プロの農家すら悩ます最強最悪の雑草「スギナ」は、簡単に防除することが出来ない難防除雑草とされています。かつて原子爆弾を落とされた広島で、一番最初に地上に顔を出した植物がこのスギナだといわれており、どれだけ駆除するのが難しいかを物語っています。
この記事では、そんな駆除するのが難しい「スギナの駆除方法」についてご紹介します。
ちなみに、つくしの周りに「緑色の「杉」に似た棒状の葉」の植物が生えていなかったかの?
Contents
最強雑草「スギナ」と春の風物詩「土筆(つくし)」の意外な関係
【スギナ】
- 和名:スギナ(杉菜) ※別名:地獄草
- 学名:Equisetum arvense
- 階級:シダ植物門トクサ綱トクサ目トクサ科トクサ属
- 分類:多年生難防除雑草
- 分布:北海道から沖縄にかけて生息する在来種。比較的涼しい地域に多く発生する
- 形態:栄養茎を「スギナ」と呼び、胞子茎を「つくし」と呼ぶ。
- 繁殖方法:胞子と地下茎(根茎と塊茎)
- 特徴:酸性土壌への適応性がある
という事は、つくしが飛ばす胞子が厄介な雑草を増やしてたのか~
山菜としてのつくしの栄養と毒性については、下の関連記事も是非ご覧ください
なぜスギナは駆除しにくいのか
スギナがこれほどまでに駆除しにくいのには、スギナの特性と繁殖方法が関係しています。
スギナの繁殖方法の特徴を知ると、駆除しにくい理由がわかるのでまとめてみました。
1.繁殖方法が3つあるという点
スギナは「胞子」/「根茎」/「塊茎」の3つの方法で繁殖します。
その為、地上部に見えている胞子茎(つくし)や栄養茎(スギナ)を刈り取って除草をしたつもりになっていても、地下茎の「根茎と塊茎」は残っているので防除方法としては不十分です。
2.多年草で寒さに強い点
スギナは多年草で寒さに強く、地下茎は5~10℃の寒さでも地中で伸びます。
冬は地下茎だけが生き残り、越冬して暖かくなると地上に顔を出します。このことから、駆除には地下茎の根絶が必要であることが分かります。
3.地下茎(根茎)は切断されると分裂して増える
スギナが特に厄介なのがこの「分裂して増える」という点です。
地面を掘り起こして地下茎の駆除をしようとして、トラクターなどのロータリーで耕したり、手で地面を掘って引きちぎったりしても、切断された根茎の「節」から芽吹くのでかえってスギナを増やしてしまう結果になります。
かえってスギナが広範囲に増えてしまうので、根を掘り起こしたり引きちぎって駆除するのは絶対にやめましょう。
スギナの地下茎は地下30~40cmに多いですが、時には1mの深さを越すものもあるので、人力での根絶は難しいでしょう。
ロータリ耕をすることで分裂する強害雑草に「カヤツリグサ科のハマスゲ」がありますが、こちらもスギナ同様にとても厄介な雑草として世界各地に君臨しています。
4.胞子には除草剤の効果が薄い
厄介なのは地下茎だけではなく、シダ植物特有の「胞子で増える」という性質もあります。
失敗例で多いのが、地上部分のスギナを刈り取る際に胞子が飛散してしまい、かえって遠方にまでスギナを蔓延させてしまうという点です。
胞子にはほとんどの除草剤はなす術がありません。
(※安全性を考えるのであれば、植物特有の特性に作用する除草剤がおすすめなのですが、胞子にはそれらの作用機序は効果がありません)
被害を拡大させないためには、胞子を飛ばさないよう地上部分もしっかりと除草剤などで科学的に駆除してから、刈り取るようにしなくてはなりません。
スギナ駆除に石灰を使うのは効果が無いどころか逆効果!
ネットで調べると出てくる「スギナの駆除に石灰を使う」という方法ですが、
これは「全く意味がありません!」
意味がないどころが逆効果になってしまう事さえあります。
スギナの防除方法として一つ有効なのは、他の作物の雑草抑制力を使うという方法があります。
例えば、大豆のように他の作物に負けまいとする競合力の強い作物があると、大豆の方がスギナよりも大きく育っていくので、スギナの成長を抑制してくれる効果があります。
しかし、土壌が酸性に近いと、酸性土壌への適応能力の高いスギナの成長の方が勝ってしまい、他の作物の雑草抑制力が効かなくなってしまうのです。
この「スギナは酸性土壌への適応能力が高い」という事を、「スギナは酸性土壌を好む」と誤解されたために、「石灰をまいてpHを中性~アルカリ性に近づければスギナ駆除に効果的である」というような間違った対処法が伝わったのでしょう。
スギナは実際は「中性」の土壌を好みます。
酸性土壌を中性やアルカリ性に近づけることは、他の作物の雑草抑制力を使う場合において効果的ですが、スギナ自体への駆除効果は全くありませんので、スギナが茂っているお庭に石灰をまいても意味がないのです。
スギナの効果的な駆除方法とおすすめの除草剤
スギナの特徴から、スギナを駆除するには「胞子を飛ばさず、地下茎を掘り起こさずに、全てを枯死させなくてはならない」という事が分かりましたね。
では、そのような駆除方法を取ることが出来る除草剤はどのようなものがあるのでしょうか?
グリホサート系の除草剤を使う
グリホサート系の除草剤は、茎や葉から植物体内を移行し、根まで枯れさせる除草剤です。
市販のものには、ラウンドアップやサンフーロンがあります。
例として、ラウンドアップの特徴を表にまとめます。
【ラウンドアップの特徴】
系統 | アミノ酸系 | |
有効成分 | グリホサート | |
殺草作用 | アミノ酸の生合成阻害 | |
適用草種 | 一年生雑草(イネ科) | 〇 |
一年生雑草(広葉) | 〇 | |
多年生雑草(イネ科) | 〇 | |
多年生雑草(広葉) | 〇 | |
処理方法 | 茎葉処理剤 | |
接触型 or 移行型 | 移行型 | |
効果発現の速さ | 遅効性(7~10日以上) | |
効果の持続性 | 無し | |
土壌中の移動性/残留性 | 小 / 小 | |
選択性の有無 | 非選択性 | |
人畜毒性 | 普通物 | |
特記事項 | 多年生雑草の根まで枯殺でき、持続性・残効性がほとんどないので、使用後すぐに作物の作付けができる |
このラウンドアップとサンフーロンの違いは、サンフーロンがラウンドアップのジェネリック品であるという点です。
その為、基本成分には違いはほとんどなく、サンフーロンの方が安価に購入ができます。
ただ、これらのグリホサート系の除草剤は「移行型」の除草剤のため、散布をしてから除草効果が完成するまでに数週間から1か月ほどかかることがあります。
その間に雨が降ると効果が減弱しやすく、雨が降っても大丈夫な時間はラウンドアップの方がやや優れているので、雨の降りやすい季節や地域での散布を検討している方はラウンドアップマックスロードの方が良いかもしれません。
ラウンドアップやサンフーロンなどのグリホサート系薬剤の安全性については、こちらの「毒性や発がん性に関する各国・各研究機関の見解まとめ」の記事をご覧ください。
※注 バスタ液剤を勧める記事もありますが、バスタ液剤は根を枯らす力は弱いので、上記の2剤の方がより効果的です。
また、上記の表に記載されている内容や、有効成分、安全性などについては、以前ご紹介した「除草剤の種類とおすすめの選び方」についての記事で詳しくまとめてありますので、購入前にご一読をお勧めいたします。
ラウンドアップやサンフーロンを使う事によって、有効成分が浸透していき、時間はかかりますがスギナの根まで枯らすことができます。
これらの除草剤は、土壌で安全に分解されることがメリットなのですが、その反面効果の持続性は無いため、除草後の土地にスギナの胞子が飛んできたり、地中に残ったスギナの根があるとすぐに再発生してしまいます。
徹底的にスギナの発生を防ぎたい方は、除草剤使用後に防草シートを使った防除方法をお勧めいたします。
芝生の中にスギナが生えてきた場合は「MCPP液剤」を使おう!
(※2018/5/22追記)
スギナへ効果的な除草剤としてラウンドアップなどのグリホサート系の除草剤をご紹介してきたところ、コメントで「芝生の中に生えてきたスギナの駆除はどうしたらいいのか」というご質問をいただきました。
我が家でも芝生の中にスギナが生えてきており、「MCPP液剤」という芝生のようなイネ科の植物に影響の出ない除草剤を使って駆除しております。
MCPP液剤は、スギナ以外にも「カラスノエンドウ」「スベリヒユ」「クローバー」等に効果があり、イネ科の芝生に対する安全性が高いので、ゴルフ場などでの雑草防除によく使われている除草剤です。
ご自宅の芝生に対しての安全性はメーカーサイトをご確認いただくと確実ですので、必ず適用があることを確認してから使用するようにしましょう。
苔の中にスギナが生えてきた場合は「プリグロックスL」を使おう!
プリグロックスLは「最も苔に影響の少ない除草剤」として使われていますが、医薬外毒物指定されているので一般のホームセンターやネット通信販売では購入ができません。
最寄りのJAなどで置いてある場合があるので、署名・押印と身分証明書の提示をして購入することができます(※18歳未満購入不可)。
詳しくは下記記事にてプリグロックスの特徴と使い方について解説していますので、あわせてご覧ください。
まとめ
スギナ駆除に悩む多くの方が、様々な対策を探していることと思います。
その中で、ラウンドアップやサンフーロンに行きつくも、除草剤ということで敬遠してしまう人もいるかもしれません。
しかし、スギナの特徴や繁殖方法を知ると、とても一筋縄ではいかないことがご理解いただけると思います。除草剤も、その特性を知ることで安全に使うことが出来るので、スギナの駆除にお困りの場合は今回ご紹介した、ラウンドアップやサンフーロンの使用を検討してみてください。
もし個人では対応しきれず草刈りの専門家に依頼したい場合は、別記事でオススメの草刈り業者をご紹介していますのでこちらも併せてご覧ください。
また、身近な雑草を知ることで雑草に対する考え方が変わるかもしれません。こちらの本は特におすすめです。