庭木、観葉植物、野菜や果樹など、様々な植物に発症することがある「すす病」は、その名の通りすすをかぶったように枝葉が真っ黒になってしまう病気です。
対策方法がわからず放置してしまう人も少なくありませんが、そのままにすると光合成が阻害されてやがて枯れてしまいます。
この記事では、すす病の原因となる害虫の駆除方法と、すす病を改善するための対策をご紹介いたします。
Contents
すす病とはどんな病気?
すす病は「すす病菌」というカビが原因で起こる病気です。
植物がすす病になる原因としては、害虫が原因で起きる「腐生性のカビ」と直接植物に寄生して繁殖する「寄生性のカビ」の2パターンがあります。
腐生性のカビ:アブラムシ・カイガラムシ・ハダニ等の排泄物が原因で繁殖
寄生性のカビ:樹木に直接寄生して養分を吸い取り繁殖
この2つの原因のうちどちらがすす病菌を繁殖させているのかによって、取るべき対策が多少変わってきます。
すす病が発症すると、すすをかぶったように真っ黒になってしまうため、美観が損なわれるだけでなく、茎葉が黒くなることで光合成ができなくなり、最終的には樹勢が衰えていき枯れる原因となってしまいます。
腐生性のカビと寄生性のカビの見分け方
適切な対策を取るためにはすす病菌が腐生性と寄生性のどちらかわかっていると対策がとりやすいでしょう。
すす病が起きている葉の周りにアブラムシやカイガラムシが付着していれば間違いなく「腐生性」とわかりますが、もし周囲に見つからない場合でも葉の表面だけにすす病が集中していれば害虫が原因であることが多いです。
寄生性のカビの場合は、葉の裏表両方にすす病が広がっています。
すす病が発生しやすい時期は?
すす病の発生時期は、春~秋の暖かい時期になります。
冬はカイガラムシやアブラムシなどの害虫の活動も停滞することから、病気の進行も収まるように見えますが暖かくなると再発生するので注意が必要です。
12月~2月は植物も休眠期間に入るため、カイガラムシやアブラムシ防除の薬剤による薬害が出にくい時期になりますので、この期間中に薬剤散布を行う事が多いです。(※詳しくは後述するカイガラムシの防除法のリンク先をご参照ください)
すす病は人体への影響はあるの?洗えば果実は食べられる?
すす病はカイガラムシが原因になることも多いため果樹が被害に遭うケースが多く、柑橘系(みかん等)、リンゴ、ナシなどに特に多い病気です。
すす病が発生した果実は人体に影響はありません。
洗えばすす病で真っ黒になった部分は取り除くことができるため、食べても問題はありませんが、スーパーなどで購入する商品にはすす病のものが紛れていることはあまりないでしょう。
もしご自身で育てられている果樹がすす病の被害に遭ってしまった場合は、よほどひどくない限り洗って食べることができます。
すす病の原因となる虫|カイガラムシとアブラムシ
すす病の原因になる害虫には、口吻を植物に突き刺して吸汁する「アブラムシ」や「カイガラムシ」などがいます。
これらの害虫の排泄物には糖分が多量に含まれているため、それを栄養分としてすす病菌が繁殖してしまうため、害虫が原因で起きるすす病は害虫の駆除が根本的な対処法となります。
カイガラムシの駆除方法農薬や殺虫剤の効きにくい「カイガラムシ」の駆除方法と対策まとめ
すす病の対策①|無農薬で行うすす病対策
無農薬ですす病を退治するには、「ふき取る・加害された葉を摘み取る・剪定する」などの物理的な方法のほかに、竹酢液を散布するという方法があります。
農薬成分は無く、抗菌・殺菌作用をもってすす病菌を駆除する効果がありますが、薬剤に比べて効果は乏しく、特にカイガラムシなどの害虫が原因である場合は根本的な対策にならないことが多いでしょう。
混みあった葉や枝を剪定することは、通気性と日光の通りを良くするので暗く湿った場所を好むカイガラムシの予防にもつながるのでお勧めです。
鉢植えなど被害の範囲があまり広くない場合であれば、カイガラムシを全て採り除き、葉を一枚一枚ふき取って竹酢液を散布するなどの方法も有効かもしれません。
すす病の対策②|薬剤・殺菌剤・農薬を使う方法
すす病の対策として最も効果的なのは、カビ(糸状菌)に対して効果がある薬剤(殺菌剤など)を使う方法です。
すす病の原因のほとんどが害虫(カイガラムシ・アブラムシ)によるものなので、これらの対処法としてもどうしても強い薬剤が必要になるので、害虫の駆除とカビの駆除に薬剤を使う事になります。
アブラムシに関しては無農薬でも比較的効果のある方法がいくつかあるのですが、カイガラムシは薬剤が効きにくく防除が難しいので、本気で対策をする場合はしっかりと薬剤を使う必要があります。(※詳しくは前述のカイガラムシの防除法のリンク先をご覧ください)
すす病の原因となる害虫を駆除した後のすす病の対策としては、「トップジンMゾル」や「ベンレート水和剤」などの薬剤が効果的です。
トップジンMゾル
家庭園芸用トップジンMゾルは、すす病菌などのカビ類(糸状菌)が原因で起きる広範囲の病気に効果があります。
特徴としては、既に発症済みの病原菌を退治する効果だけでなく病原菌の侵入を防ぐ予防効果も兼ね備えている殺菌剤ですので、予防目的で予め散布することも可能です。
水で薄めて散布するタイプの商品で植物に対する薬害も少ないので使いやすく、毒性も「普通物」であるので安心して使用できます。
注意点としては、使用時に手袋とマスクをつけて皮膚への付着を予防するなどの基本的なことを守れば問題はないでしょう。
トップジンMに関しては、以下の関連記事でペーストの殺菌剤について詳しく解説しています。高価や機序などは同様なので参考にしてみてください。
ベンレート水和剤
ベンレート水和剤もすす病に効果がある殺菌剤のひとつで、治療と予防の両方の効果を持ち合わせています。
茎葉に現れている病害以外にも、種子伝染性病害や土壌病害などの多方面にわたって効果があるのが特徴で、低濃度でも使用ができるので薬害や作物の汚れが少なくて済むというのも特徴のひとつです。
毒性は「普通物」です。
ベンレートと比較されることの多い「ダコニール1000」に関して、下記の記事でベンレートとの違いを解説しています。
殺菌剤の種類についてご存知ない方は是非あわせてご覧ください。
まとめ
枝葉が黒ずんでしまうすす病は、カイガラムシやアブラムシによって間接的に発生してしまう(ことが多い)病気であるため、基本的にはこれらの害虫の駆除が先決です。
害虫を駆除した後の対処法は、無農薬と殺菌剤を使った方法のいずれもありますが、一番のポイントはいかにカイガラムシやアブラムシを発生させないかという点に尽きるので、まずは害虫の駆除をしっかり行うようにしましょう。
ちなみに私は(カイガラムシが原因のすす病が発症した時は)、冬季のアプロード水和剤(5月)とマシン油乳剤(12月)、石灰硫黄合剤(2月)の散布でカイガラムシを徹底防除した後に、すす病被害のある葉をトップジンの散布で殺菌しています。
(※ただし、石灰硫黄合剤は近隣に住宅がない我が家のような田舎だからできる方法なので注意しましょう)