
- 地面に30~40cmの穴を掘り、ワラや木の枝を入れて新聞紙などで火をつける
- 低温で焼くため、火に注意しながら定期的に上下をひっくり返すようにかき回す
- ある程度焼いたら水をかけて火を消す
- 上に段ボールや土などで蓋をし、数日置いておく
- 後日、灰だけをふるいにかければ完成
まず注意しておかなくてはいけないのが、野焼きは各自治体によって決まりがあるため、お住まいの地域で野焼きをやっても大丈夫かどうかをご自身で確認する必要があります。(※こちらに関しては私が住んでいる宮城県栗原市の場合を後述します。)
もし、自治体で確認をとって野焼きが可能である場合、またはその条件に準じて行うことができる状況にある場合は、下記の点に注意をして草木灰を作りましょう。
2.消化のための水を用意しておく
3.点火後は持ち場を離れない
4.当日の天気予報を確認し、乾燥注意報や強風注意報が出ているときは避ける
5.周囲に人家がある場合は行わない
我が家ある宮城県栗原市の場合は、次のように決められておるぞい
野焼きは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により禁止されているので注意!
私の住む宮城県栗原市のホームページを見てみると、野焼きに関しては「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」によって基本的に禁止になっていますが、この法律が適応外になる場合として下記の5つが記載されています。
- 法令に基づく焼却
例:伝染病家畜、マツクイムシ被害木の焼却など- 学校教育等のための焼却
例:キャンプファイヤーなど- 風俗習慣上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
例:どんと焼きなどの地域の行事で不要となった門松、しめ縄等を焼却する場合など- 農林業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
例:農業者が行う稲わら、くん炭焼き、剪定枝(梅木等)の焼却など
※剪定枝は少量の場合に限る- 落ち葉の焼却その他の一時的な軽微なもの
例:落ち葉、一時的に出される剪定枝、空き地で刈り取った草木の焼却など
※いずれも少量の場合に限る※宮城県栗原市ウェブサイトより
我が家の場合は周囲200m以内に家が無いので、軽微な野焼きであれば上記の④に該当するため草木灰を作成することが可能ですが、実際に行うとなると田舎の農家でないと難しい状況ですね。
また、火災と紛らわしい煙を発する恐れのある行為は、予め消防署に届け出を出すことが義務付けられている場合がありますので、近隣からの火災と間違えた通報を防ぐためにも、事前の届け出を行っておいた方が良いでしょう。
野焼きを行って草木灰を作成する場合は、必ず各自でお住まいのエリアの自治体に確認してから行うようにしましょう。
廃棄物の焼却禁止に違反した場合の罰則は?
私の住む宮城県の場合は、
5年以下の懲役または1000万円以下の罰金
に処せられます。
草木灰の効果的な使い方(元肥・追肥)
草木灰の効果的な使い方として、「元肥」として使う場合と「追肥」として使う場合の2パターンがあります。
草木灰を元肥として使う場合
草木灰は、一般的には作物の植え付け前の元肥として使う場合がとても多いのが特徴です。
前述した通り、化成肥料や家畜のフンなどと同時に使用するとアンモニアガスが発生してしまうので、植え付け前の2~3週間前に草木灰を使用し、植え付けの1週間前くらいに肥料を施肥すると良いでしょう。
草木灰はカリが主成分の為、あわせて使う肥料はカリが少ない「油かす」と混ぜて使うとバランスの取れた良い土になります。
草木灰を追肥として使う場合
即効性のある草木灰は追肥として使われることもありますが、風で飛散しやすいので溝を掘って施肥するか、施した後に株元に土寄せして飛ばないようにするなどの工夫が必要です。
追肥の際にも草木灰に不足している窒素成分を補うために「鶏ふん」や「魚かす」を一緒に混ぜ込むと効果的でしょう。
草木灰は苦土石灰の代わりになる?
土壌のPH調整の目的で土壌に施肥する場合、一般的には苦土石灰(くどせっかい)を使う事が多いですが、草木灰を使用して調節することも可能です。
ただし注意点として、デメリットにも挙げた通り、草木灰の主成分はカリがほとんどであるため、土壌に散布しすぎるとカリが過剰になってカルシウムやマグネシウムの吸収を阻害してしまいます。
酸性度改善と共に植物が育ちやすいように土壌を作ることを考えるのであれば、草木灰はカリの補給目的がメインで、pHの調整(酸性土壌→アルカリ土壌)は苦土石灰を使う方が良いでしょう。
草木灰をジャガイモの種イモに使う方法と注意点
じゃがいもの種イモを植え付ける際に、少ない数の種イモで多くの効果を出すために、大きめの種イモを切断して植えることが多いのですが、その際に切り口の防腐効果を狙って草木灰を塗るという処理を行います。
アルカリ性の草木灰は防腐殺菌効果があるため、土中で種イモが切断した場所から腐ってしまうのを防ぐことができます。
まとめ
今回は草木灰の活用法と効果、そして自作する場合の注意点についてご紹介しました。
様々な土壌改良資材がありますが、この草木灰は昔ながらの原始的な資材として今でも重宝されています。
必ずしも草木灰でなくては得られないような効果はありませんが、農作業の一環で出た稲わらや枝の処理後の灰や、薪ストーブやキャンプファイヤーなどの生活内で出た灰も、昔同様に畑に撒いて再利用するというのはとても良いことだと思います。
是非この機会に草木灰の効果を見直して、普段の農作業や家庭菜園に生かしてみてください。