ハマスゲは、芝生や畑で猛威を振るう雑草で、世界的に最強の部類の強害雑草として認識されています。
駐車場のアスファルトなどを地中から押し上げて生えてくるほどの強靭さと、地下に生える塊茎で増える繁殖力から防除が難しく、駆除方法に頭を悩ませている方が多いのです。
ハマスゲが発生している場所によって、この先ご紹介する駆除方法が可能かどうかが変わりますが、ハマスゲの生態と共におすすめの駆除方法をご紹介いたします。
他にも地域によって、「ヤカラ」や「クグ」とも言うぞい。
Contents
最強雑草「ハマスゲ」(カヤツリグサ科)の生態とは?
- 和名:ハマスゲ(浜菅) ※別名:コウブシ、クグ、ヤカラなど
- 学名:Cyperus rotundus
- 階級:カヤツリグサ科カヤツリグサ目
- 分類:多年草の単子葉植物
- 分布:東北から沖縄にかけて生息する。暖かい場所を好むため関東以西に多い。
- 形態:15~40cmまで伸び、茎は細く硬い。
- 繁殖方法:主に塊茎(種でも増える)
- 特徴:ロータリ耕をすると、塊茎を切断して分裂させ、増殖を促進してしまう。
多くの人を悩ませている「ハマスゲ」は、スギナ同様に特に防除が難しい強害雑草として認知されています。
※スギナについてはこちらの「スギナの駆除方法と効果のある除草剤」の記事をご覧ください。
アナタを悩ませている雑草が、ハマスゲかどうかわからない場合は茎の切断面を見てください。カヤツリグサ科のハマスゲの特徴は「切断面が三角形」であることです。
※ハマスゲの茎の断面写真
葉も3枚であることが多く、「3」にまつわる植物は「ハマスゲ」と覚えると忘れないでしょう。
ハマスゲが駆除しにくい理由
※写真はハマスゲの塊茎
ハマスゲが世界的に駆除しにくい最強部類の雑草と位置付けられているのには、下記のような理由があります。
- 刈り取り耐性が強く、地上部を何度刈り取ってもすぐに再生する
- ひと夏で1つの塊茎から300個以上の新塊茎が形成されるほど繁殖力が強い
- 地下30cmの塊茎からも萌芽する
- 耕して塊茎を切断すると、各切断部分が新たに萌芽し、増殖を促進してしまう
1.地上部の刈り取り耐性が強い
特に、ゴルフ場などの芝生で発生した際に、地上部を何度刈り取っても枯れずに生えてくるため、その厄介さからしばし話題になります。
「浜菅」の名前の通り、砂地の浜辺にも多数発生することから、砂の土壌でも増えます。
2.塊茎からの繁殖力が強い
親株から約1ヶ月ほどで子株~3次株まで増え、半年後には2000以上の新塊茎が形成されるというとてつもない繁殖力を持っています。
春先の気温上昇とともに萌芽しはじめ、11月頃まで増え続けます。
3.地中30cmの深さからも生えてくる
厄介な塊茎が、地中浅いところにのみ張り巡らされているのであれば、まだ人力での抜き取り駆除などが可能かもしれませんが、中には地中30㎝の深さから萌芽する例も確認されています。
ハマスゲを根絶するには、繁殖の元となる「塊茎」を取り除くことが一番ですが、これだけの深さから萌芽するのでは、すべて取り除くのは不可能であるといえるでしょう。
4.塊茎が切断されると余計に増える
地中深く塊茎があるのであれば、「耕運機などで掘り起こせばいいじゃないか!」とお考えになるかもしれませんが、それはあまり得策とは言えないでしょう。
ハマスゲの塊茎は、ロータリ耕など機械で耕すと、塊茎が切断されてしまいます。
すると、切断されたそれぞれの塊茎から萌芽が促進されるので、結果的に1つだったハマスゲを増殖する手助けをしてしまう事になるのです。
「耕して塊茎を分断するとその分増殖する」というのは、スギナにも当てはまる強害雑草特有のとても厄介な特徴です。
ハマスゲの駆除方法とは?
この厄介なハマスゲですが、どのような防除方法があるのでしょうか?
実は、場所・時期など特定の条件によっては、ハマスゲを駆除することが可能です。ハマスゲの特性と共におすすめの駆除方法をご紹介します。
1.除草剤(グリホサート系)を使用して塊茎を故殺する
一つ目は「除草剤」ですが、ハマスゲの塊茎を全て枯殺するのにおすすめなのが「ラウンドアップ」や「サンフーロン」などのグリホサート系の除草剤です。
例として、ラウンドアップの特徴を表にまとめます。
【ラウンドアップの特徴】
系統 | アミノ酸系 | |
有効成分 | グリホサート | |
殺草作用 | アミノ酸の生合成阻害 | |
適用草種 | 一年生雑草(イネ科) | 〇 |
一年生雑草(広葉) | 〇 | |
多年生雑草(イネ科) | 〇 | |
多年生雑草(広葉) | 〇 | |
処理方法 | 茎葉処理剤 | |
接触型 or 移行型 | 移行型 | |
効果発現の速さ | 遅効性(7~10日以上) | |
効果の持続性 | 無し | |
土壌中の移動性/残留性 | 小 / 小 | |
選択性の有無 | 非選択性 | |
人畜毒性 | 普通物 | |
特記事項 | 多年生雑草の根まで枯殺でき、持続性・残効性がほとんどないので、使用後すぐに作物の作付けができる |
※サンフーロンは、ラウンドアップのジェネリック品なので基本成分はほぼ同じで、より安価です。
このラウンドアップのような薬剤は「非選択性」の薬剤のため、液剤がかかったものは全て枯殺してしまいます。そのため、除草をしたいハマスゲの周囲に他の作物がある場合は使用できません。同様に、ハマスゲが芝生に生えている場合も、ラウンドアップでハマスゲのみを選択的に駆除するのは不可能となります。
※「非選択性薬剤」など除草剤の種類と特性については、以前ご紹介しました別記事をご参照ください。
ハマスゲの場合は、ラウンドアップなどのグリホサート系の除草剤を50倍を目安に希釈して散布することで、数日~数週間後には地下の塊茎まで薬剤が行き渡り故殺することが出来ます。
前述した「スギナ」の記事でも、ラウンドアップについては詳しくご紹介していますが、「非選択・移行性」で、散布された葉や茎から根まで故殺する薬剤は、時間がかかります。
かけムラは多少問題ないのですが、効率よく除草剤を散布するには噴霧器などがあると便利でしょう。
除草剤には様々な種類がありますが、塊茎までしっかりと枯れさせるのであれば、ココで紹介したグリホサート系の除草剤を使えば問題ないでしょう。
また、ラウンドアップの発ガン性などの懸念については、こちらの「ラウンドアップの毒性・発ガン性に関する各国・各研究機関の見解まとめ」の記事をご覧ください。
2.遮光する
通常の日光が降り注ぐ環境下では、ハマスゲはとても強い刈取り耐性がありますが、遮光率が60%を超えると刈取り後の再生率が下がることが分かっています。
特に地上部分は遮光に弱く、ハマスゲ以外の作物(成長が早く、グランドカバーができる物)で覆いつくしてしまう事で枯殺することも可能です。
成長競争性が激しい作物としては、「大豆」や「ミント系」がありますし、葉が大きく育つもので「サツマイモ」などで遮光してしまう農家さんもいらっしゃるようです。
他にも「黒マルチ」や「防草シート」などで遮光することもできますが、遮光によってハマスゲを駆除する場合には、駆除する場所がどこなのかによって取ることのできる対策も分かれるでしょう。
防草シートについては、以前ご紹介した「おすすめの防草シートや敷き方」についての記事をご覧いただくと参考になるかと思います。
3.冬場に耕起する
水分の多い浜辺や水田に発生することが多く、且つ温かい関東以西に多いのがこのハマスゲなので、その逆の「乾燥・寒さに弱い」がハマスゲの弱点なのです。
ハマスゲは「水分21%以下」もしくは「温度-5℃以下で2時間」の環境で生育がとまり、枯れていきます。
そのため、乾燥し寒くなる冬場にすべて掘り起こし、厄介な塊茎を外気にさらすことで自然に枯殺することが可能です。
ただし、年中暖かい地域ではこの方法は難しいでしょう。
まとめ
今回は最強の雑草の一つ「ハマスゲ」の特徴と駆除方法についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
駆除方法を最後にまとめると、
- 周りに作物が無ければ「ラウンドアップ」か「サンフーロン」を使う
- 冬がある程度寒い地域なら、掘り起こして外気にさらす
- 「ミントなどでグランドカバー」「防草シート」「黒マルチ」で遮光する
という3つが主なハマスゲの駆除方法になります。
発生状況があまりにもおびただしい場合は、手での抜き取り作業などが必要になってきますが、周囲に作物が無い環境下ではやはりラウンドアップなどの薬剤散布が一番効果的でしょう。
ごく一般的な雑草の防除方法については以前別記事でご紹介しましたが、ハマスゲのような強害雑草は安易な方法を取るとかえって増えてしまう事もあるので、今回ご紹介した方法を参考に駆除をしていただければと思います。