雑草の駆除方法として真っ先に思い浮かぶのが「除草剤」の存在でしょう。
庭の雑草を駆除しようと除草剤を調べてみるも、「種類が沢山ありすぎてどれを選んだらいいかよくわからない!」なんてことがありますよね!
特に、自宅の庭など子供やペットがいる環境だったり、作物を育てている農耕地であったり、除草剤を使用する場所によっては効果だけでなく安全性も気にしたい
そんなときに、自分が選んだ除草剤がどのような種類のもので、どのような効果がどれだけ続いて、土壌や作物、さらにはそこに住む人にどのような影響があるのかを知っておきたいと思うのは私だけではないはずです。
この記事では、除草剤の事を良く知ってもらって、どのような除草剤が自分には必要なのかをご自身で判断できるように、除草剤の種類と選び方をご説明いたします。
Contents
除草剤の種類にはどのようなものがあるの?
あなたがこのページを見に来ているということは、除草剤の選び方について悩んでいて、少しでも自分が必要としている除草剤はどのようなものなのかを知りたいと思っているはずです。
この記事で、除草剤の特徴を知ることによって、あなたが購入を迷っている除草剤が、どの分類に位置づけされている商品なのかを知ることが出来るようになります。
そうすれば、その除草剤が自分に必要なものなのかの判断が簡単にできるようになるでしょう。
それでは、まず除草剤の分類についてご説明します。
除草剤を選ぶ時に知っておくと便利な除草剤の原理と特性
1.「茎葉処理剤」か 「土壌処理剤」かどうか
まず除草剤は「茎葉処理剤」か「土壌処理剤」の2種類に大きく分けることが出来ます。
まず、茎葉処理剤ですが、
すでに生えている雑草に散布して、茎や葉から薬剤を吸収させて枯れさせる薬剤の種類です。お庭に雑草がボーボーと茂っていて除草剤を探している方はこの「茎葉処理剤」を選びましょう。
次に、土壌処理剤ですが、
作物を育てる前の耕したばかりの畑や水稲の移植前後の水田など、雑草が生える前の土壌に散布して、隠れている雑草の芽や根を枯れさせる除草剤です。これから作物の種や苗を植えるので、あらかじめ雑草を生えないようにさせておきたい場合などに、この「土壌処理剤」を使います。
【まとめ】
- 茎葉処理剤:すでに生えている雑草にまいて、枯れさせる除草剤
- 土壌処理剤:まだ雑草が生えていない土にまいて、雑草の発芽を抑制する除草剤
2.「接触型」か「移行型」かどうか
次に、除草剤の効果範囲の分類で「接触型」と「移行型」の2種類があります。
まず、接触型の除草剤ですが、
薬剤がかかった部分にのみ留まり、その部分にのみ効果を発揮するタイプの除草剤です。
メリットは、効果が表れるのが早い
デメリットは、薬剤のかけむらがあると、その部分は枯れないので効果に差が出やすい
ことが挙げられます。
表面に見える雑草をできるだけ早く枯れさせたい場合は、接触型の除草剤を使用しましょう。
次いで、移行型の除草剤ですが、
薬剤がかかった茎葉や根から成分が吸収され、雑草内全体を移行して枯れさせるタイプの除草剤です。
メリットは、かけむらがあっても問題なく、雑草全体に巡り根まで枯れさせる
デメリットは、効果が表れるまで時間がかかる
塊茎で増えるため根まで枯れさせる必要があるため、以前「スギナの駆除方法」や「ハマスゲの駆除方法」で紹介した除草剤の種類も、この移行型の薬剤でした。
【まとめ】
- 接触型除草剤:効果が出るのが早いが、かけむらに注意する必要がある
- 移行型除草剤:効果が出るのが遅いが、多少のかけむらがあっても問題はない
3.「即効的」か「遅効的」かどうか
薬剤の効果発現までの時間によって「即効的」か「遅効的」の薬剤に分かれます。
これは、前述の「接触型」と「移行型」とも関係があるのですが、
前述した「接触型」の除草剤の多くは、効果が出るのが早い「即効型」の薬剤です。
同様に、「移行型」の除草剤の多くは、効果が出るのが遅い「遅効型」の薬剤です。
例えば、ラウンドアップのように茎葉から根まで薬剤が移行して徹底的に枯殺する除草剤は、効果が最大限発揮されるまで10日ほどかかる「遅効型」の除草剤となります。
「即効型」のメリットは、効果が表れるのが早いので雨の影響を受けにくい点ですが、デメリットとしてかけむらがあると効果が薄くなる点です。
「遅効型」のメリットは、雑草の根絶が期待できる点ですが、デメリットは効果が表れるのが遅いので、雨の影響を受けやすいという点です。
ラウンドアップのような遅効型の除草剤は、効果完成まで少なくとも1週間はかかります。しかし、そのことを知らずに効果が出ていないと思い込んで再散布をしてしまうという失敗がとても多いので、焦らずじっくり待つようにしてくださいね。
【まとめ】
- 即効型除草剤:多くが接触型除草剤
- 遅効型除草剤:多くが移行型除草剤で、効果が表れるのが遅いので雨の影響を受ける
4.「残効性」と「残留性」の強さについて
散布される除草剤は、植物に吸収された後、雨風た太陽光によって、飛散・分解されて成分は弱まります。土壌に流れた薬剤成分も、その多くが菌や微生物によって分解されますが、それでもなお除草剤の有効成分が土壌中にとどまっていることを「残留」と言います。
その除草剤の効果の減弱期間の長さによって、残留性の強弱が判断されます。
一方で、残効性は、土壌に残っている除草効果の持続期間のことを言います。
一般的に、茎葉処理剤の残効性は短く、土壌処理剤の残効性は長いものが多いです。
ですので、茎葉処理剤で除草した後の土壌に残る有効成分は、あとから出てくる雑草にはほとんど効果が無いので、除草後すぐに雑草が再発生しやすいのです。
それは、残効性の短い茎葉処理剤で除草した後の土壌は、比較的早い段階で次の作物を作りやすいという利点でもあります。
【まとめ】
- 茎葉処理剤は残効性が短く、すぐに次の雑草が生えてきやすい。
- 土壌処理剤は残効性が長く、一般的には10日~30日効果が持続し雑草が生えない。
5.剤型はどうか
除草剤には以下のような剤型のものがあります。
粒剤 | 水に溶かして調剤する必要が無い、水田用除草剤はほぼ全て粒剤 |
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水和剤 | 水に溶かして使用する。多くが粉末か錠剤 |
乳剤 | 水に溶けにくい有効成分を有機溶媒で溶かし、乳化剤を加えて製剤化したもの |
フロアブル剤 | 固形の薬剤を粉にして液体に混ぜ、分散させたもの |
水溶剤・液剤 | 水溶性の有効成分を粉末にしたもの、既に溶けているものは液剤 |
くん蒸剤 | 常温で気化する薬剤 |
6.「選択性」か「非選択性」かどうか
除草剤の中には、
触れたもの全てを無差別に枯れさせてしまう「非選択性」の薬剤と、
作物に対して安全性が高く、雑草のみに対して効果的に働く「選択性」のある薬剤
があります。
選択性による防除の違いについては今回は割愛しますが、農耕地に散布するのでなければ、非選択性の除草剤を防除したいところのみに散布すれば良いでしょう。
7.除草の原理と作用機序からみる安全性
最後に、除草剤はどのような原理で「草を枯らせる」のかという点です。
除草原理は大きく分けて下記の2通りがあります。
- 植物エネルギー供給系に作用するもの(光合成阻害、過酸化物生成、呼吸系阻害など)
- 成長・発達系に作用するもの(細胞分裂阻害、アミノ酸合成阻害、植物ホルモンの撹乱など)
この中で、「光合成阻害」「アミノ酸合成阻害」「植物ホルモンの撹乱」の3つの作用機序は、植物だけが持つ働きに対する作用なので、人や動物には安全性が高いとされています。
【まとめ】
除草剤の安全性を気にする人は、「光合成阻害」「アミノ酸合成阻害」「植物ホルモンの撹乱」のいずれかの作用機序で除草効果を得ている薬剤を選ぶようにしましょう!
各種除草剤の特性比較表
A. ラウンドアップ
系統 | アミノ酸系 | |
有効成分 | グリホサート | |
殺草作用 | アミノ酸の生合成阻害 | |
適用草種 | 一年生雑草(イネ科) | 〇 |
一年生雑草(広葉) | 〇 | |
多年生雑草(イネ科) | 〇 | |
多年生雑草(広葉) | 〇 | |
処理方法 | 茎葉処理剤 | |
接触型 or 移行型 | 移行型 | |
効果発現の速さ | 遅効性(7~10日以上) | |
効果の持続性 | 無し | |
土壌中の移動性/残留性 | 小 / 小 | |
選択性の有無 | 非選択性 | |
人畜毒性 | 普通物 | |
特記事項 | 多年生雑草の根まで枯殺でき、持続性・残効性がほとんどないので、使用後すぐに作物の作付けができる |
※関連記事>>>ラウンドアップの毒性などについての専門機関の意見・見解について
下記の薬剤もラウンドアップと同系統の薬剤
B. バスタ液剤
系統 | アミノ酸系 | |
有効成分 | グルホシネート | |
殺草作用 | グルタミン合成酵素の作用を阻害し、細胞損傷、光合成などの生理代謝を阻害する | |
適用草種 | 一年生雑草(イネ科) | 〇 |
一年生雑草(広葉) | 〇 | |
多年生雑草(イネ科) | 〇~△ | |
多年生雑草(広葉) | 〇~△ | |
処理方法 | 茎葉処理剤 | |
接触型 or 移行型 | 移行型 | |
効果発現の速さ | 速い | |
効果の持続性 | 無し | |
土壌中の移動性/残留性 | ー/ ー | |
選択性の有無 | 非選択性 | |
人畜毒性 | 普通物 | |
特記事項 | 生育中の雑草を速やかに枯れさせるが、多年生雑草の根は残るのですぐに再生する。処理後すぐに作物の作付けができる。 |
C. 芝生用除草剤 MCPP液剤
系統 | フェノキシ系 | |
有効成分 | MCPP | |
殺草作用 | 植物体内を移行し、生長点などに作用して奇形を生じたり、ホルモンバランスを崩して枯らす | |
適用草種 | 一年生雑草(イネ科) | × |
一年生雑草(広葉) | 〇 | |
多年生雑草(イネ科) | × | |
多年生雑草(広葉) | 〇 | |
処理方法 | 茎葉処理剤 | |
接触型 or 移行型 | 移行型 | |
効果発現の速さ | 速~中 | |
効果の持続性 | 中~長 | |
土壌中の移動性/残留性 | 大 / 小 | |
選択性の有無 | 選択性 | |
人畜毒性 | 普通物 | |
特記事項 | 選択性薬剤なので、クローバーなどの広葉雑草に選択的に効く。 |
まとめ
除草剤の種類を、特徴別で考えるとぼんやりとその薬剤の特徴が見えてくるように思います。
1つ、ブタスケ君の除草目的を例にして、どのような除草剤が向いているのか考えてみましょう。
- すでに雑草がボーボーと生えている ⇒ 茎葉処理剤
- 完全に根まで枯れさせたい ⇒ 移行型
- 特に除草を急いでいない ⇒ 遅効性(移行型)で問題ない
- 出来れば安全性も留意したい ⇒ 光合成阻害やアミノ酸合成阻害などの機序
- 農耕地ではないので全て除草したい ⇒ 非選択性の薬剤
- 生えている雑草はススキなどのイネ科 ⇒ イネ科に効果のある除草剤
結果 ⇒ 「ラウンドアップ」 or「サンフーロン」などの強力な移行型の除草剤
このように、現状と照らし合わせるとどのような特徴を持った除草剤が必要なのかわかりますね!
必要な除草剤のタイプが分かれば、同系統の除草剤で値段が安いものだったり、ネットの口コミを見たりして、気に入ったものを選べば大きな失敗をすることは無いでしょう。
是非、除草剤の特性を理解して、あなたの必要としている除草剤を見つけてくださいね。