農薬や殺虫剤の効きにくい「カイガラムシ」の駆除方法と対策まとめ

カイガラムシ

知らず知らずのうちに果樹や庭木に大発生してしまうことがある「カイガラムシ」は、見た目の気持ち悪さもさることながら農薬の効果が薄く駆除しにくい厄介な害虫です。

草食性でほとんどの植物に付く可能性があり、口から出た針を植物に指して吸汁することによって様々な害を及ぼします。

我が家の庭に生えている果樹にも毎年のようにカイガラムシが付くので、効果的な対処法を求めて徹底的に調べました。

カイガラムシを発見したら一刻も早い対処が必要になるのですが、どのような方法が効果的なのかをできるだけわかりやすく解説していきたいと思います。


白っぽい粉をまとった種類や赤い貝殻をつけた種類など、いろんなカイガラムシがいるんだよなぁ。どれもとにかく気持ち悪い!

カイガラムシとひと口に言っても色々な種類があるんじゃが、対策としてとれる方法はそんなに多くないので効果的なパターンを紹介していくぞい!

カイガラムシとはどんな害虫?【画像あり】

カイガラムシ
  1. 和名:カイガラムシ
  2. 学名:Coccoidea
  3. 英名:Scalse insect
  4. 階級:カメムシ目カイガラムシ上科
  5. 生息範囲:世界中
  6. 活動時期:1年中を通して活動する、春から夏(5~7月)にかけて活発になる
  7. 体長:3mm~1cm
  8. 寿命:約1年
  9. 特徴:害虫であるが、人間の生活に必要な資源にもなっている
  10. 弱点:5~7月の幼虫から羽化する時期には薬が効きやすい
  11. 厄介な点①:成虫はかたい殻や蝋で覆われているので農薬が効きにくい
  12. 厄介な点②:カイガラムシの排泄物に含まれる糖分が原因で「すす病」が発生する
  13. 厄介な点③:メスの死骸からも孵化する

カイガラムシの特徴

カイガラムシは一体どんな虫なのかという事を知るために、主要な特徴を列挙します。

カイガラムシってどんな虫?

・全世界で7000種以上いる
・草花よりも、庭木や果樹などの被害が多い
口吻で吸汁し植物を枯れさせる原因となる
すす病コウヤク病、その他植物病原ウイルスを媒介する
・成虫は殻や蝋をまとっているため農薬や殺虫剤での防除が難しい
・幼虫は比較的農薬が効きやすい
・雌の成虫は植物からは動かず、雄だけが交尾のために羽化し飛んで移動する
雌の死骸からも孵化するので、死骸の後処理をしないと再発生する
・害虫としてだけではなく、重要な経済資源として養殖している地域もある


カイガラムシの被害に悩んでいる身としては、成虫は農薬が効きにくくて幼虫の時期が狙い目っていうのは大事な特徴だな!

カイガラムシ駆除の手順と薬剤については記事の後半で解説するぞい!

カイガラムシの種類

カイガラムシ

カイガラムシは日本国内で400種類以上確認されているため、画像を検索しても自分がみたものと同じ種類のカイガラムシが必ずしも見つかるとは限りません。

日本で見かける事の多い代表的なカイガラムシには以下の種類があります。

1.白い粉を被ったような種類   マツコナカイガラムシ・ミカンコナカイガラムシ等
2.蝋(ろう)で覆われている種類カメノコロウムシ・ツノロウムシ・ルビーロウムシ
3.堅い殻に覆われている種類   アカマルカイガラムシ・ヒメクロカイガラムシ等
4.殻が無い種類         モミジワタカイガラムシ・カンキツカタカイガラムシ等
5.袋に入っている種類                サルスベリフクロカイガラムシ

※参考 – カイガラムシのいろいろ

見た目別に分類すると上記のように5~6種類に分けることができますが、日本に分布している科としては「コナカイガラムシ科」「ハカマカイガラムシ科」「マルカイガラムシ科」「カタカイガラムシ科」「ワタフキカイガラムシ科」などがあります。

各カイガラムシの種類別の紹介はここではしませんが、ご自身が発見したカイガラムシがどの種類であるかの特定を行いたい場合は、上記参考元のリンク「カイガラムシのいろいろ」をご覧いただくと良いでしょう。

カイガラムシはどこからやって来る?

カイガラムシは、一般的に「狭い隙間や暗くて風通しの悪い場所」を好むと言われています。

しかし、土の中に生息している種樹皮の内部に寄生して成長する種などもおり、全て駆除したと思っても一度発生した樹木には翌年もカイガラムシが発生することも多いようです。

雌は動かないことが多いのですが、種によっては単為生殖も可能なので雌のみでどんどん増えます。

また、雄は交尾のためだけに羽化をして風にのって移動するので、発生範囲が拡大する理由の一つとなります。

恐ろしいことに、駆除したつもりでいた雌の死骸から子孫が孵化して這い出して来るので、ブラシなどでこすり落とすだけでは不十分だと言えるでしょう。

カイガラムシの天敵となる虫たち

ベダリアテントウ

カイガラムシの天敵と言われる生物はいますが、その多くはカイガラムシの原産国にいる虫たちであることが多いようです。

ベダリアテントウムシは、成虫・幼虫ともに柑橘系の果樹に付くワタフキカイガラムシ科のイセリアカイガラムシを捕食しますが、それ以外の種は食べないとされています。

ベダリアテントウムシとイセリアカイガラムシはいずれもオーストラリアが原産の虫であるため、仮にベダリアテントウムシを輸入したとしても同様の捕食関係が日本のワタフキカイガラムシ科の種に有効であるかは難しいようです。


天敵を利用しての駆除は農薬を使わないから理想的だけどなかなか難しいよね

生物農薬として販売を検討したこともあるようじゃが、なかなか効果を持続させることが難しかったようじゃのう
ベダリアテントウ

アブラムシやアザミウマなどに効果的な生物農薬として「ヒメハナカメムシ」や「ヒメカメノコテントウ」などがいますが、永続的にカイガラムシを駆除し続けるような天敵の利用はまだできていないのが実情です。

前述のベダリアテントウムシは日本の気候では寒くて冬越しができないため、毎シーズン輸入して放す必要があることからも実用化は難しいでしょう。

カイガラムシが原因で起きる農作物の病気被害

すす病

すす病

カイガラムシが間接的にかかわって起きる病気のひとつに「すす病」があります。

カイガラムシの排泄物には糖分が大量に含まれるため、それを栄養としてすす病菌というカビが繁殖し、すすを振りかけたように黒く変色して光合成ができなくなり、次第に枯れてしまいます。

カイガラムシの甘い排泄物は、アブラムシやアリを寄せ付けることもあるので、植物の周囲にカイガラムシとアリの両方を見つけたらすす病の危険性が迫っていると考えましょう。

こうやく病(膏薬病)

こうやく病はカイガラムシに寄生したこうやく病菌が吸汁痕から樹皮内に侵入することによって発症する病気です。

樹皮に灰色 or 褐色の厚布を貼ったような見た目で、膏薬(こうやく)を塗ったようにも見えるためこの名前がついています。

こうやく病菌の菌糸膜はとても丈夫なため、巻きつかれた樹木は生長が阻害されてしまい、放置すると菌糸膜より先が枯死してしまいます。

一番の対策は、カイガラムシを寄せ付けないことと、カイガラムシが好む環境を防ぐために、密生した枝を選定して風通しを良くするなどのメンテナンスを怠らないことです。

カイガラムシの防除に効果的な殺虫剤&農薬一覧

オルトラン水和剤

オルトラン水和剤は低毒性の有機リン剤で、水で薄めて散布するタイプの薬剤です。

浸透移行性の薬剤の為、葉や茎に散布された薬剤は植物内を移動し、カイガラムシやアブラムシなど口吻を植物に突き刺して吸汁するタイプの昆虫に効果があります。

また、効果の範囲が広いので、カイガラムシ以外にもアブラムシ、アザミウマ、ウンカ、コナジラミ、青虫、毛虫、ネキリムシ、ハモグリガなどの様々な害虫にも効果があり、毒性も低く安全なので使用薬剤の第一候補に上がりやすいでしょう。

しかし、カイガラムシの種類によっては、殻や蝋によってガードされていて薬剤の効果が薄いこともあるため、散布の時期は5~7月の幼虫期~羽化期に使用することで効率的に駆除することが可能です。

※オルトランは様々な剤形や殺虫成分が混成されているものなどがあり、どれを使えばいいのか迷ってしまう方も多いようなので下記にオルトランについてまとめました。

アクテリック乳剤(ピリミホスメチル)

アステリック乳剤は有効成分ピリミホスメチルによるガス効果で即効性がある薬剤です。

適応はサクラ、マサキ、ツツジなどの庭木類につくカイガラムシです。

注意点としては、眼や皮膚に刺激性があるので使用時には注意する必要があることと、カイガラムシ防除で使う事の多い石灰硫黄合剤やボルドー水和剤などのアルカリ性の薬剤との混用は避ける必要がある点です。

オルトラン同様、カイガラムシの成虫には効きにくいので、5~7月の時期に使用することで効果的な防除が可能になります。

モスピラン(アセタミプリド)

モスピランは、オルトラン同様に浸透移行性の薬剤の為、植物に口吻を指して吸汁するカイガラムシに効果的な薬剤です。

ネオニコチノイド系の殺虫剤で、害虫の神経のアセチルコリンレセプターに作用して興奮して死に至らしめます。

有機リン剤やカーバ―メート剤、合成ピレスロイド剤などの効果が薄い害虫にも効果的なのですが、毒性が医薬用外劇物に指定されているので安全性の面でより一層の注意が必要です。

使用の際は防護マスクや不浸透性防除衣の着用が推奨されているので、一般のご家庭での利用は難しいでしょう。

アプロード水和剤

アプロード水和剤は昆虫成長制御剤(IGR剤)で、カメムシ目の幼虫が脱皮出来なくすることによって殺虫効果を発揮する薬剤です。

既に脱皮をし終わっている成虫に対しては全く効果が無いので散布のタイミングが最も重要になってきますが、卵や幼虫の段階で上手く散布することができれば次世代以降のカイガラムシもすべて駆除してくれるのでとても効果的です。

幼虫の発生時期は種によって異なりますが、5~7月の時期に産卵~羽化を行うのでその期間に散布すると良いでしょう。

もし成虫を発見してしまった場合は使えないので、別の方法で成虫を駆除した後に、幼虫や卵の駆除目的で散布するようにしましょう。


IGR剤については下の関連記事で詳しく解説しているよ!

マシン油乳剤(97%)「ハーベストオイル」

マシン油乳剤はカイガラムシの気門(呼吸口)を塞いで窒息死させる効果のある薬剤です。

マシン油乳剤には95%剤と97%剤があるのですが、カイガラムシには97%剤の方が効果が高いので「ハーベストオイル(97%マシン油乳剤)」もしくは「トモノールS」がおすすめです。

毒性は「普通物」ですが、可燃性なので火気のある場所を避け低温で保存する必要があります。

通常は冬季(12月頃)に散布しますが、果樹に使用する場合は利用適期があるので、必ず各植物への適応と使用時期を確認してから使いましょう。

ハーベストオイルの適応と利用適期についてはこちら
ハーベストオイル(バイエルクロップ株式会社HP)

また、雨が降ってしまうと薬剤の効果が流れてしまうので、散布前に天気予報を見て好天が続くのを確認してから散布しましょう。

スプラサイド(メチダチオン:DMTP)

スプラサイドはDMTPを有効成分とする殺虫剤で、有効性が高い反面、劇物なので簡単には入手できず一般家庭での利用は非現実的といえます。

果樹園や茶畑で利用されることが多い「スプラサイド乳剤40」と、リンゴ、カキ、ウメ等に使われることが多い「スプラサイド水和剤」などがあり、果樹やお茶の栽培農家では古くからカイガラムシの特効薬として使われています。

世界的に販売数が減少したことから製造販売が中止される(シンジェンタクロッププロテクションAG:本社スイス)という話になったのですが、日本の果樹園やお茶栽培農家での利用が定着していることもあって、全農が権利を譲り受けて製造販売することになったことはニュースになりました。

このことからもわかる通り、カイガラムシへの殺虫剤としてはスプラサイドは農家の強い味方であることがわかりますね。

石灰硫黄合剤

石灰硫黄合剤は、カイガラムシに効果的な薬剤として大きな農園では必ずと言っていいほど使われる薬剤のひとつです。

温かい時期に散布をすると薬害を生じてしまうので、樹木が休眠状態にある冬季(1~2月)に散布をします。

カイガラムシのみならず、うどん粉病などの様々な病原菌にも効果があるのですが、「強烈な硫黄臭がすること」「強アルカリ性のため、皮膚を溶かし金属も錆びさせるので扱いが難しいこと」「業務用の容量(最低10L)でしか販売がないこと」等の点で一般家庭での利用が難しい薬剤です。

我が家では、毎年1月になると駆除業者に依頼して石灰硫黄合剤を散布してもらっているのですが、あの臭いは近所迷惑どころの話ではないので、使える場所も限られてしまうと思います。

個人で使う事はあまりないと思いますが、カイガラムシ退治には欠かせない薬剤のひとつです。

カイガラムシの駆除&防除方法と手順

カイガラムシの成虫と幼虫では対策が違う?

カイガラムシ

カイガラムシの駆除方法を考えるときに、一番悩ましいのは「成虫には薬剤が効きにくい」という点です。

薬剤の散布のタイミングを考えても、オルトランやアプロード水和剤などの利用は成虫になる前の5~7月でなくてはいけませんし、それ以外では冬季になるまで薬剤による効果的な防除法は行いにくいです。

成虫は物理的にブラシやヘラなどで一つ一つこそぎ落とすのが一番有効で、あまりにも密集してカイガラムシが発生している場合は枝ごと剪定してしまうのも効果的です。

一度カイガラムシが発生してしまった場合は、翌年以降も発生することを予測して、植物が休眠状態になっている冬のうちの薬剤散布による予防が大切になるでしょう。

成虫を見つけたら、できるだけ早いうちに手で取って捨ててしまいましょう!

最も効果的なカイガラムシの駆除手順

1.成虫はブラシやヘラでこそぎ落とす
2.5~7月は薬剤が効きやすいので、オルトランやアプロード水和剤などを利用する
3.12月ごろにマシン油乳剤(97%)を散布する
4.1~2月ごろに石灰硫黄合剤を散布する

考えられるうえで一番効果的でよく行われているカイガラムシの駆除手順は上記のとおりですが、前述の通り一般家庭でこれを行うのは少々難しいものがあります。

カイガラムシの発生範囲が広範囲で、近隣に住居などがない広い土地であれば、各薬剤の注意書きをよく読んだうえで上記の手順で駆除を行うのが良いでしょう。


住宅街での石灰硫黄合剤の散布は無理だね!

では、次は一般家庭でカイガラムシの駆除を行う場合の方法じゃ!

一般家庭で行えるカイガラムシの駆除方法

1.成虫はブラシやヘラでこそぎ落とす
2.カイガラムシが好みそうな状況を改善する(剪定するなどして通気性・日当たりを改善)
3.5~7月ごろにオルトラン水和剤・粒剤やアプロード水和剤を利用する
4.カイガラムシ専用殺虫剤(マシン油乳剤配合)を12月ごろに成虫に噴射

一般家庭でできる方法としては、上記の手順が一番簡単で確実でしょう。

地道な作業ですが、カイガラムシを一匹ずつ取り除いてから再発生しないように環境を整え、5~7月に幼虫や卵に対して効果的なアプロード水和剤を使うなどして成虫になるのを予防し、冬に残っている成虫がいれば専用殺虫剤を噴射して駆除するというのが良いでしょう。

<スプレータイプの簡易マシン油乳剤はこちら>

この殺虫剤の利用上の注意点としては、日中の高温時に使うと薬害が生じやすいので涼しい時間帯に散布することと、ごくまれに使用後に葉が黒ずんでしまうことがあるのが懸念点としてあります。

通常のマシン油乳剤同様に散布するのは冬の時期が好ましいですが、具体的な使用適期についてはマシン油乳剤同様に確認してから散布を行うのが好ましいでしょう。


劇物であるスプラサイドや臭いのきつい石灰硫黄合剤は扱いにくいから、それ以外の方法で駆除する必要があるね!

庭木程度であれば、オルトラン水和剤や粒剤、アプロード水和剤を適正使用期間に散布すれば効果は見込めるぞい!

まとめ

庭木や果樹に付く害虫の中で最も厄介と言っていい「カイガラムシ」ですが、経済資源としても重宝されている種もあります。

しかし、カイガラムシについての情報を知りたい人のほぼ全員が、いかにカイガラムシを駆除するかということに着目していることでしょう。

基本的には今回ご紹介した薬剤がカイガラムシに対して有効と言われているものなので、被害状況や季節、加害を受けている樹木の種類などによって適切な薬剤を使い分けるようにすると良いでしょう。