ワラビやこごみと並んで語られる事の多い山菜「ぜんまい」は、山奥の急な斜面に生えることが多い事から、山菜採りの中でも比較的難易度の高い山菜と言われています。
スーパーで乾燥ゼンマイや水煮などを見かけることも多いのでポピュラーな山菜ですが、取れたてのゼンマイのあく抜き方法や乾燥ゼンマイの戻し方などを知らない方も多いかもしれません。
今回は、野山に生える天然物のぜんまいの特徴や採り方・見分け方、既にスーパーで売っているぜんまいの戻し方やあく抜きの方法などについて、詳しく解説していきます。
Contents
ぜんまい(薇)の特徴
- 和名:ぜんまい 別名:ゼンゴ、ゼンメ
- 学名:Osmunda japonica
- 階級:ゼンマイ科ゼンマイ属
- 分類:多年草
- 分布:日本全土
- 形態:新芽はうずを巻いており、綿毛がついている。
- 特徴①:天然のぜんまいは山奥の急斜面に生えやすい
- 特徴②:乾燥させることができるので、保存が効きやすい
ぜんまいの名前の由来
ぜんまいは、「銭を巻いている」ような見た目から、「銭巻き」が訛って、ぜんまいと言われるようになったとされています。
ぜんまいの花言葉
夢想、秘めたる若さ、円熟した優美、子孫の守護
ぜんまいの旬の時期はいつ?
ゼンマイの収穫時期は地域によって異なりますが、3~6月が旬の時期と言われています。
特にぜんまいが有名な東北地方の豪雪地域では、山中の冷たい雪解け水で育ったぜんまいは6月頃になっても採取できる場合があります。
ただ、これは天然物のぜんまいを収穫する場合の話で、ぜんまいは乾燥させることで保存が効くため年中水煮や乾物としてスーパーで購入することができます。
ぜんまいが生えている場所は?
ぜんまいは、日当たりが良い所よりも湿った場所を好みます。
天然物のぜんまいとなると、奥深い山中の沢の付近や斜面などの厳しい環境に生えていることが多いので、初心者には難易度が高い山菜と言えます。
十分な装備をしていくことも大切なので、ゼンマイを採りに山に入る場合はしっかりと準備を整えておくようにしましょう。
ぜんまいを採るときの注意点
1.山中に入る前に十分な装備を整える
良質な天然ぜんまいが生えている場所は、春先でも雪が残るような山奥の急斜面であることが多く、しっかりとした装備を整えないと入っていけないような場所です。
シダ植物のぜんまいは、湿っていて且つやせた土壌に生えるため、足元が滑らないように対策をしないといけません。
山菜採りのベテランは、スパイク付きの地下足袋はもちろん、その上にアイゼンをはめて斜面を登っていきます。
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2.男ぜんまい(胞子葉)は残して女ぜんまい(栄養葉)だけ採取するようにする
ぜんまいは雌雄異株で男女があり、男ぜんまいは「胞子葉」、女ぜんまいは「栄養葉」と呼ばれています。
ぜんまいを採取する際のマナーとして、次年度以降も同じ場所にぜんまいが生えてくるように「男ぜんまいは取らずに残す」という(暗黙の)ルールがあります。
男ぜんまい(胞子葉)と女ぜんまい(栄養葉)の見分け方
男ぜんまい(胞子葉)の特徴は、芽の先端の巻き葉がつぶれたボール状になっていて、葉ではなく胞子の塊がびっしりとついています。女ぜんまい(栄養葉)よりも先に出ているため、背が高いのが特徴です。
男ぜんまいを残すのは来年以降も生えてくることを考えてという理由が大きいのですが、女ぜんまいだからといって全て採りつくしてしまうといけないので、女ぜんまいも必ず数本残すようにしましょう。
[※2018/4/19 画像を変更して修正いたしました。ご指摘くださったたみーさんありがとうございました]
ぜんまいとこごみの見分け方
ぜんまいと若芽が似ているものの中に、同じシダ植物の山菜「こごみ」があります。
上の画像は2枚とも「こごみ」ですが、ぜんまいとの違いは大きく分けて下記の3点です。
ぜんまい | こごみ |
先端に綿毛がついている | 綿毛は無い |
茎の部分に葉は無い | 茎の根元まで葉がついている |
茎の断面が円形 | 茎の断面は凹型(カタカナのコの字) |
茎を刈り取った時に、こごみは左のようにハートをひっくり返したような形になるので鑑別することができます。ぜんまいの場合は、右のような丸い断面になるのでコゴミかどうか迷ったら一つ刈り取ってみると良いでしょう。
ぜんまいのあく抜きの方法
ぜんまいはあくが強いので食べるためには「あく抜き」をする必要があります。
今回は重曹を使った方法と、小麦粉を使った方法の2種類をご紹介します。
0.ぜんまいの下処理の方法
あく抜きをする前にぜんまいの下処理を済ませておきましょう。
【ぜんまいの下処理】
- ぜんまいの葉先には綿毛がついていることが多いので、それを綺麗に取り除きます。
- 綿毛を取り終えたら、水を張ったボウルにぜんまいを入れて汚れを取り除きましょう。
これで下処理は完了です!
綿毛取りは、触っているだけでも手に付くほどアクが強いので、軍手やゴム手袋をはめて綿毛取りをすると汚れずに済みます。
1.重曹を使ってぜんまいのあくを抜く方法
- 大きめの鍋にお湯を沸かす
- 重曹(小さじ0.5)を入れて溶かし、ぜんまいを入れて1分茹でる
- 火を止めてお湯を捨てる
- ②~③を2~3回繰り返す
- 最後に茹でた水を全てきったら、ひたひたになるまで水を足して3時間放置
- その後水をもう一度替えて、また3時間ほど放置して完成
ポイントは茹ですぎないことと重曹を入れすぎないことです。
重曹の入れすぎや茹ですぎは、ぜんまいがクタクタになってしまって折角の食感が無くなってしまうので、アクを抜こうとして過度にならないようにしましょう。
2.小麦粉を使ってぜんまいのあくを抜く方法
- 大きい鍋に水を入れる。
- 鍋の水1リットルに対し、塩を小さじ2、小麦粉を大さじ4加えて混ぜる。
- ②が溶けたら沸騰させる。
- ふっとうしたら下処理をしたぜんまいを入れて3分ほど煮る
- 流水に10~15分程さらして完成
重曹を使う方法に比べて短時間でできるので、小麦粉を使ったアク抜きの方法は簡単でおすすめです。
アクをしっかり抜くためには茹で時間を長くするのではなく、流水にさらす時間を長くすることで対応しましょう!
乾燥ぜんまいの作り方
採ってきたぜんまいを茹でてあくを抜いたら、乾燥させることで長期保存が可能になります。
茹でた後に干す作業や揉み込む作業があるので、収穫後の天気が良さそうなタイミングを見計らってあく抜きをしましょう。
乾燥ぜんまいを作る手順は以下の通りです。
- 茹でてアクを抜いたぜんまいを、ゴザやムシロなどに広げて1~2時間乾燥させます
- ぜんまいの色が少し変わってきたら、食感をよくするために揉みこみます。(※揉みこみは、数が少なければ両手で軽くこするようにして、数が多ければゴザの上で転がすようにすると良いでしょう。)
- 1時間おきに、「揉みこむ → 広げて乾燥させる」を5~6回繰り返す。
- 翌日、丸1日天日干しをして完全に乾燥させて完成
乾燥ぜんまいを作る工程で、揉みこみをしっかり行うと余計な固い部分や葉の部分が取れていきます。
乾燥が不十分だとカビが生えてしまう危険があるので、天気のいい日を見計らって完全に乾燥するまで干すようにしましょう。
完全に乾燥したぜんまいは1年以上持つようになり、いつでもおいしく食べられます。
乾燥ぜんまいの戻し方
完全に乾燥させた干しぜんまいは長期間保存ができる一方で、しっかりと使えるように戻すにはひと手間がかかります。
乾燥ぜんまいを調理に使えるように戻す手順は下記の通りです。
- 乾燥ぜんまいをザルにとって洗う。
- 洗ったぜんまいをボウルにうつし、ひたひたになるまで水を入れて一晩置く
- 一晩置いたぜんまいの水を切り、鍋にうつして水を入れ、中火にかける
- 沸騰直前で火を止め、鍋の水が冷めるまで置いておく
- お湯が冷めたら、鍋の中のぜんまいを軽くもみ洗いする
- 鍋の水を取り替えて、もう一度同じように中火にかける
- ④~⑥をぜんまいが柔らかくなるまで2~3回繰り返す
- 最後(2~3回目)は沸騰直前で火を止めたら、そのまま一晩置いておく
- 翌日、鍋の水を切って完成
乾燥ぜんまいの戻し方については、下の動画がとても分かりやすいのでお勧めです。
ぜんまいって栄養はあるの?
ぜんまいは栄養価も高く、特にビタミンA、ビタミンC、ビタミンK、葉酸等が豊富に含まれています。
美味しく栄養も豊富なぜんまいは、たとえ旬の時期でなくても食べたいですね!
ぜんまいのおすすめの食べ方(煮物・ナムル)
私の住んでいる東北地方では、ぜんまいのお煮つけはとてもポピュラーな料理です。
水で戻したぜんまいは、しっかりと煮汁を吸うので味かしっかりしみ込んでとてもおいしいです。
また、韓国料理などで出てくるナムルにもぜんまいがよく使われますね。
作り方は簡単で、ごま油で水で戻したぜんまいを炒め、醤油で味付けをすれば出来上がるので、とても簡単で美味しくいただけます。
ぜんまいから出る水分がごま油と醤油と混ざり合って、シンプルですがとても美味しいです。
まとめ
今回は、ぜんまいの特徴や採り方から、あく抜きの方法など加工する工程までご紹介いたしました。
山菜のお取り寄せなどを見ると、他の山菜に比べて国産の天然ぜんまいがかなり高価なのがうなずけると思います。
採取できる場所も素人では入り込めない場所も多いですし、あく抜き~乾燥ぜんまいにするまでの工程にかなりの手間暇がかかることがご覧いただけたと思います。
現在日本に流通しているぜんまいの水煮の多くが中国産なのですが、是非機会があれば国産天然物のぜんまいをご自身であく抜きをして乾燥ぜんまいにしてみてはいかがでしょうか。
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