こんにちは、田舎センセイです。
ふきのとうと並んで春を感じさせる山菜に「つくし/土筆」があります。
山菜というイメージは少ないかもしれませんが、古くから食用にする地域もあり、下処理をすれば美味しくいただける栄養価の高い植物の1つなんです。
本記事では、そんな「食用」としてのつくしに関して、栄養・毒性・副作用について詳しくまとめたいと思います。
Contents
つくし(土筆)はスギナの胞子茎|厄介な雑草との関係
「つくし誰の子、スギナの子」という歌を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、強害雑草であるスギナとつくしは同じ植物です。
別名「地獄草」(地獄まで伸びると思えるほど根が深くて駆除しにくいことから)と呼ばれるほど厄介な雑草であるスギナ。
スギナは地下茎と胞子で増えるシダ植物(トクサ科トクサ属)なのですが、つくしはその胞子をつくる花に当たる部分(胞子茎)なんですね。
春先になって先にツクシが地面から顔を出し、その後にスギナが出てきます。
穂先には胞子を含んでいて、茎の途中途中に節の様な「ハカマ(袴)」と呼ばれる葉がついていて、食用にする場合にはこのハカマを取り除く作業が必要です。
つくし(土筆)の栄養と毒性・副作用
※画像:wikipedia
つくしの栄養価について
成分 | 100g(約50本分) |
水分 | 88g |
たんぱく質 | 3.4g |
炭水化物 | 6.7g |
脂質 | 0.1g |
食物繊維 | 6.7g |
βカロテン | 1100㎍ |
ビタミンE | 3.8㎎ |
ビタミンC | 15㎎ |
カリウム | 340㎎ |
リン | 82㎎ |
カルシウム | 58㎎ |
マグネシウム | 26㎎ |
つくしの栄養価として特筆すべきなのは「βカロテン・ビタミンE・ビタミンC・カリウム」でしょう。
100gあたりのβカロテンの量は、オクラやブロッコリーと同レベルかそれ以上。ビタミンEに関しては野菜の中ではトップレベルの含有量です。
後述しますが、カリウムの量も多いので高カリウム結晶の危険性のある人など、あまり食べない方がいい人もいるので注意が必要です。
つくしのカロリーは1本1キロカロリー未満
つくしは1本で約2g。
100g(約50本分)として換算すると約33~38キロカロリーです。
天ぷらなどで食べる場合は当然カロリーも増えますが、つくし自体はカロリーの高いものではありません。
つくしの毒性|植物アルカロイド(ニコチン・エキセチン)・ケイ酸・チアミナーゼ
スギナは生薬として使われることもあり、むくみ/利尿効果/尿路感染症などに良いと言われていることもあるのですが、人間に関する有効性をはっきり示した論文が見つけられませんでした。
多少であれば食べても問題はないのですが、薬になる(ような効果がある)場合は当然毒にもなるので、大量に摂取した場合いくつかの成分が体調を崩す可能性があります。
・チアミナーゼ
・ケイ酸(珪酸)
植物アルカロイドという毒性の中には、ニコチンなども含まれるので「ニコチンに中毒症状や過敏症がある人」は要注意。
チアミナーゼはチアミン(ビタミンB1)を破壊する作用があるので、チアミン欠乏症になると神経系や脳に影響が出ます。ビタミンB1が不足しがちな人(糖質やアルコールを沢山摂取しがちな人)なんかも要注意です。
チアミナーゼは加熱することで活性を失うので、ツクシの調理過程で大部分はなくなると思いますが、不十分な加熱や生食は止めた方が良いでしょう。
余談ですが、私は言語聴覚士として病院にいた時に「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」という過度の飲酒によってビタミンB1が欠乏し脳に障害が出た症例を診たことがありますが、その方は極度の記憶障害になって自分の誕生日すら覚えていられなくなっていました。
その頃から「飲酒=ビタミンB1が不足する」という事を意識するようになりましたが、ビタミンB1の欠乏症って怖いんですよ~。
イヌやネコがつくしを食べてしまった
室内で飼っている場合(特にネコ)はつくしを誤食する可能性は低いと思いますが、散歩中のワンちゃんであれば「つくしを食べてしまった」という事がたまに起きます。
ツクシやスギナのような雑草の毒性に関しては、家畜の中毒症例でよく問題になるのですが、スギナによく似ていて毒性の強いイヌスギナが牧草に混じっていることによる中毒症例がいくつかあります(※農研機構:イヌスギナによる中毒)。
牧草に混入したことによる牛の中毒症例としては、下痢、食欲不振、入寮低下などで死亡例はほとんどありませんが、馬の中毒では筋弛緩、小脳やせき髄の髄膜の充血など脳の病変もあるようです。
馬や牛の中毒症例を紹介しましたが、過剰に常習的に食べなければ散歩の途中で多少つくしを食べてしまっても問題はありません。
過度に心配する必要はないですが、大量に食べた場合や常習的に食べさせていて何らかの症状が出てしまった場合は、すぐにかかりつけの獣医に相談しましょう。
つくしを食べる時の注意点・食べない方がいい人とは?
・高カリウム血症のひと
・腎機能が低下しているひと
・心臓、腎臓の機能不全のあるひと
・妊娠中、授乳中の女性
・子供
・ニコチンに過敏症がある人
・チアミン(ビタミンB1)欠乏症の危険性がある人
まずはつくしに多く含まれているカリウムは、過剰摂取による「高カリウム血症」の危険があります。
体内の余分なカリウムは腎臓の働きで尿中に排泄されますが、腎機能が低下している人や透析患者さんなどはカリウムが体に溜まって高カリウム血症になりやすいので注意が必要です。
ツクシを100g食べたとしても、カリウムが特に多いバナナ(1本でカリウム450mg以上)よりは低いのですが、腎機能が低い人は念のため注意しましょう。
また、小児や妊娠中・授乳中の女性に関するツクシ過剰摂取の安全性情報が不足してるので、摂取は避けた方が無難。
ニコチンを含むので、ニコチン過敏症がある人や心臓に持病がある方は特に注意が必要です。
つくしを食べる地域はどこ?
私は北海道出身、妻は東北出身ですが、二人ともつくしを食べたことはありません!
ツクシを山菜として食べる習慣があるのは「関東以南~九州の地域」で、北海道・東北・北関東・北陸ではそのような習慣はありません。
九州ではほとんどの地域で食用として、卵とじや佃煮、天ぷらにして食べるようですね。
周りに山菜が豊富な我が家(宮城県)の周囲でも、たらの芽やコシアブラは食べてもつくしは食べません。食の風習とかって面白いですよね。
まとめ
春の風物詩ともいえる「つくし」は関東以南では山菜として食べられていますが、食べ過ぎは厳禁であることが分かっていただけたかと思います。
腎臓や心臓に持病のある方などでなければ、加熱調理をして量に気をつけさえすれば美味しくいただけますので、季節限定の春の味覚として楽しんでください。
参考
・MediPress:カリウムコントロールのコツ
・健康食品の安全性・有効性情報
・話題の食品成分の化学情報:ビタミンB1解説