トリカブトの毒の強さと致死量は?似ている植物と見分ける方法

トリカブト

多くの人がその名を聞けば「毒」を連想するほど、有毒植物としてよく知られているトリカブトですが、実は園芸店で普通に販売されている植物です。

その植物がトリカブトだと分かっていれば注意をすることができるのですが、稀に山菜採りなどで他の植物と間違えてトリカブトを食べてしまい死亡した例もあるので、山菜採りのシーズンには注意が必要です。

今回はそんなトリカブトの特徴と種類などの見分け方についてご説明いたします。


推理小説とかテレビドラマでよく出てくるあのトリカブトってその辺に生えてるの?

園芸店で売られていることもあるし、関東以北の山間部で生えているのを見かけることはよくあるぞい

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トリカブトの特徴

トリカブト
  1. 和名:トリカブト(鳥兜)別名:アコニツム、カブトギク
  2. 英名:monkshood
  3. 学名:Aconitum
  4. 階級:キンポウゲ科トリカブト属
  5. 分類:多年草
  6. 分布:本州中部以北
  7. 形態:紫色の花を咲かせる種類が多いが、白、ピンク、黄色の花を咲かせる種類もある
  8. 花期:8~10月
  9. 特徴①:全株有毒
  10. 特徴②:日陰や湿気のある場所に生えやすい

トリカブトは「ドクゼリ」「ドクウツギ」と共に、大有毒植物のひとつとされています。

成長すると約1mほどの高さにまでなりますが、種類によっては横に伸びるものもあるため、すべての種類のトリカブトを見分けるのは難しいでしょう。

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トリカブトの花言葉

人間嫌い・復讐・栄光・騎士道


騎士道っていうのは、西洋の騎士が被る仮面みたいだからだよね!

復讐や人間嫌いっていうのは、その有毒性からじゃのう

「ブス」はトリカブトが語源?

「美人」の反意語で使われることがある「ブス」という言葉は、実はトリカブトが語源であると言われています。

有毒部位であるトリカブトの塊茎を「附子(ぶし)」と呼び、誤って食べてしまうとその毒性から神経に麻痺が出て、顔の表情が変になってしまう事から「ぶし」が訛って「ブス」となったと言われています。

トリカブトの開花時期

Torikabuto

開花時期は8~10月

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トリカブトの生息地

トリカブトが生えている場所

トリカブトは日本全土で見ることができますが、本州中部以北の比較的寒い山中で見られることが多く、北海道の山中で自生しているのをよく見かけます。

また、冒頭で述べたように観賞用として園芸店で売られていることも多いので、見つけるのはさほど難しくはないでしょう。


比較的寒い地域の山中ってことは、ここ宮城県にもトリカブトはあるのかなぁ?

うむ。確か栗原市にある「世界谷地」にもトリカブトが生えてたのう

トリカブトの毒の成分とは?

毒

トリカブトは根が特に毒性が強いことで知られていますが、全株有毒で葉や花びらにも毒が含まれています。

トリカブトの毒の主成分は、アコニチンと呼ばれるアルカロイド系の有毒成分で、他にもメサコニチン、アコニン、ヒバコニチンなども含みます。


有毒成分ってひとつだけじゃないんだね!

トリカブトを食べた時の症状

誤ってトリカブトを食べてしまった場合、食後10~20分以内に症状が出ることが多いと言われています。

その主な症状としては、厚生労働省のホームページに下記の通りに記載されています。

口唇や舌のしびれに始まり,次第に手足のしびれ嘔吐腹痛下痢不整脈血圧低下などをおこし,けいれん呼吸不全(呼吸中枢麻痺)に至って死亡することもある。

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トリカブトの毒の致死量とは?

トリカブトの毒であるアコニチンの致死量(経口)は2~6mgと言われていますが、これは純粋に生成されたアコニチンの場合なので、トリカブトの摂取量ではないことに注意です。(※参考:三菱総合研究所 ハザード概要シートより)

毒性の最も多いと言われている「トリカブトの根」におけるアコニチンの含有量は0.3~2%とされているので、ある程度の量を食べなければ致死量にまでは至らないと考えられますが、トリカブトの葉1gで重篤な中毒症状をきたした例があるので、少量でもとても危険であることには変わりありません。

トリカブトを誤って食べてしまった時の対処法は?

トリカブトの中毒に対する特別な治療法や解毒法はなく、催吐(吐き気を催させる)か胃洗浄が基本的な処理となるようです。(※参照:同上”日本中毒情報センター”)


病院以外でできることは「吐き出させること」のみじゃな

有毒なトリカブトの種類

トリカブト

トリカブトは約30種、亜種も含めれば50種以上が存在していると言われています。

その中でも主な種類をいくつかご紹介します。

  1. ヤマトリカブト:トリカブト言った場合に指すのがこのヤマトリカブト
  2. アズマレイジソウ
  3. オオレイジソウ:白い花(クリーム色)を咲かせる
  4. キバナトリカブト:名の通り黄色い花を咲かせる
  5. イブキトリカブト
  6. オクトリカブト:東北に見られることが多く、花柄に沢山の毛がある
  7. カワチブシ:花柄が無毛。形はヤマトリカブトに似ている
  8. サクライウズ
  9. センウズモドキ:花はやや小ぶりで淡青紫色のものが多い
  10. テリハブシ
  11. ハナトリカブト:中国原産で花が大きくなるタイプの品種
  12. ホソバトリカブト花柄の毛が開出毛で、薄紫色をした花をつける
  13. レイジソウ

ここに載ってるのは全部トリカブトの仲間で有毒なんだよね?

これらトリカブトの仲間を見分ける必要はないが、花の色が黄色や白、ピンクのものもあるので注意が必要じゃよ!

トリカブトと似ている山菜と見分け方

ヨモギとトリカブトの見分け方

ヨモギ

ヨモギは、ハーブの女王と呼ばれるほど人気のある野草で、ヨモギ目当てに野山に入る人もたくさんいます。トリカブトの芽生えはこのヨモギと似ているため、誤って収穫してしまう人が毎年必ずいます。

トリカブトの芽生え

出典:厚生労働省ホームページ

そしてこちらの画像がトリカブトです。葉先の形状が若干異なっているので比較すると分かりますが、トリカブトとヨモギが似ていることを知らないと間違って収穫してしまいそうになるのはわかりますね。

ヨモギとトリカブトを見分けるポイント①:臭い

一番わかりやすいのはヨモギには、特有の臭いがある点です。

トリカブトにはそのにおいが無いので簡単に嗅ぎ分けることができますが、トリカブトの有毒成分アコニチンは健康な皮膚や粘膜からも吸収されるので、触って臭いをかいでヨモギの臭いがしなかったら、その手をすぐに洗うようにしましょう。

ヨモギとトリカブトを見分けるポイント②:生える場所

ヨモギは日当たりのいい場所に生えることが多いですが、トリカブトは湿気のある木陰などに生えるので、あまり近い場所に並んで群生することは少ないとされています。

ヨモギを探す時は日当たりのいい場所を重点的に探すようにしましょう。

ヨモギとトリカブトを見分けるポイント③:葉の裏の毛の有無

ヨモギには葉の裏に綿毛のような白い毛が生えていますが、トリカブトの葉の裏に毛は無いので見分けることができます。

ここでも、トリカブトだった場合はすぐに手を洗うように心がけましょう。

ニリンソウとトリカブトの見分け方

ニリンソウ

出典:厚生労働省ホームページ

こちらの画像は、食用になるニリンソウという山菜で、最もトリカブトの誤食が多い植物と言われています。

間違いやすい若芽の時の状態を比較したのが下の写真です。

ニリンソウとトリカブト

出典:厚生労働省ホームページ

左の1本がトリカブト、右の4本がニリンソウです。このようにして比較しやすいように並べてもなかなか見分けがつかないほど似ています。

そして、実際の野山ではどのように生えているかというと、

ニリンソウとトリカブト

出典:厚生労働省ホームページ

この写真の黄色い矢印の一本だけトリカブトで、その他は全てニリンソウです。

同じ場所にひっそりと生えているので、誤って摘んでしまうというケースが続発しており、毎年数件の誤食による中毒者が出ています。


えっ?なにこれ、こんな風に紛れてたらわかるわけないじゃん!

前述のヨモギのように臭いや生えている場所で見分けがつきにくい分、本当に間違って食べてしまうケースが後を絶たないんじゃよ。近い所では2012年に死亡例が出ているぞい

ニリンソウとトリカブトを見分けるポイント①:花

ニリンソウ

ニリンソウとトリカブトを確実に見分ける方法のひとつが「花」です。

ニリンソウの花は上の写真のように、丸い花びらを付けた白い小さな花をつけるので見分けがつきやすいです。

ニリンソウの花期は4~5月ですので、トリカブトが花を咲かせる前の若芽の時とニリンソウの花期の時期が重なるため、花やつぼみをしっかり見ることで見分けることができるでしょう。

しかし、ニリンソウの若芽の時期に採取しようとすると、トリカブトと見分けがつきにくいので、ニリンソウ目当ての方はつぼみや花がしっかりとみられる時期の採取が好ましいとされています。

また、トリカブトは紫色の花をつけることが多いですが、中には白い花をつけるものもあるので、花の色だけでなく形も覚えておくようにしましょう。

トリカブト白

↑白い花のトリカブト

ニリンソウとトリカブトを見分けるポイント②:根の形

もう一つニリンソウとトリカブトの両者の決定的な違いは、根の形です。

ニリンソウの根は「棒状」で真っすぐ太さの変わらない根ですが、

トリカブトの根は「紡錘状」で先端に向かうにつれて細くなっており、さらに長いひげ根の先端に球塊をつけているので見分けがつきます。

モミジガサ(シドケ)とトリカブトの見分け方

モミジガサ

秋田県などで人気のモミジガサ(シドケ)という山菜も、トリカブトの誤食が多い山菜のひとつです。

平成28年には1名がモミジガサと間違えてトリカブトを食べ、亡くなるという事故が起きています。見た目はよく見るとトリカブトとは違うのですが、間違える人が多いので注意が必要です。

モミジガサとトリカブトを見分けるポイント①:花

モミジガサ

モミジガサはキク科の植物で、生長すると上の画像のような白い花を咲かせるので違いは一目瞭然です。

しかし、モミジガサの花期はトリカブトと同じ8~9月であるため、若芽を食べようと山に入ったころには、モミジガサもトリカブトも花をつけていないことが多いです。

若芽同士はよく似ているので、花で見分けることができない時期の場合は注意が必要です。

モミジガサとトリカブトを見分けるポイント②:葉の切れ込み

モミジガサは掌のような形で葉に切れ込みが入りますが、葉の中央部分までしか切れ込みは無く基部までは避けていません。

一方で、トリカブトは3~5の切れ込みが基部まで深く入っているので、モミジガサとの見分けがつきやすいです。

まとめ

有毒植物として有名なトリカブトですが、比較的身近にある植物であるという事がわかりました。

山菜シーズンになると、ヨモギやニリンソウなどを求めて野山に入る人も増えると思いますが、それらの山菜がトリカブトとよく似ているという事を知っておくだけで、万が一の事態を回避することができる可能性が高まります。

トリカブト以外にも、山菜採りを安全に楽しむために知っておいた方が良い知識や、持っておいた方が良い装備などがありますが、下記の関連記事にすべてまとめていますので是非あわせてご覧いただければと思います。

山菜と毒草を見分けたい方におすすめの本